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夢幻水滸伝

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第十八話 瀬戸内の海戦その一

           第十八話  瀬戸内の海戦
 吉川はその目に四国の水軍達を見た、玲子もその目に彼等を見て吉川に対してこう言った。
「木の船ばかりだね」
「そうだな」
 吉川は玲子のその言葉に敵軍を見据えたまま答えた、視線は彼等から離れることはなかった。
「帆と漕で動く」
「昔ながらの船だね」
「しかも大砲も持っていない」
「こっちと違ってね」
「かなり旧式だ、いや」
「こっちの船が新しいんだね」
「そうだ、日本で石炭で動く鉄甲船なぞ我々だけだ」
 基本木製であるがだ。
「アメリカでは旧式とはいってもな」
「うちだけだね」
「石炭で動き大砲を放つ」
「あくまであたし達だけか」
「この船は強い」
 吉川は断言した。
「少なくとも四国の船よりは遥かにな」
「強いね」
「しかしだ、どの船も大きい」 
 関西の鉄甲船達はというのだ。
「だから小回りは利かない」
「向こうは違うね」
「船が小さい、確かに風や人力次第だが」
 それでもというのだ。
「小回りは利くし相手は兵も強い」
「泳ぎもこっちより達者だしね」
「そのこともある、敵もその利点がわかっていてた」
「こっちに来たね」
「機動力と小ささを使ってだ」
「攻めて来るね」
「間違いなくな、ではだ」
「まずはだね」
「近寄られる前に出来るだけ数を減らす」
 敵のそれをというのだ。
「砲撃でな」
「そうなるね」
「全船砲撃用意だ」
 吉川は全軍に指示を出した。
「左舷からだ、いいな」
「了解です」
「それでは」
「爆裂弾を使え」
 使用する砲弾のことも話した。
「あるだけだ、いいな」
「わかりました」
 部将も兵達も頷いてだ、すぐにだった。
 鉄甲船達は面舵から四国の軍勢に左舷を向けた、それから即座にだった。
 砲撃をはじめた、左舷のそれぞれ何十とある大砲から砲弾が次から次に放たれる、激しく火を吹き黒い煙をあげる。
 砲弾は四国の水軍の小さな船には滅多に直撃しない、しかし。
 無数の砲弾が波を揺らし至近弾そして爆裂弾で攻める、船達は爆発と揺れで次々と沈んでいく。
 だが正岡は旗艦にいてだ、平然と腕を組んでそのうえで言った。そうしつつ爆裂の魔術師の術を出して敵の砲弾を前で出来るだけ相殺している。敵の砲弾にその術をぶつけてそうしているのだ。
「沈む船からはすぐに逃げてじゃ」
「そしてですね」
「別の船に乗り移る、ですね」
「そうじゃ、そして進みながらでもじゃ」
 それでもというのだ。
「船から出された奴、死んだ奴は見捨てたらいかん」
「決して」
「何があっても」
「おまん等も見捨てられたくないじゃろ」
 兵達にだ、正岡は着物の中で腕を組み正面の敵軍を見据えつつそのうえで問うた。
「そうじゃろ」
「はい、それは」
「何といいましても」
「それならじゃ」
「こちらも見捨てるな」
「そういうことですね」
「そうじゃ」
 その通りというのだ。
「わかったのう、ただ放り出されたモンもじゃ」
 即ち助けられる方もというのだ。 
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