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拒食症

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第三章

「本当にもう死ぬぞ」
「死ぬって大袈裟な」
「大袈裟じゃない、そのままの生活を続けてると死ぬから何とかしろ」
 こう言ってそのうえでだ、晃司に何とか食べさせようとしたが彼はもう何も口に出来なくなっていた。それはもう精神的に受け付けなくなっていたので仕方がなかった。
 それでだ、遂にだった。
 彼は授業中に倒れそのまま病院に担ぎ込まれた。倒れた原因は翔平が危惧した通り拒食症だったが栄養不足に過度なトレーニングもあった。
 その結果彼の身体はボロボロになっていてだ、翔平は彼の両親から見舞いに来た時に言われた。
「そうですか、あと少しで」
「うん、命の危険もあったってね」
「お医者様に言われたわ」
 晃司の両親は翔平に暗い顔で話した。
「あのままいったら」
「倒れるどころじゃなかったってね」
「もう身体が色々酷いことになっていて」
「暫く回復が必要らしいんだ」
「だから入院も長引くみたいよ」
「暫くはここで体力を回復させないと駄目らしい」
 入院してというのだ、そして実際にだった。
 晃司は翔平が見舞いに行った部屋のベッドの中で寝ていたがだ、彼自身から翔平に話した。
「もう食べないと駄目だってね」
「お医者さんから言われたんだな」
「うん、危ないってね」
「だから言ってただろ、御前はな」
「食べないからっていうんだよね」
「こうなったんだ、そんなにショックだったか」
「うん」
 否定しなかった、彼自身が。
「振られて言われてね」
「その結果だよな」
「翔平も知ってるよね」
「知ってるさ、見ていたんだからな」
「それで言ってもくれたよね」
「そんなこと言う連中なんか気にするな」
 一切とだ、翔平は晃司のベッドの枕元で言った。
「何度も言ってるだろ」
「そうは出来なかったから」
「男は痩せている方がいいか」
「そう思ったんだけれどね」
「今もだよな」
「そうだよ」
 その考えは変わっていなかった、晃司のそれは。
「何かどうしてもね」
「変わらないか」
「痛かったから」
 失恋と周囲の言葉、この二つがというのだ。
「だからね」
「そうだな、けれどもう御前をデブとか誰も言わないからな」
「誰もだよね」
「それでも気になるか」
「もう二度とあんな目に遭いたくないから」
 絶対にという言葉だった。
「もうね」
「そうか、難しいな」
「けれど食べないと駄目だよね」
「御前さもないと本当に死ぬぞ」
 食べて栄養を得ないと、というのだ。
「流石に死にたくないだろ」
「けれど食べたいと思わないから」
「本当に難しいな」
「サプリメントで駄目かな」
 それで栄養を摂取すればというのだ。
「そうしたらね」
「駄目だろ、空腹の問題がある」
「食べないと駄目なんだ」
「そうだ、本当に食べろ」
「少しでもなんだ」
「そうだ、いいな」
「うん、何とかね」
 晃司は親友に約束はした、だが精神的に受け付けなくなっているので食べるには相当な苦しみがあった。まずは野菜ジュースや牛乳からだった。 
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