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ウルキオラの転生物語 inゼロの使い魔

作者:銭亀
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第6部 贖罪の炎宝石
  第5章 人外の力

 
前書き
どうも!どうも!どうも!
お久しぶりでございます!本当にお久しぶりでございます!
前作から約2年半の歳月が流れてしまいました。
まずは、長い間更新することができず、大変申し訳ありませんでした。
言い訳をさせていただきますと、2017年4月より、保育士として社会人デビューを果たしました!
まあ、予想はしておりましたが、これまた大変な激務の嵐!!この二次小説のことを思い出し、『更新せねば』という気持ちは大いにあったのですが、体も心もついていけず……。気が付いたら2年半という歳月がかかってしまいました。
しかし、保育士としての仕事も3年目を迎え、大方板についてきた今日この頃、ようやく余裕が出てきてまいりました。
ので、ここで更新の再開を宣言させていただきます。
とはいえ、『また止まるのでは?』と思っておられる読者の方も多いのではないでしょうか?
はい。私も自信をもって言えぬところがございます…。
ですが多くの人に読んでいただいている事実。また、途中で投げ出したくはないという自信の思いもあり、今日にこぎつけました。
目安としましては、1.2週間に一話上げるペースで頑張りたいと思っています。
それでは、お楽しみくださいませ。
……本当に長らくお待たせをいたしました。
 

 
ヴァリエール公爵の屋敷…外観的にはもはや城のレベルであるが、その屋敷からはヴァリエール公爵領を見渡すことのできる大きな窓がいたるところに設置されている。

そんな窓からは、もちろんウルキオラとカリーヌの決闘が行われた庭園も見ることができる。

そこは、ほんの数時間前にまるで自然災害のような決闘が行われたとは、思えないような静けさがあった。

決闘の件は、ヴァリエール公爵の屋敷に仕えるメイドや執事の間でもちきりの話題となっていた。

もちろん、裏でひそひそと話す程度であったが、「カリーヌ様は次元が違う」、「恐ろしい」、「予想以上」という会話が飛び交ったそうだが、一番は、「カリーヌ様が負けた」、「ルイズ様のお仕えの白い男は何者だ?」という内容のモノであった。

そのせいもあってか、皆ウルキオラを避けているように見えた。

まあ、無理もないが…。

さて、そんな会話がなされているとはつゆ知らず、ウルキオラはある場所へと向かっていた。

シエスタの居室である。

あれだけべろんべろんに酔っぱらっていたので、少し様子が気になったのだ。

シエスタを送り届けた日のことを思い出しながら、屋敷の廊下を歩いていく。

ウルキオラは見覚えのある扉の前で足を止めると、その扉を二回ほど叩いた。

すると、がたがたっ!と物音がした後、聞き慣れた声が扉の向こう側から聞こえた。

「ど、どなたですか?」

どうやら随分とびっくりしている様子であった。

「俺だ」

ウルキオラの声を聴いたシエスタは、足早に扉へと近づいた。

きぃー、という音と共に、扉が開いた。

「ウ、ウルキオラさん?」

「酔いはさめたか?シエスタ」

シエスタは申し訳なさそうに俯きながら口を開いた。

「はい…お陰様で…」

「そうか…」

ウルキオラは、そんなシエスタの様子を気にも留めない様子で答えた。

「あの、申し訳ありません。ウルキオラさん」

「何がだ?」

「私、酔ってなにか失礼なことをしてしまったようで……」

シエスタは激しく恐縮していた。

「まあ、そうだな」

ウルキオラは当時のシエスタの行動を思い返し、嘘偽りなく言葉を返した。

「く、癖なんです。お酒飲むと、わたし、その、いつもと違う行動をする傾向があるようでして、はい」

「そうだな、いつも通りではなかったな」

ウルキオラのいつもと変わらぬ口調に、シエスタはなんともいえぬ気持になる。

「あの、本当に申し訳ありませんでした…」

シエスタは頭を垂れた。

「気にするな。だが、酒は少し控えた方がいいかもな」

ウルキオラは申し訳なさそうに謝罪するシエスタに、アドバイスをして見せた。

「そ、そうですね…。これからは自粛します…」

ウルキオラは「そうか」といってシエスタの居室を後にした。

しかし、少し進んだところで、何か思い出したかのようにウルキオラは足を止めた。

「どうかしましたか?」

急に歩みを止めたウルキオラにシエスタは疑問を持った。

「いや、なに…俺の世界の人間どものある言葉が頭をよぎってな。それが今のお前に伝えるにはぴったりだと思ってな」

「言葉…ですか?」

シエスタはますますわからないといった様子であった。

「ああ」

ウルキオラはシエスタの方へと振り返り、微笑したかと思うと、静かに口を開いた。

「酒は飲んでも呑まれるな」




アルビオンとの戦争はすでに止まることのない事態にまで発展していた。

トリステインとアルビオンはいつ戦争が起こってもおかしくない状況下であった。

そのため、魔法学院に募兵官がやってきた。

もちろん、戦争に参加する学生を招集するためである。

魔法学院長であるオールド・オスマンは、学生を戦争へと駆り立てることをひどく反対したが、国の置かれている圧倒的不利な状況などを加味し、拒むことができなかった。

募兵官に王軍への申し込みを行った生徒たちは、それぞれ即席の士官教育を二か月ほど受け、各軍に配属された。

トリステインの軍隊は大きく分けて三つあった。

まず、時の王を直接の最高司令長官とする『王軍』である。

王政府所属の貴族の将軍や士官たちが、金で集められた傭兵の隊を指揮するのであった。

次に、各地の大貴族たちが、領地の民を徴兵して編成する、『国軍』または『諸侯軍』と呼ばれる組織である。

王から領地を賜った貴族は盟約に従い軍を組織する。

ルイズの父、ラ・ヴァリエール公爵が枢機卿に編成を依頼されたのもこのためであった。

その兵はもともと農民のため、国軍は傭兵で編成された王軍に錬度で劣った。

おおよそ遠征に向く軍組織ではないが、王軍のみでは頭数が足りぬため、連れていくことになった。

ルイズの父、ラ・ヴァリエール公爵のように戦に反対して兵の搬出を拒んだ貴族も多数いた。

なお、今回は遠征であるため、国軍の半数は輜重…、つまりは補給部隊として動くこととなった。

最後に空海軍である。

空や海に浮かんだ軍艦を動かす部隊である。

艦長を頂点とする、まさに封建制の縮図ともいえる軍組織であった。

艦の中での絶対権力者、艦長の下に、貴族士官が乗り込み、多数の水兵を指揮する。

水兵といえど、フネを動かすためのみんな何らかの専門家であった。

陸軍とは違い、頭数をそろえればよい、という性格の軍ではないため、経験と日ごろの訓練が何より重視された。

つまり、貴族だから優遇される…と言う訳ではなく、たとえ貴族でも士官候補生のような低い階級だと、平民の平海尉などの上位に位置する階級の輩には威張れないのである。

ウルキオラやルイズと関わりのあるギーシュとマリコルヌも募兵官に王軍への申し込みを行っていた。

ギーシュは王軍所属のド・ヴェヌイーユ独立大隊の中隊長、マリコルヌは空軍の士官候補生として配属された。

二人は初陣ということもあり、たいそう張り切っていたが、予想を大きく下回る配属先であった。

なんと、ギーシュの属するド・ヴェヌイーユ独立大隊は、数だけそろえた戦闘の『せ』の字も分からぬ貴族の子息子女と平民の集まり。

しかも、ギーシュが中隊長を任命されたのはギーシュの実力が買われたわけではなく、ただ単に前の中隊長が戦争を恐れ逃げただけに過ぎなかった。

まさしく埋め合わせである。

そして、マリコルヌの属する空軍は平民も貴族も関係ない、封建制の軍組織。

戦争が始まってもいないのに、既に地獄を見ている二人なのであった。



ダングルテール(アングル地方)。

かつて何百年も前、アルビオンから移住してきた人々が開いたとされる、その海に面した北西部の村々は、常に歴代トリステイン王にとって悩みの種であった。

独立独歩の気風があり、何かというと中央政府に反発するからであった。

百年ほど前、実践教義運動が宗教国家ロマリアの一司教から湧き起こった時も、進取の気性にとんだこの地方の民は、いちはやく取り入れた。

そのために時の王からは恐れられたが……、アルビオン人独特の飄々とした気風も色濃く残し、飲むところはきっちり飲んだため、激しく弾圧されることはなかった。

つまるところ、アングル地方の民は要領よくやっていたのである。

二十年前、自治政府をトリステイン政府に認めさせ、新教徒の寺院を開いた。

それがためにロマリアの宗教庁ににらまれ、圧力を受けたトリステインの軍により鎮定された、と当時の文献には残っている。

二十年前のその日、アニエスはまだ三歳であった。

残る記憶は断片的で、鮮烈であった。

三歳のアニエスは、浜辺で貝殻を拾っていた。

綺麗に削られた貝殻よりも、美しいものをアニエスは見つけた。

それは……、波打ち際に打ちあげられた若い女性の指に光る……、炎のように美しい大粒のルビーの指輪であった。

怯えながら、三歳のアニエスはそのルビーの指輪に触れた。

瞬間、その若い女性は目を開いた。

そして、震える声で、アニエスに問いかけた。

「……ここは?」

「ダ、ダングルテール」

とアニエスが答えると、若い女性は満足そうに頷いた。

アニエスは大人たちに漂着者がいることを知らせに走った。

彼女は瀕死の重傷であったが……、村人の手厚い看護によって一命をとりとめた。

彼女はヴィットーリアと名乗った。

貴族だが新教徒で、ロマリアから弾圧を逃れて逃げてきたと語った。

トリステイン軍の一軍がやってきたのは、それから一カ月後の事であった。

彼らは問答無用で村を焼き払った。

父が、母が……、うまれて育った家が……、一瞬で炎に包まれた。

アニエスは、ヴィットーリアに促されるまま、ベッドの下に隠れた。

次の瞬間、ヴィットーリアが炎に包まれた。

アニエスが薄れゆく意識の中で見たのは、燃え尽きようとしながらも、炎に耐えるための水の魔法を自分にかけたヴィットーリアの姿であった。

一旦記憶はそこで途切れ、アニエスが次に見たものは……。

男の首筋である。

引き攣れた火傷のあとが目立つ醜い首筋である。

アニエスは、その男に背負われていたのであった。

手に持った杖で、その男がメイジであることが分かった。

つまり、その男が自分の村を炎の魔法で焼き尽くしたことを知った。

再びアニエスの記憶は薄れ……、気づくと自分は浜辺で毛布にくるまって寝ていた。

村は炎に焼かれ続けていた。

ゆらめく炎を、アニエスはじっと見つめ続けた。

生き残ったのは、自分だけであった。

あの日から、二十年という歳月が過ぎた。

未だに目をつむれば、炎が浮かぶ。

その日、家族と恩人を焼き尽くした炎が浮かぶ。

そしてその炎の向こうに、男の背が見える。




トリスタニアの宮殿、東の宮の一隅に設けられた王軍の資料室。

ここは王軍でも高位のものしか立ち入れない場所である。

アニエスの出世は、こういった場所に入るためだけにあったといっても過言ではない。

アニエス率いる銃士隊は、今回のアルビオン侵攻に参加しない。

数少ない本国に残る部隊の一つであった。

『平民風情に何ができる』と、軽んじられたのだ。

だが、アニエスにとっては好都合であった。

正直、アルビオンなんかどうでもいい。

そんなアニエスが二週間ほども王軍の資料室にこもり、やっとの思いで見つけ出したその資料の表紙には、こう記されていた。

『魔法研究所実験小隊』

そのわずか三十名ほどの小隊が、アニエスの村を滅ぼした部隊名であった。

ページをめくる。

隊員はすべてが貴族であった。

あいつが?と驚く名前もそこには載っていた。

唇をぎゅっと噛みながら、アニエスは一枚一枚慎重にページをめくっていく。

口惜しいことに、故人も多い。

アニエスの目が、大きく見開かれた。

次の瞬間、表情が悔しさにゆがむ。

なんと、小隊長のページが破かれていたのである。

誰かが破ったことは明白であった。

これでは誰が小隊長だったのかわからない。

一番罪深い男のページが見当たらない。

アニエスは身を震わせた。




アルビオンの首都ロンディニウムから馬で二日の距離にあるロサイスの街に、危険な雰囲気をまとった集団が現れた。

その男たちは、ロサイスの街の外れに向かっていた。

これまた別の、ある集団との合流のためである。

男たちの目に、一隻のフリゲートが入る。

甲板には一人の男と一人の女が男たちの到着を待っていた。

ワルドとフーケである。

「約束から十五分過ぎたよ。ったく、時間も守れないような奴に、針の穴を通すような緻密な作戦が行えるのかね。占領任務だ。面倒な仕事だよ」

「『白炎』メンヌヴィルといえば、傭兵の世界じゃ知られた男だ。残虐で狡猾……。それだけに有能との噂だ……それに……」

「……それに?」

フーケはワルドの思わせぶりな態度を怪訝に思った。

「ここ数年、どうやら奇妙な力を行使しているそうだ」

「奇妙な力?なんだい、そりゃ」

「私も少し知っているだけで、詳しくははわからん。だが、並みのメイジでは全く歯が立たないほどの力らしい。魔法とはまた違う、強大な力だそうだ」

「はっ!なんだい、その胡散臭い話は」

フーケは『ばかばかしい』といった態度でワルドの話をはねのけた。

「なんにせよ遅刻はいただけないね」

そんな話をしていると、メンヌヴィルたちが到着したのが見えた。

甲板からタラップが下ろされる。

艦に上ってきたメンヌヴィル達には、なんとも言えない雰囲気が漂っていた。

生きた心地のしない、嫌な感触である。

それは、到底、普通の人間が発することのできない奇怪なものであった。

いや、もはや人間ではない、といったほうが正しいのかもしれない。

「あんたら……いや、あんた人間かい?」

ここでフーケはあることに気づく。

その奇怪な雰囲気を纏っているのは、前に立つメンヌヴィル一人のものであることを。

集団の奇怪さと錯覚するほどの異様な雰囲気。

「ああ、人間のつもりだ…まだな」

と、メンヌヴィルは淡々と答えた。

フーケは身体が震えるのを感じた。




軍議のために用意された部屋で、一同は今回の作戦を打つ合わせた。

作戦目的は、魔法学院の占領である。

クロムウェルは生徒を人質に取り、攻めてきた連合軍に対する政治のカードの一枚とする心づもりなのであった。

夜陰に乗じてトリステインの哨戒線をくぐり、直接魔法学院をつく。

「子どもとはいえ、メイジの巣だよ?この数で大丈夫なの?」

いつか巨大ゴーレムで学院を襲ったことのあるフーケが、作戦に対する不満を述べた。

「なに、教師のほとんどは戦に参戦するだろう。男子生徒もな。残るのは女生徒ばかりだろう…。それに、そんなものは大したことではない。われらにとっての脅威は別にいるだろう?」

ワルドは、徐々に声を低くして言い放った。

フーケの頭の中にある男が思い浮かぶ。

真っ白ないで立ちに剣を携えた、化け物を。

「それで、この男の出番というわけだ」

ワルドは、先ほどとは打って変わって明るい印象で口を開いた。

「なあ?メンヌヴィル?」

メンヌヴィルはニタッと薄気味悪く口角をあげた。

「はっ!この男にあのウルキオラをやれるってのかい?」

フーケは苛立ちを隠せない。

「お前も感じただろう?メンヌヴィルの底知れぬ奇異な力を」

「そりゃあね、到底人間のそれとは思えないものだよ」

話を聞いていたメンヌヴィルは薄気味悪く上げた口角を大きく開いた。

そして、高らかに笑った。

ネジが外れたように、笑った。

すると、先ほどよりもさらに不快な雰囲気が、力の波動がフーケの身体を襲った。

全身から冷や汗がにじみ出る。

『こいつはやばい』と。

『お前の、いや、人類の敵だ』と。

震える身体を何とか抑え込みながら、ワルドへと視線を向ける。

ワルドも、その不快なものに恐怖を抱きながらも、表情はどことなく希望がにじんでいた。

「彼は、人間だ…元がつくがな」

「どういうことだい?」

フーケは心底理解できないといった感じであった。

ワルドは急に立ち上がると、両手を大きく広げ、目を見開いた。

「手にしたのだよ!メンヌヴィルは!!強大な力を!!!人間の枠を超えた大いなる領域へと足を踏み入れたのだ!」

ワルドは興奮を隠すことなく言葉をつづけた。

「あのウルキオラよりをも斃す神の力を!」

フーケは戦慄した。

ワルドは正気の沙汰ではない。

だが、話は的を射ている。

人間の力ではないのであれば、自分がこのように恐怖を覚えることも不思議ではないと思ったからだ。

逆に、人間の行き着く力の頂だ、と言われたほうがフーケにとっては畏怖を覚える。

ワルドは、ククッとのどを鳴らして笑うと、小さく告げた。

「メンヌヴィルが手にした力は『(ホロウ)』という力だそうだ……。この力であれば、あのウルキオラを叩き潰せる」

メンヌヴィヌはさらに大きく笑い声をあげた。

気が狂れたように、長く笑い続けた。 
 

 
後書き
これまでの話の中で、誤字脱字がとても目立つため、少しずつ修正させて頂きます。 
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