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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第101話:一部の愚か者が組織の信頼を貶める。

(グランバニア王国領・ヒストニス村~モストゥーン村)
アローSIDE

リュカさんのルーラでヒストニス村の入り口まで来たオイラ達は、その村に入る事なく魔法の絨毯を広げ上に乗る。
馬と馬車も乗るくらい大きい絨毯は、リュカさんの意思で地面すれすれを凄いスピードで西へ移動する。

移動中に説明をされたのだが、オイラ達はヒストニス村出身で、王都グランバニアに引っ越し、そこで知り合いの伝手を使って仕事にありつこうとしてる一家……と言う事だ。
この時点でも全然如何いう事なのか解らない。

何の意味があってそんな嘘設定を作っているのか……
そんな田舎者夫婦の田舎者息子という役に、本当に200(ゴールド)もの価値があるのか?
オイラは二人を父ちゃん・母ちゃんと呼び、勝手なことせず芝居に付き合えば良いだけ。
楽すぎじゃねーか?

不安は無くならない物の、楽に200(ゴールド)稼げたので、オイラは既にリューラに買ってあげる物を色々考え悩むのを止めていた。
そして魔法の絨毯が止まり、リュカさんが降りるよう指示を出す。

どうやら目的の村、モストゥーン村に近付いたようだ。
ここからは歩いてヒストニス村から来たようにみせなきゃならない。
リュカさんが魔法の絨毯を馬車の中に仕舞い込むと出発だ。



(グランバニア王国領・モストゥーン村)

「もう日が暮れる……今日はこの村で宿を取ろうか」
「そうねアナタ。次の村までは3日は掛かるそうだし、今晩はベッドでゆっくり眠りたいわ……ねぇアロー?」
「え!? ……あ、あぁ、う、うん。母ちゃん」

突然ビアンカさんから話を振られて慌てて返事をした。
何か“母ちゃん”ってビアンカさんに言うの、照れる。
リュカさんには照れずに言えそうな気がするけど……



(グランバニア王国領・モストゥーン村:宿屋1階の食堂)

狭い村を一周見回って宿を確保すると、手荷物を部屋へ置いて1階の食堂に集まった。
食堂と言ってるけど、この村唯一の食べ物屋らしく、殆ど酒場と変わらない。
辛気くさい顔したオジサンがマスターらしく、同じく辛気くさい顔してるオバサン店員と一緒にオイラ達を見てくる。

手近なテーブルに進み席に座ると、リュカさんが澄んだ声で注文する。
「マスター、ビールと適当につまみ。あと子供に夕食……それと妻には暖かいお茶を」
注文を聞いたマスターは、「はい」とも「うん」とも言わずビールの準備を始めた。
凄く愛想が悪いけど、コレで良いのか?

「おっと、このビールは頂くぜ」
ビールの準備が出来、マスターがリュカさんの下にそれを運ぼうとした時、新たに店に入ってきた柄の悪い兵士等によって遮られた。

「あ、何するんですか、私のビール」
見た感じ吃驚した口調で柄の悪い兵士等に文句を付けるリュカさん。
普段お酒は飲まない人だから、本当に飲みたかった訳じゃ無いのだろう。

「うるせぇな。お前旅の者か?」
「……はい。王都で働き口があると聞き、ヒストニス村からやって来ました」
一家揃って引っ越し中って設定だね。

「ほぅ……ご苦労なこったなぁ。だけどよぉ、この村に来たからには、滞在税を支払って貰うぜ。あと通行料もな」
「はぁ? 何ですか滞在税って? 通行料もですが聞いた事無いですよ」
多分この柄の悪い兵士等が、勝手に設定して金を違法に巻き上げてるんだと思う……あ!?

そ、そういう事か……今回変装までしてこんな田舎に来たのは、勝手な事をしてる馬鹿共を確認・お仕置きする為なのか!
その為に偽家族を作り出し、そこの息子役にオイラが抜擢されたんだ。
それならそうと説明してくれれば良かったのに……200(ゴールド)じゃ断ったけど。

「馬鹿野郎。滞在税ってのはなぁ、この村独自の法律なんだよ! この俺が取り仕切ってるモストゥーン村のな!」
「貴方は唯の兵士でしょ。この村の治安を守る責務があっても、取り仕切る権利は存在しない。それはこの村の自治に委ねられてるんですからね」

「あぁ? 能書きの多いオッサンだなテメー! お前等は俺等に守られてるんだから、黙って金を出しゃ良いんだよ!」
「出す訳ないでしょ。我々は貴方方に守られてるんじゃ無く、貴方方に守らせてやってるんです。市民を守る事を許可してあげてるから、その示しとして国に税金を支払ってるんです。貴方達の給料は、その税金から出てるんでしょ」

「何だぁテメー。逆らおうってのかぁ!?」
そりゃ逆らうだろ。
お前等の方が間違った事してる訳だし、凄んでみせてる相手は王様なんだし。

「よう隊長。この(スケ)みろよ……良い身体してるぜぇ。眼鏡取れば結構な美人そうだしよ。俺等に刃向かった罰として、このオッサンの女房を没収ってありなんじゃねぇ?」
何時の間にかオイラ達の居るテーブルを囲うように配置された柄の悪い兵士の一人が、ビアンカさんに顔を近づけて危険な発言を放つ。死ぬ気か?

「おいボンクラ。俺の妻に汚い顔を近づけんじゃねー!」
アニキから聞いた事があるんだけど、リュカさんが自分の事を「俺」と言ってる時は、本当に怒ってる時の可能性が高く、巻き添えを受けたくなかったら全速力でその場から離れた方が良いらしい。でも逃げられる状態じゃ無い……どうしよう、怖いんだけど。

「オイこらオッサン! 誰に向かって口利いてんだよ? 死にたいのかぁ、あぁ!?」
死にたがってるのはお前等だ。
誰に向かって凄んだ上に剣を顔に近づけてるんだよ!?

「誰に向かってだと? 自国の兵士の下っ端連中にだよ!」
向けられた剣を左手の人差し指と中指でつまむと、空いた右手で眼鏡を取って座った瞳を見せ付けるリュカさん。
更に変装グッズを顔から外し、王様へと変化して行く。

「はぁ? 下っ端とは何「お、おい隊長……そ、その人……もしかしたら……」
隊長は目の前なのに怒りで気付いてないが、周りに居た兵士の一人が気付いたらしく、言葉に詰まりながら何かを伝えようとしている。手遅れじゃね?

「あ、あの……もしかして……リュ、リュカ陛下ですか……?」
離れた場所で脅えてた酒場のマスターが、声を震わせて尋ねてきた。
「はぁ!? な、何言ってんだコノヤロー……こんな僻地に国王が来る訳ねーだろ……な、なぁ……みんな!」
来るんだよ。僻地でもリュカさんは来るんだよ。

「いいえ、その方は正真正銘グランバニア王国の現国王リュケイロムその人よ」
同じ様に変装を外し、何時ものビアンカさんに戻った所で、綺麗な声だが冷たい響きの声で、連中にとって凍えるような一言を伝える。

「そ、そ、そ、……そんな!? も、も、も、申し訳ございません!」
怒りから一気に冷めた隊長が、慌てて剣から手を離し、凄い勢いで下がると、床を大きく鳴らして土下座し始めた。手遅れだよ。

オイラ達の周囲に居た他の兵士等も一斉に隊長の横に並んで土下座を始める。
怒ってる雰囲気が少しも消えてないリュカさんは、つまんでた剣を隊長の鼻先スレスレに刺さるように弾き放すと、懐からMH(マジックフォン)を取り出して誰かに連絡を始める。

MH(マジックフォン)に映し出されたのはアニキだった。
どうやらこれでオイラも家に帰れると、思ったんだけど……
リュカさんはこの村での事を「クロウの言ってた通りだった。今すぐピピンとコイツ等の上司全部連れてお前も来い!」と怒りながら言って通信を切る。

もう少し帰れそうに無いけど、ハラハラした分200(ゴールド)の意味はあった仕事だと思う。
でも出来れば、もう二度と引き受けたくない仕事だ。

アローSIDE END



(グランバニア王国領・モストゥーン村:宿屋1階の食堂)
ウルフSIDE

ブチ切れてるリュカさんの指示で、軍部の関係者を俺のルーラでモストゥーン村に運ぶと、疲れ切ってるアローの姿が目に入る。クロウの報告通り、アホ共はアホな事をアホみたいに繰り返してたみたいだな。リュカさんの怒気に触れてるアロー……申し訳ないけど、楽に金は稼がせねーよ(笑)

「き、貴様等……なんて愚かな事をしてくれたんだ!」
俺が連れてきた軍人の一人シュテーカーが、仁王立ちのリュカさんの前で正座させられてる兵士達に怒鳴り声を上げる。

「も、申し訳「愚かなのは貴様も同じだ!」
正座組の謝罪を遮り、リュカさんは押さえられない怒気をシュテーカーにも向けた。
それを見てシュテーカーの上司“モンダヴィル”も、更に上司の“バーマー”も緊張の度合いを強めた。

「クロウの言ってた通り、この村の駐留兵士等が自らの願望を丸出しにして、治安を維持するどころか、乱していやがった! コイツ等はビアンカにまで手を出そうとした……これまでに何人ものレイプ被害者が居るはずだ」

「へ、陛下……我々はその様な事は……」
正座組の一人が弱々しい口調で罪を否定する。
やってねーわけねーだろ!

「嘘吐くんじゃねー! 今すぐ村中に聞き回ってやるよ! それで一人も被害を受けてないと証言したり、見た事もないと証言されてたら、少しだけ信用してやる。だが聞き込みは国内全域に展開させる。この村から逃げ出した被害者が居ないかを確かめる為にな! そこまでしても本当に『やってない』と言い切れるか? 言い切ったとして、もしやってたら、国王に嘘を吐いた罰として、貴様等の家族も死刑にするからな!」

ちょっと家族にまで累を及ぼすのは遣り過ぎだろ。
だが脅しとしての効果は大きそうだ。
みんなガタガタ震えながら下を向き、「も、申し訳ございません……やった事あります」と訂正してきた。

「本当にクズ共だな!!!」
怒気を押さえきれないリュカさんは、今にも殴りそうな状態で連中を睨んでる。
今のリュカさんを見たら、どんな世界の大魔王だって逃げ出すだろう。

「おいウルフ……コイツ等の処刑は、コイツ等の家族の処刑を見せてからだ!」
「はい……………はいぃ!? な、何言ってるんですかリュカさん? 先刻(さっき)正直に罪を認めたじゃないですか。国王に嘘を吐き続けたら家族も殺すって事だったでしょ? もう諦めて全部自白するんですから、家族にまで罰を与えなくて良いですよ!」

「国王に嘘を吐いたら家族も殺すと言ったんだ。嘘を吐いてたじゃないか! 『自分達はレイプはしてない』と言って、全国を調べると言ったら『本当はやりました』と嘘吐いてた事を認めた。だから当初に言ったとおり、家族も連罪にする。親・兄妹・子供・孫・祖父母……今すぐ全員逮捕しろ!」

「リュカさん……ちょっと落ち着いて下さい。彼等は軍の信頼を損なった罪と、国家の平和を乱した罪で、早急に処刑致します。これは陛下でなくても覆す事は出来ません。ですが……ですがですよ。家族は巻き込んじゃ拙いでしょう。グランバニアが恐怖によって礎を得ている印象になりかねません」

怒りが収まらないリュカさんは、勢いのまま権力を振りかざす発言を続ける。
アローは勿論だが、ビアンカさんまで顔を顰めて困ってる。
困ってないで、奥様からも言ってやってよ!

「リュ、リュカ……ダメよ家族に手を出しちゃ。彼等を公開処刑にするだけで、今後の教訓として人々の心に残るから……ね?」
「人々の心に残るなら、よりインパクトが強い方が良い。中央から離れて権力を手にする事が、どれ程慎重にならざる事か解らせる」

拙いよ……
(すげ)ー怒ってるよ……
いや、怒る気持ちは解るんだけど、ダメだよ……遣り過ぎちゃぁ。

「陛下。軍部の長たる私が、こんな事を言うのは身内を庇ってるように聞こえてしまいますが、どうか家族への連座はお控え下さい。こ、これを行ってしまいますと、兵士は“家族を人質に取られてる”と考えてしまいます。今は“家族の平和の為に、軍人として頑張る”と言う高い士気なんです。その事をご留意お願い致します」

意を決してリュカさんに発言したピピン大臣。
だが物凄い形相で睨まれ、一瞬怯みを見せた。
だけど言うべき事を言い切って、力強くリュカさんの顔を見返し続ける。

「……………」
歯を食い縛り、右手を握り締め、誰かを殴りたいのか顔の高さくらいまで上げると、悔しそうに腕を振るわせながら拳を下げて目を瞑る。

「……わ、分かった。だが、その代わりに現在在籍してる全軍人の基本給を4割カットを命じる! そのカットによって浮いた金で、この村への賠償金を支払うぞ!」
「よ、4割カットですか!? 期間は半年くらいですか?」

「温い事を言ってんじゃねーウルフ! 永遠に4割カットだ。4割カットが現在在籍してる軍人の基本給だ! 今後入隊してくる者については、これまでの金額が基本給で良い。だけど今在籍してる連中は、全員連帯責任として4割カットを命じる! それがダメというのなら、家族も処刑する方を採用だ……決めろ。今すぐ決めろ。どっちにするかな」

家族を処刑するのは論外だが、唯でさえ安い軍人の給料を4割もカットするのも回避したい。期間限定の措置だったら受け入れる事も出来るんだけど……
チラッとビアンカさんの表情を伺ったが、目を閉じ首を横に振るだけ……これで手を打つしか無さそうだ。

「わ、分かりました……全軍人の給料4割カットを通達致します」
俺の答えを聞きながらも不愉快さが拭えないリュカさんは、鼻を「ふん!」と鳴らして連中を睨み続ける。軍部で暴動が起きなきゃ良いけど。

「それと、このアホ共の上司。お前等も罰を与える……お前等は上に立つ能力に欠如してるから、現時刻を以て最下級兵に降格だ。お前等が直属の上司として、もっと早くに悪行を暴いていれば、被害に遭う人々の数も大幅に減少したはず。だからお前等は降格されながらも、この村への賠償金を稼ぐ為、軍を辞める事は許さない。もし定年前に辞めるのであれば、賠償金の一部として、これまでに支払ってきた給料5年分を国家に返還する事を命じる」

厳しい……リュカさんの怒りが具現化してる処罰だ。
それに給料の5年分を返還するってのも、納得出来る。
正座組の隊長が、この村に赴任してきたのが5年前だ。

「それと……今回の件を最初に報告してきたクロウだけは、減給対象から外す! むしろアイツは昇給だ! 2倍に昇給させ、軍内部を見張る組織の長に据えるぞ! ウルフ、ピピン、そう取りはからえ!」
あの声のデカイ男……大出世だろうな。

彼女(こいびと)のユニさんも喜ぶに違いない。

ウルフSIDE END



 
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