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夢幻水滸伝

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第十九話 四国上陸その九

「頭とかそういうのも必要じゃ」
「あらゆる物事からですね」
「決まるんじゃ、数や力は大事じゃがな」
「それだけではないですね」
「その中で一番大事なのはじゃ」
 それはというと。
 正岡は袖から手を出して右手の親指で自分の胸を指し示して言った。
「ここぜよ」
「心ですね」
「そうじゃ、ハートじゃ」
 それだというのだ。
「ハートが一番大事ぜよ」
「心ですか」
「幾ら強くてもハートがないといかんぜよ」
「天下人、ひいては太平洋や世界を治める心があれば」
「天下を治められるんじゃ」
「そうなりますね」
「織田信長さんもそうじゃったしひいては足利尊氏さんもじゃ」
 彼等の本来の世界の英雄の話もした。
「これは古今東西同じぜよ」
「ユリウス=カエサルや宋の太祖もですね」
「そうぜよ、カエサルさんもでっかい人じゃった」
 何かと逸話が多いが器もまた大きな人物だった、寛容さを忘れず兵士達が自分の髪の毛のことを言っても咎めなかった。かなり気にしていたが。そして正岡もそのことを笑って言うのだった。
「禿げ頭を言われても咎めんかったしのう」
「それはまた器が大きいですね」
「わしだったら怒るぜよ」 
 正岡は口を大きく開けて笑って言った。
「それは許せんからのう」
「髪の毛のことはどうしても」
「気になるからのう」
「実は私の宗派は髪の毛を剃らないので」
「だからじゃな」
「髪の毛のことは気になります」
 日本の仏教ではそうした宗派もあるのだ。
「やはり」
「ははは、わしもじゃ。小さい小さい」
 自分のことも笑って言ったのだった。
「そんなもんを気にして怒るからのう」
「気にはなってもですね」
「それで怒らん、やっぱりカエサルさんもでっかい人だったんじゃ」
「かなりお嫌だったそうですが」
「それでも怒らんのは立派じゃ」
 勝利の凱旋の時に兵士達が冗談で禿げの女ったらしが帰ってきたので皆女房を隠せと言ったが処罰も咎めもしなかったのだ。
「わしも将来どうなるかじゃ」
「髪の毛がですか」
「禿げる時は禿げるぜよ」
 この未来を言うのだった。
「わしの父方の祖父さんが見事ぜよ」
「そうですか」
「だから下手したらわしもじゃ」
「そしてその時にですか」
「わしがどう出来るか」
 こう言うのだった。
「かなり不安じゃ」
「そこは器をですね」
「大きく持ちたいものじゃ」
「そして器が大きいと」
「そうじゃ」 
「天下、そして太平洋をですね」
「治められるわ、わしにその器があるか」
 正岡は自分のことも話した。
「それが問題じゃな」
「どう思われますか」
「それを今から見極めるか」
「では」
「また戦じゃ」
 こう言ってだ、早速だった。 
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