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初詣

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第一章

             初詣
 飯干未祐の顔は丸い。そして小柄だ。
 顔の丸さに合わせてか黒い髪をショートにしている。目はやや垂れた感じで口は少し大きい。声は奇麗で可愛らしい感じで小柄な身体によく合っている。
 その彼女の趣味は料理で高校では料理部に入っている。その彼女にだ。
 背は彼女より大きく胸も目立つポニーテールの少女が声をかけてきた。目はどんぐりを縦にした様な感じで顔立ち全体がはっきりしている。美人と言っていい。
 その彼女がだ。こう未祐に言ってきたのだ。
「ねえ。お正月だけれどね」
「お正月?」
「初詣何処か行かない?」
「ううん。初詣ね」
 彼女、本木春香に言われてだ。未祐はというと。
 首を少し捻ってからだ。自分より背の高い友人を見上げてこう答えた。
「寒いから」
「ちょっと。いきなりそれ?」
「だってお正月よね」
「お正月は冬よ」
 日本の四季では言うまでもないことだ。旧暦では春であるが。
「冬は寒くて当然でしょ」
「だから。ちょっと」
「こたつの中でいたいのね」
「うん。こたつの中でゲームしたりとか漫画読んだりとか」
 実際にそうしたいとだ。未祐は春香に答える。
「そうしようかなって思ってたけれど」
「だから。それじゃあ何にもならないじゃない」
「お正月だから?」
「お正月は一年のはじまりよ」
 真剣な顔でだ。春香は未祐に述べる。
「一年の計は元旦にありって言うでしょ」
「それは知ってるけれど」
「じゃあこたつの中でゲームとか漫画とかっていうのはないでしょ」
「あと蜜柑食べたりとか」
「絵に描いた様なぐうたら正月ね」
「それとアイスクリームにコーラに」
「駄目駄目、全然駄目」
 春香は未祐が考えている正月の過ごし方に駄目出しをした。それも三連続で。
 そのうえでだ。友人にこうも言ったのである。
「そんなの女子高生のお正月じゃないわよ。だからね」
「初詣に行ってっていうのね」
「そう。折角いい神社がすぐにあるんだし」
 八条神社だ。二人が通う八条学園高等部のある八条町にある神社でかなり大きな神社だ。神社仏閣の多い近畿でもかなり大きな神社だ。
 その神社に初詣に行こうとだ。春香は言うのである。
「あそこに初詣行きましょう。いいわよね」
「初詣に行ってどうするのよ」
「あんたそれ本気で言ってるのよね」
 今の未祐の質問にはだ。春香は少し呆れた。
「それ日本人の質問じゃないわよ」
「生粋の広島人だけれど。呉生まれの」
「お父さんがよね」
「そう。大学が八条大学でそれからずっとこっちにだけれど」
 母は八条町のある神戸出身である。
「日本人よ」
「日本人ならわかるでしょ」
「初詣はお願いをする時」
「そうよ。じゃあわかるわね」
「それで初詣に行って」
「ほら、彼のこととか」
 ここでだ。春香は話題を変えてきた。その話題は。
「健一君とかね」
「そこでその名前出すの?」
「出すわよ。好きなんでしょ」
「好きは好きだけれど」
「私だってね。やっとね」 
 これまでの。悪いこともいいことも思い出しながらだ。春香は述べた。
「望と一緒になれたから」
「今日もお弁当作ったのよね」
「やっとね。トマト食べてくれるようになったのよ」
 明るい顔でだ。春香は未祐に話す。 
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