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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百四話 幼年学校卒業


お待たせしました、未だ筋肉痛と右肩神経痛の状態ですがなんとかなりました。
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第百四話 幼年学校卒業

帝国暦482年6月30日

■帝国軍幼年学校

ラインハルトが幼年学校卒業だけで士官学校進学をしないという話を担当教官に話したところ、担当教官はラインハルトの校内暴力に悩まされては居たが、至極真っ当な思想の持ち主であったために士官学校への進学を勧めたが、元から幼年学校の教官など端から馬鹿にしているラインハルトにしてしてみれば、口五月蠅い下賤の輩としか見ておらずに無視したのである。

ラインハルトが、あまりに意固地な態度であったために他の教官は寵姫の弟を持て余したのであるが、それも彼のみは、天才児ではあるがラインハルトの危うさを感じて、人生経験と対人関係を良くするためにも士官学校への入校をして欲しかったために校長にも相談した結果、校長自らが説得に重い腰を上げたのであったが、結果は同じであり、全く聞く耳を立てずに任官を求めてきたのであり結局寵姫の権威をひけらかす様に見えるラインハルトに押し切られる形で卒業後任官することが決まった。

しかも任官は通常は准尉任官のはずが、いきなり少尉任官という横紙破りであり、此も同期生からは姉のお陰で少尉任官だと更に憎まれる結果になっているが、ラインハルトにしてみれば、馬鹿と阿呆の集まりである貴族の子弟である幼年学校生なんどは、端から馬鹿にしている存在で有るから全く気にしていなかったが、他人に対しての思いやりのある、赤毛の下僕だけは胃が痛くなる状態でそれを見て冷や冷やしていたのであった。


6月30日の今日、帝国軍幼年学校では卒業式が行われているが、例年の卒業式に比べて大多数の教官や卒業生達が落ち着かない表情で緊張感満点に講堂で整列を行っていた。
何故なら、近年の通例で士官学校卒業式にご臨席するはずのテレーゼ皇女殿下が今年に限って幼年学校の卒業式にご臨席為さるのであるから緊張するのも判る事である。

只唯一緊張感もなく面白くなさそうにしている人物もいたが、その隣の赤毛の親友《げぼく》はヤレヤレという顔をしながら、金髪の親友が激発しないようにと思うのであった。

本年度の士官学校卒業式がオフレッサー事件に関して多数の卒業予定生が卒業延期になったために皇族の参加自体が卒業生に対する甘やかしであるとの考えで、皇族はおろか軍務尚書も参列しない卒業式になっているのである、代わって幼年学校にテレーゼ皇女とエーレンベルク軍務尚書とオフレッサー装甲擲弾兵副総監が参列していた。

テレーゼが壇上の貴賓席に現れると全教官、卒業生が最敬礼を行った。
その後、テレーゼの祝辞が始まった。

「幼年学校卒業おめでとうございます。未だ未だ中間ですが士官学校でも頑張ってください」
盛大な拍手の中でテレーゼは貴賓席へ帰る。
続いて校長の訓辞やエーレンベルク軍務尚書の訓辞が続くが、テレーゼほどの拍手は起こらない。

しかしオフレッサーの訓辞は実戦経験からくる重みがあり例え下級貴族出身の成り上がり者と聞いている生徒達でも、単なる石器時代の勇者などでは無いと感じるのであった。

「卿らの卒業は未だ第一歩にも成っていない、しかし此処で培った関係は一生のモノとして大事にするように、友とはよいモノだ、そして彼等との付き合いは今後の人生の糧になる」

しかしラインハルトは相変わらず、オフレッサーを脳筋と馬鹿にしており、端から話を聞いていなかった。

卒業式では成績優秀者にテレーゼ皇女より、恩賜の金時計が贈られた為に、クラスヘッドのラインハルト以外は感動して受け取ったが、ラインハルトは能面ような顔で受け取っただけであった。
テレーゼは渡すそれぞれに言葉をかけていた。

卒業式終了後に特にオフレッサーを同じ地上車に乗せ話をしながら帰るのである。
「オフレッサー、今日は御苦労でした」
「ありがたき幸せ」
「オフレッサー、何時も言うけどもう少し砕けた話方をして頂戴」

「はぁ、しかし」
「まあ、宜しくね」
「はっ」

「所で、今日の卒業式の訓辞は良かったわね」
「お恥ずかしい限りです」
「いえ、あの心意気を語った事は、私でもジーンときたよ。卒業生も極々一部を除いて感動していたよ」

オフレッサーは益々照れるが、テレーゼの次の言葉に表情もキリリとして受け答えする。
「卒業式中ずっと能面のように表情を変えない者がいたでしょう」
「はっ、見事な金髪でしたな」

「アレが、グリューネワルトの弟なのよ」
「ああ、あれが噂の金髪の孺子ですか」
「オフレッサー口が悪いわよ」

「申し訳ありません」
「フフフ、冗談よ冗談、卿はあの者の姿を見てどう思うかしら」
オフレッサーは、何故そこまでテレーゼがラインハルトを気にするのかが気になった。

「はっ、何やら内面を隠して些か不気味に感じますな」
「流石ね、人生経験が豊富だからそう思うのですね、一目見てそう思うのは凄いわね」
「はぁ」

頭の中では、オフレッサーらしくない姿をテレーゼが面白そうに見ていたのである。
「あの者に校長以下が士官学校へ進学するように薦めたのですが、けんもほろろに断られたそうですよ」
「しかし、幼年学校出では士官教育が未だ出来て居ないのでは?」

「校長達は、そう言ったそうよ。けど士官学校の教育は自分には不要で既にそれ相当の実力があるとペーパーテストで満点を出したそうだから」
「ほう。それは侮れませんな」

「けどね、オフレッサー、士官学校は勉強するだけの施設じゃないでしょう、今後の友人関係を作り、多くの者の考えを知り、時にぶつかり時に解り合う、そうして人間関係を作っていく。そう言うところでしょう」

「そうです、いかに能力が有っても、人の心の機微が解らぬ者には、兵はついて来ません」
「流石、装甲擲弾兵を束ねているわ、ボタンだけで兵を殺す艦隊指揮官と違い兵の心が判っているわ」
「いや、小官など未だ未だ未熟者です」

オフレッサーが照れると何か似合わないとテレーゼは思いつつ話を続ける。
「その卒業生が少尉任官をするんだけどね、他の人が聞いたらどう思うのかしらね」
「なるほど、只でさえ生意気に感じる上に更に不快感が増すわけですな」

「そうよ、例えお父様の寵姫の弟とはいえ、出る杭は打たれるのに、その事すら判らないって、ある意味天才故の事なのかしらね」
「小官にはそこまでは」

「まあ良いわよ。あの者は近衛になれと言ったんだけどね、それを断ってきたわよ」
「不敬な事です」
「元から近衛に来るとは思ってないし、手っ取り早く武勲を立てたいみたいだから最前戦を望むようよ」

「幼年学校を出たばかりの嘴の黄色い雛がそこまで言いますか」
「焦っているんでしょうね。早く姉に良いところを見せたいと」
本当は知っているけど、未だオフレッサーには言えないからと、テレーゼは思うので有る。

「それにしても、戦を舐めていますな、痛い目に逢いますぞ」
「それを心配した、教官を無能扱いだからね」
「恩師をですか」

「彼にしてみれば、恩師なんか居ないって訳でしょうね」
「困った者です」
「いっそ、オフレッサーへ預けたら良いのじゃないかしらね」

「はあ、まあ健全なる精神を持つようにはできますが」
「そうよね、あのアルフレッドが威風堂々としてきたのにはビックリしたわよ」
「ランズベルク伯は良い生徒です、砂が水を吸うように我々の技術を貪欲に消化しています」

「じゃあ、来年は楽しみね」
「はっ、上級貴族初の装甲擲弾兵が任官するかもしれません」
「良いことですね、同じ釜の飯を食う事で貴族と臣民の垣根が低くなるでしょうから」

「全くです、部下達も最初は、貴族のぼんぼんに何が出来ると思っていましたが、倒しても倒しても立ち上がる姿に本気だと感じて、今では完全に我々装甲擲弾兵の仲間です」
「オフレッサーに認められるなら、素晴らしい事だわ」

テレーゼの言葉にオフレッサーはまたも照れる。
あっという間にオフレッサー邸へ到着した後、オフレッサー家で昼食を御馳走になりテレーゼはご満悦でノイエ・サンスーシへ帰宅するのであった。


■帝国軍幼年学校寄宿舎

卒業式後に部屋を片づけながら、ラインハルトとキルヒアイスが話していた。
「キルヒアイス、全くくだらない卒業式だったな」
「長い訓辞に祝辞の連続でしたから」

「あの様な話をありがたがる連中はくだらんな」
「はあ」
またラインハルト様の愚痴が始まったとキルヒアイスは内心で溜息をつくのであった。

「キルヒアイス、配属先だが最初近衛を提示してきたが断っておいたぞ、その後軍病院の事務だぞ!巫山戯るなと提示してきた人事局に文句を言っておいたからな」
「ラインハルト様いつの間に?」

「ああ、昨日の事だ。お前は忙しそうだったから、俺が代表して会っておいた」
「ラインハルト様、それで正式な配属は何処になったのですか?」
「喜べ、望んでいた通りの前戦勤務だ、惜しむらくは正規艦隊では無いだけだが」

「何処の艦隊ですか?」
「カイザーリング艦隊だな、イゼルローン要塞を駐屯基地にして、帝国領内と同盟領内を動く艦隊だ」
「なるほど、調べておきます」

「オーディン、出発は来週だ、その前に姉上に会えるから、楽しみだ」
「はい」
「キルヒアイスもご両親に会ってきた方が良いぞ」

「両親には、出発前にあっておきます」
「それにしても、長かった、此から出世して姉上を一刻も早く取り戻すぞ」
「はい、ラインハルト様」

 
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