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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第六章 Perfect Breaker
  位置転換


これまでのあらすじ

エスティアを攻略し終えた「EARTH」
同時に夜も明け、対セルトマン戦も三日目に突入する。


これからだと意思を新たに固める蒔風。

ここからだと笑みを隠しきれないセルトマン。



そして、今新たなサーヴァントが召喚されようとしている・・・・・・

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新たなサーヴァントの召喚反応のキャッチ。
大聖杯を監視・・・というか、眺めていた門矢士からの連絡が入った。

どうやら召喚の魔法陣が、新たに四つ確認されたらしい。


「お、きたか・・・・・」

「召喚時の光はどうあっても隠蔽できないらしいな」

「あれだけのことをしているのですから、そこで隠匿されたらもう手も足も出ませんよ・・・・」

ゴキゴキと首を鳴らしながら、蒔風が外に出る。
万全とは言い難いが、元から「今日はちょっと調子が悪い日」と思えばいい。

それに並んで、ほぼ万全のショウとアリスも出る。



いわば、「EARTH」の3トップだ。
対して、大聖杯から出てきたのはセルトマンを中心にオフィナとフォン。

二つの建物の間隔は800メートル程。
まだ相手は指先ほどの大きさにしか見えないが、その敵を確認して蒔風が周囲に気を張る。


「サーヴァントの気配を確かに四騎感じるな」

「五騎目は翼刀さんのお父さんですから、空きは二枠・・・ですか」

「どのクラスかわかるか?蒔風」


セルトマン側が歩みを止め、それに合わせて蒔風たちも止まる。

目を閉じて腕を組む蒔風が、サーヴァントがいることを察知しながらもその位置と詳細を読めないことを伝えた。


「クラス名とかは解らないな。現界している、ってことくらい」

「そうですか・・・・」

「まあしゃぁないわな・・・・蒔風」

「あん?」

「一騎目がわかったぞ」


目を閉じてなおも探知しようとする蒔風だが、それは本来彼の分野ではない。
それでも先陣を切る意味で来た以上はできるだけ読もうとしているのだろうが、ショウの言葉に片目を開く。

ショウはというと、少し先にコツコツと歩きながら魔導八天の一本を引き抜いて肩に担ぐ。


「セイバーだ」

ギィンッッ!!!

そして、一言告げるとともに剣が火花を散らした。
狙われたのは、ショウの首。それを剣舞のように振った魔導八天で防いだのだ。



「来たか・・・おい蒔風、今の見えたか?」

「見えたけど・・・」

「あれ、誰ですか?」

ショウへの一撃を見舞った男。
来ている服は、いかにも時代を感じる物だ。


洋服ではない。和服に位置する物だ。
しかし、それはおおよそ剣士が着るような鎧ではなく、あくまでも服と呼べる範疇の物。

いうなれば――――平安の士官、のような。


「おぉ・・・・おりゃお前らの知らない相手だ」

「だれだ?」


疑問を浮かべる蒔風とアリスを前に、ショウが面白そうに笑う。
肩を回してほぐし、剣の切っ先をクイ、と男に軽く向けた。


「名を名乗れ、セイバー!!」

その言葉に、セイバーが抜刀していた剣を腰の鞘に収める。
そして手を添え、堂々とその真名を名乗り上げた。


「官位を正八位下。官職は左衛門大志左官。神奈備命が随身、柳也」

「・・・・だれ?」

「コイツは・・・・ああ、残念だが説明の時間はないらしい」

「え~・・・・まあそうか――――ッフン!!!」


残念そうに肩を竦める蒔風だが、左に向けての右後ろ回し蹴りがその態度を掻き消した。


蹴り飛ばしたのは、剣の刃だ。
紫のフリーエナジーを纏ったそれだけが飛来し、蒔風の右足に蹴りと増され、その先の地面を抉り飛ばしてからその柄に戻っていく。


「今度こそ!!絶対に負けない悪の力、ってのを見せてやるぜ」

「こりねぇのな、ネガタロスよ」


その先にいたのは、仮面ライダーネガ電王。
ショウと背中合わせになるように、蒔風がその方向へと向き直る。


で、あるならば


「次は・・・私ですよね?誰が来るんでしょう?」

ゴ―――――――ゥッッ!!!

「ッ!!」


で、あるならば、次の標的はアリスであろう。
彼女に向けられた攻撃は、拳であった。

それもただの拳ではなく、籠手に埋め込まれたリボルバーが高速回転しての威力を加えられた一撃である。


しかし、それを真正面から受け止めてアリスは優雅にほほ笑んだ。


「クイントさん、ですね?」

「娘がお世話に・・・なってますっ!!!」

バシン!!と掴まれた拳を引き離し、クイントがアリスから距離を取って拳を構える。



さて、ここで三騎がそろったわけである。
クラスはそれぞれセイバー、ライダー、ブレイカーと言ったところか。

残りは一騎。
そのサーヴァントは

「VAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAARRRRRRRRRRRRRRRRR!!!!」



「な」「に!?」


地面を砕いて、下から襲い掛かる暴力。
その咆哮、攻撃性において、バーサーカーのほかにありえない。


その巨体は装甲に包まれ、その巨体は怪物のそれと相違ない。



「ウィツァルネミテア!?ってことはこれ・・・・」

「ハクオロのじゃないな・・・・分離体。分身の方か!!」

大地からいきなり出現した巨腕によって、三方散り散りに回避する三人。
また、それを三騎のサーヴァントも追って飛び出していく。


そして、その場に残されてしまったウィツァルネミテア(分身)は、どれを追うかと周囲を見渡して、そして顔面に飛来した炎の一撃に少し身じろぐ。
しかし目に向かっての一撃が故に身じろいだだけであり、さしたるダメージはないようだ。

その方向を見ると、ドラグレッダーがとぐろを巻いてそこにいた。
背には龍騎と、紅へと姿を変えた響鬼の姿が。


「ヒビキさん・・・こっち見ましたが?」

「やっぱデカい相手は気を引かせてからっしょ」

「いやいやいや。そうだとしてもあれ、なんかキレてません?」

「面白いことを言うなぁ。バーサーカーって最初からブチギレているようなモノだろ?」

「そうですけど・・・・そうですけどぉ!!」


ただえさえ高出力のウィツァルネミテア。
それが狂化でパワーアップされているのだ。あまり暴れさせない方が・・・・・

「でもほら。ハクオロさんが来るまで、俺らで削った方がいいっしょ?」

「最初からそのつもり!?うわオレ騙されたァ!?」

「さぁ~て、鍛えた成果を見せていこう!!」

シュッ、と。気合を込める意味合いで指を切る響鬼。
一体何と言われて城戸はヒビキに連れ出されたのだろうか・・・・・





一方、三方に散った三人の内、ショウは柳也とにらみ合いながら敷地内を駆けていた。
だがその視線が一瞬、チラリと上空へと向けられると、そこで足を止めて向き合う。

「よう。確かあんた、国崎往人のご先祖様だったよな?」

「国崎・・・・・ああ、そうらしいな」


対するセイバー・柳也という男は、ショウの言うとおり国崎往人の先祖に当たる人物だ。

かつて彼が関わった翼人。
その翼人の呪いを自分では解けないことを悟り、それを子孫に賭けた男。

つまり国崎往人の原点である男。


「教えてくれ。あの呪いは、解けたのか?」

「さて、どうかな?俺はその子を殺そうとした人間だからなァ?」


柳也は自身のであった翼人・神奈備命に掛けられた呪いは解除されたのかと聞く。
だがそれを皮肉を込めながらも悪人顔をして答えるショウ。

どうやら、彼に真面目に答えるつもりはまるでないらしい。


「てか、セルトマンに召喚されたときに知らされなかったか?」

「自分で確認したかったんだよ」

どうやら彼からしても、セルトマンは信用ならないらしい。
イラついた声と態度、そして表情でショウの言葉に答えながら腰の剣に手をかける。

どうやら無理矢理にでも聞く、という考えらしい。

それを見て、ショウは剣を消して上空を指さす。
そして同時に叫んだ。

「確認したいなら・・・・それこそしっかり、自分の目と耳で確認しとけ!!」

瞬間、柳也の背筋を悪寒が襲い掛かった。
戦場で培った直感に、命に係わる脅威を引っ掛かったのだ。

即座にその場を跳び退いて回避する柳也。
すると先ほどまでたっていた位置に、荒れ狂う暴風が襲い掛かってきた。


暴風、とは言うがその程度の物ではない。
ただそれしか表現が追い付かないから暴風というだけのこと。

もしもこれを喰らえば、軽く五体がバラバラに吹き飛ぶほどの威力がある。


「これは・・・・・」

そう、それは暴風というよりは衝撃その物。
放たれてきた衝撃波というその攻撃に、彼は見覚えがあった。


「翼人!!!」

攻撃が飛来して来た方向。
上空を見上げると、そこにいたのは純白の翼。

遥か祖先から呪いと共に転生し、受け継ぎ、そして現代において1000年の呪いから解放された少女。
蘇った純白の翼は、1000年ぶりに想い人と再会する。


「翼が勝手に・・・あの、すみません、急に攻撃して」

にはは、と笑う観鈴。隣には、往人も一緒にいる。

どうやら翼が荒ぶり、いうなれば興奮状態になっての攻撃だったらしい。
それを詫び、そして一礼


「この翼が言ってる・・・・あなたに、ありがとう、って」

目の前に現れた少女に、彼に対する感情はない。

だが、その翼が覚えている。
記憶になくとも、魂に刻まれた思いは永遠。


(みこと)の・・・生まれ変わりか?」

「魂の質はその通り。神尾観鈴は、呪いによって苦しみの輪廻を彷徨っていた神奈備命(かんなびのみこと)の生まれ変わりだ。故の同質の翼。だが」

「ああ、彼女は命じゃなくて、神尾観鈴ってことだろ」


ショウの言葉に納得しながら、ホゥとため息をつく柳也。
そして、うつむいてボロボロと涙をこぼす。


「よかった・・・・本当に・・・・」

「・・・・・」


その様子を静かに見る観鈴。
ショウから自分の病気――――呪いに関しての話を過去に聞いたことはある。

その人物がまさか自分の前に現れることなんかないと思っていたが、世の中何が起こるかわからないものだ。


「オイテメェ!!」

「俺か!?てかあんた、自分の子孫に第一声がそれとかどうよ!?」

「うっせぇガキ。俺は先祖だぞ。敬えよコラ」

さっきまでの態度はとは一変し、チンピラのような態度になる柳也。
どうやら、これが彼の本来の姿らしい。


「にしてもほっせーな!!そんなんでほんとに呪いといたのか?お前が!?」

「・・・・・俺がしたのは解放だけだ。本当の意味で解放したのは、そのにいる男ともう一人の男だ」

「お、あんたもだったか。感謝する。で、俺の子孫様は何してんだァ?」

「お、おれだって命かけたんだぞ!?身体張りまくりだぞ!?」

「そうだよ!!往人さんはカラスになってまで助けてくれたんだよ!!」

「え、なに?」


観鈴の一言から、なんだかよくわからない空気になった。

それを眺めて呆れるショウだが、とりあえず柳也の相手は彼らに任せればいいと、別の相手を見据える。


「さて・・・・いくか」




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「おいネガタロス。お前俺に勝つ気?」

「当然だ。俺はもう負けねぇ!!」

タンッ、と着地し、ネガ電王と向き合う蒔風。
芝生の上で、蒔風が首をかしげる。

油断しているわけではないが、ネガ電王の相手ならば蒔風にとって苦ではない。

(そりゃぁ楽勝、とはいかない相手だけどな。仮にネガデンライナー持ち出されても勝つことは不可能ではないはず・・・・・)

確かにかつて電王を圧倒したネガ電王ではあるが、再勝負すれば今度はそれも逆転するだろう。
ネガ電王は、特別強力なライダーではないのだ。

にもかかわらず、この自信はどこから来るのか。
それだけがただ不気味である。


「俺は確かに、電王とキバに負けちまった。だがな、悪には悪の強みってのがある。前回はそれが出来ねぇ状況だったか、今度はちげぇ!!!」

ゴゥン!!!!


「なに!?」

「いくらでもキタねェ手を使う。どんな手段でも使ってみせる。それが、悪の生きる道!!」

何かの起動音。
同時に、蒔風とネガタロスを中心に、地面に円形の模様が浮き上がる。

それは、他でも同様の事態が起こっていた。
今の彼らの位置は、「EARTH」ビル大聖杯を中心に、逆三角形になるように三方に散っている状態。


左上に観鈴たち。
右上に蒔風。
下には、アリスたちだ。


中心からその三点に向かって地面を光が走り、その先で彼らを中心に円が描かれる。

その円の模様は、そう、まるで―――――まるでメダルがひっくり返るかのような―――――!!!



「まさ・・・か!?」

三地点の円が、地面を切り取って浮遊する。
そしてゆっくりとひっくり返り、別地点の土地とひっくり返って入れ替える・・・・!!!




「これは!?」

「「EARTH」敷地内の座標が乱れています・・・・・こ、これは」

「まさか・・・・あいつか!!!」

「ガラ!!!」


「EARTH」(仮)から飛び出し、映司が叫ぶ。

叫んだ先は、「EARTH」ビル。

そこに、巨大な塔が建築されていた。
とはいえ、外からは一切見えない。どうやらガラの塔城は、「EARTH」ビル内部に組み込まれてしまったらしい。


錬金術師ガラ。
かつての王の元、生物の力を凝縮して封じ込め、コアメダルを作り出した錬金術師の一団。
その中で、もっとも強力なメダルを創造しえうる者。

そして以前に復活し、地上を消滅させ新たな世界を創造しようとした錬金術師。



「映司、あいつ知ってんのか?!」

「前に戦った!!あのメダル、別の場所と入れ替わるんだ!!」

「データにありました。当時も三か所が入れ替わり、それぞれがドイツ、江戸、恐竜時代と入れ替わったようです」

「江戸!?恐竜!?」

「ですが、今回は時間の乱れはありません。あくまでも現代間の入れ替わりでしょうが、入れ替わりの範囲がまちまちですね」


「EARTH」(仮)内では、その入れ替わり先の座標を物凄い勢いで割り出していく。
そうして数秒、朱里たちの声が通信機を通じて全員に伝わっていく。


「蒔風さんの半径八メートル!!東京都内との入れ替わりを確認!!」

「観鈴さんたちの中心から二十メートルの範囲で、冬木市との入れ代わりを確認!!」

入れ替わり先は、簡単に絞り込めた。
だがその細部までは解らないらしく、そこで報告は途切れていく。


そして最後の一つは

「アリスさんを中心に・・・・・こ、ここは!?」

「アリスさんを中心に、ひゃ、百メートルの範囲で入れ替わりが発生!!」

「なに!?」

「この建物が範囲内に取り込まれています!!急いで脱出を!!!」


アリスを中心とした範囲のみが、以上に広い。
そして、アリスは「EARTH」ビルを中心とした逆三角形の下部にいた。

つまり、「EARTH」(仮)に近い方だ。


メダルの入れ替わりは、すでにこの建物をも範囲に収めている――――!!!



「理樹、外へ出ろ」

「く、クラウドさんは!?」

「俺と一刀はこっちに残る。おそらく向こうにもサーヴァントはいずれ召喚されるだろう。その時、ここを守る者がいなくてはならない」


そう言って、理樹を強引に押し出して範囲外へと避難させるクラウド。

飛び出していく理樹をはじめとした数名のメンバー。
だがそれと入れ替わるように、「EARTH」ビル屋上近くの部屋から一人の男が飛び出してきた――――!!!


「あ、あれは・・・・」

「ブレイカー――――鉄翔剣!!」

「親父か!!!」


理樹と共に避難しようとしていた翼刀だが、踵を返して入れ替わりの範囲内へと飛び込んでいってしまう。
それを追って唯子も踏み込み、それならばとクラウドは一刀を外に放り投げた。


「う、うぇえ!?」

「そっちのことは、任せた」

「や、やることが大雑把だぁァァアアア!!?」

バリーン!!と勢いよく窓ガラスを吹き飛ばし、一刀が外へと飛び出していく。


地面を転がって着地し、パッパッと膝を払って立ち上がる一刀。
そのもとへと理樹と映司が走ってきて、「EARTH」ビル屋上を見上げる。


「一刀君、大丈夫か?」

「ええまあ・・・・でも、翼刀の親父さんが出ていくなんてな」

「多分、あの中にガラの城があるんです。だから、そっちに守りを任せたんじゃないかと」

「今度は戦力の分散ってことか・・・・まずいぜ。相手はまだサーヴァントの枠が一つある」

「しかも、オフィナとフォンもいるんだよね?」


そう言って、ビルの方向へと視線を移す三人。

地形の入れ替わりは、ガラの獲得した欲望のメダル・セルメダルによって実行される。
しかし今回は、アルカンシェル同様召喚時に準備はほぼ整っていたのだろう。もしくは、大聖杯の魔力を代用したかだ。

そしてそのエネルギーを溜める天秤を破壊することで、入れ替わりを戻すことができる。
地形が入れ替わっただけなので、戻ろうと思えば陸路で帰って来れることは帰って来れるのだが。


「このまま放置するわけにもいかないし、戻るなら早い方がいい」

「さて・・・・じゃあ行きますか!!」


そうして、三人は数名のメンバーを連れてビルへと向かう。
標的は、ビル内部のガラだ―――――



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東京某所

かなり狭い範囲で入れ替わりをした蒔風は、足元を見てから周囲を見渡す。
入れ替わり範囲は半径八メートル。


蒔風が立つのは、淵から二メートルの位置。
二人の中心から半径二メートルなので、ネガ電王までの距離は12メートルだ。


その直径16メートルの範囲だけ、コンクリートが芝生に代わっている。

その位置は、車線のど真ん中。
片側二車線の通りで、中央分離帯のブロックがない道路だ。


この位置ならば、巻き込まれた車もないはずだから、向こうに行ってしまったものはいないはずだ。
それにひとまず安心し、そして周囲に目を向けて唖然とする。


「・・・・・・マジか」

そこにあったのは雑居ビル群。
ここは大通り、というほどメインの街並みではないらしいが、それでも首都東京。人の往来は比較にならないほどある。

今は明け方ということもあり、まだ人の往来は数えられるほどだ。
その数名はこちらを指さし、野次馬根性でパシャパシャと携帯をこちらに向けていた。


それを見たうえで、怒りを込めた視線でネガ電王へと向き直る蒔風。

衆目に晒されているからではない。
この位置との入れ代わりが偶然だとしても、もしこの相手が想像通りの手段を使ってくるとすれば、それは必ずしも許されるものではないからだ。


「一般人を巻き込む気か―――――!!!!」

蒔風の言葉に、フンとあざ笑うかのように鼻を鳴らすネガ電王。

そこに、ネガ電王の背後から一台の乗用車が走ってきた。
今は奇跡的に交通量は少ないようだが、それでも車は来る。しかも、ここは車道のど真ん中だ。

クラクションを盛大に鳴らしながら、しかしブレーキが間に合わない車。
その車を、ネガ電王はアックスモードのネガデンガッシャーで、掬い上げるように弾き飛ばした。


「――――――!!!!」

回転し、部品をバラバラと撒き散らしながら弾かれた車は、縦回転をしながら蒔風の上空を通過、背中の延長線上に鼻面からひっくりかえって落下。一瞬にして爆発炎上した。


「テメェ・・・・・」

街中に突如として発生する爆発と炎。
そしてそれを、野次馬たちの悲鳴と怒号がかき消していく。

何もないうちは呑気な顔をし、興味本位で近づいてきていた彼らもようやっと事態の異常性に気付いたらしい。

蜘蛛の子を散らしたように、とはまさによく言ったものだ。
まさしくその通りに、人々は思うままに駆け出し、その場から離れていこうとする。


対して、蒔風は車の方にはちらりとも振り返らず、その怒りの形相をネガ電王へと向けたままそれ以上の言葉を失っていた。


「ハッハッハッハ!!悪の犠牲になるのは、必ずしもヒーローってわけじゃないんだぜ?ヒーローさんよ。いつもその被害にあうのは、大概が民衆ってことを忘れてんじゃねぇよ」

「迷惑かける側が偉そうに言ってんじゃねぇ!!!」


怒声を吐きつけ、駆けていく蒔風。

相手は明確な「悪」
もはや、手加減の必要はない。


ぶつかり合う矜持。

悪を叫ぶ怪人と、善であれと動く翼人の戦いが、ここに始まった。



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「えぇい、キサマラ何をしとるか!!」

「何って・・・彼にこれを返却するにきまっているでしょう!?」

「ならん!!まだ我らが」

「あんなデカい戦艦出して落されてそりゃないんじゃ―――――」

時空管理局のある一室。
そこから「何か」を持ちだそうとしている数名の局員を、ガタイのある―――言い換えればガタイしかない―――凄そうな勲章を幾つも付けた高官が止めた。

すると、その前に彼らのリーダー格であるのか。一人の青年が前に出てきた。


「あー、ちょっとすまんね」

「む・・・貴様か、これを仕組んだのは!!」

「仕組んだとは人聞きが悪い。俺は言われてた通り「本当にヤバい状況になった」から、あの人にこれをお返ししようとしてんですよ」

「それを決めるのは貴様ではなく―――――」

無意味な口論。
だが彼らは、時が一刻を争う事態だとはまだわかっていないのだ。

そして


「うっせぇ!!敵は今街のど真ん中に出てんだ!!椅子に座ってるだけの豚が偉そうな事ばっか言ってんじゃねェぞ!!」

「な――――ブゲッ!?」

青年は高官を殴り飛ばした。

そして唖然とするほかの局員の肩を叩き、さて行くかと荷物の一つを抱える。

「さぁて、これでクビになったら「EARTH」にでも入れてもらいますかねぇ」



ヘリポートまでそれを運び、相棒―――アルトが準備していた機に乗り込み、目的地へを告げる青年。

「大丈夫でしたか?」

「なに、気にすんな。行くぜ、アルト!!」

「はい!!ヴァイス先輩!!」




to be continued
 
 

 
後書き

さて、新たなサーヴァントは!!!


セイバー:柳也

ライダー:ネガタロス(仮面ライダーネガ電王)

ブレイカー:クイント・ナカジマ

バーサーカー:ウィツァルネミテア(分身)

キャスター:ガラ

ブレイカー:鉄翔剣

空き一枠


となっています。


実力的に見れば観鈴もアリスも蒔風も、三人とも対峙している相手は強敵というわけでもありません。
しかし、対戦場所が変わることでそれはどう変わっていくのでしょうか――――?



入れ替わりの土地としては


「EARTH」敷地内
ウィツァルネミテアVS龍騎・響鬼

冬木市行き
柳也VS観鈴、往人

東京某所
ネガ電王VS蒔風

???
鉄翔剣、クイント・ナカジマVSクラウド、翼刀、唯子、アリス



「EARTH」敷地内にはほかに一刀、理樹、映司が残ってますね。
後は誰がいるんだろうなー・・・・

向こう(???の方)にもまだ何人か残ってそうですし、考えるの大変だこりゃ


逆にこっち側に来てしまったのはいるのかなぁ?


とりあえず蒔風側(東京某所)からはなし。
あと二か所が謎ですね。


さて、ネガ電王は格上ともいえる蒔風相手にどう戦うのか。

そしてほとんど神。同一存在であるハクオロでなければ倒せないウィツァルネミテアに対し、龍騎と響鬼はどうするのか!!

響鬼
「基本的には時間稼ぎ。それまでに体力とか削れたら・・・・いいなと思う!!」

龍騎
「おぉう・・・・きっと魔化魍とか言われて一緒に出てきたらこの始末だよ!!!」

響鬼
「似たようなもんじゃない?」

ハクオロ・龍騎
「いやいや」




翼刀
「次回。俺達が入れ替えられた先。こ、ここはまさか―――――!!!」

ではまた次回 
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