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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百二十七話 宮殿侵入


頭が痛いので、他の作品は追々更新します。
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第百二十七話 宮殿侵入

帝国暦483年8月5日 午前11時20分

■オーディン ノイエ・サンスーシ グリューネワルト伯爵邸

グリューネワルト伯爵邸に、午前11時20分に到着した近衛第4大隊長ハイドリッヒ大佐は、僅かの間に館の回りに多数のバリケードや土嚢が積まれている事に面食らった。それでも自分も含む同士の将来がかかっている以上引くわけにはいかずに、ハンドマイクで立てこもる宮中警備隊とグリューネワルト伯爵夫人に対しての最後通告を行った。

「貴官達は逆賊に与するつもりか、勅命が下ったのだ。直ぐさま武器を捨て投降すれば、罪には問われない。グリューネワルト伯爵夫人は直ぐさま出頭せよ。此は皇太子殿下のご命令である」

その様な勧告を行うが、バリケードの後ろにいる宮中警備隊からの反応はなく、逆にグレーザー少佐からの口撃が始まった。

「案山子のような、キンキラおべべの近衛兵の坊や達、坊や達の方が逆賊だ。我ら宮中警備隊に逆賊に与する者無し!」

「おのれー!、あくまで、愚弄する気か!攻撃せよ!!」
頭に血が上った近衛兵達がてんでバラバラにライフルを撃ち始めるが、全く戦闘に成って居ない、戦闘力は装甲擲弾兵上がりの宮中警備隊と比べて圧倒的に実戦経験がなさ過ぎるのだ。

「良いか、敵の突出を狙え」
グレーザー少佐の的確な指示で、バラバラに突っ込んでくる近衛兵が次々に撃ち倒されいく。
それに加えて、装甲擲弾兵と全く同じ装甲服に身を包み、ハンドキャノンや重機関銃まで持ち込んでいるのであるから、勝負にならない。

結局最初の突撃は、太平洋戦争のガタルカナル島ヘンダーソン飛行場に突撃をかけて壊滅した、大日本帝国陸軍一木支隊のように死屍累々の有様と成ったのである。

「大隊長、敵は重火器を所持しています」
「うむー、このままでは損害が多すぎる、此方も重火器を用意するんだ!」
「用意と仰っても、近衛では元々重火器を所持しておりませんから、何処からか持ってこないと行けません」

「仕方ない、火炎瓶を制作しそれを投げ込むしか無いな」
宮中警備隊による思わぬ抵抗に遭い、更に貴重な時間が、費やされたのであった。

宮中警備隊の奮戦は続く。

そしてアンネローゼの葛藤は益々大きくなっていったのである。



帝国暦483年8月5日 午前11時40分

■オーディン ノイエ・サンスーシ

地下迷宮をランズベルク伯の案内で通過したライムバッハー上級大将率いる、装甲擲弾兵の猛者1,000名は第一波として、次々に中庭にあるジギスムント1世像の台座から宮殿内に細心の注意を払いながら到着した。又後続としてキルドルフ大佐指揮下の1,000名も順次地下迷宮から躍り出てくる。

各人とも無線も肉声も使わずに、ジェスチャーだけで意思疎通を行い宮殿内へ侵入していく。宮殿内ならば、何度となく通ったランズベルク伯が、先頭を行きながら、倒れている女官、文官を、取りあえず縛り上げ猿轡をして、部屋に閉じ込めていく。此は万が一にも敵のスパイが居た場合と、騒がれるのを防ぐためであり、更に突入の巻き添えにさせないためでもあった。

ライムバッハー上級大将達はケスラー少将からの連絡で、ケーフェンヒラー中佐と合流した。
「装甲擲弾兵総監ライムバッハー上級大将である」
「皇帝陛下侍従武官ケーフェンヒラー中佐であります」

ケーフェンヒラー中佐は、怪我をしながらも気丈に立ち敬礼を行う。直ぐさま衛生兵が手当を始める。

そして、モニターでケスラー少将と挨拶もそこそこに話し皇帝陛下救出の作戦を検討し始める。
「テレーゼ殿下が、現在戦艦でノイエ・サンスーシに突撃しようとしています」
「なんと、殿下も無茶な事を」

中々隙を見せない皇太子の姿にいらだちを見せながらも、ライムバッハーは冷静に聞き、ケスラーが示す突入方法と侵入経路に納得をした。

「つまり、オフレッサーが強襲揚陸艇で側面から突入する直前にA部隊は天井から陛下と敵の間に飛び降りる訳か、そしてB部隊が陛下の後方の壁をぶち抜き、陛下をお救いする訳だな」
「そうなります、全てはタイミングが重要です」

ケスラーの真剣な表情にライムバッハー以下全員が再度神経を研ぎ澄ました。

天井裏には、ライムバッハー自らが、ゼルテ少佐など一騎当千の強者を10人で忍び込む、10名では少ないような気もするが、素早くするために必要最低限で行くしかないからである。又壁破壊はキルドルフ大佐達が請負い、突入部隊にはランズベルク伯も参加していた。

いよいよ、皇帝陛下の救出の作戦が発動されるのである。

宮殿を取り囲む近衛第1、第2、第3大隊は、少しずつ宮殿内を占拠していく、装甲擲弾兵に全く気がつかない状態で有った。何故なら、まさか敵が内部から発生するとは思いも依らずに、外部ばかりを気にしていたためである。

謁見の間天井裏に到着したライムバッハー以下10名は赤外線探知装置とケーフェンヒラー中佐からの連絡によりにより各人の位置を把握し準備を終え、今や遅しと突入を待ち構えていたのである。



帝国暦483年8月5日 午前11時40分

■オーディン  戦艦ラプンツェル

艦長ドゥンケル大佐の見事な操艦でラプンツェルとトレプトウは併走しながら連絡艇を行き来させ、テレーゼ一行はラプンツェルへと御座所を移した。テレーゼ自身停泊中のラプンツェルは訪問した事があったが、実際に航行しているのは此が初めてであった。

ドゥンケル艦長は細心の操艦で離れられないために、テレーゼ達を迎えたのは、副長アルフレート・ミュールマイスター中佐、所謂エヴァンゼリン・ミッターマイヤーの父親である。彼は、捕虜交換後加療中で有ったが、昨年、完治後にベルゲングリューン達がローエングラム艦隊参謀になった関係で開いたポストへ配属されたのである。

因みに昨年、付き合っていた一回り若い看護婦と再婚している。因みにエヴァンゼリンのお友達ヴァネッサ・フォン・リヒトホーフェンがテレーゼだとは全く知らない。

「テレーゼ殿下、ご無事で何よりでございました」
「御苦労、早速艦橋へ参るぞ」
「御意」

艦橋へテレーゼ一行が到着すると艦橋要員が全員が跪いて挨拶しようとするが、それを制して話しかける。

「良い、挨拶は無用じゃ。皆の忠節感じ入る。今は皆の職責を全うして欲しい」
「「「「「御意」」」」」」

テレーゼの言葉に艦橋要員が直ぐさまキビキビと仕事を続ける。

「艦長、この艦でノイエ・サンスーシの湖に着水は可能か?」
「お任せ下さい、確と着水致します」
「任せる」
「御意」

テレーゼは、艦長に確認をした後、オフレッサーに向き直し話し始める。

「オフレッサー、行けるか?」
「お任せ下さい」
「相手は、ローゼンリッターのリューネブルクだ」

「奴等とは何度となく戦い続けてきました、此処でケリを点けるのも何かの縁かも知れません」
「無理な願いをして、済まんな」
「何の、陛下と殿下に受けた恩顧を少しでもお返ししたい所存」

「父上を頼む」
テレーゼがオフレッサーに頭を下げて願うと、オフレッサーを含めた全員が驚いてしまう。
「殿下、頭をお上げ下さい。私のような者にその様な姿を為されたら、殿下の威厳に関わります」

オフレッサーの言葉にテレーゼは頸を振って答える。
「妾は、未だ12じゃ、皆の協力が無ければ何も出来ん、何も知る事も出来ん、ましてや父上を助ける事すら出来ん、そして危険と判っていても、オフレッサー達を送り出す事しか出来ん、皆すまん」

その言葉にその場にいた全員が自然と頭を垂れて涙ぐむ者すらいる状態になった。
「殿下、このオフレッサー、一命を賭しても陛下をお助け致す所存」
「オフレッサー、頼む」
「御意」

オフレッサー達は装甲服を着用し強襲揚陸艇へと移動して行く。

強襲揚陸艇発艦の準備が済み、ラプンツェルはノイエ・サンスーシに侵入する。



帝国暦483年8月5日 午後0時15分

■オーディン ノイエ・サンスーシ


本来、宇宙空間でさえ、ノイエ・サンスーシを見下ろす位置に人工衛星の軌道を通す事すら不敬に当たるとされてきたにもかかわらず、戦艦が侵入してきたのであるから、ノイエ・サンスーシに展開している近衛兵は驚くだけであった。

「何があった!」
「戦艦が侵入してきます!」
「何たる不敬な、艦型は?」

指揮官の言葉に、部下が言いにくそうにしている。
「どうした、ハッキリ言わんか!」
その言葉に、ようやく部下が応対する。

「艦型確認、ラプンツェルです」
その言葉に、指揮官も驚きを隠せない。
「テレーゼ皇女殿下の御召し艦では無いか。何故それがノイエ・サンスーシに侵入してくるのだ」

困惑の表情をする、近衛兵達であるが、頭上を通過する戦艦に対抗できる兵器など何持っていないために、当たらないのを覚悟の上でビームライフルを撃つ者も居たが、全く届かなかった。

「少佐殿、何故御召艦が?」
「判らん、叛乱軍に乗っ取られたのかも知れん、直ぐに総監部へ連絡を入れろ」
その様なゴタゴタな中で、ラプンツェルから、オフレッサーと共に競馬場へ来ていた装甲擲弾兵とズザンナそして、ルッツ達12名を乗せた強襲揚陸艇が発艦した。

「オフレッサー、ズザンナ、ルッツ、そして装甲擲弾兵の猛者達よ、父上を頼みます」
テレーゼのか細い言葉を聞いた者は侍従武官達だけであったが、その言葉は後日全員の知るところとなり、益々敬愛される事になった。

そして遂にこの時、帝国暦483年8月5日 午後0時22分、オフレッサーの乗る強襲揚陸艇バート・デューベンが、銀河帝国開闢以来、初めてノイエ・サンスーシ宮殿に突入したのである。

 
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