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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 桐嶋和ENDルート
  第01話 プロローグ

H30年12月某日 上海虹橋美爵酒店

 手元のタブレットを操作し棋院のホームページから今期の天元戦のサイトに移動する。そこには囲碁のタイトル戦では珍しい和服姿の男女が映る特設サイトが表示された。

 数年前に史上初の7冠を達成し最年少天元の記録を持つ棋士に挑むのは――

< 桐嶋 和(きりしま あい)――女流初の七大タイトルの挑戦者 >

 毎年11月から12月にかけて行われる挑戦手合五番勝負は、一年間の囲碁界を締めくくるに相応しいタイトル戦といえる。タイトルの名称は碁盤の中心点である“天元”から採られている。この一年の間、囲碁界の話題の中心は間違いなく彼女だった。

「本因坊への挑戦権こそ逃したものの後1勝で天元位か」

 昔馴染みの彼女が囲碁を始めた理由を思い出して微笑む。

 ヒカルの碁のアニメに再放送で出会って囲碁を始め、中学の時に友達を集めて作った囲碁部で部長として全国大会優勝。その後は院生となり高校在学中に一般採用枠でプロ試験に合格。
 初めてその話を聞いたのが飲み会の場ということもあって、なんの冗談かと思っていたがホントのことだと分かったときには漫画のキャラクターのような人間っているんだと驚いた。

「まあ現在進行形で漫画の主人公のような活躍だよな――」

< 桐嶋和伝説 >

・囲碁を始めて4年でプロになった天才少女
・男女混合の棋戦で優勝した日本棋院史上初の女流棋士
・女流公式棋戦の最年少獲得記録
・史上初の女流三冠独占(女流本因坊、女流名人、女流棋聖)
・女流三冠を返上し、女性しか参加できない女流棋戦への不参加を表明
・女流棋士初の三大リーグ入り(本因坊リーグ戦)
・女流棋士初の七大タイトルの挑戦権を獲得
・2連勝中で後1勝で女性初のタイトルホルダー(天元位)←今ここ

 上記のように大人しそうな見た目(アラサーといじられてるキャラ)とは裏腹にすごい経歴の持ち主である。

「碁ちゃんねるはお祭り騒ぎだな……まあ当然だけど」

 呟きながらニュースサイトを巡りながら先月のことを思い出す。

――ありがとう。この舞台に立てたのは、空のお陰だから

 天元戦の対局場となった本因坊秀策囲碁記念館のある広島県尾道市の因島にある<城の跡地に建てられたホテル>で。

――あとは私が必ずタイトルを取る。そうしたら、あのときの『約束』は守るから……忘れてないよ……ちゃんと覚えてた

 今から二年前に彼女と僕が交わした約束。

 前年に人工知能(AI)のコンピュータソフトが囲碁界の最強棋士のひとりを破る。その衝撃も冷めやらぬ年の年末年始にはインターネット対局場に現れた正体不明の棋士が、日中韓のあらゆるトップレベルの棋士を打ち倒し早碁で60戦全勝の結果を残した。そして噂された棋士の正体が人工知能(AI)であることが明かされ大きな話題となった。

 人口知能がヒトより先に囲碁の<神の領域>に近づいた。プロ棋士はもはや囲碁AIに勝てない。そんな衝撃が囲碁界を襲った年のことだった。

――強い囲碁ソフトと打ちたいの。それも毎日

 そんな時期、僕はプロ棋士である彼女に初めて囲碁のことでお願いをされた。 
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