| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

アインクラッド編~頂に立つ存在~
  X`mas企画 伝説の依頼

「今日はどうしよっか?」

現在の時刻は朝の九時を回ったところである。二十二層の常緑樹の森林に囲まれたログハウスのテラスでルナはまったりとお茶を飲みながら今日の予定を決めようとしていたのだが、ソレイユは珍しくバツの悪そうに口を開いた。

「あ~、わりぃ。今日からちょっと長期間の依頼が入っちゃってな、少しの間家を空けることになっちゃうんだ」

「えっ、そうなの?お仕事?」

「・・・・・まぁ、そんなところだ。長期間って言っても一日、早ければ今日中に帰ってこれるよ」

「そっか。じゃぁ、今日はアスナとどっかにいこうかな?」

「大丈夫なのか?向こうは新婚なのに?」

「そこらへんは大丈夫だと思うよ。あの二人、誰がいようと平気でイチャイチャするから」

「・・・・・・・・そうか。まぁ、そんなことはさておき、悪いな。この埋め合わせは必ずするから」

「うん、楽しみに待ってるよ!」



「という訳で遊びに来ました!」

キリトとアスナのログハウスでルナはお茶を飲みながら事の顛末を説明していた。それを聞いたキリトとアスナは「べ、別にイチャイチャしてるわけじゃ・・・」や「そ、そうよ。私たちにだって限度と言うものが・・・」などと言い訳を述べていたが、ルナの「傍から見ればそう見えるんだよ」と言われたため反論できなくなった。

「それで、お二人は今日はどうするの?」

「どうするって言われてもなぁ・・・どうする、アスナ?」

「う、う~ん・・・どうしようか?」

キリトに話を振られたアスナは少しばかり考えたが結局何も決まらなかった。そんなアスナを見てルナは溜息を一つ吐くと呆れ気味に口を開いた。

「・・・・・・何も決まってないんなら、ソレイユが「コンッコンッ」・・・お客さんが来たみたいだよ?」

ルナの言葉を遮るようにならされた扉のノックオン。それに気が付いたアスナは「は~い」と返事をしてパタパタと玄関の方に駆け寄り扉を開ける。そこには意外な人物が立っていた。

「お、お久しぶりです、アスナさん」

「あ、えっと、クラインさん?」

意外な人物であるクラインは頭を掻きながら恐る恐るアスナに要件を伝えた。

「あ~、その~、キリトの奴はいますかね?」

「キリト君ですか?中にいますけど・・・よかったら上がってください」

アスナの勧めで家に邪魔することになったクライン。リビングの方に歩いていくとルナと談笑していたキリトがクラインに気が付き、おなじみのあいさつ(?)を口にした。

「よう、クライン。まだ生きてたか」

「いや、その言い方結構失礼な気がするんだけど・・・」

クラインに対するキリトのあいさつ(?)を聞いたルナは頬を掻きながら苦笑いをするが、当のクラインは特に気にした様子も見せず笑っていた。

「それで、いきなりどうしたんだよ?」

キリトの言葉に笑っていた表情を真剣なものに変えると、重々しく口を開いた。

「なぁ、キリの字。レジェンド・クエストって知ってっか?」



クラインの話しを要約すると、二十一層にある廃村に寂れたクエストボードがあり、そこで受注できるのがレジェンド・クエストだという。

「よくそんなの見つかったな」

「ああ、まったくだ。でよぉ、本題はこっからなんだが・・・」

その受注できるレジェンド・クエストは一つだけしかなかったらしい。その一つが【フェニックスの守護】というクエストであるが、クエストが行われる場所しか記載しておらず、詳しいクエスト内容が書かれていなかった。そのため情報屋として有名な『鼠』にクエスト内容を聞き出そうとしたところ、鼠は知ってるけど教えられない。そのクエストは受けないことをお勧めする、といつにないほど真剣な表情で言ったらしい。その後、去り際に念を押すようにレジェンド・クエストには手を出すナ、と言い残した。いつになく重い雰囲気を纏った鼠の言葉に当てられ、レジェンド・クエストに手を出すものは中層低層にはいなかった。

「あのアルゴがそんなことを?」

「ああ、オレも聞いた話だから詳しいことはわからねェが・・・それでキリト・・・そのレジェンド・クエスト、一緒に受けちゃくれねェか?めちゃくちゃなポテンシャルの武器の素材が手に入るらしいンだが、オレたちだけだと不安でよォ・・・」

「・・・・・・」

難しい顔で悩むキリト。それはクラインの依頼を受けるか悩んでいるのではなく、アルゴの言い方に何か引っかかるために悩んでいた。少しの間難しい顔で悩んでいたキリトは改めてクラインに向き直り、首を縦に振った。

「わかった・・・とりあえず、アルゴを呼ぼう。詳しい話が聞きたい」

「新婚なのにすまねェなキリト・・・」

「気にすんなよ・・・アスナ、ルナ、そんなわけだから今日は二人d「私たちも行くよ、キリト君」」

キリトの言葉を遮りアスナの言葉が響いた。その言葉を聞いたキリトは咄嗟に反論した。

「だめだ、何が起こるかわからないんだぞ!」

「だからだよ、人数が多い方が対処にも困らないだろうし・・・それに、私は守られるほど弱くないよ?」

「だけど・・・」

直もアスナに反論しようとしたキリトだったが、いきなり肩に手を置かれたためそちらに目を向けてみると、何やら悟った表情のルナがいた。

「あきらめた方がいいよ・・・こうなったアスナは何を言っても聞かないから・・・」

その瞬間アスナとルナの動向が確定した。



「なるほどナ~、それでオレっちが呼ばれたわけカ・・・」

「ああ、アルゴなら知ってるんだろ・・・レジェンド・クエストのこと」

「まぁナ。だが、教えられないナ。第一人者から他言するなって口止め料までもらってるからナ」

「第一人者?そのレジェンド・クエストをクリアした奴がいるのか?」

キリトの質問にアルゴは片手を掌を上にして指し出し、もう片方の手は人差し指を一本立てている。それを見たキリトはウインドウを開き百コルをアルゴが差し出した掌にのせた。

「まいどアリ!ああ、第一人者・・・あいつはたった一人でそのクエストをクリアしちまったヨ。一緒に連れて行ってもらったこともあったガ、あれは地獄だネ。よくあんなクエストを受けられるものだヨ」

「その第一人者って誰なんだ?」

今度はじゃんけんのパーのごとく手を開いている。それを見たキリトは五百コルをウインドウからオブジェクト化してアルゴに手渡す。受け取ったアルゴは確かに、とうなずいてから口を開いた。

「キー坊やアーちゃん、特にルーちゃんがよく知っている人物だヨ」

「よく知ってる人物って・・・まさか、ソレイユか?」

キリトの言葉にアルゴは首を縦に振った。まさか身近に件のレジェンド・クエストをクリアしているものがいるとは思ってもみなかったキリトたち(クライン含む)は呆然としてしまうが、

「まぁ、ソレイユだし・・・」

というルナの漏らした言葉によって納得してしまう一同だった。



詳しいことはソー君に聞いてくレ、今日やるって言ってたからサと言い残してアルゴは去っていった。それから、準備を整え、風林火山の面々と合流を果たしたキリトたちはレジェンド・クエストが受注できる村へ足を運んでいた。

「にしても、まさかソレイユの奴がレジェンド・クエストをクリアしてるとはなぁ・・・」

クラインは知人が件のクエストをクリアしていることについついぼやいてしまう。

「ソレイユのことだから何か意図があって隠してるんだと思うけど・・・」

自身なさげに言うルナ。恋人であるルナでさえソレイユの行動は読めないところがある。そのためソレイユが何を考えているのか、時々わからなくなる。この中でソレイユの一番近くにいるルナがこうなのだ。他の誰かに分かるわけがない。

「まぁ、行けばわかるだろ」

呑気とも取れる言葉を漏らしたのはやはりというべきかキリトだった。
そんなこんなで村に着き、いざクエストボードがある場所へ行こうとしたとき、キリトの目に全体的に黒い服を着た知人の姿が映った。

「お~い、リクヤ~!」

「ん・・・?おーっす、キリト!」

キリトの声にリクヤと呼ばれたプレイヤーはキリトたちの姿を見つけると駆け寄ってきた。

「なんでこんなところに、って・・・・・まさか・・・」

「ああ、キリトたちと一緒だと思う・・・」

「レジェンド・クエストか・・・」

キリトとリクヤの間のみで話が進んで行く。それに我慢が出来なくなったのか、ルナがおずおずと二人の間に割って入っていった。

「あの、キリト君?そちらの人って?」

「あれ、ルナって会ったことなかったっけ?」

ルナの言葉に反応して疑問を投げかけたのはアスナ。それに対してルナは呆れたように溜息を吐きアスナに心のうちの一部を吐露した。

「あなたが私に無理無茶無謀を押し付けるから、他のプレイヤーとの交流は思うほどないんだよ、私・・・」

ジト目でアスナを見つめるルナにアスナはバツが悪そうに視線をそらす。自覚はあったらしい、いまさらであるが・・・。

「こいつはリクヤ。凛々の自由っていうギルドの一員だ。リクヤ、こいつは血盟騎士団の参謀長のルナだ」

「初めまして、リクヤです。よろしく、えっと、ルナさん・・・」

「呼び捨てでいいですよ、あと敬語もいりません。ルナです。よろしくお願いします、リクヤさん」

「じゃあ、俺の方も敬語はいらないよ」

自己紹介を終え、リクヤを交えて件のクエストボードへ向かうキリトたち。クエストボードの前に立つと受注できるクエストがウインドウに表示された。

【Warning!フェニックスの守護】

【バハムートの挑戦状】

【ヴァナルガンドの決闘】

三つあるクエストの中で【バハムートの挑戦状】と【ヴァナルガンドの決闘】は黒く塗りつぶされ、【フェニックスの守護】のみが受注できる状態となっていた。キリトはリクヤを含めた一同に一度だけ目を向けると、【フェニックスの守護】と名を打たれた文字に触れる。その直後、リクヤやルナ、クラインたちにクエストの詳細が書かれたウインドウが出現した。(クエストボードの前にいる全プレイヤーにクエストの詳細が表示されるという仕組みのため)

【Warning!フェニックスの守護】

≪目的≫ フェニックスを護ること
≪目的地≫ 二十層北部 眠りの渓谷
≪制限時間≫ 無制限
≪特殊条件≫ なし

必要最低限しか記されていなかった。それを見た一同は頭を捻るが、考えても答えは出ないためそのクエストを受注するとクエストの目的地に向かって歩き・・・・・・出そうとしたところで、再びキリトの目が知人の姿を見つけた。

「久しぶりだな、ビート」

「・・・・・・キリトか」

赤いフードつきのコートを羽織っているプレイヤー、ビートはキリトの声に反応すると進路を変えキリトたちの方歩み寄っていく。

「こんにちは、ビート君」

「やぁ、アスナ。それから、えっと・・・」

「はじめまして、ルナです。呼び捨てでいいし、敬語はいらないから」

「俺はリクヤだ。よろしく」

「俺はビート。宜しく。あと、俺も敬語と解らないから」

それぞれ初対面同士自己紹介を終えたところで、キリトがビートにあることを訪ねた。

「ビート、もしかして・・・」

「あぁ、レジェンド・クエストっていうのを受けに来たんだけど・・・キリト、お前もか・・・?」

ビートの問いにキリトは首肯した。その瞬間、キリトたちの大所帯の中にビートが加わることが決定した。



二十層北部 眠りの渓谷

リクヤ、ビートを交えたキリトたち一行はクエストが行われるという場所まで来ていた。現在七十四層までクリアされているため、攻略組である彼らがいまさらこんな場所でやられるはずもなかった。何事もなく目的地の場所に着くと渓谷にある上り坂を進んで行く。中腹部分まで歩いていくと、大きく空けた場所に出た。その開けた場所の奥に再び一本道の上り坂があった。ここで立ち止まっていてもしょうがないので、進むことにした一行はひたすら歩いていく。しばらくすると頂上付近が見えてきた。

「やっと頂上かよォ・・・」

歩き疲れたのか、情けない声を出すクライン。頂上まで登りきると、そこは平面としていて真ん中に巨大な鳥の巣らしきものがあるだけだった。巨大な巣に近づいてみるが、何かが起こる気配はない。

「本当にここでいのか?」

リクヤの言葉に首を傾げる一同。そんなとき、美しく聞くもの全てを魅了するような鳴き声が響いた。キリトたちが空を見上げると、全身は金色と赤色の羽毛があり、翼は輝いていて鷹の如き形の巨大な鳥が飛んでいた。翼を羽ばたかせ威風堂々と空を飛ぶ姿は何者も魅了する美しさがあった。巨大な鳥はキリトたちの目の前にある巣に降り立ち、体を丸めて眠ってしまった。

「・・・・・・なんなんだ?」

キリトが言葉を漏らしたその時、【フェニックスの守護】を受注した全員の目の前にクエスト開始のログが出現した。しかし・・・

「・・・・・・どうすればいいんだ、これ?」

「「「「「・・・・・さぁ?」」」」」

ログが出現したのはいいが何をすればいいのかわからない一同は首をかしげている。あたりを見回しても特に何かが起こる気配はない。わけがわからず時間ばかりが過ぎていき、キリトたちがどうするか迷っているとき、聞きなれた声が聞こえた。

「・・・なんでこんなところにいるんだ?」

不死鳥が眠る巣の中からひょっこり出てきたのは言わずと知れたソレイユその人だった。巣から出ると欠伸をしながらキリトたちの方へと歩み寄っていく。

「・・・初対面の奴がいるなぁ・・・キリト君、説明よろしく」


「あ、ああ。黒服の奴は凛々の自由っていうギルドに所属しているリクヤ、赤いフードつきのコートの奴はβ時代からの知り合いのビートだ」

「そうか。おれはソレイユだ。敬語とかいらないから・・・よろしくなリクヤ君、ビート君」

「ああ。よろしくな、ソレイユ」

「よろしく、ソレイユ」

自己紹介も終わったところでルナがソレイユへと詳細の説明を求めた。

「ねぇ、ソレイユ・・・このクエストっていったい・・・?」

「ああ、そのことなら歩きながら話すからとりあえずいくぞ」

そう言ってキリトたちが来た道を歩いていくソレイユ。それに続くようにキリトたちも歩いていく。



「このクエストは・・・まぁ、簡単に言えばさっきの不死鳥を傷つけないように守ることがクエストの目標だ」

「守るって何からなんだ?」

「その質問にはビート君、もうすぐ見えてくるものが答えさ」

下り坂を折りながらそんなやり取りをしていると中腹の空けた場所まで下りてきていた。先ほどここを通った時には何もなかったはずだったのだが、今回はそうではなかった。そこには、絶望的なまでの光景が広がっていた。

「なんだよ、これ・・・こんなのってアリかよ・・・」

呆然と呟くキリト。

「うそ、うそよ。こんなのって・・・」

口を押えながら目を見開くアスナ。

「さすがに、これは・・・」

難しい表情で呟くルナ。

「まぁ、これがレジェンド・クエスト【フェニックスの守護】さ」

中腹の空けた場所が黒い影によって覆い尽くされている。何匹いるかもわからない、数える気が起きないほど、おびただしい数のMobがそこにはいた。ありえない数のMobを見た一同は愕然とする。

「だ、だけどよォ・・・ここは二十層なんだぜ。今の俺たちならこれくらい・・・」

「残念だな、クライン。あのMobの強さは五十層くらいはあるぜ。因みにあそこにいるのは、一万体だ」

「なっ・・・」

一筋の光を見つけたクラインだったが、すぐさまソレイユによりその希望は打ち砕かれ、さらなる絶望が明らかになった。この渓谷は一本道だったので、脱出するには結晶を使うしかない。

「・・・よく、こんなのできたよな、ソレイユ・・・」

「最初は苦戦したが、何とかなるものだ。で、どうするんだ?やるのか、それともしっぽ巻いて逃げるのか?」

挑発的に言うソレイユに答えたのはクラインだったが声は震えていた。

「ば、馬鹿やろォ!!こ、ここまで来てむざむざ帰るわけねェだろォ!!」

「そう言ってるわりには震えてるぞ」

「こ、これは武者震いってやつだっ!!」

意地を張っているクラインを面白そうに見ているソレイユだったが、突如頭上に電球が閃いた。

「面白いこと考えた。キリト君、リクヤ君、ビート君・・・競争しようぜ。誰が一番倒せるかってな」

「別にそれはいいけど・・・どうやって判定するんだ?」

「ウインドウ開いてクエスト情報ってところで参加者のだれが何体倒したかっていうのがわかるからそれでいいだろ?あと、ハンデとしてそっちは三人の合計で構わないよ」

「いいのか?それじゃ、ソレイユが圧倒的に不利だと思うぜ?」

リクヤの言葉にキリトとビートは頷くが、ソレイユはさらりと言ってのけた。

「このクエストの第一人者はおれだぞ?そのくらいのハンデはちょうどいい」

「・・・後悔するなよ?」

ソレイユの言葉を聞いてやる気を滾らせるリクヤ。リクヤのみならずキリトやビートもやる気を滾らせている。そんなリクヤたちを見つつソレイユはとんでもないこと言ってのけた。

「そういうことはおれに勝ってから言えよ・・・ああ、ちなみに負けたらお前ら女装な」

「「「はぁっ!?」」」

いきなりのソレイユの公開処刑にも等しい宣告に三人は思わず叫んでしまう。

「なんでそうなるんだっ!?」

「罰ゲームは必要だろ?」

キリトが詰め寄っていくが、何を当たり前なことを聞いてるんだ?というような表情でソレイユは答えていく。

「な、なら・・・お前が負けたらお前が女装しろよなっ!!」

「いいよ」

ビートの言葉にソレイユは即座にOKを出す。この瞬間、負けた方が女装をするというルールが有効になった。

「「「(絶対に負けられない!!)」」」

という気持ちがキリト、リクヤ、ビートの中で激しく込み上げていた。



キリトたちがやる気を出している中・・・

「ルナ、アスナ。おまえらは二人で組んでたたかえ」

「う、うん。大丈夫なんだよね?」

いかにも心配しています、といった感じのルナにソレイユは微笑みながら言い聞かせるように頭を撫でながら言った。

「大丈夫だって。俺を信じろ」

「うん・・・」

「ああ、それから・・・クライン、風林火山については特に何も言わん。死なねぇようにルナとアスナと連携を取りながら戦ってくれ」

「お、おう。まかせろっ・・・!」

などというやり取りが行われていた。



そんなこんなをしているとMobたちがキリトたちの方へ一斉に突っ込んでくる。それが戦闘の合図となった。

「んじゃ、みんな死なないように頑張ってね」

それだけ言うとソレイユは長刀を抜き、Mobたちに斬りかかっていく。それに負けじとキリト、リクヤ、ビートも愛剣を抜き放ち斬りかかっていく。少し遅れてルナとアスナ、風林火山の面々がMobたちと衝突する。さて、ここからはそれぞれの戦いを見ていくことにしよう。



ソレイユside

「さてさて、賭けをしている以上、負けるわけにはいかないでしょ」

微笑しながらそうつぶやくと一番近くにいたMobに斬りかかっていく。あまりに数が多いので囲まれてしまうがソレイユは特に気にした様子もなく、Mobたちと相対していく。

「まぁ、今回はほんの少しだけ本気出していきますか・・・」

音もなく、ソレイユの長刀が振るわれた。何の派手さもなく、何の余分もなく、ただ斬るということに特化したその斬撃は、受けたものを呆気なくポリゴン片へと変えていく。また一体、また一体と立て続けにポリゴン片に変えていく。振るわれた長刀は斬光をのこして次々と終わることなき斬撃の嵐としてMobたちを襲っていく。

『ガァァァァァっ!!』

はたしてそれはなんの咆哮だったのだろうか。絶望にうち震えた悲鳴なのかただの虚勢なのか区別をつけるのは難しかった。ただ、ソレイユの圧倒的な実力に恐れおののいていることはわかった。

「やれやれ・・・もう少し難易度が高くてもいい気がするんだけどなぁ・・・まぁ、言ってても始まらないか。さっさと片付けることにしよう。いくぞ、≪鳳炎皇フェニックス・エール≫!」

愛刀に呼びかけ、再び斬撃の嵐を巻き起こす。それから時間にしてわずか五分たらずでソレイユの撃破数は百を越えた。剣の頂に立つ者が振るう剣は衰えることはなかった。それが例え、休暇中であっても。



キリト、リクヤ、ビートside

「はぁぁぁぁっ!!」

リクヤが愛刀オータムリリィにライトエフェクトを纏わせながら大量のMobに突っ込んでいく。両手用大剣の上段ダッシュ技≪アバランシュ≫。早速Mobの一体を撃破するがすぐさま別のMobが抜けた穴を埋めるかの如く群がってくる。≪アバランシュ≫は突進力があり、回避されても距離ができて使用者の体勢を立て直す余裕を与えてくれる優秀な高レベルの剣技であるが、こうも数が多いとそのメリットも役に立たない。スキルディレイによって動けないリクヤに襲い掛かるMobたちだったが、ジェットエンジンのような効果音が響くとポリゴン片となって消えていった。ディレイが解けると先ほど≪ヴォ―パル・ストライク≫を放ったビートに礼を述べると、キリトの声が響いた。

「リクヤ、あんまり一人で無茶するなっ!!」

「そうだぜ。この数なんだ・・・フォローし合いながら戦わねぇと・・・」

ビートの言いたいことが分かったリクヤは一言だけ謝るとオータムリリィのほかにもう一本の大剣キャリバーンを取出し左手に持った。キリトもキリトでエリュシデータとダークリパルサーを装備しているということは本気の証であった。ソレイユと同様に囲まれた三人は背中を向け合い、武器を構える。
Mobたちが一斉に襲い掛かってくる。それを何とかつかず離れずの距離を保ちながら三人は倒していく。リクヤは大剣にライトエフェクトを纏わすと、二本あわせて斬り上げ、コン一秒遅くその二本を別々に振り下ろし、そこから左、右、左と一閃ずつ、さらにクロスに斬り上げまた二本をあわせて振り下ろす。特殊二刀流最上剣技≪グランバースト・クエイク≫の十二連撃がMobを屠っていく。再びディレイによって動きを制限されるが、フォローするようにビートが片手四連撃剣技≪ホリゾンタル・スクエア≫でリクヤに飛びかかってくるMobを倒していく。キリトも二刀流を惜しむことなく使い、二人をフォローしながら戦っていく。実力を同じくする三人が完璧なコンビネーションで戦っていく様は圧巻と言えた。



ルナ&アスナ&風林火山side

迫り来るMobの攻撃を流麗なステップで回避しながらカウンターを急所に当てていくルナ。しかし、いくらカウンターを急所に当てようと、Mobを一撃で狩ることは難しい・・・のだが、ルナが攻撃を与えたMobに一筋の閃光が走っていく。≪閃光≫アスナ。その代名詞とも呼べる攻撃がMobの急所にヒットしポリゴン片と化していく。

ルナが削り、アスナが仕留める。

いつの間にかそのサイクルができており、二人は順調にMobを屠っていく。クラインたち風林火山もルナとアスナのフォローに回り、危なげなく狩っていく。



時間がたつのは早いもので、戦い始めてから五時間が経過した、最後のMobにリクヤが自分を中心に三回転しながら斬り、最後に地面をえぐる技≪桜花爆砕斬≫で止めを差し、【フェニックスの守護】のMobは犠牲なく一掃することができた。

「つ、疲れた・・・」とはリクヤ。

「右に、同じ・・・」と同意したのはビート。

二人が思わず漏らした言葉はここにいる大半の者の心の声だった。ソレイユを除く全員が地面にへこたれている。そんな彼らにソレイユは苦笑いしながらも酷なことを述べた。

「疲れてるのはわかるが、不死鳥の巣に戻るぞ」

「い、今すぐにか・・・!?す、少しは休ませろよォ・・・」

「なんでお前はそんな元気なんだよ・・・」

「慣れてるからな。さっさと行くぞ。報酬、もらえなくなるぞ?」

クラインとキリトのボヤキを意に介さず、上り坂の方へ歩いていく。これだけやって報酬がもらえないとなっては立つ瀬がないので言うとおりにするしかなかった。

ソレイユの後を追い、各々が不死鳥の巣の前に行くと不死鳥は目を覚ました。一度だけソレイユたちに眼を向けると、不死鳥は自分が寝ていた巣に火を放ち、己の身を焼いていく。その中で美しい声で鳴いているその様子はまるで歌を歌っているようであった。疲れを忘れ、耳を澄ますソレイユたち。ルナがソレイユに体を預けるようにもたれ掛かり、歌声に耳を澄ましていく。少しの間奏でられていた鳴き声が不意に途切れ、炎の勢いが収まるとそこにあったのは灰のみであった。その灰の中から一匹の雛鳥が出てくると、すぐさま何処へと飛び去っていく。その直後・・・

【Congratulation!】

というシステムログと入手アイテムの一覧が各個人に表示された。普通ではお目にかかれないレアなアイテムがずらりとウインドウに並んでいた。それを見たキリトたちは唖然とするが、そんなことお構いなしにソレイユは口を開いた。

「これでレジェンド・クエスト【フェニックスの守護】は無事クリアってわけだ」

「そ、そうか・・・だけど、今日はもう帰って寝たい・・・」

「何言ってんだ?まだ、お前らの女装があるだろうが・・・」

「え゛っ!?あ、あれって本気だったのか?」

「当たり前だろ・・・お前ら負けたんだから女装だ」

ちなみに、結果はソレイユが6,021体。キリト、リクヤ、ビートが2,507体。ルナ、アスナ、風林火山が1,472体。ということでソレイユの圧勝という訳である。そのため負けた方が女装というルールはキリト、リクヤ、ビートの三人に適用になった。そして、それを見逃してくれるほど、ソレイユは優しくなかった。



「くっくっくっ・・・あはははははは~~~~~~!や、やべぇよ、これ!わ、笑いが止まらねぇ!!」

隠そうともせず大笑いするソレイユ。他の面々も隠すことなく笑っている。特にクラインなんかは大笑いするがあまり飲み物を気管に入れ、咳き込んでしまうほど笑っていた。なぜこれほどまでに笑いが起こっているのかというと、それはキリト、リクヤ、ビートの服装に原因があった。

あれから、眠りの谷から場所を移し、アルゲートにある小さな酒場で宴会をすることになった。そこで三人の女装姿を披露することになったのだが、当然のごとくキリトたちは拒否。しかし、ソレイユがその程度でやめてくれるはずもなく、無理やり三人を女装させた。ちなみに、服装はというと・・・

黒のワンピースに、白いフリルがついたエプロンドレスを組み合わせ、オーバーニーソックスをはくという伝統的(?)なデザインを取り入れた女性服・・・いわゆるメイド服だった(さらに言えばミニスカート)。頭に被さっているのは白いヘッドドレス・・・・・・・ではなく、なぜかネコ耳カチューシャだった。

だが、それだけでは終わらなかった。メイド服を着るだけではなく、ウイッグをつけたりといろいろ手が込んだことをされ、ソレイユの手によって女装させられた三人の姿はもはや「お前、本当に男か?」と言いたくなるほど美少女ぶりである。(キリトやビートは特に)

「「「なんでこんな服持ってるんだ!?」」」

「~~~~~~ま、まぁ、ぶっちゃけるとさっきオーダーメイドで頼んでおいたものを取ってきた。結構ああいうクエストとか行くから金が有り余っててさ・・・だから、これを機に盛大に遊んでやろうかなっと思って・・・」

「だ、だからって・・・なんで俺たちの女装にそんな本気になるんだよっ!?」

「何事も妥協は良くないだろ?」

短いスカートの裾を抑えながら涙目で異口同音を口にする女装三人組だが、ソレイユは特に気にすることなく理由を述べた。それに対してビートが抗議を申し立てたが、いい笑顔で返されて何も言えなくなってしまう。

その後、宴会は普通に続いたがキリト、リクヤ、ビートの三人は終始顔を真っ赤にしながら酒をちびちび飲んでいるだけだった。



蛇足

「も、もういいだろっ!!」

「そうだぜ。俺は帰ってユカたちに報告しなくちゃいけないからもう帰るぜ・・・」

「俺も、今日は疲れたからゆっくり寝たい・・・」

そういって、酒場から出て行こうとする三人をソレイユは何気なく呼び止めた。

「別にかまわんが・・・なぁ、キリト君、リクヤ君、ビート君・・・」

「「「なんだよ!?」」」

気が立っているのか、ソレイユに呼び止められた三人は本気で気付いてないようであった。

「・・・そのままで帰るのか?」

「「「・・・・・・っ!?」」」

その後、三人が慌てて着替えたのは言うまでもない。



後日談という名の蛇足

とある低層の低レベルダンジョン。そこでは非公式な取引が行われていた。

「8,000!」

「8,500!」

「9,500でどうだ!」

「10,000!!」

「10,000!他にいませんか!?・・・・・・いませんね!では、10,000で落札です!・・・・・・それではフォトデータとコルをトレードしてください」

司会者の言葉通りに二人の男がフォトデータとコルをトレードする。その光景を9,500と叫んだ男は悔しそうに見つめている。二人がトレードを終えると席に戻る。それを確認した司会者から道化師のような高い声が洞窟内に響いた。

「それでは皆様。本日最後の品に参りましょう!!」

司会者の言葉にコルの残高を確認する者や、落札したものを慌てて仕舞い準備に入る者などがいた。

「こちらの写真は一枚10,000からでございます・・・データではなく写真のみとなりますがご了承ください・・・それでは、写真をどうぞ!」

特殊な結晶を通じて壁に映し出されたのは【メイドな男の娘】と名を打たれた一枚の写真。


ミニスカートのメイド服を着た三人が恥ずかしさのあまり涙目になり、必死にスカートの裾を抑えている、という画像であった。


息を呑む参加者たち。会場である洞窟が静まり返った、次の瞬間・・・

ウオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

という怒号が洞窟内に収まらず、アインクラッド全体を揺るがしたとかなんとか・・・


【SAO 裏オークション】


様々なものが取引されるこのオークションだが、この写真の落札額は今までの比にならないくらいのものであった。ちなみに、最後の写真の出展者は誰だかわかっていない。
 
 

 
後書き
メリークリスマス!!・・・には一歩速かったみたいだな・・・
そんなわけで、こんな企画に参加してくださった涙カノ先生と近所の野良犬先生には感謝します!!そしてごめんなさい!!リクヤ君とビート君には不憫な思いをしてもらいました!!だけど、反省はしていないっ!!!!

ソレイユ「いや、しろよ」

リクヤたちをああいうふうに仕上げたきみに言われたくないな!!とりあえず、私の言いたいことはたった一つだ!!
リア充は、ばっく、はっつ、だぁぁぁぁぁぁっ!!!!

ソレイユ「わかった。わかったから」

もういいもん。どうせ今年も一人なんだもん。寂しくないもん。

ソレイユ「ああ、いじけムードに入っちゃった・・・まぁ、こんな字伏のことは放っておいて・・・涙カノ先生、近所の野良犬先生、こんな唐突な企画に参加いただいてありがとうございます。そして、読んでいただいた皆様、低クオリティーな回になり申し訳ありません」

感想、お待ち、して、おりま、す・・・

ソレイユ「泣きながら言うなよ・・・」 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧