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禁じられているからこそ

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第四章

「モグリの酒場まで出来て」
「えらいことになっただろ」
「本当にね」
「そうなるんだよ」
「かえってなのね」
「禁止したらな」
「煙草位はなのね」
 今の話の主題であるそれもというのだ。
「いいのね」
「そうなるんだ、まあこんな法案はな」
 アントンは冷静な視点から喫煙派の視点になって話した。
「さっさと廃止されろ」
「そうすればこんな問題はなくなるわね」
「俺もおおっぴらに吸える」
 煙草、それをというのだ。
「ポーランドまで行かずにな」
「そろそろ議論になるかしら」
「なるさ、何でも禁止したらな」
 そうしたことをしてもというのだ。
「世の中逆に悪くなる」
「そういうものでもあるのね」
「ああ、煙草は確かに身体に悪いがな」
 喫煙派もこのことは否定しなかった、このことは科学的にもはっきりと証明されていて知られていることだからだ。
「それでもこれ位は禁止せず喫煙室で吸える位でないと」
「悪い奴が儲けるもとにもなる」
「そうなるのも世の中なんだよ」
 こう言ってだ、アントンは今はビールを飲んでそれを楽しんだ。煙草がないのが残念だったがまたドイツにいても吸える様になると確信しながら。
 彼の確信は当たり禁煙法廃止の話が国民の間で出てすぐに議会でも廃止となった。そしてそのうえでだった。
 ドイツ国内で再び煙草を吸える様になり犯罪組織も煙草の密売が利益にならないとなったのでこのことから撤収した。
 そしてだ、喫煙派は誰もがだった。
 再び煙草をドイツで吸う様になった、それはアントンも同じでだ。
 家の中で美味そうに煙草を吸いつつだ、フレデリカに言った。
「やっぱり美味いな」
「煙草は」
「ああ、本当にな」
 その味を堪能しつつ言うのだった。
「止められないな」
「そうなのね」
「ああ、身体に悪いがな」
「それでも止められない」
「そうしたものだ」
「だから禁止したら」
「ああなるんだ」
 犯罪組織の利権になるというのだ。
「悪い奴等が儲ける」
「身体に悪いことを禁止して」
「そうなるものなんだよ」
「因果なものね」
 フレデリカはしみじみとして言った。
「それは」
「全くだな、しかしな」
「しかし?」
「もう二度とこんなことにならないで欲しいな」
 アントンは心から思った。
「禁煙とかな」
「法律として吸えなくなるのは」
「もうなって欲しくない」
「吸えなくなるし悪い奴等が儲けるから」
「絶対にな」
「そうね、幾ら身体に悪くてもね」
「吸わせた方がいいんだよ」
 喫煙者達にというのだ。
「そうしたらな、じゃあ吸える様になったら」
「またなのね」
「ドイツでおおっぴらに吸うか」
 ポーランドにわざわざ行ってまでしなくてというのだ。
「そうしようか」
「それじゃあね」
「ああ、その時はな」
「それはわかったわ、ただね」
 フレデリカはドイツ国内で再び吸える日を心待ちにしている夫にこうも言った。
「吸う時はね」
「ああ、吸える場所でだな」
「それは守ってね」
「わかってるさ、吸うにしてもだな」
「うちはそこまで言わないけれど」
「他人に迷惑はかけるな」
 吸わない者にもというのだ。
「そういうことだな」
「火のこともね」
「わかってる全部な」
 こう言ってだ、彼はまた吸える日を楽しみに待つことにした。ドイツの禁煙法は程なくしてなくなった。そして喫煙者達はまた笑顔で吸える様になった。彼等にとっての勝利の日が来たことを心から喜んでのことだった。


禁じられているからこそ   完


                            2017・3・15 
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