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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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92部分:第九話 陳宮、呂布と会うのことその二


第九話 陳宮、呂布と会うのことその二

「何で俺もここにいるんだ?」
「ああ、山崎の旦那」
「そういえば旦那はどうしてここにいるんでやんすか?」
「気付いたらいたんだよ」
 彼にしても身に覚えのないことだった。
「それでなんだよ、キムとジョンにいきなり出会ってな」
「袋にされてか」
「修行地獄に入れられたでやんすね」
「おい、逃げられねえのか?」
 山崎は大きな丸太を両肩に一本ずつ担ぎながら二人に問うた。
「あの二人からよ」
「逃げられたら俺達とっくにそうしてるんだけれどな」
「そう思わないでやんすか?」
「じゃあ倒すってのはどうなんだよ」
「あの旦那達をか?」
「山賊四百人を二人で一瞬で倒すんでやんすよ」
 無駄に戦闘力は高い二人であった。
「あのルガールの旦那でもな」
「一人で倒せそうでやんすよ」
「ちっ、俺でも負けるってのかよ」
「歯向かった山賊は何人いても返り討ちだからな」
「無駄な努力でやんす」
「じゃあ何かよ。俺達はこの異境の地でずっと勤労奉仕と修行かよ」
 まさに地獄である。
「糞っ、どういうことなんだよこれはよ」
「言っても仕方ないからな」
「どうしようもないでやんす」
 二人は既に全てを諦めている。
「戦いになったら最前線に立つらしいしな」
「旦那達が自ら申し出たでやんすよ」
「気晴らしはその時だけかよ」
 三人も戦いは嫌いではない。だからこれははっきりと言えば有り難いことであった。しかしそれでも三人の愚痴は続くのであった。
「しかし。普段はこれかよ」
「ああ、起きて寝るまでこうして勤労奉仕と」
「修行でやんすよ」
「逃げたいんだけれどな」
 山崎の本音である。
「俺はもうこんな生活は嫌なんだよ」
「俺達元の世界でもこうして生きているんだけれどな」
「修行地獄の無限ループでやんすよ」
「無限かよ」
「そうだよ。毎日夢にも出るんだぜ」
「何時まで経っても終わらないでやんすよ」
 二人は完全に項垂れていた。そんな彼等だった。
 そしてだ。その彼等にだ。キムとジョンの声が来た。
「そこ、手を休めるな!」
「さぼってはいけませんよ!」
 こう言われるのだった。
「仕事はまだまだある!」
「そして修行もですよ!」
 二人は自ら熱心に動きながら監督をしている。見事なプレイングマネージャーである。しかも一人ではなく二人もいるのである。
「ちっ、観念するしかないのかよ」
「もう全てを諦めてな」
「この世界で生きていくでやんす」
 こんな調子だった。三人にとってはこの世界も地獄であった。
 荊州に一人の少女がいた。名前を陳宮という。エメラルドグリーンの長い髪を左右でくくりまとめている。栗色の目に利発そうな顔をしている。ダークグレーの服に黒い帽子を被っている。その帽子にはパンダのマークがある。
 彼女は孤児であった。村の牧場から採れる山羊の乳を売って暮らしている。いつも大きなセントバーナードと一緒にいる。
 住んでいる場所は村の水車小屋を借りている。そこで住んでいるのである。
 しかしだ。ある日その水車小屋が燃えた。責任は住んでいる彼女に向けられた。
「御前のせいだ!」
「御前が燃やしたんだな!」
「村の水車を!」
 村人達は彼女を囲んで一斉に攻める。
「俺達に恨みがあったんだな!」
「それでか!」
「とんでもない奴だ!」
「ねねじゃないのです!」
 陳宮はその彼等に必死に釈明した。
 
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