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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 桐嶋和ENDルート
  第23話 若獅子戦

H12年5月某日 若獅子戦初日

 緒方精次は愛車のスポーツカーに乗って棋院の若獅子戦へと向かう。

 saiはあれから一度もネット碁に現れてはいない。
 しかし入れ替わるようにAiが再び姿を現した。偶然とは思えん。
 双方とも間違いなくトッププロに通ずる魅力的な打ち手。

 先日saiとの対局を並べるアキラくんに対して――

「だが表に出てこない者には興味は持てん」などと嘯いたものの。
 
 オレもAiと再び対局したいという未練を捨てることができずAiの棋譜を集めて何度も並べているのだから他人のことはいえん。

 ただ姿を消したsaiとは違いAiは不定期ながらネット碁の対局を細々ながら続けている。

 事情があって日本にいないにせよ。早く我々の前に現れて欲しいものだ。

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 進藤ヒカルの対局が終わった後の2回戦。
 緒方精次は帰ろうか考えていたがある対局が目に留まる。

 一人は院生の少女。相手は……たしか芦原と同じ四段の冴木。
 2回戦にいるということは院生の少女は1回戦でプロを破っている。

 それよりも……この打ち回しは……。

 緒方は足を止め真剣な表情で対局を見つめる。

 ……棋力はまだ甘いところがある。

 しかし要所の打ち回しにAiの影を感じるのは何故だ。

 もしや彼女に碁を教えている師匠がAiの正体か?

 最終的に少女は複雑な盤面をまとめきれず中央の綻びを分断され投了した。

 緒方は場を離れて院生師範の篠田を探して声をかけ少女について尋ねる。

 ……名前は奈瀬明日美。しかし聞けば師匠はいないらしい。

 緒方は納得がいかず会場に残るはずの奈瀬明日美を探した。

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H12年5月後半 

 いつも通りの院生研修日。ちかくのファーストフードショップで仲の良い院生同士が昼食を食べる。

「それにしても昨日の若獅子戦。
 結局1回戦を買ったのは伊角さんと越智と奈瀬の3人だけで、2回戦も勝ったのは越智の一人だけってのは……」

「やっぱ寂しいなァ」

「越智はすげーよ。オレはここんとこ連敗だよ。アイツに」

「奈瀬も最近はかなり伸びてきてないか? 対局した冴木さんが褒めてたぜ」

「ホントに? もっとホメていいよ」

「そういえば緒方先生に声かけられてなかった? 知り合いなの?」

「ううん。師匠がいるんじゃないかって聞かれた」

「え?奈瀬は師匠いないよね」

「いないよ。それでね。私の碁がネット碁のAiって人に似てるんだって」

「Ai? ネット碁はするけど聞いたことないぜ」「ネット碁好きの和谷でも知らないんだ」

「滅多に現れないらしいから知られてはいないのかも。私の憧れの棋士なの」

「強いの?」「強いよ。間違いなくヘタなプロよりも強いよ」

「たまにお忍びで遊んでるプロもいるし、そのAiってもトッププロじゃないの?」

「それが緒方先生も正体が分からない幻の棋士なんだって」「へー」

「それでね。私はそのAiに憧れてAiの棋譜とか並べて棋風を変えてる途中なの」

「そして緒方先生に声をかけられた……と」「そうそう。驚いたわよ」

「正体不明のネット棋士ってsaiみたいだな。」「sai?」

「奈瀬は知らないのか。去年の夏に1カ月と少しの間いただけで、もうプッツリと出てこなくなったけど……オレの知る限り最強のネット棋士だな」

「最強?きっとAiの方が強いよ」

「いやいや。すげー強かったんだ オレの知る限り負けなし。
 韓国棋院の棋士も負けたっていうんだぜ。そのAiってやつの碁は知らないけどsaiには劣るだろ」

「いや。絶対にAiの方が強いよ!」「いやsaiの方が強い!」

「そうだ! saiが負けるわけなんかない!」「ほら二対一でsaiの勝ち!」「わやっ!」

「おいおい。奈瀬も和谷も……それに進藤までいい加減にしろよ」

「奈瀬はそのネット棋士の影響で絶好調か夏は油断できないな」

「夏?」「プロ試験だよ。」「忘れたのかオレ達院生の唯一最大の目標を」

「ここにいるオレ達もその時がくれば。みんなで星のつぶしあいだ」
 
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