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二人で何時までも

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第四章

「これからは傷を受けることもある。痛みも感じる」
「ただ。傷つけにくくなるだけで」
「そうなる。カストルも同じ身体になるがな」
「ならそれでお願いします」
「いいのだな、それで」
「はい」
 強い声でだ。ポルックスはゼウスの問いに答えた。
「それでカストルが助かるのなら」
「そなたはこれから傷を受けることになってもか」
「構いません、それでも」
 全くだというのだ。それもまた。
「ですからお願いします」
「わかった。ではな」
 ポルックスの言葉を受けてだ。そしてだった。
 ゼウスは彼の力を半分取ってだ。そのうえでだった。
 カストルは助かった。ポルックスの力は半分になったがだ。
 紫色になっていた身体は元通りになっていた。そのうえで立ち上がりポルックスに言うのだった。
「有り難う、助かったよ」
「いや、カストルも同じことをしていただろう?」
「僕もだっていうのかい?」
「そうさ。若しカストルが不死の身体で僕が死のうとしていたら」
「当たり前だよ。その時はね」
 まさにだ。その時はだとだ。カストルもはっきりと答える。
「力を分けてそうして」
「僕を助けていたね」
「そうか。そういうことなんだね」
「うん、そうだよ」
 ポルックスは微笑んでだ。カストルにこう答えた。
「だからお礼はいいさ。僕達は同じだから」
「そうか。それじゃあこれからも」
「うん、共に死ぬ最後のその時までね」
「一緒にいよう」
 二人で笑顔で話したのだった。その二人を見てだ。
 ゼウスは深い感動を受けた。そうしてだった。
 二人が共に、まさにその誓い通りに死んだその瞬間にだ。二人を夜空に上げて星座にしたのだ。そして夜の空にいる二人にこう言ったのである。
「そなた達はこれからも一緒だ」
「夜空にいてですか」
「そのうえで」
「誰もそなた達を引き離すことはできない」
 そして何も、だった。
「永遠にそこで共に暮らすといい」
「有り難うございます、こうして頂いて」
「言葉もありません」
「いいのだ。私はそなた達に素晴しいものを見せてもらった」
 それ故にだとだ。ゼウスもいいと言うのだった。
「その礼だ。そしてその夜空でだ」
「私達は永遠に生きるのですね」
「共に」
「そして私に見せた様に他の者にも見せてくれ」
 そうして欲しいというのだ。
「そなた達の兄弟愛をな」
「わかりました。それでは」
「これからも永遠に」
 二人も応える。こうしてだった。
 カストルとポルックスは今も夜空に共にいる。人々はその二人から兄弟愛の美しさを知ることができる。神話の時代から続くその愛情を。


二人を何時までも   完


                        2012・5・28 
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