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俺のペットはアホガール

作者:猫丸
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その十五「二学期初日の風景-弐」

夏の終わりを惜しむようにミーンミーンと鳴く蝉の声。
長い休み終わり、今日からまた学校に通い始める大事な日。またあにひとたちに合える大事な日。
わたし翡翠(ひすい) (すい)は生徒会のお仕事で校門前に立ってあの人たちを待ち続けているの。

「……ふふ。ふふふふ」

「(うわ…よだれ垂らしてる…)翡翠先輩、大丈夫ですか? 暑さにやられておかしくなったんですか?」

「…あ。みきちゃん」

ちょんと下から覗き込んでいるのは後輩のすざく みきちゃん。
暑さでおかしくなった…? そうかも…しれない。あのひとたちにもうすぐ会えると考えただけで、鼓動が早くなって胸がざわつき、高鳴るもの。
…とみきちゃんに言ってみたけど、よくわからないといった表情をして首を傾げてた。やっぱり、みきちゃんには恋する乙女の話は早かったのかな。

「それよりもー聞いてくださいよ! さっき変な人が居てですね!」

今は朝の8時30。あのひとたちが来るとしたら、遅刻ギリギリの8時40分頃…あと10分。もう少しで会える…ふふ。ふふふふ。

「…って自分の話し聞いてました?」

「…ふふ。ふふふ」

「(あ。これ全然聞いてないパターンだ)」

「翡翠さん、朱雀さん! サボってないでちゃんと仕事をしてください! 
 この時間帯にくる生徒はだいたい…問題児ばかりなんですから、厳しく取り締まらないと」

「ごめんなさいっ会長! 翡翠先輩もっ…」

「……ふふ。ふふふ」

「(全然っ聞いてない~! しかも口から滝のようによだれが出てる~!)
 か、会長! あのですね! 翡翠先輩は暑さのせいで体調が悪いらしくて…ですね」

「え? そうなんですか? もしかして…熱中症に…それはいけません。すぐに保健室に行って休んできてください。
 このあとの授業に支障をきたしてはいけませんからね」

「…ふふ、え?」

あのひとたちに会える…夏休みぶりに合えることを楽しみしていただけなのに、気が付いたら保健室に行かないといけない流れになってる…どうして? なんで? みんな…わたしがあのひとたちに会うのを邪魔するの…?


ゴゴゴゴゴゴゴ…

「ヒッ!? 翡翠さん…なんだか、雰囲気が変わりました…? やはり熱中症が進んで…」

「(殺気だしてる~~!! そんなに保健室に行きたくないんですか! 翡翠先輩!?
  あと会長! 熱中症が進んでも殺気なんて出ませんよ!)
 ひ、翡翠先輩。そんな疲れている顔で会ったら、きっと想い人達がドン引きしちゃいますよ…?」

ドン引き? あのひとたちがドン引きして、わたしを嫌いになっちゃう…?

「そんなのだめ」

「で、ですよね! じゃあ、じゃあ…」

「保健室に行って少し休んできます」

「え…ええ。お大事に」

「(よしゃあ、作戦成功!)」

「あ…みきちゃん」

「は、はいっ、なんでしょう!?」

「あのひとたちが来たらよろしく伝えといて…ね」

「あっはい! 了解です!(あのひと、たちって誰のこと?)」


休み明けすぐに会えないのは残念だったけど。あのひとたちにドン引きされて嫌われるよりかはずっとマシ。
フラフラとした足取りでわたしは保険室を目指す。そして引き戸を開けると

「ふっふ~♪」

伸ばした綺麗な髪をうなじのところで結んだ、(たぶんイケメンと呼ばれる種族の)男子生徒がパンツ一丁で鼻歌を歌っていました…。

「…ん? いやあああああ!! ゴブゥ!」

わたしが入って来たことに気が付いた彼が、悲鳴をあげると同時に、彼を殴っていました。グーで。

「これ…どうしよう」

運が良かったのか悪いのか、保健室の先生は不在でした。わたしとパンツ一丁の変態だけ…。
よし。無視しよう。
パンツ一丁の変態をそのまま置き去りにして、自分の教室へ帰ることにしました。


あとから知ったのですが、あのパンツ一丁の変態は生意気にもあのひとたちと同じクラスのひとらしいです。
…あの時、保健室に置き去りにするんじゃなくて、地面に埋めとけばよかった。残念。



 
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