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レーヴァティン

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第二十三話 堺の街その九

「そのうえで多くの魔物を倒してもきました」
「賊もだな」
「そうしてきました、我が愛刀と共に」
「そして俺か他の十二人と会うのを待っていたか」
「左様でした」
 まさにその通りだというのだ。
「これまでは、そして」
「今俺と会った」
「探そうとも思いましたが」
 しかしとだ、侍は英雄自身に話した。
「探すよりもです」
「この堺にいればか」
「お会い出来ると考え直しました」
 見れば思慮深い目である、鋭いその目の中にその熟考があった。そしてその熟考は間違っているものではなかった。
「堺にはこの島、そして西の島からも人が集まりますので」
「だからか」
「この島にいてです」
 そうしてというのだ。
「お待ちしていました」
「そうだったか」
「はい、そして」
「そうしてだな」
「実際にお会い出来ました」
「時として下手に探すよりはな」
 まさにとだ、英雄も話した。
「待つ方がいい」
「人がよく行き来する場所で」
「そうすれば会えることもある、そしてだ」
「今実際にお会い出来ました、何よりです」
「いいことだ、ではだ」
「それではですね」
「今から後の十一人を探しに行くか」
 英雄は自分から話した。
「まずはな」
「そして全員揃った時に」
「あらためて動く」
「そうしましょう」
 この島を、世界を助ける為のそれにというのだ。
「是非」
「そうだな、それでだが」
「これよりじゃな」
 また束原が言ってきた。
「二人で旅に出るか」
「そうする」
「わかった、ではな」
 束原は英雄の言葉に頷いた、そうしてだった。彼と侍に対してあらためて言ったのだった。
「旅の餞別にな」
「銀ならある」
 英雄はそれはいいとした。
「だからいい」
「ふむ、では馬や驢馬はどうじゃ」
「荷を運ぶそれか」
「それはどうじゃ」
「そちらも持っている」
 だからとだ、英雄は束原にこのことについても答えた。
「だからいい」
「そうか、ではそういったものはいいとするとな」
「そうしたものはいい、ただ」
「ただ、その気持ちをか」
「受け取った、それで充分だ」
 餞別になっているというのだ。
「そこにある心が一番嬉しい」
「拙者もです」
 侍も笑顔で自身の師匠に答えた。
「師匠のそのお気持ちだけで」
「そうか、ではな」
「はい、行かせて頂きます」
「ではな」
「そうさせて頂きます」
「また何かあったら来るのじゃ」
 束原は侍の心も受け笑顔で応えた。
「よいな」
「頼れと」
「そうじゃ、いいな」
「わかり申した」
 侍も応えた、そして彼はあらためて英雄に名乗った。
「拙者の名前でござるが」
「何という」
「大田正ともうす」
「大田か」
「正と呼んでも構いませぬ」
 名前でというのだ。 
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