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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
  第14話 嵐の前

case 1「小宮英二」と「足立俊輝」

「チェッ 今年もダメだったか」

「ホントに激戦だったよ。惜しかったよなァ」「三位争いだけどな」

「伊角さんが全勝。門脇さんはその伊角さんに一敗しただけ――」

「あとは院生同士の悲惨な星の潰し合い」

「本田さんは来年どうするって言ってた?」「んー。院生辞めた後?」「プロ試験」

「来年は外来で受けるって高校卒業しても就職せずに師匠のところで修行するって言ってた」

「……そっか」

「まだ小宮はいいよ。本田さんと同じ4敗で五位だろ? 手応えはあったんだろ?」「まあな」

「あー、プロになった和谷が羨ましい!」「「ハァ」」

「さすがにため息もでるな」

「同い年の奈瀬に随分と離されちまったしなァ」

「ま、そうだな 天元戦は次が本戦の準決勝だっけ?」

「そ、倉田七段に勝って、もう一つ勝てば塔矢先生の引退で空位になった天元を巡っての五番勝負」

「もしかしたら女流棋士初のタイトル挑戦者になるんだもんなァ。そりゃあニュースにもなるよな」

「とはいえ春に本因坊戦に挑戦した倉田七段に勝てると思う?」

「確かに倉田七段には勢いがあるよ。奈瀬も天元戦と女流棋戦以外は勝ち上がっても高段者に阻まれてるからな」

「けど奈瀬の何故か天元に賭ける意気込みはホンモノ。正面からぶつかれば――」「ぶつかれば?」

「うーん。五分五分かな?」「五分五分かぁ!? 奈瀬の評価も上がったもんだな」

「あーーーあ、ほんとに雲の上の存在になりやがって!」「まあアイツ化けやがったよなァ」

「マジで気分転換に彼女でも作ろうかなー?」「え?できるの?(笑)」「うーん。無理」

「ま、趣味が囲碁って時点でモテないよな」

「はぁ、どこかに囲碁好きな女の子っていないのかなぁ??」

「でも奈瀬の活躍のお陰で若い女性の囲碁ファンが増えてるってのは聞いた」「マジで!?」

「囲碁部の女の子と付き合えば?」

「うちの囲碁部は女子の部長が厳しい」「そうなの?」

「一つ上の3年生だけど、うちの高校の囲碁部を一人で創って全国レベルにした伝説の部長って言われてる」

「それは……たしかにすごいな」

「足立のとこは?」「うちは将棋部はあるけど囲碁部はない」「そっかー」 

「小宮は桜が丘高校だろ? 去年知り合いと文化祭覗きに言ったけど軽音部とか可愛い子多いじゃん」

「ま、新入生に期待だなー」「ま、院生でいる限りはフツーに付き合うとか難しそうだけどな」

「「ハァ」」

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case 2 「芦原弘幸」と「あるアマチュアの噂」

「岸本くんってアキラくんに中国語会話を教えてるの?」

「そうですよ。市河さんも勉強してみますか?」

「え、私はともかく芦原さんはどうなのかな? 中国とか行くことあるんでしょ?」

「えー、オレですか。いや、だって中国語できなくても碁は打てますから!」

「あ、でもアキラくんと一緒に……いいかも」

「市河さーん、話振ったのに聞いてくれてます?」「あははは」

「まあ囲碁の術語とかは流石に勉強し直してますけどね。中国の知り合いに資料を送ってもらったりして」

「へー、大変なんですねー」「えっ?じゃあ中国の囲碁リーグの映像とかも手に入るの?」

「まあ何とか」「いいこと、聞いたなー」「塔矢先生、中国に行っちゃいますもんね」

「そういえば囲碁サロン賑やかになりました?」

「わかる? 囲碁ブームのお陰で新しいお客さんも増えてるわよ」

「そうですか。このお店やアキラくんや緒方二冠といった塔矢門下の方が出入りしてますから人気ありそうですね」

「どーなのかなー? 逆に囲碁初心者だと敷居が高いかもよ?」

「たしかに芦原先生の言うことも分かりますね。僕も初めて碁会所に行くときは勇気いりました」

「でしょ?」

「やっぱり、そーいうものなのね。何か初心者の方向けにイベントでも企画しようかしら?」

「いいかもしれませんね。緒方先生とかアキラくんのイベントやったら若い女の子も来ますよ」

「そーかーもしれないけど、緒方先生はともかく、アキラくん目当ての女の子が……(ぶつぶつ)」

「え、オレは?」「うーん。芦原先生だと、ちょっと厳しい??」

「……とほほほ。岸本君、遠慮なくない?」「あはは。すいません」

 いつの間にか市河さんは何かを呟きながらカウンター側に去っていった。

「そういえば芦原先生、話変わるけどいいですか?」「えー、なになに?」

「この全日本早碁オープン戦で最終予選を突破したアマチュアの女の子」「あー。彼女ね」

「知ってるんですか?」

「うーん。まあ週刊碁にもあるけど元世界囲碁選手権の学生チャンピオンだからね」

「でもアマ大会ってプロになる前のアキラくんとか強い人は出ないんですよね?」

「うーん。アキラがアマの大会に出なかったのは確かだけど……原因の一つはその女の子だよ」

「え? どういうことですか?」

「ここからは他言無用でお願いするけど――。
 その子が学生チャンピオンになったのは小学1年生のとき」「小学1年?」

「そ、小学1年の女の子が年上の男の子たちをバタバタと倒していくわけよ。自信なくなるよね」

「だって小学校のときの1年の差って大きいですよね?」「そーだよ。普通じゃない」

「彼女が出場した大会は世界囲碁選手権だけだから知らないアマチュアも多いんだけどねー。
 ほら。アキラの世代って層が薄いと思わない?正確に言えばアキラより少し年上の世代になるのかな?
 去年はアキラと同い年の進藤君、年下の越智君、奈瀬女流って豊作だったけどね」

「どういうことですか?」

「そりゃあ世界囲碁選手権でプロになる自信を折られた連中が多いんだもん。
 塔矢先生がアキラにアマ大会の参加を禁じた理由の一つ」

「世界囲碁選手権5年連続優勝の元学生チャンピオンってありますけどプロにはならなかったんですか?」

「うん。有名な先生が弟子に誘ったこともあるよ。」「誰ですか?」

「あの桑原本因坊。ま、当時は桑原棋聖だったかな?」「えっ!?」

「それでね。彼女が断るときに言ったらしいよ。『囲碁の世界には以後10年は私に敵うものは現れない』って――」

「――マジですか? あの桑原先生に」

「で、桑原先生は『さもありなん』って言ったらしい」「うわぁ」

「そういうことがあったから彼女をプロに誘う人はいなくなって囲碁界ではタブーみたいな扱いなわけよ」

「だから、あのときに情報が出てこなかったのか。……同い年のアキラくんとの面識とかあるんですか?」

「対局したことがあるらしい」「らしい?」

「結果を知る立会人は対局者を除いて塔矢先生だけらしいからね」

「けど一つだけ分かることがある。アキラが同世代のライバルに拘るようになったのは彼女の影響が大きいよ」

「え、そうなんですか?」

「そーいう意味では進藤君には感謝かな? アキラが本気でプロになる切欠になってくれたんだからね」

「その話、ホントですか?」

「ほーんと。だから他言無用だよ。特に市河さんの前では禁句の話」

「アキラが不運だったのは同い年くらいでライバルになれるヤツがいなかった。
 だってライバルになる可能性があった早熟の天才たちは世界囲碁選手権で潰されちゃったからね。
 しかも彼女はアキラをライバルとさえ思っていない。
 そしてプロにもならず囲碁の世界から身を引いた。
 たぶんアキラが小学生でプロになろうとしなかったのも彼女の影響だよ。まー推測もあるけど」

「トンデモナイですね。話題の和-Ai-の正体が彼女ってことは?」

「うーん。全日本早碁オープン戦の戦いを見る限りではありえないかな? まず棋風が全然違う」

「どういった棋風ですか?」

「流れを呼んで勝負勘で攻める勝負師タイプだね。
 知られたトッププロでいうと倉田七段みたいな天才肌」

「何人ものプロを倒して騒がれますけど芦原先生から見て彼女の棋力は?」

「もう結果を出してるし、頭の回転や読みの深さは下手したらプロ高段者を超えてるんじゃない?」

「何が目的で突然今になって全日本早碁オープン戦に出場したんでしょ?」

「さあ? 今のところは大会が終わるまで所属のアイドル事務所を通して取材拒否だからねー」 
 

 
後書き
※この話で初めて名前が登場する「東堂シオン」はアニメ『プリパラ』に登場する囲碁が趣味のアイドルです。第二部からは若干の多重クロス要素が入ってきますが『ヒカルの碁』以外の作品は別に知らなくても楽しめるように書いてます。 
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