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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百十一話 サイオキシン麻薬元締め逮捕


今回は難産な上、短いです。


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第百十一話 サイオキシン麻薬元締め逮捕

帝国暦482年10月20日午前6時00分

■銀河帝国各地

一斉に始まったサイオキシン麻薬捜査は皇帝陛下の勅命というお墨付きを得て、軍部は元より政財界、貴族、平民に至るまで須く捜査の手が伸びていた。流石に今回のみフェザーンの高等弁務官事務所は目こぼしたが、宗教団体は捜査の対象と成った。

無論、地球教も捜査の対象となりカッセル街にある地球教オーディン支部にもバウマン准将率いる武装憲兵隊一個中隊が殺到したが、今現在の地球教徒はまだ精鋭化しておらず、大人しく捜査を受けた結果、信徒の中からサイオキシン麻薬の陽性反応が出たため逮捕された上に地球教対しての観察命令が発せられる事になった。このためしばらくの間帝国内で地球教が自由に布教出来なく成るのである。

テレーゼにしてみれば、原作のように反撃して地球教廃絶の切っ掛けとしたかったが、未だ時期尚早だったのである。しかし地球教から皇帝フリードリヒ4世が危険人物と考えられ、マンフリート二世の様に暗殺の危険が上がったのも事実であった。

帝国各地のサイオキシン麻薬捜査で、大貴族と言えども文句を言うなら、朝敵として討伐命令が下るとあれば捜査に協力せざるを得ず、中には早々に自由惑星同盟へ亡命を企てる者達も出始めるのである。

次々と憲兵隊総監部に各地の情報が上がる中、それを取り仕切るのがケスラー大佐、モルト中将、ケーフェンヒラー中将達である。普段のグータラな姿が嘘のようにテキパキと指示を行うケーフェンヒラー中将の姿にグリルパルツァー、クナップシュタインが唖然としながらも手伝いを行っている。


帝国暦482年10月20日午前5時30分

■イゼルローン要塞

起床したばかりの、要塞司令官クライスト大将は自身の参謀ミッターマイヤー少佐の訪問を受けていた。
「閣下、ミッターマイヤーです。ご報告があります」
「ミッターマイヤー少佐か、どうかしたかね?」

軍服を着終えたクライスト大将が顔を出すと、ミッターマイヤー少佐と共に居る憲兵大佐を見て怪しんだ。
「少佐、彼は誰かね?」
「閣下、此をご覧ください」
そう話す憲兵大佐が勅命を伝える。

「クライスト大将、勅命である。サイオキシン麻薬捜査の為、協力せよ」
「御意」
まるで皇帝陛下に挨拶するが如く、勅を持った憲兵大佐に礼をする。


同じ時間、駐留艦隊指揮官ヴァルテンベルク大将の元にもビッテンフェルト少佐の案内で憲兵大佐が向かった。
此処でも同じ様な受け答えが行われ、両大将からのフリーハンドを受けた憲兵隊は早速要塞全体の捜査を開始した。

イゼルローン要塞兵站部次長帝国准将ブルーノ・フォン・ノームブルク子爵は起きたばかりであったが、憲兵隊に部屋を襲撃され検挙された。既に証拠が挙がっており、最初は否認していたが証拠の数々を見せられると項垂れながら連行されていった。

その他、末端の組織等が次々に検挙され、イゼルローン要塞の掃除はあっという間に終了した。

ミッターマイヤーとビッテンフェルトが拍子抜けするほどの早業で五百万の軍人民間人の捜査が終わったのである。ロイエンタールはその頃レテーナの家で寝ていた。それもテレーゼの指示であり、感の鋭いロイエンタールに悟られない為であった。

ボーデン星系などの密造工場は武装憲兵隊によりあっという間に工場全体が掌握され密造の証拠が多数発見され関係者が多数検挙された。その他、帝国各地で貴族、軍人、平民を含む多数の検挙者が出たため、しばらくの間は、帝国全土で混乱が生じるのである。


■リューゲン星 カイザーリング艦隊旗艦テュービンゲン

突然の武装親衛隊の襲撃に慌てたカイザーリング艦隊だが、陸戦隊の面々が素早く憲兵隊側に付いたために、早速抵抗の芽を摘まれ逆に追い込まれる事になった。それぞれが自室で電子キーすら開けられ拘束されていく、そのまま艦橋要員が連行されてくる。

リューゲン憲兵隊司令ニードリヒ大佐やキルドルフ大尉、キスリング中尉達と共に艦橋へ来たキルヒアイスは連行される中にラインハルトの姿がない事にホッとしていた。

カイザーリング中将にニードリッヒ大佐が勅命を伝える。
「カイザーリング中将、勅命である。貴艦隊の参謀長リヒャルト・パーペン少将と後方主任参謀クリストファー・フォン・バーゼル少将をサイオキシン麻薬密売の容疑者として検挙する」

その言葉に、カイザーリング中将は悟ったような顔をし、パーペン少将とバーゼル少将は顔色がどす黒く変わっていった。

流石に勅命に異議を唱える事は不可能である為に、カイザーリング中将、パーペン少将、バーゼル少将も何も言えずに両方から腕を捕まれて、逃走不能になる。
そのまま関係先が全て捜査され、サイオキシン麻薬密売の元締めがバーゼル少将であり、従犯者がパーペン少将達である事も判明するのである。

捜査が終盤にかかったころ、やっとキルヒアイスは自由に移動を許され、ラインハルトを迎えに行ったのである。
「ラインハルト様、ご無事ですか?」
「キルヒアイス、キルヒアイスか、あの女は居ないのか?」

「ヘールトロイダ曹長なら仕事で居ません」
「そうか」
その声と共にロックが外され、やつれた感じのラインハルトが出てきた。

「ラインハルト様、よくぞご無事で」
「キルヒアイス、俺はこの艦隊に来た事を後悔している」
「ラインハルト様、大変な事が起こりました」

「どうしたのだ?」
「我々を除く司令官以下艦橋要員全てがサイオキシン麻薬密売の容疑で逮捕されました」
「なに」

驚くラインハルトに、キルヒアイスは事細やかに出来事を話した。
それを聞いたラインハルトの顔は、憮然としたものであった。
「許せない事だな。此だから帝国は腐っているのだ!」

「ラインハルト様」
「帝国の腐敗した汚泥のような政治は唾棄すべきだ」
「ラインハルト様、お声が大きいです」

「大丈夫だ、此処には俺とお前しか居ないからな」
そう言うラインハルトを見ながら、キルヒアイスは危なげな人だと溜息をつくのであった。

帝国暦482年10月20日午前11時00分

■オーディン ノイエ・サンスーシ 黒真珠の間

あらかたの捜査が終わり、映像が次々に消える中。

皇太子ルートヴィヒ、皇帝の娘婿、ブラウンシュバイク公爵、リッテンハイム侯爵、軍務尚書エーレンベルグ元帥、統帥本部長シュタイホフ元帥、宇宙艦隊司令長官ベヒトルスハイム元帥、装甲擲弾兵総監ライムバッハー上級大将、近衛兵総監ラムスドルフ上級大将、者憲兵隊総監グリンメルスハウゼン大将、宇宙艦隊副司令長官エッシェンバッハ上級大将、十八個宇宙艦隊の司令官達。

国務尚書リヒテンラーデ侯爵、財務尚書カストロプ公爵、内務尚書フレーゲル、司法尚書ルーゲ伯爵、宮内尚書ノイケルン伯爵、典礼尚書マリーンドルフ伯爵、科学尚書ウィルヘルミ、内閣書記長キールマンゼク達。

彼等全員が固唾を呑んだ捕り物劇は終了した。皇帝フリードリヒ4世陛下は悠々とした状態で、参列者達を眺めていた。

「さて、そち達に問う。この度の仕儀如何致すかな」

いきなり皇帝からの質問に頭が真っ白状態の殆どの者が答えられない、唯一当事者であるグリンメルスハウゼン大将以外は。

「陛下、この度の軍、政、官、貴族の不始末誠に心苦しく存じます。この上はしかるべき手をお打ちになり帝国の綱紀粛正に取り組むべきと臣は上申致します」
その言葉に、他の者は反論できる空気ではない。何故なら皇帝の威圧感がありすぎるからである。

皆は思う、この方が、あの酒浸りのフリードリヒ4世陛下なのかと。

「グリンメルスハウゼンの信や良し!」
「御意」
「此から暫くは、捜査に関してグリンメルスハウゼンに任せる、確と肝にせよ」

「「「「「「「「「「御意」」」」」」」」」」
威圧感から、自然と口に出てしまった。
その日から数ヶ月に渡る帝国内の害悪一掃が始まったのである。






 
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