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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 桐嶋和ENDルート
  第46話 分岐する道

H13年5月5日(こどもの日) side-sai

「「ヒカルなんか私に勝てないくせに」」

 もっと碁が打ちたいと思った。永遠のときが欲しいと。

「「ヘン!オマエだって2度もAiに負けたくせにえらそーにっ!」」

 あのときはヒカルにひどいことを言ってしまった。


――私はもうじきに消えてしまうだろう。

 虎次郎がわたしのために存在したというならば、

 私はヒカルのために存在した。

 ならばヒカルもまた、誰かのために存在するのだろう。

 その誰かもまた別の誰かのために、

 そうやって積み重なっていき幾星霜をかけて……

 我々は“神の一手”に続く遠い道程を歩むのだろう。

 私の役目は終わった。


 碁の神様の計らいであろうAiとの二回目の対局では、私は力を尽くすことができたがカノジョに届くことはなかった。

 これ以上を望むのは贅沢というものだろう。

 ああ、そうだ。ヒカル。……ヒカル。

 ねぇ、ヒカル?

 あれ?


 私の声。とどいてる?……ヒカル。


 ありがとう。

 楽しか――――

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H13年5月6日

 こどもの日の翌日、3回目のAiとsaiとの対局の約束の日。
 ネット碁にsaiが現れることはなかった。

 おそらく原作通り藤原佐為は消えてしまったのだろう……さようなら。
 一度くらいは言葉を交わしてみたかった。

 僕は元の世界へ戻ることができるのだろうか?

 ――諦めるつもりはない。

 今やネット碁に親しむ世界中の棋士たちがsaiを破ったAiという存在に注目している。

 和-Ai-のホームページに公開された二つの棋譜は大きな反響を呼んだ。

 今なら現役を引退した塔矢行洋に対して、和-Ai-がネット碁での対局を申し込んでも受け入れてくれるだろう。

 その日は久しぶりに奈瀬と二人でゆっくりした時間を過ごし、5月10日の誕生日にピエール・エルメのイスパハンをご馳走することを約束させられた。

●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇

H13年5月8日

 大学からの帰り道、気が付けば暗い路地裏の道に迷い込んでいた。

 ――此処は何処だろう? 途方に暮れたところで少し遠くに小さな人影を見つける。

「……桑原先生?」

 そこには顔見知りの老人が佇んでいた。

「どうして、こんなところに?」

「ふぉっふぉっふぉ。どうやら諦めてはおらんようじゃの小僧よ」

「……そうですね」

「まあ。どちらにせよ悔いの残らぬようにするがよいわ。迷えば戻れぬ」

「どういうことでしょうか?」

「ワシには分からんが、シックスセンスが感じるんじゃよ。ここが分かれ道じゃと」

「ハハハハハ。それはもう笑うしかないくらいスゴいですよ。桑原先生」

「お主も進む道が見えぬというのは辛かろうと思ってたな。ちょっとした親切心じゃよ」

 そう言い残して老人は街の中に消えてしまった。

「――ありがとうございます」 何故だか自然と頭が下がった。


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