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転生・太陽の子

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セフィリアを縛るもの

謎の古城。
その一室で集った星の使徒は、シキという道士タオシーによる能力で、とある戦いの一部始終を映し出していた。圧倒的な力による黒き死神の断罪。道タオに目覚めていたギャンザを下した映像は、星の使徒の一部を驚かせていた。

「何だこりゃ。俺たちのような道の力とは違うよな」

「ちょースゴかったっスよー。まるで私の国でやってる子ども向けのヒーローみたいな感じですかねー」

相撲取りのような体型のマロは眉を顰しかめて観察する。それにキョーコは自国でのジパング特撮ヒーローの話を挙げた。しかしそれは所謂創作であり、ヒーローなんてものは実際には存在しない。

「星の使徒へお誘いしたのデスが、断られてしまいました。クリード、どうします? この男は放っておきマスか?」

シャルデンは星の使徒のリーダーであるクリードに問いかける。クリードは映像を見ながらも、子どものような無邪気な笑みを浮かべていた。

「いいよ、実にいい! 彼には何か感じるものがある。是非とも、これから創り上げる世界の立役者の1人となってもらいたい人材だ!」

クリードはそう語る。クリードの脳裏には、自分のパートナーであった頃の殺し屋トレインと、クロノスの長老会の連中を破壊する黒き死神の姿が並び立っていた。













ルーベックシティーより離れた平原。そこにクロノスの車により連れて来られた4人は辺りを見渡す。人気は全く無く、民家も見当たらない。先に車を降り、先頭を歩くセフィリアは「ここでなら迷惑はかかりません」と告げる。

「おい、トレイン。光太郎に何かアドバイス的なものはないのか? かなり強いんだろ、あの姐さん」

「あー、ハッキリ言って敵対したくない奴ナンバーワンだな。クロノスを抜ける時に一度戦ったんだが…剣圧だけで銃弾を消滅させられた」

「マジか…クロノスってとこはビックリ人間の集まりだな」

光太郎の後ろでスヴェンとトレインがそんな会話を続けていると、セフィリアの足が止まった。

「この辺りでいいでしょう。南光太郎、もう一度確認します。私が勝ったら、あなたはクロノスに入るのですね?」

「ああ! だけど俺が勝ったら…」

「今後一切あなたを誘うことはしません。これでよろしいですか?」

「それでいい」

2人は互いに了承し、距離を取る。

「光太郎…」

「イヴ、心配するな」

イヴは未だ光太郎が勝負を受ける事に納得してはいない。しかしそれでも、光太郎は頑なに自分の言うことを聞いてくれないだろう。それならばもうそれでもいい。

「私は…光太郎のパートナーだから。どんな結果になっても、一緒だよ」

そう言ってトレインたちと離れていくイヴ。イヴを再び窮屈な世界に押し込める訳にはいかない。光太郎はセフィリアと向き合う。セフィリアは腰にかけていた長剣を鞘から抜く。未だどのような戦い方をするのか不明だが、油断はできない。


そして片手を天に掲げ、アクションを取る。

「変 身!!」

光太郎の体が光り輝き、RXとなった。トレインとイヴは光太郎のこの姿を見たことはあるが、初見であったスヴェンは「どういう原理だ」と空いた口が塞がらない様子だ。もっとも、トレインとイヴも分かっていないが…。


「俺は太陽の子! 仮面ライダーBlack、アール、エックス!!」

「それでは…始めましょう」




そして始まった。
最強対最強の戦いが!



剣を構えたセフィリアが動く。
それはまるで幽霊のように音も無く不規則な動線を描く。

桜舞おうぶ

達人でも会得するのに10年はかかるという無音移動術。それをセフィリアは完璧に使いこなしていた。

RXは驚くものの、その直後に放たれた幾度もの剣閃を両腕でガードする。あまりの剣速に、RXのガードした両腕から火花が散った。ガードを解いて構える頃には、セフィリアは遠くに離れている。RXの力を警戒してか、徹底したヒットアンドアウェイ戦法か。RXも近付いて掴みかかろうとするも、セフィリアの予測不可能な動きが捉えられない。

RXの目から見たセフィリアの動きは捉えられないスピードではない。しかし緩急、不規則な動きが何の気配も無く行われるその移動術は厄介であった。

その時、RXの両の赤目が光る。


「マクロアイ!」

セフィリアの動きを、幾度もの剣閃をガードしながら観察する。
そして捉える。セフィリアの使用する移動術の弱点を!

RXが拳を握ったのを確認し、セフィリアはすぐさま距離を置いた。

「ライダーパァァンチ!!」

しかし狙うはセフィリアでなく大地。
RXは真下に向けてライダーパンチを放つ。その衝撃は70t以上。大地は地震のように揺れた。その瞬間、セフィリアの完璧であった移動術に綻びが見えた。セフィリアの高速移動術。それを可能としているのは当然下半身からなる。しかしそれは平坦な場所に限られてしまう。つまり要かなめは大地。足元が激しく振動を起こせば動きにも支障を来す。だが流石はセフィリアといったところか、すぐに建て直しを図るが、その隙を見逃すRXではない。

跳躍し、一緒のうちに距離を潰してセフィリアの両腕を掴んで押し倒そうとする。が、合気のような流れでRXの体は大地に叩きつけられた。そしてセフィリアはすぐさま距離を取る。

その程度ではダメージのないRXはすぐに立ち上がる。

「流石ですね…」

「貴女のその強さ…並大抵のことで身につくものではない。そして貴女が好んで戦う人でない事が、戦ってみて分かった。そんな貴女がなぜクロノスに尽くす!?」

「貴方には関係のない話です…!」




遠くで戦いを見守っていた面々は驚きと呆れ顔を浮かべていた。

「すげえ、セフィ姐の桜舞を簡単に破りやがった…」

「おい、あいつ地震起こしたぞ! 戦略兵器か!?」

「でも、まだ終わってない」



イヴの言う通り、まだ戦いは続く。
桜舞を破られてもセフィリアのアークス流剣術は未だ健在である。


セフィリアは破られた桜舞を使いながらも、近距離で剣閃を放っていた。目に見えない幾つもの剣をRXはガードし、払い、ダメージを最小限に抑えている。

「クロノスは間違っている! 世界の平和を管理するのは良い。しかしその為に人を暗殺するなど、殺すなど! あってはいけないことだ!」

RXの脳裏にかつての親友の姿が浮かぶ。
戦いたくなかった。死なせたくなかった。最善の方法は、命を取ることではないはずなのだ。

しかしRXのそんな過去や思いを知る由もないセフィリアは、その言葉に激昂する。

「クロノスを悪く言う者は許しません!」

「何度でも言う! クロノスは間違っている!」

「クロノスがいなければ私は生きていなかった! クロノスは私の全てです!!」








そのとき、ふしぎな事が起こった!





RXの脳裏にセフィリアの過去の映像が流れ込む。
産まれてすぐにクロノスに育てられ、クロノスのために生きることを教育された。セフィリアにとって、クロノスは絶対の存在となってしまっていた。

「クロノスは私に生きる術と生きる場所を与えてくれました!」

「違う! クロノスが貴女に与えたのは呪いだ! 死ぬまでクロノスの駒となる呪いだ!!」

普段物静かなセフィリアが表情を険しくし、大きな声で叫ぶ。昔馴染みのトレインでも初めて見る姿だろう。

「貴女は育ての親が人を殺せと言ったら殺すのか!?」

「従います、それがクロノスの望みならば。クロノス最強の剣として!」

「ならば…俺はその剣を折る!」

RXは腰のベルト、サンライザーに手を伸ばす。

「リボルケイン!」

その呼びかけにより、サンライザーから光の杖が現れた。

RXと相対しているセフィリアの剣には、もはや殺気が込められている。それは当然だ。RXはクロノスを否定した。そして危険な力をも持っている。クロノスの障害となる人物となっているのだ。クロノス側にとっては暗殺対象にも含まれる。

「あなたは危険です。クロノスのためにも、あなたを全力で排除します」




そして、両者の姿が消えた。



アークス流剣術最終奥義「滅界」!!












周囲に衝撃が響き渡った。

この奥義を受けた者は肉片ひとつ残らずこの世から消滅する。セフィリアは自分の勝利を確信していた。





しかし、消滅したのは自身の愛刀「クライスト」の方だった。RXは滅界のスピードを見切り、一合目をリボルケインで受け止めた。その瞬間、無限ともいえる程のエネルギーが注ぎ込まれ、クライストは折れるでもなく消滅した。地上最強といわれるオリハルコンで作られた剣が、である。

セフィリアはその事実に理解が追いつかず、空となった自分の掌を茫然自失と見下ろしていた。


「クロノスを全否定する訳じゃない」

背後で背を向けているRXがセフィリアに語る。

「世界の平和を維持する事は素晴らしい。だがその為に暗殺など、人の命を奪うという安易な手段に逃げて欲しくない」

「し、しかしそれが一番最善の場合もあるのです!」

我に返り、セフィリアは振り返ってRXに反論する。

「命を取る必要はない。捕らえるだけでもいいさ」

RXは変身を解いてセフィリアに向き合う。光太郎も、人間が全員善人だと言うつもりはない。中にはどうしようもない悪人もいるだろう。

だが仮面ライダーもいる。

「俺が悪人の手から弱き人々を守る! だから貴女たちは人の命を取る以外での平和維持を頼むよ!」

「しかし私は…この生き方しか知らないのです…」

「これから覚えていけばいいじゃねえか」

戦いが終わり、トレインたちが側までやってきていた。

「ハートネット…」

「俺だって殺し屋なんて生き方しか知らなかったけど、この生活も結構楽しいぜ? セフィ姐も探してみろよ。別にクロノスを抜けろとは言わないからよ」

「しかしクロノスの指令が…」

「光太郎の勧誘か? それなら光太郎にずっとついていけばいいんじゃねえか? クロノスに何か言われても『任務続行中です』とでも言っとけよ」

トレインのその提案を聞き、イヴがトレインのスネを蹴り上げた。勝負の意味がない、と怒っている。イヴとしては光太郎との2人旅に、目の前の気に入らない女性がついてくるのは嬉しくない。イヴは光太郎に「断って!」と無言の視線を向ける。光太郎もイヴのその視線に気づいたのか、微笑んで頷いた。やっぱり光太郎はトレインと違って優しい。「セフィリアさん、残念でした」と心の中で喜ぶイヴ。

「俺なら構わないよ」

しかし現実は残酷である。光太郎はイヴの気持ちをちっとも読みとっていなかった。

「こ、光太郎…!」

「分かってるよイヴ。セフィリアさんのためになるなら構わないって言うんだろ? イヴは優しいからな!」

「う、うぅ…」

光太郎はそうイヴに笑いかける。自分の言いたいことを理解してくれなかった寂しさと、優しいと言って褒めてくれた嬉しさを同時に与えられ、感情が混乱してしまう。

「しかし賭けは? あなたが勝ったら2度と勧誘しないという約束です。私は約束は守ります」

「セフィリアさんは負けを認めるんですか?」

「クライストも無くなってしまいましたし…認めざるを得ません」

「それじゃ、俺も降参します」

「…え?」

光太郎はわざとらしく倒れこんだ。

「実はあなたの一撃でもうボロボロだったんですよー。なので両者降参で引き分けですね。いやー、参りました」

どこからどう見てもダメージは無いように見える。光太郎は役者にはなれないなと苦笑し、スヴェンはタバコを吹かした。

「それじゃ、勝者なしで先程の賭けは不成立。証人である俺が見届けたぜ」

スヴェンの判定で勝者無しとなった勝負が終わった。
セフィリアの心の中では未だクロノスへの忠誠心が根付いているが、トレインの生き方を変えたものに触れるのも、良いかもしれないと思い始めていた。





RXの地震攻撃によってルーベックシティーの街に怪我人は無かったものの、微細な被害が出たのは別の話である。 
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