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天下一の城はどちらか

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第二章

「それに声優さんも揃ってるぎゃ」
「仮面ライダーも何人も出しているぎゃ」
「その愛知に大阪は勝てないぎゃ」
「おととい来やがれぎゃ」
 完全に二つになって戦をしている。五分と五分だ。だがそんな彼等の真っ向からの、尚且つ全く何の意味もない対立を見てだ。広島出身の北別府毅、フェアの階の主任はこう言うのだった。
「よし、わかったけえ」
「はい、大阪でんな」
「名古屋だぎゃ」
「どっちもするけえのう」
 ちょっと聞くと任侠映画そのままの言葉で言うのだった。
「それでええかのう」
「両方でっか?」
「そうしますぎゃ?」
「そうじゃ。そうするわ」
 顔立ちは温厚で喋り方もそうなのだがその言葉遣いはあまりそうは聞こえなかった。
 だがその口調のままでだ。北別府は双方に問うのだった。
「両方共巨人は好きけえ?」
「巨人は北朝鮮と同じやないですか」
「ほんまその通りだぎゃ」
 巨人についての発言は同じだった。考えも。
「あんなとこ絶対に応援しませんわ」
「兎よりもコアラだぎゃ」
「よし、じゃあ決まりじゃ」
 双方の野球に対する考えを聞いてだ。北別府は決断を下した。
 今度のフェアは大阪側と名古屋側双方のものを開くことにした。同じ階に同時にだ。
 それを聞いてだ。大阪側も名古屋側も言うのだった。
「競争でっか」
「そうなるみたいだぎゃ」
「ほなここで大阪の凄さ教えたりますわ」
「名古屋こそが一番だぎゃ」
 こう広島で言うのである。そのうえでだ。
 彼等はそれぞれの準備に入った。その様子はいうと。
 大阪側は粉ものを大量に用意した。とにかくまずはそれだった。
「うどんやうどん!」
「手打ちでいくで!」
「たこ焼きもお好み焼きもスタンバイや!」
「串カツの衣の粉も用意や!」
「とにかく小麦粉が必要やぞ!」
 最初にそれだった。とにかくたこ焼き用もお好み焼き用も用意される。
 それから色々な食材を集める。その中でだ。 
 蛸やそうしたものも用意される。その他には。
「揚げも用意せなあかんな」
「そやそや、それもや」
「揚げもないとあかんで」
「それないときつねうどんやあらへんわ」
「それとあの店からな」
 今度は店の話だった。
「豚まん大量発注やな」
「それとアイスキャンデーもやで」
「こうなったら河豚も蟹も発注するか」
「ラーメンも発注せえへんか?」
 またしても粉ものの話になる。
「あの店のラーメンな。どや」
「ああ、難波のあの豚骨か」
「そこやな」
「そや。あそこにも頼むか?」
 発注しようかというのだ。大阪から広島までだ。
「キムチに大蒜食べ放題やしな」
「そやな。それええな」
「あの店のラーメンも結構ええ感じやしな」
「中華も置いとくか」
「あとカレーもやな」
 今度はカレーの話になる。とにかく大阪の味をこれでもかと出して名古屋にぶつけようというのだ。彼等は完全に本気モードだった。
「カレーも用意するか」
「やっぱり難波のあのカレーやな」
「そや、あのカレーや」
 大阪の難波にあるカレー屋にもだ。発注しようというのだ。
「御飯とカレーを最初からまぶしたカレーな」
「あれは大阪のカレーやさかいな」
「織田作さんも贔屓にしとったカレーや」
 戦前から終戦直後にかけて活躍した大阪生まれの大阪育ちの作家である。大阪を舞台にした放浪と人間の心を書いた作家として知られている。 
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