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二人で何時までも

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第一章

                          二人で何時までも
 カストルとポルックスはスパルタの双子だ。しかしだ。
 ポルックスは不死身であるがカストルはそうではない。ポルックスは何をされても傷つくことがない。このことから彼が不死身であることがわかる。
 しかしカストルはそうではなかった。彼は傷つくのだ。そこが違っていた。
 だがそれでもだ。二人は非常に仲のいい双子だった。常に共にいた。
 それでだ。ポルックスは常にカストルにこう言っていた。
「何があっても離れたくないよ」
「今の様にだね」
「うん、例え何があってもね」
 何が起こるかわからない。だがそれでもだというのだ。
「僕はカストルと一緒にいたいよ」
「僕もだよ。ポルックスとね」
 カストルもポルックスに言う。見ればだ。
 二人は全く同じ外見をしている。癖のある茶色の髪に灰色の目、それにだ。
 逞しい身体をしている。二人はまさに鏡合せの如く同じ姿をしている。その姿でお互いに言い合うのだった。
「一緒にいたいよ」
「そうだね。何があってもね」
「一緒にいよう」
「ずっとね」
 二人で言い合う。二人はただ仲のいい双子ではなかった。
 二人は勇者でもあった。それぞれ拳闘や馬術に秀でていた。アルゴー号の冒険にも参加していた。それだけに強さはかなりのものである。
 その彼等にだ。ある命令が来たのである。
 父であるスパルタ王レオニダスにだ。彼等はこう告げられたのだ。
「山賊ですか」
「それが出て来たのですか」
「そうだ。本来なら軍を向かわしたいのだが」
 レオニダスは難しい顔で二人に話していく。
「今軍はケンタウロスの征伐に向かわせている。だからだ」
「軍は動かせない」
「だから我々で」
「そうだ。二人に行ってもらいたい」 
 ギリシアを代表する勇者である二人にだというのだ。
「そして山賊を退治してくれ。いいだろうか」
「わかりました。それでは」
「今より」
 二人も快諾してだ。そのうえでだった。
 早速その山に向かう。山に向かいながらだ。
 その道中にカストルはふとだ。ポルックスにこんなことを言った。
「その山賊達だけれど」
「うん、何でも噂だとね」
「かなりの数らしいね」
 カストルが言うのはその数だった。
「しかも弓矢を得意にしている者が多いとか」
「僕達は弓は得意じゃない」
 剣や拳で戦うのだった。それが二人だった。
「だからそこが厄介かな」
「場所は彼等の根城だし気をつけていこう」
 地の利は向こうにある、このことも認識してだった。カストルは警戒していたのだ。
 そしてそうした警戒の中でだ。こうポルックスに言うのだった。
「けれど何があってもね」
「そうだね。僕達は一緒だよ」
 ポルックスも双子のもう一方に確かな顔で答える。
「何が起こってもね」
「そう。山賊なんかにはやられないさ」
 こうカストルも返す。
「僕達が二人ならね」
「例えアルゴー号の同志達でも一人一人なら」
「絶対に負けないさ」
「負ける筈がないね」
 笑顔で話してだ。そのうえでだ。
 山賊達のいる山に入った。するとすぐにだ。
 柄の悪い男達が斧や槍を持って出て来た。それで口々に言ってきた。
「何だ、手前等」
「何しに来たんだ」
「何だってんだ?俺達が誰だかわかってるのか」
「それで来たってのかよ」
「うん、そうだよ」
「その通りだよ」
 二人は平然として自分達を囲む山賊達に告げた。 
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