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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百十話 マリファナ畑で捕まえて


サイオキシン撲滅運動開始です。
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第百十話 マリファナ畑で捕まえて

帝国暦482年10月20日 午前5時00分

■オーディン ノイエ・サンスーシ 謁見の間

この日の早朝、国務尚書リヒテンラーデ侯爵、軍務尚書エーレンベルグ元帥、統帥本部長シュタイホフ元帥、宇宙艦隊司令長官ベヒトルスハイム元帥、装甲擲弾兵総監ライムバッハー上級大将達が密かにノイエ・サンスーシに呼び出された。しかも誰にも悟られないようにの命令であり、皇帝陛下の御身に係わる大事件と聞いて押っ取り刀で駆けつけたのである。

謁見の間に到着した5人が見たモノは普段の酒におぼれ頽廃気味の姿とうって変わって、凛々しい軍服姿の皇帝フリードリヒ4世の姿があった。その姿にルドルフ大帝の姿を垣間見られるほどの覇気が見られ、自然と頭が下がる気がしていた。5人を代表リヒテンラーデ侯爵が挨拶を行う。

「皇帝陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」
「卿等ご苦労で有る。しかしご機嫌など麗しくもない」
その言葉に何か不快なことをしたかと5人が慌てる。

「臣等が陛下に対し御不興を致しましたでしょうか」
「そうではない。憲兵隊及び警察局からの報告で、軍、政府、官僚、貴族の中にサイオキシン麻薬密売を行っている者共が存在しておるのじゃ」

その言葉に驚く5人。
「恐れながら、陛下、軍内部でサイオキシン麻薬を密売など、あり得ない話では?」
「ベヒトルスハイム、卿の目は節穴か?辺境部隊ではサイオキシン麻薬中毒で犯罪に走る兵がかなり出てきているそうじゃが」

そう言うと、フリードリヒ4世は侍従武官に指示して資料をヘッドアップディスプレイで映させる。すると、辺境星域の警備隊などで近年サイオキシン麻薬関連の犯罪の検挙者数が増え、その中に含まれる軍人の割合が頓に増えているのがグラフ化されていた。

そのグラフや資料を見て、三長官達は驚きを隠せない。
「臣等の不徳の致すところであります。如何様な責めも負う所存でございます」
エーレンベルグ元帥が深々と礼をしながら、フリードリヒ4世に謝罪をおこない、残りの2人も礼を行っている。

「この情報は、クラーマー等の憲兵隊の際には現地で握り潰されていたのじゃ。グリンメルスハウゼンに調べさせたところ、次々に隠蔽が露見したのじゃ。従って卿等が知り得なかったことも、仕方が無いとは言えるやもしれんが、今少し注意は必要であったな」

「臣等、陛下に対して申し開きもございません」
「その言や良し。卿等を辞めさせる訳にはいかん。此より軍、政府とも大荒れの嵐の中に投げ込まれるであろう。綱紀粛正を行えるは、卿等を持って他にあらず」

「「「「「陛下・・・」」」」」
「良いか、辞めるのであれば、全てが済んでからに致せ。それが予の命令じゃ」
「「「「御意」」」」

「さて、其処でじゃ。午前6時を持って、帝国全土で憲兵隊内務省警察局による一斉捜査が行われる。それに伴い午前6時に此処で、全閣僚を集め予からの訓辞を行う。卿等も参加の準備致せ」
「「「「「「御意」」」」」」」


帝国暦482年10月20日 午前6時00分

■オーディン ノイエ・サンスーシ 黒真珠の間

リヒテンラーデ侯爵や帝国軍三長官等から遅れること1時間ノイエ・サンスーシ黒真珠の間に帝国の閣僚重鎮達が集められていた。帝国の今後に係わる事とあれば誰1人として欠席する者などあるはずもなかった。集められた者達は口々に何が起こるのであろうかと話していた。

事情を知る国務尚書リヒテンラーデ侯爵、軍務尚書エーレンベルグ元帥、統帥本部長シュタイホフ元帥、宇宙艦隊司令長官ベヒトルスハイム元帥、装甲擲弾兵総監ライムバッハー上級大将達は寡黙に過ごしていた。

又今回は皇太子ルートヴィヒ、皇帝の娘婿、ブラウンシュバイク公爵、リッテンハイム侯爵も参加していた。

その他の参会者は、財務尚書カストロプ公爵、内務尚書フレーゲル、司法尚書ルーゲ伯爵、宮内尚書ノイケルン伯爵、典礼尚書マリーンドルフ伯爵、科学尚書ウィルヘルミ、内閣書記長キールマンゼク達。

それに向かい合う形で帝国軍三長官をはじめ、近衛兵総監ラムスドルフ上級大将、表向きこの事件の直接的な差配者憲兵隊総監グリンメルスハウゼン大将、宇宙艦隊副司令長官エッシェンバッハ上級大将、それに十八個宇宙艦隊の司令官達。

6時丁度に古風なラッパの澄んだ響きが、一同に姿勢を正させた。ざわめきが静まる。
至尊者の入来を告げる式部官の声が参会者の鼓膜を叩いた。
「全人類の支配者にして全宇宙の統治者、天界を統べる秩序と法則の保護者、神聖にして不可侵なる銀河帝国フリードリヒ4世陛下のご入来!」

集まっていた全員が深々と頭を下げ最敬礼を行う中、皇帝フリードリヒ4世陛下が現れる。
頭を上げた者達が見たのは、普段の皇帝服を着て奇妙に困憊した姿の皇帝ではなく、帝国軍大元帥服を着た凛々しき皇帝陛下であった。まるで後ろに飾らせている絵画のルドルフ大帝が降臨したかのようなお姿に一同が呆気に取られた。

「皆の者、よう来た。集まって貰ったのは他でもない。
帝国に巣くう害悪を今此から退治し始めるためじゃ」

その言葉に、多くの参加者が、困惑の表情を見せる。
「いきなりの話で、困惑もあろう、後は国務尚書に話を任せる」
国務尚書リヒテンラーデ侯爵が話を皇帝から受け取り説明をはじめる。

「皆の者、恐れ多くも皇帝陛下は、憲兵隊が調べ上げたサイオキシン麻薬密売組織の撲滅をご命令あそばされた、此は由々しき事ながら、帝国全土に毛細血管が如く密売の根が張り巡らせられてる事が露見致したことを、陛下が御憂慮あらされての事である。皆も皇帝陛下の御為に働くように」

参会者はリヒテンラーデ侯爵の言葉に益々、困惑の表情を見せ始める。
その後陛下自らが再度話を行う。

「良いか、帝国全土からサイオキシン麻薬を消し去るのじゃ、それが例え皇族であろうとも一切の憂慮は不要じゃ、グリンメルスハウゼンよ卿に全てを任せる。憲兵隊、宮中警備隊、警察、社会秩序維持局、近衛、全軍は元よりあらゆる物の指揮権を卿に預ける。皆もその旨をしっかと記憶せよ」

居眠りでもしていそうな目のグリンメルスハウゼンであるが、この時だけは、まともに目を見開いて陛下の言葉に応対を行う。

「陛下、この老骨に過分なるご配慮を頂き恐悦至極に存じます。皇帝陛下の御為に残り少ない命を燃えつきさすまで、獅子奮迅致します」
「グリンメルスハウゼンよ、よう申した。期待しておるぞ」

「御意」

その言葉に、内務尚書フレーゲルは職責を侵害されるのがよほど嫌なのか、不満そうな顔をしているが、まさか陛下の御前で不満を言う訳にもいかず押し黙っている。それを目聡く見つけた、フリードリヒ4世は再度だめ押しの言葉を怒気を持ってかける。

「良いか、予が命じたこと努々忘れずにいるのじゃ!」
「「「「「「「「「「「「「「「「御意」」」」」」」」」」」」」」」」」
全ての参加者が皇帝フリードリヒ4世陛下の威厳にひれ伏された状態で自然に深々と礼をする。

その直後、空間スクリーンが出され、マルチタクスで各所に襲撃をかけ始めた憲兵隊、警察の姿が映し出された。前代未聞の、ライブ襲撃中継に、多くの参会者が固唾を飲んで画面を見つめている。

『第18憲兵隊、此より、ボルソン星域補給敞へ急襲を開始する!』
『第3憲兵隊、アイゼンフート星系駐屯基地へ急襲!』
『第67憲兵隊、ガイエスブルグ要塞を捜査開始!』

『第11憲兵隊、此よりカイザーリング艦隊を急襲する!』
カイザーリング艦隊に攻め込む憲兵隊は、口々に【憲兵隊だ!憲兵隊だ!】と名乗りながら突撃をしていく、その中に一際目立つ赤毛の准士官がズームアップされながら侵入していくのが多くの時間を割いて映し出された。

黒真珠の間では、誰1人として、皇帝陛下御臨席の中では外へ出る事も出来ずに、サイオキシン麻薬に心当たりのある者も動くことが出来ずに居たのである。無論彼等の関係先も捜査されて居るために、遅かれ早かれ永遠に動くことが出来なくなるのも直ぐ先であった。

帝国全土を襲ったサイオキシン麻薬撲滅作戦がいよいよ始まったのである。

しかし、皇帝の威厳のある姿を見て危機感を持つ者が現れたのも事実であり、この事件が更なる大事件の原因となったとは、後世の歴史家の見解の一つになっている。



■リューゲン星 カイザーリング艦隊旗艦テュービンゲン

その頃、ラインハルトは1人部屋でふて寝中であった。昨晩はキルヒアイスが帰ってこなかったので部屋でカロリーバーを食べながら籠城状態であったため、全く事件に気がつくこともなかった。

その時間帯キルヒアイスは、リューゲン憲兵隊司令ニードリヒ大佐やキルドルフ大尉、キスリング中尉と共にカイザーリング艦隊査察に同行し、途中キルドルフ大尉の部下達も合流して居た為に、ラインハルトの元へはいけない状態であり、態の良い軟禁状態にされていたのであった。

此では幾ら、キルヒアイスがラインハルトに手柄を立てさせようにも絶対に無理であり、その点だけでも、テレーゼの策略は成功していた。
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憲兵隊だ!憲兵隊だ!はロンハーのがさ入れの、ロンドンハーツだのパロディです。

フレーゲルは同じ名前の爵位持ちは存在しないという原則を考えると、内務尚書の家はフレーゲル男爵家の分家で帝国騎士だと推測しました。
原作でもシェーンコップ男爵家の分家は帝国騎士で、ワルター・フォン・シェーンコップの家がそうでしたから。

 
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