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雨の日も

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第三章

「よかったわ」
「そう言ってくれるのね」
「だって本当にそう思うから」
 雨の日の不機嫌さがなくなったからだというのだ。
「よかったわ」
「私もそう思うわ、じゃあ今日もね」
「あの傘を差してよね」
「学校に行くわ」
 こう言ってそのうえでだった、有紗はあの傘を差して登校した。そうしてそのうえで学校に行って友人達に明るい挨拶をした。
 これは有紗が中学の頃の話で今はというと。
 雨の日にクラスの中にいて窓の外の雨を見てだ、クラスメイト達にこんなことを言った。
「私昔雨嫌いだったの」
「ああ、中学の時までね」
「有紗ちゃんと同じ中学の娘が行ってたわよ」
 その時から同じ学校の娘がというのだ。
「有紗ちゃん昔は雨嫌いだったって」
「それで雨の日はいつも不機嫌だったって」
「今は機嫌いいけれどね」
「雨の日も」
「だってね」
 雨の日はというのだ。
「傘差せるから」
「あのえんじ色の傘をね」
「だから好きなのよね」
「えんじ色の傘が」
「そうなのよね」
「そうなの、若しあの傘に出会えなかったら」
 その時のことを考えてだ、こうも言った有紗だった。
「私多分今もね」
「雨が嫌いだった」
「そうだったっていうのね」
「あの傘を差せるからよ」
 それ故にというのだ。
「雨の日も機嫌よくなれたのよ」
「あの傘あってこそ」
「そういうことね」
「有紗ちゃんが雨の日も機嫌がいいのは」
「そうなのね」
「だから名前も書いてるし」
 傘にだ。
「なくさないようにしてるの」
「じゃあ若しなくしたら」
「その時はどうするの?」
「何本か同じの買ってるから」
 にこりと笑ってだ、有紗はこう答えた。傘を買ったその店に注文して同じ大きさの同じ色の傘をそうして買ったのだ。
「大丈夫よ」
「ううん、何か雨がどうかっていうより」
「傘が好きになったみたいね」
「あの赤い傘が」
「そうなったわね」
「そうかもね」
 自分でも否定しない有紗だった、そうしてこの日の下校の時もあのえんじ色の傘を差して帰った。その傘を差している時のいつもの顔で。


雨の日も   完


                  2017・9・26 
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