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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 桐嶋和ENDルート
  第07話 ノートパソコン

 飾り気のないデスクトップに表示された和-Ai-のアイコンを思わずクリックする。

 ソフトが起動し彼女に似せられた擬人化キャラクターが微笑む。

 指導対局モードを選択し囲碁を打つ。

 悪手を指すと彼女の音声が部屋に響くと僕は自然と涙が出た。
 ずっと聞きたかった声。もう聞けないかもしれないと思っていた声。
 彼女の声が聞きたくて対局を続ける。

 指導対局モードとはいえ、アマチュア初段が互先で勝てるレベルではなく30分もしないうちに勝負は終わる。

 そして不可解なことに気が付く。ネットワークに繋がってないのにどうして動いてるのかと。

 いやインターネットに繋がっていたとしても……この時代に、この世界に、ディープラーニング用GPUサーバーが存在するはずがない!

 ――このノートパソコンは何だ?

 どうやら和-Ai-以外のソフトは入っていない。そしてUSBなどの外部に繋げるポートが存在しない。

 兎に角このノートパソコンが僕にとっての佐為なのだろう。

 神の一手に繋がる鍵であり、彼女との絆であり、彼女を探す道標。

 断りもなく異世界に連れてきた碁の神様には文句を言いたいが、元の世界に繋がるものを見つけて少し安心した。

 部屋も片付いたし入学式までの間に今後の方針でも考えるか。

 必死になってヒカルの碁の物語を思い出す。

 まずは蔵の中で佐為に会って……アキラと会ってフルボッコにして……。
 あれ?もうヒカルとアキラって出会ってるっての?
 春からヒカルとアキラが中学1年生?……これは調べないと。
 それで中学の囲碁大会で戦って……ネット碁でsaiが暴れるのが確か夏休み。
 そしてアキラはプロになって、ヒカルは院生に……ってプロ試験っていつ?
 ヒカルがプロになるのはアキラの翌年で間違いないはず。
 ヒカルがプロになって新初段シリーズで塔矢名人と打って……
 その後に初戦でアキラと戦って、名人が倒れて、ネットでsaiと対局して、
 それで名人が引退して佐為が消える。佐為が消えてヒカルは傷心の旅に……。
 あとは伊角さんと戦って復活して、北斗杯か……。

 うろ覚えながらも時系列順にイベントをノートに書き出していく。

 「流石に細かイベントは覚えてないし……。
  ちょっと時間のある時に葉瀬中や海王中を調べて散策しよう。
  棋院とか関連施設に行ってみれば思い出すこともあるかもしれない」

 まあ我ながら開き直って生きていくことに決めた。

 戦国時代とか戦争状態のファンタジー世界とかモンスターがいるような生死のかかった殺伐とした世界じゃないしね。元の世界のことも気になるけど…どうにもならないことを気にしすぎても仕方ない。

 こうしてヒカルの碁の世界での僕の生活が始まった。 
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