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歌集「春雪花」

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 涼風に

  雲そ靡くや

    月籠もり

 幽かな雨に

   想い降りける



 空は陰り、八月にしてはやけに涼しい風が吹く…。

 雨雲は風に靡くように移動するものの、月は籠ったまま出てくる気配はない…。

 雲の上にあるはずの月…同じ国に住まおうとも逢えない彼…。

 姿を見ることが叶わないのは同じ…。

 雨雲が去れば月はまた姿を見せるが…彼は…。


 愛しさと淋しさ…小雨の中には恋しさがそぼ降る…。



 風に落つ

  木の葉は積もり

   朽ちにしも

 色そ褪せなむ

     わが心かな



 風に梢が揺られ、木の葉が舞い落ちる。

 地に落ちた木の葉は積もるが、いつかは色褪せ朽ちてゆく…。

 私の心は彼を想い…恋しさが降り積もるばかりだが、木の葉のように色褪せることがない…。


 いっそ色褪せて忘れられれば…きっと楽になれるだろうに…。



 
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