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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 桐嶋和ENDルート
  第36話 新初段シリーズ

H12年年末

「えっ!? 緒方先生も新初段シリーズに出て頂けるんですか?」

 週刊碁の記者、天野が突然の電話の内容に喜びの声をあげる。

「名人や本因坊にも参加して頂けるし緒方先生まで出るとなると豪華なシリーズになりますね!」

「……はい。そうです。桑原本因坊が女性の新初段を指名して……」

「え? やっぱり出ない? ちょっと待ってくださいよ!まだ越智くんっていう……(ガチャり)」

 落胆した天野の声が部屋に響き渡った。

●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇

 棋院で桑原を見かけた緒方が思わず声をかける。

「桑原先生!」「ほほう。これはこれは緒方くんじゃないか久しぶりじゃの」

「こうやって話すのは本因坊戦以来か?ん?
 あの七番勝負は楽しかったのぉ。ひゃっひゃっひゃっ」

「……勉強させていただきましたよ。あのときは」

「ふぉっふぉっふぉ。ところで何かようかの?」

「新初段シリーズ。面倒くさがり屋のアナタがわざわざ新初段の少女を指名して対局ですか?」

「ほほ。やはりあの小娘も囲碁界に新しい波を起こす一人なのかな?」

「奈瀬をご存じなんですか? どこかで彼女の碁を見たことが!?」

「ほほう! そうなのかやはり!」

「以前に会った岸本という小僧にの。ネット碁のAiに憧れてる院生の娘がいると聞いてな」

「彼女とはすれちがったことしかなかったが、週刊碁の記事を見てピンときたワシのシックスセンスもたいしたもんじゃ!」

「桑原先生はネット碁のAiには興味がなかったはずでは?」

「ふむ。この世のものとは思えんAiというものの碁には興味はないの」

「だったらなぜ!?」

「愚問じゃの。奈瀬という娘が打つ碁ならヒトの碁じゃろ?」「……くっ」

「すまんの緒方くん。ワシが先にお気に入りの娘を指名してしまって」「……ジジイ」

「いやいや年明けの対局が楽しみじゃい。骨のある娘だと良いが。ひゃっひゃっひゃ」

●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇

「……佐為。最近コワイぜ、お前の顔」 

 進藤ヒカルが散らかった自室で他人には見えない烏帽子姿の相方に呼びかける。

「なァ、ところでこの新聞や奈瀬に貰ったAiの棋譜いいかげんに片付けないと……」

――いいですよ、片づけても

――そこに載っているあの者と、Aiというものの棋譜は、もうアタマの中に入ってますから

 家に電話の音が鳴り響き、母が買い物でいないことを思い出したヒカルが受話器を取る。

「ハイ。進藤です。……あ、はい……新初段シリーズ?」

「知ってます! はいっ、はいっ、あの……相手は?」「……塔矢名人!?」

「はいっ、わかりました。はいっ、ハイ、大丈夫です。」

 電話が終わるとヒカルが興奮気味に話しかける。

「聞いたか佐為!」「オレ塔矢名人と対局するんだ。ホラ! 新初段シリーズだよ!」

「去年見たろ! 塔矢と座間王座の! そうだ塔矢――アイツ。アイツ見に来るかな!?」

――ヒカルっ!!

「何?」   ――私に打たせて下さい

「……佐為」 ――私にあの者との対局を!

「ば……ばか言うなっ。塔矢が見に来るんだぞ! 塔矢だけじゃない。
 奈瀬や和谷や越智だって! ホラ週刊碁にだって載るし!」

「それに新初段シリーズは逆コミ5目半のハンデがついて新初段の方に有利な対局だ。
 おまえに打たせたら絶対に勝っちゃうじゃないか! おまえの強さはよくわかってる!」

「オレはまたお前の影を背負うことになるんだぞ!」 ――背負えばいい!

「勝手言うなよ! おまえひと事だと思って!」

――では、いったい。いつになったら私に打たせてくれるのか!?

――奈瀬との対局の後に言っていたAiとのネット碁の約束はどうなりましたか!?

「い、いや、あれは……ホラ一緒にネットカフェに行って探したじゃんいちおう」

「奈瀬が言うにはAiは夏休みのオレたちみたいに頻繁にネット碁をするような奴じゃないみたいだし……」

――だったら代わりに、いや代わりなどとは言いません。

――私もあの者と打ちたい!!

「……ど、どうしたんだ佐為。前に言ってたじゃないか。おまえ。
 自分には時間が永遠にあるんだって! だからあわてないって!」

――そう思うんですけど……

(Aiというものの棋譜を見てからというもの胸騒ぎが止まらないのです。ヒカル――) 
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