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DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~

作者:山神
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次なる目標

 
前書き
次からはちょいちょいスコアボードを記入しようと心に決めた今日この頃 

 
「ストライク!!バッターアウト!!」

空振り三振に倒れガッカリしながらベンチに戻ってくる背番号1。それを迎え入れる音ノ木坂の選手たちに、もう笑顔で出迎える元気は残っていなかった。

UTX 300 007 32
音ノ木坂 140 030 0

『9番ファースト南さん』

8回裏で点差は7点。この回1点も取れなければコールドゲームになるがすでに2アウト。打席にはことりが不安そうな顔を隠しきれずに立っている。

(もう今までの勢いはないか。無理もない)

マウンドにいる少女から1本のヒットも放つことができていない。

(あとはストレートで十分だ)
(はいはい)

ビシビシとアウトローにストレートを決めるツバサにことりはバットを振ることもできず追い込まれる。

(これで最後だ。ちょっと高めに投げてやるか)

中腰になり真ん中高めに構える。ツバサはそれを撃ち抜く勢いで投じると、ことりはその圧力に押されスイング。ボール球を振らされ三振してしまった。

「「「「「・・・」」」」」

ベンチから飛び出しマウンド上で勝利を喜び合うUTXを見ながら顔を伏せる音ノ木坂ナイン。

「ほら、整列に行ってこい」

そんな彼女たちに声をかけ整列に向かわせる。対照的な2チームが向き合うように並び頭を下げると、UTXの主将である英玲奈が穂乃果に手を差し出す。

「いい試合だった。また全国で会おう」
「!!」

その言葉に驚いた後、彼女はその手を握り返す。

「はい!!次は絶対勝ちます!!」

真剣な表情をしているその姿を見て小さく微笑む英玲奈。その様子を見ていた選手たちはそれぞれのベンチに戻ると質問をぶつけてみる。

「なんであんなこと言ったの?」
「ん?何がだ?」
「また全国で会おうなんて・・・随分上からなのね」
「え?上からだったか?」

ベンチを片付けながら先程の英玲奈の行動に疑問を呈する仲間たち。英玲奈は毛頭そんなつもりもなかったらしくみんなからそんなことを言われて動揺していた。

「私は別に・・・ただ思ったことを言っただけなんだが・・・」
「英玲奈らしいわね」

自分の取った行動がおかしかったのかと落ち込んでいる英玲奈を見ながらクスクスと笑っているあんじゅ。他のメンバーたちはひどく落ち込んでいる英玲奈を見て申し訳なくなったのか、優しく声をかける。

「まぁ確かにいいチームだったよね」
「初めてじゃない?8点も取られたの」
「コールドになったのも向こうのミスが絡んだからだしね」
「そうだよな!?まだ粗いところはあったが十分将来性はあっただろ?」

彼女たちのフォローを聞いて普段の冷静な様からは想像できないほどの乗っかりようを見せる英玲奈。そんな彼女の元にダウンのキャッチボールを終えたツバサがやってくる。

「その考え方が上からなのよ。まさか英玲奈、あの子たちが本気で全国を勝ち抜けると思ってるの?」

肩と肘のストレッチをしながらそう問い掛けるツバサに英玲奈はまさかといったような表情で答える。

「確かに面白いチームだが、決勝までとなるとさすがにな・・・ただ」
「ただ?」
「彼女たちは何かを持ってる。そうじゃなければ出来て半年足らずのチームがここまで来ることだってできないだろう」

片付けを終えてベンチ裏へと下がっていた少女たちの方を見ながら言葉では言い表せない何かを感じいた英玲奈。他のナインはそれが何なのかわからないらしく、首を傾げていた。















「今日はお疲れさん。負けはしたがいい試合だった・・・と言っていいのかな?」

ダウンを終え控え室でミーティングを行っている音ノ木坂ナインに剛がそう声をかける。彼は今にも泣き出しそうな表情の彼女たちを見た後、1つ息をついてから言葉を紡いでいく。

「先発ピッチャーを捉えられたのはよかったな。それに優木からもヒットで点数を取りマウンドから引きずり下ろした。だが、ツバサからは打てなかったな」

彼女に完全に流れを切られたことで一気に崩れてしまった。それを建て直す術が見つけられないまま試合が終わってしまった。

「俺もお前たちもまだまだ未熟だったわけだが、暗い話はこのくらいにしておこう。ここからはいい話になるぞ」
「いい話?」

一体どんな話をしようとしているのか検討もつかない少女たちは顔を見合わせる。剛は控え室の扉を開くと、ある人物を中へ招き入れる。

「お母さん!!」

その人物とはことりの母でもある音ノ木坂学院の理事長。彼女は全員の顔を見つめた後、ニッコリと微笑む。

「みんなの戦っている姿をずっと見てました。惜しかったわね」

初戦からずっと球場に足を運んでいた理事長は日に日に逞しくなっていく彼女たちを見て胸を熱くさせていた。そしてそうなったのは、彼女だけではない。

「実はみんなが頑張っているのを見て、学園の入学希望者が大きく増えました。その結果・・・
















音ノ木坂学院の廃校は見送ることになりました」
「「「「「・・・え?」」」」」

一瞬何を言っているのかわからずしばし沈黙する穂乃果たち。その間に剛は耳を塞ぐと、正気に戻った彼女たちは絶叫した。

「「「「「えぇ!?」」」」」

あまりにも唐突だったこともあり喜びよりも先に驚きの方が来てしまった。一頻り驚くと、彼女たちは自分たちの大好きな学校が存続することが決まったことに喜び手を取り合っていた。

「やった!!音ノ木なくならないんだね!?夢じゃないよね!?」
「おおおおお落ち着きなさい穂乃果!!とにかく頬をつねってみましょう」
「海未ちゃん落ち着いて!!そこはほっぺじゃないよ!!」

裏方の仕事を終えて帰ってきていたヒフミトリオもその輪に加わり大騒ぎ。その様子を剛はしばらく見ていると、頃合いを見計らい咳払いをする。それで正気になった彼女たちは大騒ぎから一転、静かに彼の方を向き直る。その顔は緩みっぱなしのままだが。

「これでお前たちの目標は達成できたわけだが・・・これからどうする?」
「どうするって・・・何がですか?」

言葉の意味がわからず首をかしげる穂乃果。他の者も同様で彼の言いたいことがわからない。

「廃校阻止のために始めた野球部。その目的が失われた今も今までと同じようなモチベーションを維持できるのか?」

その言葉に静まり返る。剛は本気で言っているのかわからないように無表情で話しており、なんて答えればいいのかわからないのだ。

「大丈夫です!!」

真っ先にそう答えたのはサイドテールの少女。だが彼が聞きたいのは全員の意思であり1人の意見ではない。

「確かに音ノ木坂を救うのが目的だったけど、今は野球をするのが楽しい!!でも今日UTXに負けちゃってすごく悔しくて・・・だから次は勝てるように頑張りたいって思ったんだもん!!」

その決意を聞いてみんなクスリと笑う。それから真剣な眼差しで剛を見据えると、自分たちの意見を語る。

「私たちも穂乃果と同じです」
「廃校がなくなったからやめようなんて思いません」
「これからは全国制覇できるようにより一層頑張っていこうと思ってます」

1人も弱気なことは言わない。もしかしたらと心のどこかで不安を感じていた剛は自分の考え方の甘さに苦笑いしつつ、口を開く。

「それならよかった。もしかしたらと不安を感じていたが、まだまだやる気があるようで安心した。
・・・全国までまだ時間はある。これから厳しくなっていくと思うが、付いてこれるな?」
「「「「「もちろんです!!」」」」」

元気一杯のその返事に笑みを浮かべる。こうして少女たちは新たな目標を胸に全国大会へと挑むことになった。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
アニメだと時期くらいで廃校を阻止していたはずなので全国前にこのようなイベントを入れたいなと検討していました。
次からは全国前の練習回です。学校は夏休みに入ってるので、何をするかは想像できそうですね(笑) 
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