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蛇の血をひく日向の子とやりたい放題の剣客たち

作者:笠福京世
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第02話 転生の特典は何ですか?

第02話 転生の特典は何ですか?

 転生特典に“不幸体質”なんて一言も書いてないはずなのに――。

 僕は齢六歳にして人柱力の父を襲ってきた仮面の男(たぶん暁だろう)に追われないよう木ノ葉隠れの里に独りで逃げている。

 この世界での名前は“マムシ”という。

 父親の名前は赤ハン。

 岩隠れのセキ(赤)一族の沸遁使いで蒸気忍者と呼ばれていた五尾の人柱力だ。

 赤マムシというネーミングはNARUTOっぽい気もするが文字に書くと精力増強剤みたいで少し恥ずかしい。

 父が岩隠れの忍びなのにどうして木ノ葉隠れの里に逃げてるのかというと母方の出自に理由がある。

 母親の名前は日向ハクジャ。

 あの“木ノ葉にて最強”を誇る日向一族の医療忍者である。

 つまり僕は白眼の瞳術に、沸遁使い(火遁×水遁)の才能を持つ血継限界のチート属性だ。やったね!
 そりゃあ、うちは一族はパスって書いてたけど、日向一族だと宗家以外は“籠の中の鳥”じゃん……。

 父から聞いたところ両親は第二次忍界大戦の末期に雨隠れの里の戦場で出会ったそうだ。
 お人好しというか若くて戦場慣れしていなかった母ハクジャは、
 偶然見つけた怪我をして死にそうになっている父ハンを見捨てることができず
 自らの医療忍術で治療を施し看病までしたらしい。
 その優しい心に一目惚れした父ハンが猛烈なアタックをしてナニして生まれたのが僕らしい。

 まあ両親の惚気話なんて聞くに堪えなかったので詳しくは知らないけど、
 とにかく二人は里を抜けて密かに他国に隠れ住んで僕を育てていた。
 両者とも貴重な血継限界持ちのはずだが六年の間に木ノ葉や岩隠れから追い忍が来なかったのは、
 二人とも戦場で行方不明になって、そのまま死んだと思われているのだろう。

 第二次忍界大戦の雨隠れの里といえば火の国、土の国、風の国の三国に挟まれた激戦地だ。
 半蔵と戦った自来也・綱手・大蛇丸の三忍や戦争孤児となった長門、弥彦、小南のエピソードが記憶にある。

 とにかく父は自分に何かあれば木ノ葉隠れの日向一族か、
 鉄の里にいるイチという名前の盲人の按摩師を頼れと言っていた。

 岩隠れの里では白眼がどのように扱われるか分からないらしい。
 里を抜けた忍びの子供だ。父の庇護がなければ両眼をくり抜かれて実験体として扱われる可能性さえある。
 木ノ葉隠れの日向一族であれば白眼の血を無体に扱うことは無いだろうという話だった。

 鉄の里の伝手も気になるが、個人的には侍キングダムの鉄の里より火の国の方が望ましい。

 僕ら家族が暮らしていたのは土の国と火の国の間にある滝隠れの里の東の外れだ。
 南に下れば木ノ葉隠れの里がある火の国に辿り着けるはず――。

――マムシよ、どうやら余の本体が捕らえられたようである

 心の中に直接話しかけて来たのは五尾のイルカ馬と父から呼ばれていた穆王(こくおう)だ。
 人柱力の父に封じられていた五尾だが、僕が生まれたときから何故か精神的なパスが繋がっていた。

 赤ん坊や幼児期のときは舌足らずで会話もできなかったので、
 退屈だった僕は精神世界で五尾と毎日のように話をしていた。お陰で少しだけコミュ障を克服できた。

 こくおうは王を名乗るだけあって振る舞いも高貴で、
 こちらが礼儀正しく接し丁重に扱えば拒絶されることもなかった。
 やたら自意識のある赤ん坊というのは永い時を生きた尾獣にとっても興味を引く不思議な存在だったのだろう。
 子守り歌の代わりに、尾獣から様々な昔話を興味深く聞くことができた。
 ちゃんと時をかけて親しくなり本名である穆王の名前も教えてもらった。今や友であり師のような存在だ。
 見た目もポケモンとして出てきそうな感じで僕は気に入っている。

「じゃあ、父さんもやられちゃったんだ」

――すまない。余の力が足りなかった。

「仕方ないよ。父さんも人柱力として穆王を完全にコントロールできてたわけじゃない」

――どうやら、あの者は最初から余の力を狙っているようだった

「そっか。僕のところに逃がせたのは?」

――ハンに頼まれて逃れてきたが三分の一といったところであろう

「わかった。僕は人柱力じゃないし、封印術も使えない。こくおうを束縛するつもりもないよ」

――よいのか?

「けど相手に狙われてるなら僕のところに隠れておいた方が良いよ。
 こくおうなら上手く隠れれば他の忍びには分からないようにできるんだろ?」

――できるが、それではお主が余のチャクラを使うことができんぞ

「よほどの危険が及ばない限りは大丈夫だよ。
 それよりも人柱力の兵器として扱われたり、人柱力として他所から命を狙われる方が困る」

――了解した。では言葉に甘えよう

 たしかにチャクラは多い方が良いって願ったけど――人柱力になりたいとか思ってなんていなかった。
 このまま木ノ葉隠れの里に逃げ込んでも、人柱力として生きていくのは流石にツライし望んでいない。

 どうしてだろう――。転生特典があるなんて美味しいって隣の三人組は言ってたけど全てが裏目に出てる。

 僕は父親の死を悼みながら、そして自らの不幸を嘆きながら必死に火の国を目指した。

 三歳から父ハンと穆王から忍術を学んでいたお陰もあって何とか火の国に辿り着き
 国境の警備にあたっていた木ノ葉の忍びに保護してもらうことができた。
 
 目に宿る白眼だけが自らの血を証明するパスポートだ。
 事情を説明すると急ぎ木ノ葉隠れの里に連れていかれることになった。 
 

 
後書き
五尾の人柱力ハンが赤一族というのは捏造設定です。
母親の日向ハクジャはオリキャラです。 
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