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DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~

作者:山神
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開幕

 
前書き
いよいよ開幕する運命の大会。果たしてどのような結果になるのかな 

 
『宣誓!!我々選手一同は―――』

先頭に立ち、片手を挙げて選手宣誓を行う選手。それを真後ろから見つめる穂乃果たちと、監督の集まる場所から静かに目を閉じ聞いている剛。

『以上で開会式を終了します。選手の皆さんは―――』

開会式も無事に終了し選手たちが1番近い出口からグラウンドを離れていく。

(初戦は明日の第三試合。このあと借りたグラウンドで調整して・・・)

このあとの予定を頭の中で確認しつつグラウンドを離れていく。今回の大会の会場は埼玉県。隣の県ではあるが移動時間などを考えるとどうしても学校に戻るのは厳しい。しかも今大会はわずか7日間で争われることもあり、選手層の薄い音ノ木坂学院は疲労を最小限に抑えることが求められる。

(初戦の後一日空くが、その後は4日連続での試合だ。花陽と海未をどう回していくか・・・)

短い期間での試合となると投手の起用が鍵になる。エースの花陽、サイドの海未、それににこと絵里にも投げさせることになるだろうが、どのような継投を行っていくか、まだ決めきれていない。

(まぁ、初戦の戦い方は決まってるけどな)

もっとも重要となる一回戦。その試合はすでにどのように戦っていくか彼の中では決まっていた。彼は他の監督とあいさつしつつ、最後の調整を行うため選手たちと借りているグラウンドへと向かった。

















翌日

「みんな!!ランニング行くよ!!」
「「「「「オオッ!!」」」」」

現在の時刻は12時を少し回ったところ。スタンドで試合を見ていた穂乃果たちはアップのために球場の外へと出ていく。

ヒデコ、フミコ、ミカ、試合見ててね」
「うん!!任せて!!」
「しっかりアップしてきてね~」

彼女たちと同じユニフォームに身を包んだ三人組。彼女たちは試合を撮影するためのビデオを回していた。

「それにしてもいいのかしらね、あの子たちにあんなに手伝ってもらって」
「悪いと思うのですが、三人ともやらせてくれと聞かなくて」

彼女たちも廃校を何とかしたいと思う気持ちは一緒らしく、頑張っている穂乃果たちを手伝おうといつも助っ人に来てくれるのだ。

「ええ友達持ったね」
「あの子たちのためにも負けられないわよね」

小耳に挟んだだけだが、この試合には多くの応援団が来るらしい。そうなればますます負ける姿など見せるわけにはいかない。

「そうと決まれば万全な状態に仕上げるよ!!みんな!!ファイトだよ!!」

















♪~♪~♪~

ヒデコからまもなく試合が終了しそうと聞いた面々は万全に仕上げた状態のまま、各々荷物を持ちベンチ裏へと待機する。

「うわ~・・・緊張してきた・・・」
「うん・・・もうすぐ始まるんだね・・・」

勝利校の校歌が終わればすぐに準備をしてシートノックに入る。そうなればすぐさま試合が始まるため、慣れない彼女たちは緊張感に包まれていた。

「何よ、こんなの全然平気じゃない」
「そんなこと言って~、真姫ちゃん足震えてるよ」
「うるさい!!」

すでに浮き足立っている部員たち。それを黙って見守っていた剛だったが、ベンチに入ってもその様子が抜けないことからさすがにいけないとあることを決めた。

「穂乃果、全員集めろ」
「はい!!集合!!」

まもなく規定のキャッチボールに入ろうとしていたところだったが、その前に剛が全員を集める。

「もうここまで来たら俺から言うことは何もない。穂乃果、全員で一つ掛け声してみろ」
「掛け声ですか?」
「あぁ、何でもいい。全員で心を一つにするんだ」

このチームが勝つにはチームワークが重要だと常々言ってきた彼は、最後にそう指示を出し選手だけにする。9人だけになった円陣で、視線を集めるサイドテールの少女は深呼吸をする。

「穂乃果たち、今までずっと頑張ってきたよね。ここまで来たら勝つしかないよ!!みんな!!」
「「「「「うん!!」」」」」

全員がうなずき、意志を確認する。ここで穂乃果は何を思ったのか、予想外の言葉を放った。

「よーし!!1!!」
「!?2!!」

突然の数字に困惑しながらも続けたことり。それを見て他の全員も後に続く。

「3!!」
「4!!」
「5!!」
「6!!」
「7!!」
「8!!」
「9!!」

合わせていた手を離し肩を組む。何の打ち合わせもしていなかったのに全員の息はピッタリで、本当に通じあっているかのようだった。

「音ノ木坂!!」
「「「「「ゲーム!!スタート!!」」」」」

重なりあったその声が球場中に響き渡った。突然の無茶ぶりに臆することなくチームを一つにした少女を見て、剛は思わず微笑んだ。

(こいつはこうなる星の元に生まれたのかもしれないな)

キャプテンとしての素質をすべて持っている彼女を羨ましく思うのと同時に、頼りになると再認識する。それから4分間のキャッチボールに7分間のシートノックを済ませた彼女たちは、整列を行い敵に一礼する。

整列が終わりベンチへと帰ってきたメンバーたち。今回の試合は先攻のため、先頭打者の穂乃果と二番の凛がヘルメットを被る。そしていよいよ、音ノ木坂学院の運命を決める戦いが開幕した。

『1番キャッチャー高坂さん』
「はい!!」

アナウンスに返事をした穂乃果に思わず吹き出した剛。この日のオーダーはこのようになっている。

1番 捕手 穂乃果
2番 二塁手 凛
3番 左翼手 真姫
4番 右翼手 海未
5番 遊撃手 絵里
6番 中堅手 希
7番 三塁手 にこ
8番 投手 花陽
9番 一塁手 ことり

笑いが収まったところで先頭の穂乃果にサインを出す。それを受けた穂乃果はうなずくと打席で構えを取った。

相手の先発投手は背番号11のサウスポー。大きく振りかぶった彼女は、左打席で構える少女に第一球を投じる。

カーンッ

初球からフルスイングしていく穂乃果。結果は真後ろへのファールだったが、それはタイミングが合っていることを意味しており、ベンチから大きな声で誉め言葉が飛んでくる。

「・・・」

それを見てキャッチャーは次なるサインを出す。サウスポーはうなずき、振りかぶって次なる球を投じる。

(カーブ!!)

ストレートにタイミングがあっているとみるやすぐさま緩急をつけに行く。

カキーンッ

しかし、穂乃果はその球に対応するとバットをギリギリまで残しレフト前へと流し打つ。

「「「「「ナイバッチー!!」」」」」

先頭打者の出塁に盛り上がるベンチ。これには相手バッテリーは驚愕しており、次の凛がバントの構えをすると、サードをわずかに前進させていた。
だが、身体能力の高い凛にすんなり送らせるはずがない。

「走った!!」

初球からいきなりスタートを切る一塁走者。サウスポーにも関わらず足が上がった瞬間走り出したため、キャッチャーは二塁に送球できずに盗塁成功。ノーアウト二塁とする。

「チャンスよ!!凛!!」
「頑張れ凛ちゃん!!」

同級生からの声援を受け2球目打ちに行く。このボールを引っ掛けセカンドゴロに倒れるが、その間に穂乃果が三塁に到達。ノーアウト三塁。

「真姫!!思いきりいきなさいよ!!」
「穂乃果ちゃん還してあげて!!」

ここで打席に入るのはチームで1、2を争うスラッガー真姫。彼女は静かに打席に入り、サインを受ける。

(何もないよ。打っていけ)

剛からは何もサインが出ない。守備もまだ初回とあって前進する様子もない。

(来なさい)

力が入っているようだが、膝はユラユラと揺れておりボールにリズムを合わせている。投手は三塁ランナーを警戒しながら、初球を投じた。

カキーンッ

肩口から入ってきた変化球。それを見逃すことなどするわけもなく、打ち上げられた打球は高々と放物線を描きながらライトスタンドへと吸い込まれた。

ワーワーワーワー!!

横濱高校の勇姿を見に来たであろう観客たちは初出場音ノ木坂学院が先制したことに驚いている。いきなりのホームランを放った真姫は得意げな表情でホームへと帰ってきた。

「やったわね!!真姫!!」
「すこいよ真姫ちゃん!!」
「凛が出てたらもう1点入ったのに!!」
「やったやん!!」
「と・・・当然でしょ!!」

みんなからの称賛の声に髪の毛を巻き巻きしながら照れたような表情を見せる真姫。その隣ではチーム初ヒットを放った穂乃果が絵里から頭を撫でられ気持ち良さそうにしていた。

「私も続きます!!」

続いて打席に入るのは海未。ここで剛はようやく自分の組んだ打順が生きることに少し喜びを感じていた。

(海未はリードオフマンだからな。チャンスを作る方が向いている)

彼女は弓道と舞踊で鍛えた高い集中力がある。それを研ぎ澄まさせボールをよく見て打たせれば高い打率を残せると考えていた剛は徹底的にそれを覚え込ませた。

カキーンッ

その結果、海未は三遊間に鋭い打球を放った。

「抜けた!!」
「レフト前!!」

完全に抜けると思われた当たり。しかし横濱のショートは飛び込みそれを掴むと一塁へ大遠投。アウトにした。

(あの当たりをアウトにするか。海未は足もあるのに・・・)

打球が鋭かったこととショートの動きがよかったことで2アウトになった。続く絵里は四球で出塁したものの、希が一二塁間の当たりをうまく処理され3アウト。チェンジとなった。

「花陽!!取った後だから入り丁寧にな」
「はい!!」

初回は2点止まりだったが、先制点を奪ったことでチームの雰囲気は明るい。元気にフィールドに散っていった9人はイニング間の準備を行い、プレイへと入った。

(行くよ、花陽ちゃん)
(任せて)

サインを受けてセットポジションからゆったりと足を上げ投球する。敵はそれを果敢に打ちに来たが、外角低めに決まったこともあり空振り。

(走り込ませたおかげで軸が安定してるな。問題はペース配分だが・・・)

先頭打者をサードゴロ、次打者をレフトフライにわずか5球で仕留めたバッテリー。続く3番が左打席に入る。

(ん!?背高ッ!!)

その少女を見て剛は驚いた。彼自身日本人男性としては背の高い分類に入るが、打席に立つ少女はそれに負けないくらい高い。スラッとした体から伸びる腕が、どんなボールも捉えてしまいそうに見える。

(大きいなぁ・・・立ち位置は・・・)

その打者を観察しながらサインを送る。マウンド上のエースはそれにうなずき投球する。

カキーンッ

「ライト!!センター!!」

真ん中から内角に食い込んでくるスライダーを見事に捉えた少女。打球はセカンドの頭の上を越えていき、ライトの海未が必死に抑えるが、バッターランナーは二塁へとスライディング。ツーベースとした。

(ベースよりに立ってたのに、腕を畳んで打ち返すなんて・・・)

てっきり外角待ちだと思っていたのに、内角をキレイに捉えられ思わず悔しがる穂乃果。だが、キャッチャーが冷静さを失ってはいけないと教えられていたため、深呼吸して気持ちを落ち着ける。

「花陽ちゃん!!2アウト!!次で切るよ!!」

その声にうなずく花陽。しかし、続く打者を見て全員が固まった。

(なんだ!?こいつらガタイ良すぎだろ!?)

次の打者は身長は一般男性ほどだが、体が大きい。まるで一昔前の捕手のようだが、右打席に入るその背番号を見てさらに驚かされる。

「ミカ、あいつのポジションは?」
「はい!!センターです!!」

背番号8だったためまさかとは思ったが、案の定センターを守っている選手らしい。

(あのガタイでセンターだと、相当身体能力が高いのか。それとも希みたいに直感的なものに優れてるのか)

前者の方が可能性は高いが、それはそれで対応が面倒くさい。捕手を務める穂乃果も困ったらしく剛に助けを求める。

「・・・センターってどっち投げだった?」
「?右投げでした」

スコアラーのミカにそんな質問をした後、穂乃果へとサインを送る。彼女はそれにうなずき花陽それを伝える。

ビュッ カキーンッ

クイックで投げたスライダーを思いきり引っ張った4番打者。しかしそれは大きく切れ、レフトファールスタンドへと入っていった。

(なるほど!!そういうことですね?)
(わかったならあとは任せるぞ)

初球ベルト付近から入ってくるスライダーをフルスイングした打者を見て剛の狙いに気が付いた穂乃果。彼女はその閃きを花陽に伝え、彼女もうなずき投球に入る。

カキーンッ

またしても快音を残した打球。しかしそれは三塁のファールゾーンを鋭く転がっていき、あっさりと追い込まれた。

「あわわわ・・・」

その当たりに花陽は恐怖を感じていたが、周りには一切焦りがない。

(それで最後は・・・)

すでに仕留め方を決めていた穂乃果はチャチャッとそれを出す。花陽はまだ震えていたが、彼女の指示を受けるとその通りに投げた。

(真ん中!!甘い球!!)

先程までの厳しいコースから一転、真ん中へのハーフスピード。これを見逃すはずもなく振りに出るが、捉える直前、そのボールが沈んだ。

「ストライク!!バッターアウト!!」

最後はスプリットで空振り三振。ランナーを出したものの、そのピンチを見事に凌ぎきった。

「ナイスかよちん!!」
「よくやったわ!!」
「やればできるじゃない!!」

ナデナデと皆から誉められて嬉しそうに頬を緩める花陽。特に凛からのボディタッチが激しかったが、真姫がそれを引き剥がしていた。

(普通身体能力の高いやつは左打席に立たせる。その方が一塁に近くなるからな。ただ、視力の関係でどうしてもそれが出来ないやつもいる)

一般的には投手に近い方の目を利き目にした方がいいとされており、その違いで打撃が全く変わるともされている。敵の体格とポジションからそのことに気が付いた剛は、それを利用した配球を行った。

(利き目の視力の方が少しでも高いと比較的内角が見えやすくなる。その分長打は打てるがファールも多くなるんだ)

当然個人差はあるが、経験の方を信じる場合の方が彼は多い。それで今まで結果を残してきたのだから、なおさらだ。

「ほら、いつまでも盛り上がってないで準備しろ。攻めていくぞ」
「「「「「はい!!」」」」」

ベンチに入ろうとしない選手たちを宥め試合を進行していく。ただ、あの3、4番がいることにはわずかに不安がある彼は、どちらに転ぶかわからない試合に眉間にシワを寄せていた。




 
 

 
後書き
敵にもやっぱりキーマンはいますよね。強豪校ならなおさら・・・最後の大会だと突然覚醒する人もいますが、その辺まで出てくるかはわからないです。 
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