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Blue Sea 『空と海の境界線』

作者:03-Moonlight
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Operation 02-発令、ファーバンティ解放作戦-
放たれた矢
  Mission18「守りたい」

 
前書き
2018/1/30 一部文章改訂。大筋は変わりません。 

 


「――――――あ」
 憎破棲姫の実体剣が私の頬を掠める。それと同時に私の実体剣が憎破棲姫の頬を掠める。
 それを見つつもシステムからTRANS-AMの残り駆動時間を確認する。封印を解いたばかりでまだシステムの適応度が低いことから、残り140秒―――――――――だけど、余裕はまだある。憎破棲姫の剣さばきをうまく受け流しつつ、蹴りを加えようとする。

 その刹那、脚部艤装のブースターに動力を加えて推力をつけて蹴りを加え一気に距離を取る。ガンッ、とした鈍い音を出しつつ蹴りは憎破棲姫にヒットした。
 それにより憎破棲姫に対しての加速蹴りを可能としているが、TRANS-AM稼働時のみしか使えない事に若干の後悔を覚えた。そう考えながらも次のことに思考を加える。

「私には、守りたいものがあるから――――――だから―――――――」
 一気に加速し居合斬りの構図に持ち込むと、憎破棲姫の腹部の中央を正確にとらえて斬った。
 そこから黒い血が流れ出し、私の実体剣にも付着する。

 一瞬の静寂が訪れ、その隙に憎破棲姫は私にスナイパーライフルとレーザーライフルを交互に放つ。
 咄嗟に躱すがその先に予測していたのかもう1発レーザーが飛んでくる。TRANS-AM同士の戦いであることから相手も相当な手慣れだろう。実体剣で何とか防ぐと長10cm砲ちゃん2基を分離、自立稼働させる。


 そしてまた一瞬にして実体剣同士がぶつかり合う。魔法力によってぶつかり合った時の衝撃波が拡散し、それが海に伝わり波となる。それが味方に被害を与えなければいいが、与えてしまってもどうしようもない。
 お互い弾き返すとTRANS-AMの稼働限界を確認する。45秒――――――!まずい。コアを破壊しなくては――――――!そう思いつつ再び実体剣で仕掛ける。それがただ10秒ほどのことだった。

 ふと憎悪棲姫の攻撃の手が再び止まる。私は魔法がかかっているようにも見えたそのレーザーブレードを見る。いや、間違いなく放つかもしれない。咄嗟に実体剣を仕舞いCQCを仕掛ける。しかし抵抗も強く弾き返されるが、そのレーザーブレードを放たせずに胸部のコアを露出させるように羽交い絞めにした。

 まるで流星のように数秒で経過したその一瞬のことは、恐らく常人には理解できないだろう。瞬間的に叫ぼうと通信のスイッチを入れた。

「コアを――――――狙撃――――――」
 稼働時間が残り30秒を切った時のこと。

 ◇

『コアを――――――狙撃――――――』
 その通信が入ったのが今のタイミングだ。
 この声が誰なのかはもう分かっていた。だが、場所からしてとても狙撃が届きそうにもない。ウィッチも同じ、だ。
 ほとんどやろうにも賭けだ。これに時間をかけることは出来ない。だがふと考えたこと。データベースで見たサーニャ・V・リトヴャクというウィッチに着目する。もしかしたら――――――。

「狙撃出来るウィッチはいるか?」
『武器の距離的にサーニャちゃんが……!』
 やはりか。予想通り、と言わんばかりのことだ。
「その人でもいい。コアの狙撃をしろ!」
 そう言って経過をみることにする。此方の目的はあくまで救助。戦闘に無理に介入する必要はないと判断したからである。

 照月のトランザムの稼働限界はそろそろ来るだろう。今しかチャンスがない。それが成功することを祈った。



 ――――――声が聞こえる。
 私を呼ぶ声――――――不意に起動したストライカーと私の体。何か守りたいという意識が私を突き動かす。
「サーニャ、おーい」
 エイラの声……どうしたかって、私は起きただけなのに。
 いつの間にかフリーガーハマーが改造されていた。知らないけれども感謝する。手に取るようにわかったその操作方法により、レーザーキャノン形態に変形させる。

 誰もが思っていない事が連続して起こることなんて、奇跡じゃない。私はそう信じてレーザーのチャージを始める。いつの間にか宿った私の周りに表示されるリングは、チャージ率を示していた。
 フリーガーハマーを正確に敵のコアに向け、なおかつピンポイントに当てる。リーネさんなら出来るかもしれないけれど、私にはできるのか分からなくなってしまう。でも――――――芳佳ちゃんやエイラがいるんだから――――――今の私はここにいる。

「その守りたいものを、私は理解できるかもしれない」
 少し声がかすれながらも、そしてこの声が照月ちゃんに届かなくても――――――私は守るためにトリガーを引く。そうずっと前から決めていた。




 ゲージが100%を示したその瞬間、わかりきっていたかのようにピンポイントに敵のコアに向け1つの蒼い閃光を走らせた。

 そして、その閃光が吸いこまれるようにコアを貫き、破壊したことを示す爆発のが少し遅れて私の体に襲いかかった。
 ◇

 敵がネウロイのように大きく砕け散ると、その敵が持っていた船体は忽然と姿を消していた。破片の跡も見つからない。
 なぜ消えたのか。船体の持ち主が死亡したからか、はたまた遠隔操作なのかは知らない。とにかく大鳳を守り抜けたのはもっとも大きな点だ。

 だが、同時に美緒には2つの疑問があった。


 その1つは照月、そして敵が持っていたTRANS-AM。あの不可解な速度は、美緒ですら捉える事は到底かなわないものである。そして、それによって引き起こされた魔力波は凄まじい質量をもっていた。

 そしてもう1つは、サーニャのフリーガーハマーがレーザー攻撃を使用出来たことだ。元からあの改造がされてたとは思えない。それがあったとしてもサーニャが気づかないなど、到底ありえないはずだ。だが、仕込んだ可能性として残されているのは、やはり気付かれないレベルの改造でもされていたのだろう。見た目に影響を及ぼさないよう、丁寧に。

 出来ることが不思議ではあるが、それは後で調べておくことにしておこう。まず先に、大鳳の修復だ。しかし、曖昧にも船体構造がわからない。だがいつ沈んでもおかしくない状態なのだ。

「そろそろ、鬼神が見えてくる」
 そういうバルクホルンの言葉と同時に甲板からその風景を眺める。
 たった数分の出来事に、なぜここまで強く引き付けられるのだろうか……。





 海に浮いてる私。たった数分で起きた出来事に対し、何とか理解する。
 2人のウィッチがそれぞれ動いていることが確認でき、大鳳も視認出来たことから一安心する。だけれど、私は使った。TRANS-AMを使った事実は全く消えない。だが、これは何かに叛こうとしたことでもあったかもしれない。だけど――――――それがなんだ、悪いことなのか、いいことなのかわからない――――――

 私は実体剣「星明」を見つめる。少し汚れた血の付いたそのTRANS-AM専用武装。これだけ、元に戻っていなかった。その剣は私に「使え」とでも言っているように。
 ああ、そうなんだ――――――私は、誰かを守るためにTRANS-AMを使って、そしてまた自分を傷つけてるだけなんだ。自傷しているだけなんだろう。その傷は、簡単には消えないのに。

「私は………何のために、自分を傷つけるんだろう」
 溢れんばかりの涙が目から零れる。こんなにも哀しい自分が、大嫌いなのかもしれない。

 ただ、人として何かを守りたい。それが今はTRANS-AMとなって私に宿った。まだ早いなんて言われても、もう私には関係ない。


「提督…………私は、戦う理由を見つけた――――――





 ――――――提督を、みんなを守るため。私は、自分の体を犠牲にしてでも、ね」

 無線にそれを入れて、私は静かに眠りに入った。




「やったか……」
 そう呟きようやく肩の荷が下りたような気分になった。無線のオープンチャンネル状態に気付いていないのか、照月の声が少し聞こえた。
 機関の緊急修復が完了し、大鳳は何とか航行能力を取り戻す。後は我々が戻った後、しっかりと所属先に送り届けるのみ。

「何考えてたんですか?」
「ああ………照月がトランザムを使った理由、だよ」
 その無線から聞こえた、守るために使う、という理由。やはり、艦娘とでもなれば一緒の理由に落ち着いたな、と思った。だが、自分にはそれが言えるのだろうか。


 それは、軽く考えた程度で答えは出ない。なぜなら提督として選ばれし者だから、という軽々しいものでもない。選ばれし者といえど、そこには数々の時間が費やされ、その時間で提督として任命されたものは少ない。少ないといえど例外もあり、その例外は大抵すぐに問題となって追い払われた。
 なら、彼は例外といっても問題に上がらないのはなぜだろうか。


 艦娘に近い年齢で、その心を一番深く理解するという事なのだろうか。
 いろいろなことが混ざったおかげで、何を考えていたか忘れてしまった。





 Oct.24 2006
 艦娘起動試験場

 彼が提督となって数カ月の話。
 照月に搭載されていたTRANS-AMという装備についての、試験を行ってほしいと言われ彼はそこにいた。管制室から彼が指示するだけで照月が行う、単なるそれだけの実験だ。

「TRANS-AMの起動を行え」

 だが――――――それが照月の力を知ってしまい、逆に恐怖づいてしまったうえ、そのシステムの存在は封印されてしまう。その時、実験は失敗した上施設の一部が損失。彼は暫くの間艦隊を行動させることが一切許されなかった。

 彼は赦せなかった。それをうまく使おうとせず、恐怖づいて自分から遠ざかってしまう自分が。そして、そのシステムをたった1回の実験で危険だと判断した上層部が。



 そして、照月の存在を隠すようなことをしたことによってできた傷は癒えぬまま2年が経つ。
 彼はその後提督として復帰し、数々の戦果をあげ「鬼神」とも呼ばれた。だが、彼はあまり気に入ってはいない。確かにかっこいいことだが、それより自分の傷をどう伝えていくかという、それだけに囚われていた。

「司令官?しれーかん?」
「ああ、すまない……吹雪」
 いつもはすぐ言えることも、何故かすぐに言えなくなってしまった。

 照月は、守りたいという強い意志があったからこそ封印を解けた。

 それが、彼が到達した1つの結論だ。 
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