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DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~

作者:山神
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チームの柱

 
前書き
甲子園も無事に終了しましたね、あっという間でした。
だが!!こちらはこれから熱を帯びていく(予定)なので、よろしくお願いします 

 
土曜日・・・

「やっと着いたぁ!!」
「長かったニャ~」

朝に学校を出発し、対戦校である埼玉県の華崎徳春高校にやって来た面々。彼女たちは真新しい道具を手に持ち、グラウンドに向かって歩き出す。

「おはようございます!!お待ちしてました!!」

グラウンドが見えてきたところで向こうから華崎徳春と胸に刺繍されたユニフォームに身を包んだ少女がやって来る。

「案内に参りました。こちらにどうぞ」
「わざわざありがとう」

礼儀正しく対戦校の選手たちを荷物が置ける場所へと案内する華崎徳春の選手。しばらく歩いているとグラウンドが見えてきて、そこではすでに変則ダブルヘッダーの一試合目が行われていた。

「大濠中央は一泊してるの?」
「そうらしいです。明日も試合をしてから帰るそうですよ」

試合の様子を横目に敵の選手と会話している監督を見て、穂乃果たちはコソコソと仲間たちで色々おかしな推測を語り合っていた。
そして穂乃果たちを荷物が置ける場所に案内し、剛を本部席へと案内していく少女。荷物を置いた穂乃果たちは、移動で固まっていた体を解すために大きく背伸びをする。

「じゃあ、空いてるスペースでアップしてってことだったから、早速行きましょうか」
「「「「「は~い」」」」」

絵里がそう言うと、全員が彼女の後に続き移動し始める。華崎徳春高校女子野球部は、近くにある男子の硬式野球部のグラウンドよりも一回り小さく、他の部活動のグラウンドと隣接する形になっていた。

「華崎徳春って甲子園にも出てるよね?それなのに女子まで強いなんてすごいなぁ」
「しかもこんなグラウンドまでちゃんとしてるもんね」
「ちょっとだけ羨ましくなってきますね」

他校に練習試合に行っているらしく、ソフトボール部が使用しているスペースが空いていたため、そこでアップを始めることにした。彼女たちは広いグラウンドで動き回っている選手たちを横目にそんなことを言っていた。

「そこ!!しゃべってないでちゃんとアップしなさい!!」

私語が目立っていたため真面目にアップに取り組んでいる絵里に注意される。三人は距離を取ると、思い思いにストレッチやランニングを行う。

「アップってみんなで纏まってってイメージやったけど、それぞれでアップするってなんか新鮮やね」
「そうね。最後のダッシュまでは個人で体を温めろって言われた時はビックリしちゃったわ」

股関節の稼働域を広げながらそんなことを話している希と真姫。そこに、待ってましたと言わんばかりににこが飛んでくる。

「剛さんの出身校の東日本学園はね、選手の自主性を尊重するためにフリーアップを採用しているのよ。もちろん普段の練習は纏まってするけど、試合前はそれぞれがベストで挑めるようにと配慮してるのよ」

野球ファンならではのうんちくを得意気に語る少女の言葉を聞き流しつつ、ゆっくりと体をほぐしていく。そんな中、みんなから離れたところから大きな悲鳴が聞こえてきた。

「行っくニャ~!!」
「ダ!!ダレカタスケテー!!」

幼馴染みに手首を掴まれずっと走り回されているエースは、涙目になりながら助けを求め叫んでいた。

「凛!!アップは個人の体調に合わせてっていったでしょ!!」
「ごめん絵里ちゃん」

ようやく解放された花陽は呼吸を大きく乱し、膝に手を付いている。そんな彼女にことりがペットボトルを差し出す。

「大丈夫?花陽ちゃん」
「あ・・・ありがとうことりちゃん」

青くなっている顔を上げペットボトルを受け取る。それから数十分間各々でアップを行い、最後に数種類のダッシュを行うと、ちょうど一試合目が終わったらしく、ベンチに入るように促された。

「道具出してスパイク履いたらすぐにキャッチボールしろ。10分後にオーダー発表したらすぐシートノックに入るぞ」
「「「「「はい!!」」」」」

ノックバットでボールをリフティングしながら指示を出す。少女たちは言われた通りにキャッチボールまで終えると、ベンチ前に集められた。

「一試合目のオーダー発表します。シートノックはそのポジションに入ってくれ」
「「「「「はい!!」」」」」

試合までの練習期間の間、とにかく様々なポジションを練習してきた彼女たちは、誰がどこのポジションをやるのかまだ知らされていない。かなり急だったこともあり剛も手探りな状態だが、現時点で一番理想だと思われるオーダーを組んだ。

打順 守備 名前 投打
一番 捕手 穂乃果 右左
二番 遊撃手 凛 右左
三番 二塁手 絵里 右右
四番 一塁手 真姫 右左
五番 右翼手 希 右右
六番 三塁手 海未 右左
七番 中堅手 にこ 右右
八番 投手 花陽 右右
九番 左翼手 ことり 右左

「じゃあすぐにシートノック入れ。やり方は昨日やった通りで行くぞ」
「「「「「はい!!」」」」」

早速ベンチ前に並び、守備へと散っていく九人。まずは各ベースに二、三人ずつ入り時計回りと半時計回りに2周ずつ、本塁~二塁~一塁~三塁~本塁、本塁~三塁~一塁~二塁~本塁とボール回しをし、守備へと散る。それから内野ノックと外野ノックを順々に行っていき、最後にキャッチャーフライでシートノックをしめた。

「穂乃果、先攻後攻決めてきてくれ」
「どっちにしますか?」
「先攻にしてくれ」

オーダー表と試合球2つを持ってバックネット前に走っていく穂乃果。彼女はじゃんけんを終えると、すぐさまベンチへと戻ってきた。

「どうだった?」
「先攻!!じゃんけんも勝ったよ!!」

ランナーコーチやバット引きで手伝うために付いてきてくれたヒデコたちに嬉しそうにグーを見せて笑顔を見せる穂乃果。それを受け剛が試合前最後のミーティングを行う。

「今日は初めての試合だから特に何も気にしなくていいよ。ただ、ポジションだけは動かすかもしれないから、そこだけは肝に命じておいてくれ」

サインプレーも特に行うつもりはないようで、簡単な話だけで済ませる。それからしばし間を置いて、両校整列を行い、一礼して試合へと入っていく。

「よーし!!頑張るぞぉ!!」

整列から戻ってくると、ヘルメットを被り相手の投球練習を行っている投手に合わせてバットを振る穂乃果。元気いっぱいのその姿に、ベンチにいる面々はにやけてしまっている。

「穂乃果!!先頭大事よ!!」
「ボールを見て振ってくださいよ!!」
「穂乃果ちゃん頑張れ!!」

ベンチから各々声を出していく。そんな中、一人の少女がボソッと皆触れなかった話題を口にする。

「なんで穂乃果が一番なのかしら?」

全員心のどこかで考えていた疑問。それをつい真姫が口走ったことで、盛り上がっていたベンチが一転、静まり返る。

「真姫ちゃん!!そんなこと言っちゃダメだよ!!」
「だっておかしいでしょ!?一番っていったら足が速いとか出塁率が高いとか、そう言う人がいる打順じゃない」

穂乃果の足は決して遅くはない。だが、このチームには凛、海未、絵里という運動神経抜群の少女たちがいるため、穂乃果よりも適している者もいるんじゃないかと思っていた。他の面々もそう思うところがあったため、その言葉に何も言えなくなる。

「何言ってんの。ちゃんとこの打順には意味があるのよ」
「何よ。その意味って」

沈黙を破ったのはまだ順番は先なのにバッティング手袋をはめてやる気満々のにこ。彼女はベンチの一番前に立つと、全員を顔を見る。

「いい!!この打順は剛さんが東日本学園で培ってきた“適性方式”が使われているわ」
「適性方式?」
「そう!!まずは一番!!剛さんは一年生の秋からずっと一番バッターを務めてきたの。東日本学園の一番の役割は“チームに勢い”を与えること!!このチームで勢いを与えられるのはキャプテンでもある穂乃果!!剛さんは守備の要であるキャッチャーと最重要打順である一番を穂乃果に任せて、チームの柱にしようとしてるのよ!!」

剛の狙いを完璧に汲み取っているにこに思わず拍手しそうになった彼は、平静を装いつつグラウンドを見つめる。間もなく試合が始まろうとしているのだが、にこはお構い無しで話を続ける。

「一番が基本から外れている分、二番にはあえて一番打者の特徴を持つ選手を置いているわ!!続いて三番!!東日本学園は“三番打者最強説”を唱えている学校なの!!」
「三番打者最強説?」
「そう!!野球でセオリーと言われる点数の取り方は一番が出て二番が送り三番が返す!!だから三番にそのチームで一番打力がある選手を置くのよ!!
四番五番は三番を敬遠させないためにそれに次ぐ実力者たちを並べるわ!!
六番にはクリンナップが残したランナーを返してもらうためにチャンスに強い選手!!七番には下位からチャンスをメイクするために出塁率がある選手!!八番には七番をキッチリ次塁に送るためにバントができる選手!!そして九番!!九番はランナーを進めたり一番にすんなりと行かせないように小技を使える選手を置くのよ!!
全ての打順に適した役割がある!!にこたちはそれに応えなければいけない――――」

カキーンッ ゴツッ

「いったぁ!!」

いつまでも演説が終わりそうになかったが、穂乃果が初球を打ちに行き、それがグラウンドに背を向けていたにこのお尻に直撃した。

「ごめ~ん!!にこちゃん!!」
「ごめんじゃないわよ!!ちゃんと前に打ちなさいよ!!」
「にこ、お前はちゃんと試合見てろ」

止めようか散々迷っていたが、これ以上は試合に影響が出かけないとにこを諭す。にこは剛に言われては何も言い返せないので、さっきまでのハイテンションとは正反対に、チワワのように静かになっていた。

ガッ

「「「「「あ・・・」」」」」

ようやく集中して試合を見れるかと思った途端、穂乃果が高めのボールを打ち上げる。

ポテンッ

しかし、フルスイングだったことが幸いし内野と外野の間にボールが落ちた。

「やったぁ!!初ヒット!!」
「穂乃果ちゃんすごいニャ!!」

タイムリーを打ったかのようなガッツポーズをしている穂乃果とそれにテンションマックスで拍手を送る凛。一方剛は色々と言いたいことはあるが、あとで話そうとぐっと飲み込み、ダミーのサインを送る。

「行っくニャー!!」

カキーンッ

打席に入りすぐの初球、甘く入ってきたストレートに快音を響かせる。打球は一二塁間を割り、一塁ランナーの穂乃果が三塁に到達する。

(ヤバイ、うまくハマりすぎ)

穂乃果が出て凛が足を活かしてノーアウト一二塁、もしくは一三塁を作りたいと思っていた今回の打順、それが狙い通りに行きすぎて自分でも驚いている。そして打席には、このチームで一番期待が持てる人物が入る。

「フーッ」

一つ大きく息を吐き、打席に入る。その姿には風格が伺え、オーラが見えるようだった。

カーンッ

2ボール1ストライクからの四球目、肩口から入ってきたカーブを巻き込むように引っ張る。真芯で捉えたため打球こそ上がらなかったが、鋭い打球がレフト線を破る。

「やった!!初得点!!」

ファールグラウンドを転々としているボールを見て一塁ランナーの凛が快足を飛ばす。ようやくレフトがボールに追い付いた時には、すでに三塁ベースを蹴るところだった。

「ボール3つ!!」

凛の足を見てホームは間に合わないと判断したキャッチャーがボールを三塁に戻させる。ホームに投げていれば絵里が三塁を陥れていたため、これはキャッチャーの好判断である。
結局その後も音ノ木坂の猛攻は止まらず、この回一挙に四点を上げる。
その裏守備に着く音ノ木坂学院の先発はエースの花陽。

「花陽、キッチリ行きましょ」
「うん!!」

最後の投球練習を終え、穂乃果がセカンドにボールを転送。そのまま内野を一周回ったボールを真姫から花陽へと渡す。

「しまって行こー!!」
「「「「「おぉ!!」」」」」

捕手からの掛け声に応え、全員が守備位置から打者を見据える。マウンドに立つ少女は、普段のオドオドした性格からは想像できないほどの鋭い目付きで、打者に向き合う。

(やっぱり似てるな、あいつに)

その姿を見て剛はある人物のことを思い出していた。セットポジションから足を上げるその姿までその人物と重なり、期待と不安でいっぱいになる。

「ストライク!!」

緊張の初球は見事にストライク。意外とプレッシャーに強いのか、初登板でも落ち着いている少女を見て、ホッとひと安心。

カーンッ

2ストライクと追い込んだ三球目、タイミングを外すために投じたナックルを引っ掛けショートに飛ぶ。

「任せるニャ!!」

凛はボテボテの当たりを軽い身のこなしで捌くと、ファーストへとジャンピングスローする。

「ちょっ!!どこ投げてんのよ!!」
「ニャニャ!?」

だが、そのボールは背の高い真姫の頭の上を高々と越えていき、バッターランナーは二塁へと到達してしまう。

(嫌な予感がする・・・)

額から嫌な汗が流れ出してきた剛。彼の予想は的中することになった。




 
 

 
後書き
ようやく野球小説っぽくなってきました。そして好調な滑り出しかと思ったらそうは問屋が卸さない。
次は打順やポジションが確定していく回になると思います。誰がどこを守るのか、お楽しみに。 
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