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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第108話:グランバニアは概ね平和!?

 
前書き
今回のエピソード……
突然の事が巻き起こりすぎてビックリすると思います。
ビックリしたら強がらないで素直に報告してね。 

 
(グランバニア城・武器試射室)
フローラSIDE

グランバニアの新兵器を視察する事に、リュカさんは心底不快感を表していましたが、ウルフ宰相の自らを犠牲にした説得により、渋々ながら私達は見学する事が出来ました。
今回、新兵器の的になってくれたのは新品の鋼の鎧でしたが、以前に行った公開処刑を掲載した新聞記事と併せてみると、その凄まじさを伺う事が出来る。

お父様もリュカさんが本気でこの兵器を広めたくない事を存じているので、兵器視察を終えた直後には交渉に入ろうとはしませんでした……
と言うよりも、今回の視察に連れてきた方々の事で手が離せなくなってる様子です。

視察に連れてきた方というのは、各国の代表者(ヘンリー様やアイシス様)の事ではなく、通商都市連合の各都市代表者の事で、ポートセルミ・ルラフェン・カボチの長達になります。
何が問題なのかというと……

視察が終わるや否や、カボチ村長がリュカさんに近付いて、
『いんやぁ~……流石グランバニアの新兵器ですねぇ! 素晴(すんば)らしい性能だがのぅ!!』
と褒めて擦り寄ってきたのです。

後でお父様に聞いた話しでは、どうやらカボチ村はリュカさんが王様になる以前に関係があったらしく、リュカさん自身は良い感情を持ってないとの事。
それを理解してるカボチ村長は、少しでも心証を良くしようとお世辞を使って近付いて、今後の関係修繕を謀ろうとしたそうなんですが……

新兵器の事で抜け駆けされると感じたポートセルミ町長とルラフェン町長は、慌ててリュカさんに近寄り自分達も新兵器の性能に惚れ込んでしまった旨をアピールしたのです。
リュカさんの性格を存じ上げてる人には当然の事なんですけど、おべっかを使って近付く商人に激しい嫌悪感を表す彼は、頗る機嫌が悪くなりました。

そしてその嫌悪感は、最初に話しかけてきたカボチ村長を巻き込む形で爆発する。
『何でカボチの馬鹿が来てるんだよ!? 嫌がらせかルドマン?』
そう言って過去の出来事に問題点をすり替えさせて、新兵器の話が出来ない雰囲気にして、ご自身の執務室へと踵を返しました。

こうなると連れてきた責任者のお父様は、各国の代表方を含めて随行員等の心を落ち着かせる為に、一生懸命説得作業に翻弄されます。
跡取りであるアンディーもお父様の手伝いの為、その場に残って説得の手伝いをし、私には目で『リュカさんの機嫌を直してきて』と合図されました。

リュカさんの性格からして、女の私から説得すれば多少は機嫌を直してくれると思いますが、何処まで出来るかは解りません。
ですが、そんな我々に気付いたウルフ宰相とティミー君が、ビアンカさんを伴って私と一緒にリュカさんの後を追ってくれました。

なお、ウルフ君の肩には何故だかベビーパンサーが1匹しがみついて乗ってます。
懐かれてるのでしょうか?
凄く可愛くて羨ましいですね。

ですが……ティミー君が動いたので、その部下のリュリュさんと警護のラングストン近衛隊長も一緒に付いてくる事になりました。
リュリュさんは“お父さんLOVE”なので、我々の邪魔をしそうですし、ラングストン隊長は“リュリュさんLOVE”なので、彼女の肩を持ちそうで、正直不安が募ります。


(グランバニア城)

「リュカさん……何だか申し訳ございませんでした」
「フローラが謝る事じゃないよ。ただ見せたくない物を見せなきゃならなくなって、褒められたくない事柄を褒められて、それを嫌いな奴が行ったってのがムカつくだけだから」

何時もの優しいリュカさんが、私が好きになった優しい笑顔で私を宥める。
本心からは怒ってないのだろう事は窺えるけど、カボチ村の方々を嫌っているのは凄く感じる。
一体何があったのでしょうか?

「あのウルフ宰相……何でリュカさんはカボチ村を嫌ってるんですか?」
誰もが認めるグランバニアのナンバー2であるウルフ宰相に聞いてみる。
「さぁ……俺もリュカさんがカボチ村を嫌ってる事を初めて知った」
と新たな発見である事に驚いていた。

「ティミー殿下は何かご存じですか?」
私も次は息子さんの彼に聞こうと思ってたのだが、先を越される形でウルフ宰相が訪ねてくれた。
しかし……

「さぁ……僕も初めて知ったよ……母さんは何か知ってますか?」
「私も詳しい事は知らないわ。ただピエールが、あの村で嫌な事があったって言ってたわね……たしかラインハットの動乱を解決した直後の事だったと思うわ」

ラインハットの動乱を解決させ、私やビアンカさんも存じない時の出来事となると、リュカさんが冒険者としてサラボナに立ち寄り、私と再会を果たす前の事だと思うわ。
当時に何があったのか気になるけど、お父様は如何して何かあった事をご存じだったのですかね?


(グランバニア城・国王執務室前廊下)

色々と疑問は残ってる物の、先程よりかは機嫌が良くなってるリュカさんと共に、彼の執務室前まで戻ってきた。
カボチ村との間に何があったのか聞きたくて、タイミングを伺っていたのですが……
突然、前方に大きくて暗い穴が出現した。

「な、何ですかあれは?」
思わずリュカさんに尋ねてみたが、勿論彼も知る由もなく顔には警戒心が満ち溢れている。
しかし事態は私の心構えを待ってはくれなかった。

「リュカ様、危ない!!」
突然我々の後ろから付いてきてたラングストン近衛隊長が、大声で危険を知らせて近付いてくると、私達の後方にも同じ様な大きな穴が開いており、そこから大きくて白い何かが凄いスピードで突進してきた!

リュカさんは咄嗟に反応し、近くに居たビアンカさんを抱きかかえると、ウルフ宰相を足場代わりにして蹴り、私に飛び付いて床へと伏せさせる。
視界の端では白く大きな物体が黒い穴から飛び出して、私達が先刻(さっき)まで居た場所を勢いよく通過した。

もしリュカさんに押し倒されてなかったら、私もビアンカさんもあの白い物体に激突されていたかもしれない……
白い物体が通過した廊下の向こう側には、同じ様に凄い反射神経で避け躱したティミー君が、尻餅をついて私達の方を呆然と見詰めている。

「何だ今のは?」
「と、父さん……ウルフ君とリュリュ、それと序手でにラングストンが今の物体に連れ去られました!!」
気が付くと私達の前後に現れてた暗い大穴は消えており、人間が3人も居なくなっておりました。

「今の……ラーミアか?」
ラーミア? 今リュカさんはラーミアって言いましたか?
ラーミアって以前に紹介された女の子の事かしら?

あの女の子が何だと言うのでしょうか?

フローラSIDE END



(????????)
ウルフSIDE

「ここは……何処だ?」
グランバニア城の廊下を歩いていたはずなのだが……突然黒い大穴が現れて、そこから何か大きな白い物体が突進してきて、リュカさんに蹴り押されて白い物体に巻き込まれたと思ったら、見た事もない場所(しかも外)に倒れていた。

慌てて周囲を確認したが、一緒に巻き込まれたリュリュさんとラングストンも、俺と同じ様に動揺した表情で尻餅をついていた。
「ぶ、無事か?」

「えぇ……我々は無事ですけど……ここは何処でしょうか?」「うにゃぁ~」
ラングストンはゆっくり立ち上がると、近くで尻餅をついていたリュリュさんを優しく立たせると、怪我の有無を伝えて現状の確認をしてくる。俺の肩にしがみついてるソロも無事みたいだ。

「俺が知りたいよ……またどっかの異世界じゃないのか?」
そうだ……こんな事は経験済み。
あの黒い穴も、白い物体もリュカさんを目当てで発生したと思えるし、また馬鹿神が強制的に連行しようとした結果、無関係な俺等が巻き込まれたのかもしれない。

……ってかリュカさんの奴、俺の事を蹴飛ばして自分の身を守ってた!
あのオッサンが俺を蹴らなければ、俺が巻き込まれる事は無かったんじゃねーの!?
ふざけんなよ!

「おい馬鹿ウルフ。リュカは如何した?」
「あ゛ぁ? 誰に物を言ってる……んだ?」
突然『馬鹿ウルフ』呼ばわりされた為、ムカついてドスの効いた口調で振り返ったのだが、そこに居たのは見た事もない美少女だった。

背丈は俺よりも少し低いが、真っ黒で綺麗な髪を地面まで伸ばしており、真っ白な肌とは絶妙なコントラストを表している。
そして切れ長で少し目付きの悪い黒い瞳は、不機嫌さを真っ直ぐに表している。

風に煽られ彼女の来てる真っ白なワンピースの裾がヒラヒラはためいており、そこから覗える服の中はノーパン・ノーブラである事を俺に教えてくれる。
本当に誰だ? 俺の記憶には残ってないのだが……

「何でお前等が居るのに、リュカだけが来てないんだ!?」
「お前誰だ!? お前か俺等をこんな所に連れてきたのは?」
自分の欲求しか伝えず、俺等への説明をしないこの美少女に、流石に怒鳴り付ける俺。
だが……

「だからお前は馬鹿ウルフなんだ! ラーミアの事を忘れたのか」
「ラ、ラーミア?」
目の前の美少女は俺の言葉を聞いて、不機嫌さを増大させながら俺の鼻先へ独特な形状の杖を突き付けてきた。そう見覚えのある杖……変化の杖を突き付けて。

「え!? ラーミアって、あのラーミア!?」
「他に誰が居る! そんな事よりも如何してリュカは来てないんだ? 折角時空を移動する方法を習得したのに!」
じ、時空を移動する!?

「おい如何いう意味だ……時空を移動するって?」
「本当に馬鹿だなお前は。そのままの意味だよ馬鹿! やっと大人になれてリュカと交尾出来るようになったのに、人間の寿命は短くてリュカが先に死んじゃったから、一生懸命時空を移動する方法を見付けて、リュカを迎えに行ったんだ」

えぇ~……そんな凄い事が出来る鳥だったの?
だって凄いアホの子だったじゃん!
何で時空を移動出来ちゃうの?

「時空を移動するのには凄いエネルギーを必要とするんだ……一旦卵に籠もって充電してからじゃないと行えないんだぞ! お前等が邪魔しなければリュカと交尾が出来たのに!!」
やっぱりアホの子! 死んだ人間と交尾する為だけに、凄い力を使ってる。

「あぁもう……何度も時空を移動して、やっとリュカを見付けたのに」
えぇ……何度もやってんの?
これ何度目? もしかして無関係の人間を沢山巻き込んできたの?

「仕方ない……この世界で落ち着ける場所を見付けて、またエネルギー充電するしかないな」
え、何……諦めてないの?
凄い鳥だけど、凄いアホでもある鳥だ。

そんな事を思いながら、思わずラングとリュリュさんに視線を向けてると……
(バサッ)と大きな羽ばたき音が聞こえた。
直ぐさま視線をラーミアに戻すと、先刻(さっき)の美少女が見た事のある大きな白い鳥に変身しており、大きく羽ばたいて飛び立ってしまった。

「……お、おい。俺等は……如何すれば良いの?」
状況を理解しきれなくて、飛び去る大鳥の姿を見詰めながら、情けない口調で先刻(さっき)まで居た美少女に問いかけていた。

「もしかして……私達……放置……ですかねぇ?」
「え? ヤダなぁリュリュさん……俺、もう少しでパパになるんだよ。グランバニアに帰らないと……困るじゃん」
そう困るんだよね。俺には重大な仕事もある訳だし。

「ですがウルフ殿……彼女(ラーミア)が去ってしまっては……」
「え……嘘だろ? 帰れないなんて事はないよね!?」
「ラーミアちゃんを探して説得しないと……帰れなくない?」

マヂかよぉ!
困るよぉ!
何だよこれ。何処だよここ。





暫くの間、俺達は一言も喋らなかった。
何を喋って良いのか解らない……それが本心ではあるのだが、今後の展望が見えてこない事も事実だ。
以前アホ神に過去へ召喚された時は、取り敢えず説明だけはされたから、心構えをする事は出来たのだけど……

「ね、ねぇ……何時までもここで呆然としてても問題は解決されないし、取り敢えずこの世界の事を確認する為に、どこか人が居る所に行ってみない?」
普段は変態ぶりが鼻について迷惑な女だったけど、流石はリュカさんの娘だけあって状況対応力は高い。

確かに呆然としてても何も解決しない訳だし、この場から離れて問題解決に尽力した方が良いだろう。
とんでもない状況ではあるが、救いとして知人が同じ状況に一緒に陥れられた事だ。
と言うか、現状で頼れるのはこの3人だけ。

何とかして一緒に元の世界へ戻らなければならないだろう。
その為にもラーミアを探し出す必要が有るし、そうする為にもこの世界の事を知らなければならない。
となれば……

「よし。取り敢えず町か村を探そう。そこを橋頭堡に……」
(ゴゴゴゴゴ、ガシャーン!)
リュリュさんの提案を採用し、近隣を探索する事を決意した途端、近くの森の中から大きな音が聞こえてきた。

危険な生き物が付近に生息しているのであれば、放置して置く訳にも行かないので、リュリュさんとラングに視線を向けて意思確認をすると、俺等は自らの武器を手にして音のした方へと駆けだした。

平和なグランバニアでの生活に戻るべく、何やら危険が漂ってくる異世界での冒険が始まる。
今回は頼りになるリュカさんが存在しないのが気がかりだ……

ウルフSIDE END





グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン) 完
『リュカ伝その3.8おぷしょんバージョン』へ続く


 
 

 
後書き
まさかまさかの最終回。
勿論リュカ伝は続きますが、えくすとらは最終回。 
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