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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第103話:モブらはみんな生きている 六

 
前書き
♪モブらはみんな生きている 生きているけど目立たない♬
♪モブらはみんな生きている 生きているけど知られない♬
♪手のひらを太陽に掲げてるポーズは 主役級が良く似合うのさー♬
♪男だ~って 女だ~って 町の人だって~♬
♪みんな みんな 目立ちたいんだ 知られたいんだー♬  

 
(グランバニア城前学校)
ザミールSIDE

先刻(さっき)校舎裏の茂みで、友達のアローとリューラちゃんがキスをしてた。
アイツは転校してきて直ぐにリューラちゃんに言い寄り、見事彼女のハートを射止めた男だ。
俺も彼女の事を気にはなっていたのだが、何時もクールすぎて近寄りがたく、何も出来ないまま積極的な男に先を越されてしまった。

アローは運動神経はズバ抜けて良いんだけど、あまり頭は良くない奴だ。
転校初日から男子に人気があった(可愛いから)リューラちゃんに言い寄ってた為、暫くの間はアドゥ(いじめっ子)等に虐められてたんだけど、少しも気にする様子も無く乗り切っていた。野球クラブに入って大活躍したのが大きい要因だろう。

ただ噂だと、彼氏を虐められたリューラちゃんが、アドゥ達をガチで脅したって言われてる。
でも、それは嘘だろう。
だって噂を流した張本人はマリーなのだから。

最近でこそリューラちゃんとマリーは仲が良いけど、以前は凄く仲悪かった様に見えてた。
何時もリューラちゃん・リューノちゃん・マリーの3人が怒鳴り合ってたのを何度も目撃してる。でも急にこの3人が仲良くなった気がする。何でだろう?

とは言え、このマリーって女は性格が悪い。
先刻(さっき)アローとリューラちゃんのキスシーンを最初に目撃したのは彼女(マリー)だったし、それを見て『所構わず盛りやがって……神聖な学校を何だと思ってるのよ!』と文句を言っていた。

以前はアローに気があったのに、リューラちゃんと付き合っちゃたから怒ってるのかと思ってたけど、アローとマリーは普段から口喧嘩をしているから、違う事に気が付いた。
好きだけど恥ずかしくて喧嘩しちゃう……って感じでもなく、本気で喧嘩してるからマリーはアローに興味ないんだと確信出来る。

それなのに、物陰でキスする2人を見て文句を言ってるのは、心の底から性格悪い証だと思う。
ちょっと前にもマリーの性格の悪さが際立つ出来事があった。
あれは公開処刑の翌日の事だ……

陛下からグランバニア国民に『軍事的犯罪者を最新兵器で公開処刑する。観覧は自由だが、残酷な状況になると思われるので、子供の観覧はお勧めしない』とのお達しがあった。
父さんも母さんも、そして学校の先生も……処刑なんて子供が見る物じゃないと見る事を止めたのだが、俺は友達と観に行ってしまった。

大人の……特に親や先生の言う事は聞くべきだという大きな教訓を得る事になる光景だった。
俺も友達も処刑その物より、新兵器ってヤツが気になって観に行ったのだが、あんな酷い光景は二度と見たくない。
その日の夜は処刑の光景が頭に残って眠れなかったほどだ。

何日か経った今でも、頭に浮かんで眠れない夜がある。
翌日の学校でも、同じ感想を持ってた人が大勢居た。
先生(優しい女の先生だ)も気が弱いからか、朝から真っ青な顔してたのを憶えてる。

そんな中、あの性悪マリーだけが平然としてた。
いや平然としてるだけなら問題無いんだけど、その日の朝に無料で配られた新聞を学校に持参して俺等の気分を悪くしたのだ。

その日の新聞には前日の処刑の光景が、凄くリアルな絵で掲載されており、ほぼ全てのページが同じ記事……つまり処刑の事を取り上げていたのだ。
元々気分が優れない者は、マリーの持ってきた新聞を見て早退したほどだ。

俺も凄く気分が悪くなったけど、その日の給食は大好きなプリンが出る日だったから、頑張って授業を受け続けた……でも、給食の時にまで新聞を広げてるマリーを見て(正確にはマリーの広げてる新聞を見て)食欲なんてなくなり、何も食べる事が出来なかったよ。

そのくせマリーは、『あら、みんな食べないのぉ? 余らしたら勿体ないじゃない。しょうがないわねぇ……私がお代わりしてあげる。でも1回だけよ……太っちゃうからね』と他の人の分まで食べてやがった。プリンなんかは5個も食べてたんだぜ!

アイツの性格の悪さを証明する話しはまだある。
早退はしないまでも、トイレに駆け込んで吐いてるヤツも大勢居た……
だから先生も新聞を持ってきた事を注意したんだ。

でもアイツは自分を正当化する天才なので、気の弱い先生じゃ言い負かされちゃうんだよ。
『先生、この新聞は国王陛下が唾棄すべき犯罪を国民に知らしめ、そして如何なる報いが訪れるかを解らせる為に急ぎ発行させた新聞なのですよ。善良なる国民の一人として、そして国民の模範として、あえて学校に持ってきたのです。その事に一体何の問題があると言うのですか!?』って言って、先生を黙らせてた。
詭弁だよ。

この性格の悪さ……
どんな親に育てられれば、これほど性格が悪くなるんだよ?
こんな性格が悪い女が、あんなにステキな歌を作詞作曲してるなんて信じられない。

同じクラスの友達は、みんなが『きっと本当はピエッサさんが作ってるんだよ』って言っている。
だってピエッサさんは芸高校に通ってる天才なんだ。
そんな天才が何でマリーのような性格の悪い女と組んでるのかは解らない。

もしかしたら、マリーはピエッサさんの弱みを握り、脅してコンビを組まさせたのかもしれない。だから本当はピエッサさんが作詞作曲してるんだけど、全部マリーの手柄にされてるんじゃないのかな?
あの女ならやりかねないよ。

城で働く兄さんも、マリーなんかよりピエッサさんの方が好きで、以前に城内カフェで寛いでる時に話しかけて、当時の軍務大臣秘書官だったレクルト閣下に怒られたそうだ。
怒られた数日は凄く反省してたんだけど、レクルト閣下がピエッサさんと付き合ってる事が発覚して、上官侮辱罪になる発言を連発していた。

そんな事もあって、レクルト閣下の大出世を認めない人達が多数居るらしい。
最初の内は声高に文句を言ってたそうなんだけど、レクルト閣下を総参謀長に推薦したウルフ宰相が『能力のない阿呆共が、有能な者や努力を怠らない者に嫉妬するのは、何時の時代でも起こる事。嫉妬する力を自らの能力向上に向けられない愚か者共だ。軍部の人事異動が気に入らないのなら、即刻軍を辞めれば良い。辞めないでくださいと、泣いて頼まれるほど、能力は皆無なのだから、国家としては一切の痛手だとは感じない』って、軍人さんを大勢集めて嘲笑いながら言い放ったそうだ。

それ以来、レクルト閣下への文句を言う人は表面的には居なくなったけど、兄さんなんかは未だに家で愚痴を言っている。
以前はウルフ宰相が生意気だという愚痴が多かったけど、最近は二人の事を悪く言ってる事が多い気がする。
偉い人にバレないか不安だよね。

でもウルフ宰相は本当に生意気なんだと思う。
だって彼がグランバニアに来たのは6~7年前……
陛下が他の国から連れてきたそうなんだけど。

いきなり国王秘書官に任命されちゃったんだもん。
凄く陛下はウルフ宰相を贔屓してると思う。
俺より少しだけ年上なのに、この国に来て直ぐに重要な役職を与えちゃうなんて……

そんなウルフ宰相と親しくしてたレクルト閣下だから、いきなりの大出世を果たし、その事に文句を言う人達をウルフ宰相が押さえ込んでるんだと思う。
でも、その事を愚痴ってる兄さんに言うと『そんな事はないんだ……ウルフ閣下が優秀なのは間違いない。陛下までも手玉に取っちゃうのだからな』って否定されるんだよね。

う~ん……そうなのかなぁ?
絵の才能は凄いと僕も思うけど……
だってあの新聞の絵を全て描いたのはウルフ宰相なんだ。

上手いなんてもんじゃない。
あの光景がそのまま新聞に掲載されてるんだ!
臭いまで漂ってきそうなリアルな絵なんだよ。

因みに、城に住んでるマリーは時折会う事があるらしいのだが、常にウルフ宰相の事を『格好いい』とか『超天才』とか褒めまくってる。凄く好みのタイプらしく、他の友達と会話してて、ウルフ宰相の悪口を言うと聞きつけて激怒しながら文句を言ってくる。
性格が悪い者どうし気が合うのかもしれない。

でもマリーが俺等に噛み付いてくると、最近ではリューノちゃんが宥めに来てくれる。
以前のリューノちゃんは、少しツンケンしてて好きになれなかったんだけど、最近は優しくて可愛くて俺は彼女に話しかけられるのが楽しみになっている。

俺から話しかける勇気は無いのだけど、朝は必ず笑顔で『おはよう』って言ってくれるし、マリーが暴走してると止めに来て俺等を労ってくれるから好きなんだ。
だからよく一緒に会話してるアローに、俺の気持ちを教えてみたんだ。

そしたら……『諦めた方が良いよ。アイツ付き合ってる男が居るから。因みに年上でエリートだよ』って絶望の底に突き落とされた。
エリートで年上って言ったら、凄い年上なんじゃないの!?
それってもう結婚してて、愛人として囲ってるとかしか考えられないんだけど!

そんな事を聞いちゃった俺は凄く落ち込んじゃって……
更なるドン底に落ちたい気分になって、例の新聞を片手に処刑のあった広場へ行ってみたんだ。
そこには既に何人かの人が暗い表情で佇んでいて、俺と同じ様に嫌な事があったんだと思われる。

誰も話しかけず、誰からも話しかけられないで、ただ黙って落ち込んでいると……
広場の入り口から格好いい人が近付いてきたんだ。
よく見るとティミー殿下だった!

王子様なのに護衛を付ける事無く、城下町の一角に突然現れた。
あまりの格好良さに嫌な事を全て忘れて殿下の姿を目で追ってると、一人の男性に近付いて行ったんだ。その男性は紫のターバンを巻いたハンサムな人で、王子様が近付いてきてるのに見向きもしない人だった。

殿下の存在には気が付いてるクセに、向き直って恭しくする事無くボーッと処刑のあった場所を眺めてる男。
俺のクラスの女子(マリーとリューラちゃんを除く)が時々会話してる内容の中で、『ティミー殿下とウルフ閣下って、どっちか格好いいかな?』だ。

見た目で言えばどちらもハンサムなんだろうけど、俺は断然ティミー殿下派だ!
ウルフ宰相は兄さんが『俺より年下なのに生意気なガキだ』って言ってたので、きっと本当に生意気でヤな奴なんだと思える。なんせあのマリーが好きな男なんだから、碌な奴じゃ無いだろう。

だけどティミー殿下は凄く優しそうだ。
前に城下町で偶然出会った時は、興奮して何も言えなかった俺に『こんにちは』って優しく微笑んで挨拶してくれたんだ。今だって殿下に反応しない男を見ても、嫌な顔一つせずに近付いている。

そう言えば、どっちが格好いいかの言い争いで『リュカ陛下が一番格好いい!』って言う奴が居る。
否定はしない。だって一番格好いいのはリュカ陛下なんだから。
でもそういう事じゃないんだよね。

もうリュカ陛下の格好良さって圧倒的なんだ。
論じる必要がない感じって言うのかな?
ティミー殿下だろうが、ランクは大幅に下がるウルフ宰相だろうが、勝負にならないんだよ。

だってグランバニアの王子様として生まれたのに、赤ん坊の頃から平民として育ち、自分の力で苦難を乗り越え王様にまで返り咲いた。それだけだって凄い事なのに、魔界にまで行って魔王を倒し、この世界の平和を取り戻しちゃったんだから。

しかも俺が生まれる前までは、グランバニアは小国として知られていたのに、リュカ陛下が色々改革を推し進める事で、今や他の追随を許さない超大国にまで発展しちゃったんだからね。この世界の神様であるマスタードラゴン様だって、リュカ陛下に頭が上がらないらしいしね。

だからリュカ陛下が格好いいのは当たり前すぎて、ティミー殿下と比較するような物事じゃ無いんだよ。
でもやっぱりティミー殿下だって格好いいんだぜ。
先刻(さっき)の無礼な紫ターバン男に何か言ってるんだけど、その紫ターバン男は大きく溜息吐いてティミー殿下を無視して何処か行こうとしちゃうんだ。

でもティミー殿下は怒る事なく小さく肩を竦めて、その紫ターバン男の後を追い、一生懸命何か説得してるんだよ。
こんな無礼な男に怒らないなんて、ティミー殿下は本当に心が広い方だと思うね。
きっとウルフ宰相だったら凄く怒って、嫌な事を沢山言うんだろうと思うよ。

あ~あ……リュカ陛下にも直接お目にかかってみたいなぁ。
もし急に目の前に現れちゃったら、感激しちゃうだろうなぁ。
でも何も言えなくなり、凄く失礼な態度になっちゃうかもしれないなぁ……

ザミールSIDE END



 
 

 
後書き
次回、男女の修羅場です。
そう聞いて「お? またウルポンが大活躍か?」と思った読者様……
残念ながらハズレです。
次回のウルポンは面倒事に巻き込まれる側になっております。

乞うご期待。 
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