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どこぞの医学生「まあらしいと言えばらしいんだけどね...」

作者:望月
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海歌

大海賊時代…海賊王ゴール・D・ロジャーの残したひとつなぎの大秘宝『ワンピース』を巡って幾多の海賊たちは己の夢とロマンを追い求めて海へ出た時代。
ゴムゴムの実を食べたゴム人間、モンキー・D・ルフィがグランドラインを仲間たちと共に駆け上がっていたころ。
そんな中グランドライン、とある島。

「ねーねー、あの歌歌おうよー『精霊様の歌』!」

「いいね歌おー!」

今、世界中の海である歌が流行っていた。その題は精霊の歌と呼ばれ人々...特に子供たちには絶大な支持を受けていた。

「いっせーのっせーで!」

海は荒くれの巣窟でー
金に輝く人がいたー
今日も今日とて山をっこえー
空をとんでうっみ渡りー
火の山にのぼってお日様にご挨拶ー
精霊様は今日も今日とて海を行くー
海賊、海兵ぶっとぉばしー
男どもーを平伏させー
にっこり笑ってふーねつーぶすー
雷なったらー雲のうえー
ゆったりお昼寝
したーは水浸しー
四人の仲間をひっつれてー
今日も海賊踏み潰すー
奪ったお金ーでご飯食べー
お店に寄って使い切るー



















その頃グランドライン後半の海、新世界。

「あっはっはっはっは!」

「そんなに笑う事か...?」

赤髪海賊団、船長のシャンクスは天にも届こうかと言う声で笑っていた。

「いやだって、あんな大層な歌はやらせたのがこんなねーちゃんだなんて思うか?海賊女帝も真っ青だ!」

なあお前らもそう思うだろ!と言って後ろの船員たちに言うと彼らも笑った。ただ一人ラッキー・ルウだけはしょんぼりした顔で「俺の肉が…」と言って船の隅っこでいじけていた。
「こんなねーちゃん」こと、ミラ・マクスウェルは苦笑した。そもそもなぜこのような事態になったのかと言うと

「ミラ、貴方最近疲れてない?」

そう言った姉のミュゼに対してそんなことはないよ、と言って返したところ彼女は「無理しなくていいのよ」と言った。そこまでならいつもの事だ、感覚がちょっとずれてる彼女ならそのあと妙な事をしでかしたかも知れないがいつもならたいしたことは無かった。
今回に限ってはそうも言えなかった。

「面白い場所見つけちゃったのよ!分史世界とは違うみたいなんだけどリーゼ・マクシアでもエレンピオスでもない世界!」

「ほう。確かにそれは面白そうだな、どれ四大もつれて行って見るとするか。」

軽い気持ちだったのは自分も同じか、とミラは頭を抑えた。今回ばかりはミュゼを責めるわけにもいくまい。自分も興味があったのだ。世界を覗いたときに見えた顔の良く伸びる少年の食べていた肉につられたのもある。よし、行こう。幸いな事に行くのにはマナは必要ないらしいし、たまにはミュゼの言うとおり気晴らしも必要かーとそんな気分で行ったのが全てを狂わせたのだろう。
降り立って見るとどうやらこの世は「大海賊時代」という激動の時代の真っ只中で村を襲う賊がいたのでそれを蹴散らしたところものすごい人数から追われることになり帰ろうとしたら帰れなかった、と言うわけである。
ミラは思い出して額を押さえた。もっとも四大がいれば何とかなるだろうとも考えたのだが。実際海がほとんどを占めるこの世界でシルフの力で空に飛んでしまえば誰もミラを追うことはできなかった。…いや、誰もと言うのには語弊がある。髪型がパイナップル...いやバナナだろうか?に似た語尾に「よいよい」とつける海賊には空まで追われた事がある。そいつは親父がどうのこうの言ってたきもするがミラはさほど気にしなかった。さてここで問題となるのがミラの食事だ、最初は悪事を行う海賊を討伐してその積荷から「おすそわけ」を貰っていたのだがここ最近ではミラを見ただけで海賊は逃げてしまうのだ。ミラはまだ知らなかったが彼女は既に5億の賞金首となっていた。貯金も底をついた...無論ミラは精霊でこの世界では認知されていないらしいマナを吸収すればどうにでも生きていけるのだが一度知ってしまったら戻れないのが人間...いや人間ではなく精霊だがそれはおいておくとしてとにかく文字通り飢えていたミラはなにやら肉を持って歩いていた男に「わけてくれ!」と言った所それが今船の隅でいじけている男ラッキー・ルウで今に至る...と言う訳である。
無論シャンクスと話をする前に食料庫から一ヶ月分の積荷が消え去ったのは言うまでもあるまい。最初ただおなかが減ってるだけだろ、と思ってわけてやったルウはその2時間後には顔を真っ青にしていた。

「いやーそれにしても...賭けは俺の勝ちだな!」

先程ベン・ベックマンと呼ばれた男は顔をしかめて懐からシャンクスに酒を放り投げた。

「む、賭けとは?」

「いやあ精霊が本当にいるかどうかって言う話でさ、アイツはいる訳ねえって言ってたんだけどな?」

「成る程、では確かにお前の勝ちだな。私は間違いなく精霊だ。」

「だろぉ?」

そう言ってシャンクスは頑強な白い歯を見せて笑った。

「所でお前、こんな所で何してたんだ?あんな雷が降るような島のど真ん中で?」

「ああ、食事を求めて彷徨っていたのだが...運よくお前たちと出会えたと言うわけだ。」

「へぇ、そりゃあ確かに幸運だな。新世界でこんな偶然もあるもんだ。」

「ああ本当に。」

ミラは知る由もないが彼女が今話している相手は通称四皇と言われる世界最強の海賊の一人なのだ。赤髪海賊団の新入りはみな口をあんぐりとあけていた。

「にしても、この肉は美味しいな。一体何の肉なんだ?」

「気に入ったか、そいつは海王類って言う奴らの肉でな?大量にあるからどんどん食ってけ。」

「おお、太っ腹だな。それでは遠慮なく…」

「遠慮しろおおおおぉぉぉ!!!」

「もう止めて上げて!?ルウのライフはゼロよ!?」

そのルウ本人は更に喰われる事を知ってか知らずか、空を見上げて風の赴くままにー

「「飛び込もうとしてるじゃねえか!?とめろよお頭!」」


その頃、精霊界。

「あら、なんだかミラ楽しそうだし…本当はもう戻せるんだけどしばらくはこのままでいっか。」

そう朗らかに言った精霊がいたとかいなかったとか… 
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