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ハルケギニアの電気工事

作者:東風
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第09話:内政チート開始?

 
前書き
お待たせしました。
いよいよ色々な開発に着手します。ここからが大変なんですよね。
どうか、読んであげてください。
*2018.11.25 無いように矛盾点がありましたので一部削除しました。 

 
 お早うございます。アルバートです。

 初めての長距離一人旅で、無事に皇城から帰ってきました。夕方になってしまいましたが、帰りも特に問題はなく、綺麗な夕焼けを見ながら気持ちの良い飛行ができました。やっぱ『ヴァルファーレ』は最高です。

 日がすっかり暮れる頃屋敷に着くと、訓練場に火が焚かれて明るくなっていました。その明かりの中に母上がメアリーといっしょに待っているのが見えます。帰る時間は連絡していなかったのですがどうして解ったのでしょう?

 『ヴァルファーレ』が静かに着陸し、座席から翼伝いに地面まで降りると後から母上に抱きしめられました。

「アルバート、お帰りなさい。帰りが遅いので心配していたのよ。何もなかった?」

「母上、遅くなってごめんなさい。明かりを点けて待っていてくれたんですね。有り難うございます。もっと早く帰ろうと思っていたのですが、つい皇城の書庫で夢中になって時間を忘れてしまいました。でも、帰りの時間を連絡しなかったのに、どうして判ったのですか?」

「皇城から鷹便が来たわ。これから出発するから、鷹便が着いてから少しした位の時間に着くだろうって皇帝閣下が連絡してくれたのよ。」

「そうだったのですか。皇帝閣下や女官の皆さんにも御迷惑を掛けてしまいましたね。これからは気をつけるようにします。本当に心配掛けてごめんなさい。それから、これはメアリーにお土産です。」

 そう言って、僕はメアリーに持ってきたお菓子を渡しました。これは皇城を出発する直前にスピネルさんから貰ったもので、『ヴィンドボナ』で最近人気のお菓子だそうです。帰る直前までお土産のことを忘れていたので助かりました。とても綺麗なのでメアリーも大喜びしています。今日はスピネルさんにはお世話になりましたから、今度皇城に行く時は何かプレゼントを持って行かなければなりませんね。

「『ヴァルファーレ』有り難う。お疲れ様でした。今日はもう戻って休んでください。」

[判った。何かあればまた呼ぶが良い。さらばじゃ。]

 そう言って、『ヴァルファーレ』は空の割れ目に消えていきました。
 『ヴァルファーレ』を使い魔に出来たことは、僕にとって最高のラッキーだったようです。

 その後は、少し遅い夕食を食べて、父上と母上に今日の旅の様子を報告します。往復の飛行中に危険はありませんでしたので、『ヴァルファーレ』に乗って皇城へ行くことを許可されました。ただし無条件に行くことは良くないと言われ、週一日、虚無の日で天気が悪くない日だけと言う条件が付きましたが、それ以外は父上と母上から自由にしても良いと許可を貰うことができました。

 それからの僕の日課は、今まで通り午前中に母上に魔法の座学と実技訓練を見て貰い、午後は護衛隊長の体力作りと剣の訓練を続ける傍ら、父上からゴーレムの訓練をして貰います。そして休憩時間にメアリーと遊んだり、母上に遊ばれたりで毎日を過ごすというものになりました。

 魔法の能力や錬度は5歳の誕生日にチート能力が開放されてから天井知らずに延びています。特に魔力無限の威力が大きいですね。どんな魔法を使っても魔力が切れて倒れることがありませんから、その気になれば30メールクラスのゴーレムを何体も作って個別に操作することも出来るようになりました。これを戦場に投入すれば大抵の状況はひっくり返すことが出来るでしょう。

 こんな調子で日々が過ぎ、あっという間に2年が過ぎました。
 この2年の間には、虚無の日に天気が悪い事なんて殆ど無かったので、週末毎に皇城に行って、妹姫様達ともすっかり仲良くなりました。おかぜで皇城での生活や慣習といったものもいろいろ教えてもらいましたよ。なんでも皇帝から皇太子として必要だから教えておくようにと言われたようで、ダンスの練習までありましたから驚きです。………だから皇太子は止めて下さい。

 一度『ヴァルファーレ』にお願いして皇城での試乗会を開催したこともあります。皇城のみんなにも遊覧飛行を楽しんで貰いました。マンティコア隊や竜騎士隊の人達も喜んでいたので良かったと思います。『ヴァルファーレ』もすっかり皇城になじんで人気者です。時々僕が皇城の書庫に籠もっている間に、妹姫様達を乗せて飛んであげたりしていたようです。

 皇帝とは読書の間にですが色々な話しをしています。忙しい方ですから時間的にはそんなに長く話しをしてもいられないのですが、その短い時間で皇帝としての心構えとか、他国との関係とか真剣に話してくれます。でもこれって帝王学ですよね?ここでも皇太子扱いですか?まじ、困るんですが。

 それから月に一度位、午後に特別に時間を取って剣の稽古を付けてくれたりします。男の子がいないからでしょうか、僕のことを自分の子供のように思ってくれているような所があります。それにしても皇帝の体力というか剣の腕は現役ばりばりですね。屋敷の護衛隊長より間違いなく強いと思います。
 これは誰にも言った事はありませんが、僕も結構皇帝のこと好きなんですよ。だから僕と話しをしてくれる時間とか剣の稽古の時は真面目に教えて貰うようにしています。

 場違いな工芸品も見せて貰いました。何か、懐かしい物が沢山ありましたが、武器の類が多いのはやっぱりガンダールブの力が関係しているのでしょうか。大半が壊れていて役に立たない物ばかりでしたが、中には、冷や汗物もありました。なんと信管部分が壊れているAIM-9『サイドワインダー』です。弾頭部分の形状からタイプDだと思います。
信管が壊れているのですぐ爆発する危険は無いはずですが、炸薬は生きていますから分解したり火に近づけたりすると危険ですので注意しておきました

 皇城の女官の皆さんや執事さん達ともすっかりおなじみになって、時々話しをしたりします。専属女官のスピネルさんには、時々プレゼントをもって来たりしていますよ。


 さて、こんな事をやっている内に7歳になったので、本格的に領の内政に係わらせて貰うことになりました。
 前に父上と相談して、7歳になったらお供付きですが一人で領内を見て回る事や内政のお手伝いをすることを許して貰っています。
 それからは母上も交えて色々話して領内の状況もそれなりに教えて貰いました。

 生前の僕は農業や酪農に携わっていたわけではないので、そちらの方面の知識は高校生が普通に習うようなレベルや日々のニュースで聞くようなものでしかありません。そのため、皇城の書庫で知識を仕入れようと思ったのですが、ハルケギニアのレベルでは僕の持っている知識でも使い方しだいで、農業革命を起こすことが出来るということが判っただけでした。ですから僕に考えつくことをどんどん提案していきたいと思います。

 まず、第1段階として考えつくのは、以下の5点です。

 1.領内の公衆トイレの設置→トイレのくみ取り業の開始→集めた屎尿の発酵、肥料化→肥料の農民への無料配布、使用方法の説明
 2.領内の道路の整備
 3.田畑の測量→課税基準の見直し
 4.新しい農具の開発、普及
 5.新しい農法の普及

 どれも、生前に読んだことのあるゼロ魔の二次小説で、良く出てくる改革案だと思います。それだけに効果があると考えられますから、この5点を行って領民の生活力の底上げを行います。そうすれば、次の段階へ進みやすくなるでしょう。

 何でこんな事を考えたかというと、このハルケギニアに転生して、まず思ったことが電気がないと言うことだったのです。生前の日本を考えると電気がないことなんて考えられません。照明もテレビ、冷蔵庫、エアコンやパソコン、すべてが電気で動いていました。
 僕自身、仕事でも私生活でも電気の恩恵にあずかっていたわけですから、この世界に来てランプや蝋燭の生活をしていると、何とか電気を普及して夜も明るい生活が出来るようにしたくなったのです。
 もちろん初めの目標は領民全体の家を電化することです。その為に発電所を作るのにも、送電線を張り巡らしたり変電所を作るのにも、とんでもないお金が掛かります。実際国家事業のレベルになりますからね。
 電線を作ることを考えても、まず鉄を練金して細い鋼線にして撚り合わせ細めのワイヤーを作ります。次に銅を練金して銅線をつくり、それをより合わせて細いワイヤー状に加工し、それを4本から6本、先に作った鋼線のワイヤーの周りに撚り合わせていきます。中の方の隙間をゴムで充填し、その周りをさらにゴムで被覆してケーブルに仕上げるといったいくつにも渡る細かい技術が必要になります。
 さらにその電線を設置する電信柱や送電鉄塔、送電の途中で昇圧や降圧を行う変圧器を作るのにも、莫大なお金が掛かりますので、それだけの資金を作りだすことから考えていかないと、完遂は不可能でしょう。

 一から作り出すことの難しさを思うと気が遠くなりそうですが、自分で決めたことですから腹を据えて行きましょう。
 そして、これが成功すれば、続いてゲルマニア全土の電化を始めます。最終目標はハルケギニア全体を電化することですが、アルビオンは別枠で考える必要が有ります。あそこだけ空飛んでいますから送電線を繋げるわけに行きませんからね。

 さて、領内改革の項目1ですが、農村にしても町にしてもハルケギニアは不衛生すぎます。はっきり言って臭い。初めて町に出た時なんか、あまりの臭さに頭が痛くなって倒れるかと思いました。
 あの状況ではいつ疫病が発生しても不思議じゃないですから、集落毎に必要な数だけ公衆トイレを設置します。そしてトイレ以外で用を足すことを禁止し、罰則も設けます。それから消毒と消臭を魔法で行います。
これで衛生状況を改善すると共にトイレの屎尿を収集し、一箇所に集めて発酵させます。
発酵には1年位掛かるはずですから最初は魔法で発酵を促進させましょう。この発酵した屎尿は肥料になりますから農民に無料で配り、畑の肥料として使うように教えます。これで一つのサイクルが出来るわけです。一昔前の日本の田舎を思い出します。
 これだけやれば病気の発生が大幅に減るでしょう。

 次に、項目2です。
領内の道路は手入れがされているところでも凸凹が多すぎます。一応魔法使いを動員して練金で整備しているようなのですが、剥き出しの土のままでは雨が降る度にぬかるんで元の木阿弥です。
どうしても前世の日本を基準に考えてしまいますが、流石にアスファルト舗装は無理でも、砕石舗装くらいなら出来るでしょう。マダカム舗装とも言いますが、練金で少し地面を掘り下げ、表面をならしながら固めてやり、その上に砕石を敷き詰めて大型のゴーレム等で平らに圧し固めてやればいいと思います。砕石は天然の砂利とは異なり表面が荒くなっていて、圧し固めるだけでガッチリと噛み合いますから、十分な耐久性を得る事が出来るでしょう。仕上がりも綺麗だし、馬の足がかりも良いから十分使えると思います。雨が降ってもぬかるんだりしなくなって、荷馬車も通りやすくなり商人の流通が増えると思います。
最終的には、さらに側溝を作って雨水の処理施設まで建設します。雨の度に道路が冠水するようなことが無いようにしましょう。交通が麻痺してしまっては通商の阻害になりますからね。
 多分、雨水の処理や農業用水の確保などを考えていくと治水事業にまで発展するでしょうから、土メイジが大活躍になりますよ。

 次の項目3はいわゆる検地です。
項目4,5にも係わりますが、正確な農地の測量で生産量を予測し、課税基準を見直していきます。ついでに農地を纏めて一つ一つの区画を大きくし、大規模農業が出来るように作り直します。
今の課税方法は大雑把すぎて収穫量が変動すると簡単に農民を殺してしまいます。状況を把握しながら適切な税の徴収をすることにより農民にも生活のゆとりを与え、働く意欲が湧けば自然に税収も増えるというものです。

 項目4は使用されている農具を見て考えました。鋤も鍬も低レベルすぎます。せめて先端に鉄を使用して取っ手の部分も改良し効率を上げましょう。牛を使ってモールドボード・プラウなんかも普及できれば項目3で広大な耕作地が出来た時に威力を発揮するでしょうから是非作ってみたいです。その他にも作ってみたい農具はたくさんあります。
せっかくゲルマニアは鉄の産地なのですから武器ばかりでなく農具にもどんどん使うべきです。

 最後の項目5ですが、ノーフォーク農法の導入や、土壌によっては牧草栽培期間を長くした改良穀草式農法なんかも普及させたいですね。今のやり方では無駄が多すぎますから一気に改良していきましょう。

 どこかに米や大豆なんか無いかな~。コシヒカリにササニシキ、あきたこまちとかの日本の米が食べたいです。炊きたてのごはんが食べたいと思うのはやっぱり日本人なのでしょう。お釜なんかは練金で作れますから米さえあればバッチリです。あと大豆があればわらに包んで納豆も出来そうだし、豆腐に味噌、醤油なんかも作りたい。豆腐が出来れば油揚げや厚揚げも出来るから、やっぱり大豆は使い道があるよね。栄養も満点だし何とか見つけられればいいのですが。もしかしたらタルブあたりに有るかもしれないですね。竜の羽衣の佐々木さんが色々やっていたはずですから一度行ってこないと行けません。

 この項目3から5の連携がうまく行けば農作物の収穫は何倍にもなるでしょう。領民の生活が改善され、余裕が生まれれば領民も増えて購買力も上がります。物を買う人が増えれば商人もやって来て活気が生まれます。それによって税収が増えれば万々歳となるわけです。どうしてこんな事も解らずハルケギニアの貴族達は領民から搾取することばかり考えているのでしょうか。結局自分の首を絞めていることに気付かないなんて、馬鹿でしょ?
 貴族も平民も関係なく、みんなで幸せになった方がずっと楽しいと思いますから、せめてこの領からできる事を実践して行きます。

 電気の普及の第一歩です。頑張りますよ!! 
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