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レーヴァティン

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第二十二話 東の島その八

「俺もあんたの話を聞いて笑顔になったしな」
「それでか」
「ああ、後はな」
「東の島でもか」
「人を笑顔にしてくれよ」
 こう英雄に言うのだった。
「是非な」
「わかった、俺は笑顔になることは苦手だが」
「それでもだよな」
「人を笑顔にすることは出来る筈だ」
「今の俺だってな」
「だからだな」
「頑張れ、よ」
「そうさせてもらう」
 こう答えたのだった、そしてだった。 
 英雄はこの夜は濁酒と煎り豆を楽しんだ、そうしてから寝てだった。
 朝起きるとまた甲板に出て外を見た、そうした日々を何日か過ごしてだった。
 東の島の港に入った、船が港に入り停まってからだ。彼は隣にいる船乗りにこうしたことを言った。
「着いたな」
「ああ、今は」
 船乗りは英雄に笑顔で答えた。
「着いたな」
「ようやくという感じだな」
「ああ、何しろ船の板一枚下はな」
 それこそという口調での言葉だった。
「地獄だからな」
「それだけにだな」
「動かす間はな」
「気が抜けないか」
「ああ、死ぬって思うとな」
 それこそというのだ。
「生き返られるにしてもな」
「痛いからな」
「ああ、そうらしいからな」
 だからだというのだ。
「だからな」
「死なないに限るな」
「本当にな」
 英雄のその言葉に頷いて返した。
「俺もそう思うぜ、死なないに限るな」
「やはりそうだな」
「若しもだぜ」
 深刻な顔になってだ、船乗りは英雄に話した。
「この船が落ちたらな」
「乗っている人間は全員だな」
「俺達もな」
「それは当然だな」
「ああ、全員あの世行きだぜ」
「誰かに生き返らせてもらうまではか」
「そうなるぜ、魂さえ残っていたらな」
 例え肉体が完全に崩壊していてもというのだ、この世界での復活の術はそこまで進んでいるのだ。
「寿命まで生きられるけれどな」
「そして寿命になればだな」
「寿命はその人それぞれでも大体長いぜ」
 そうだとだ、船乗りは遥かな空を話した。青空が何処までも広がっている。
「七十とか八十とかな」
「そうか」
「けれどな、あくまで魂があればだからな」
「魂まで消されるとか」
「ああ、転生するまではな」
 その消された魂も不滅ではない、輪廻の中では解脱するまでその魂は次の生に向かうのだ。
「生き返られないぜ」
「転生まではか」
「ああ、寿命になるか魂が消えたらな」
「転生か」
「そうなるんだよ」
 こちらの世界ではそうだというのだ。
「その分死んでもって思えるけれどな」
「しかし死ぬと痛い」
「それは嫌だな」 
 どうしてもとだ、船乗りは英雄に話した。
「誰でもな」
「そうだな、俺もだ」
 英雄もそうだと答えた。 
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