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とある3年4組の卑怯者

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28 転校生

 
前書き
 第10話以降、しばらく登場がなかったみどりちゃんを主役にしたエピソードです。そして、「ちびまる子ちゃん」のスピンオフ作品「永沢君」に登場した藤木に好意を寄せるあの人を登場させたいと思います。

 なおみどりちゃんが通う学校名は静岡市清水区にある清水江尻小学校を元にしました。
 みどりちゃんによる藤木との回想はアニメ「ちびまる子ちゃん」1期107話「学校のスケート教室」の巻(2期305話でリメイク放送)、109話「みどりちゃんのバレンタインデー」の巻から引用しています。 

 
 清水市の江尻小学校の3年3組の教室。そこに女子児童が一人で寂しそうに自分の席で椅子に座り、肘を机に付いていた。彼女の名は吉川みどりという。
 みどりは学校ではいつも孤独だった。なぜなら友達がいないからだ。なぜ友達ができないのか彼女自身にはわからなかった。遠足の班決めでは彼女に声をかけてくれる人はおらず、結局最後に一人足りない班に入れてもらうことが当たり前だった。理科の実験・観察の班や社会科実習の班では何かと積極的なことができない。失敗やうまく行かないことがあるとすぐに泣いてしまうため、皆を困らせることがお決まりだった。休み時間でも彼女を遊びに誘うものはいない。
 
 家に帰っても友達がいないので特に遊びに行く事もなかった。たまに自分の祖父の知り合いの孫である「まる子」ことさくらももこの家に行く程度である。みどりにとってまる子は自分と同い年なので彼女が唯一の友達であった。まる子には学校で友達がいてみどりにとっては羨ましかった。いつも一緒に遊ぶことが多いという親友、穂波たまえ、そしてみどりが好意をよせる藤木茂など。以前、まる子の誕生日で誕生会に誘われた時、まる子の学校の友達に会ったが、いろいろ個性のある人だった。ある日、学校のスケート教室でまる子の通う小学校と一緒に滑った事がある。まる子の通う学校にはいろいろ魅力的な人がいてまる子が羨ましかった。その中にはスケートを得意にしている一人の男子がいた。みどりは自分が転んでしまいそうだった所をその男子に助けてもらった。その男子が藤木であった。あの日からその藤木という男子が好きになっていた。そしてまる子に協力してもらい、藤木にバレンタインデーにチョコレートとマフラーをあげることに成功した。
 
(はあ~、まる子さんの通う学校に転校したい・・・。そうすればいつでもまる子さんや藤木さんに会えるのに・・・)
 みどりは心の中でそう考えることもあった。確かにまる子や藤木が通う学校はみどりにとって十人十色な児童が沢山いて楽しく感じるのかもしれない。しかし、そんな都合よく転校できるわけがなかった。
 
 ある日、いつものようにみどりは家を出て学校へ向かった。
(まる子さんの家に遊びに行こうかな・・・。もしかしたら藤木さんにも会えるかもしれないし・・・)
 みどりはまる子に会うとともに藤木にも会えるのではないかと期待していた。まる子とは時々彼女の家に遊びに行ってはいたものの、藤木とは共にデパートへ行って以降、面会はない。

 みどりは学校に着いた。みどりの席は教室の一番後ろにあった。隣は予備として置いてある机と椅子で空席だった。
(この隣にまる子さんか藤木さんがいればいいのに・・・)
 みどりはそんなことを考える時もあった。始業の鐘がなる。そして、みどりのクラスの担任の男性教師、賢島(かしこじま)先生が教室に入ってきた。
 クラスの児童全員が起立をして礼をする。
「おはようございます!」
 全員着席すると、賢島先生が早速喋る。
「今日は早速だが、転校生を紹介する。入ってきていいぞ」
 先生に言われてその転校生が入ってくる。女子だった。その女子は髪を肩まで降ろしており、服装は白のブラウスに濃紺のジャンパースカートの重ね着だった。みどりも、他のクラスメイトも驚くくらい の美少女だった。女子は黒板に自分の名前を書き、挨拶と自己紹介をする。
「初めまして。山梨県から来ました堀こずえです。よろしくお願いします」
 堀こずえという女子は自己紹介をすると丁寧にお辞儀をした。
「それじゃあ、堀さんはあの机が空いているからそこを君の席にしよう。堀さんがランドセルと帽子をロッカーにしまったら皆、朝礼で校庭に行くぞ」
「はい!」
 皆が挨拶をした。
(こ、こんなきれいな人が私の隣の席に!?)
 みどりは心臓の鼓動が強く響くのを感じた。堀がランドセルを机に置き、教材を机の中にしまう。
「あ、あの・・・」
 みどりは緊張しながら堀に話しかけた。
「え?」
「私、吉川みどりって言います。宜しくお願い致します・・・」
「こちらこそよろしくね、吉川さん」
 堀は笑顔で返した。
(ほ、堀さんが私に笑顔を・・・)
 みどりは思わず興奮した。みどりは堀と友達になりたいと思った。

 休み時間、男女問わずクラスメイトたちが堀の元に集まった。
「なあ、堀!みんなでドッジボールやろうよ!」
「堀さんの歓迎会としてみんなでやろうと思うんだ!」
 堀も喜んで答える。
「いいわね、行きましょう!」
 みどりはいきなり堀が遠くに行ってしまうような気がした。しかし、堀がみどりに話しかける。
「あ、吉川さんも行こう!」
「え、いいんですか・・・?」
「堀、やめとけよ。こいつは負けるとすぐ泣くからやりにくいぜ」
 クラスの男子が堀に忠告した。
「う・・・」
 みどりは堀も皆に同調して自分を仲間外れにしてしまうのではないかと不安になった。
「でもクラスみんなでやるんだから仲間はずれがいちゃ可哀想よ。みんなでやろうよ!」
 堀がみどりも入れるように懇願した。
「堀さんが言うならわかったわよ・・・」
 クラスの女子が承諾する。こうしてみどりもドッジボールをやってもらうことになった。
「あの、堀さん、ありがとうございます・・・」
「いいのよ。負けても楽しめばいいのよ」
「は、はい・・・」
 負けず嫌いのみどりには心を落ち着かせる言葉になった。そしてみどりは堀に迷惑かけない為にたとえボールを当てられても、負けても泣かないようにしようと決意して校庭に向かった。 
 

 
後書き
次回:「避球(ドッジボール)
 クラスの皆でドッジボールで遊ぶことになったみどりと堀。みどりは迷惑をかけないために自分自身の決意を貫くことができるのか・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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