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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第五章 Over World
  カケラ紡ぎ Tips1



カケラ空間、とでもいうべきだろうか。

この空間には、無数の欠片が浮かんでいる。
それはまるで、宇宙に浮く星々のようであった。


「ここは・・・・・」

「いらっしゃい」


声がして、ほむらが振り返るとそこに梨花がいた。

姿形は子供のそれだが、妙に妖艶な雰囲気を醸し出している。
手に持つワイングラスが、それをさらに助長させていく。



「此処に有るのは、一つ一つが世界を映し出すカケラよ」

「カケラ・・・・?これが・・・・」

ここに浮かぶカケラ一つ一つ。
それの一つを覗き込もうとすると、確かにその中には何らかの光景が見えた。

これは、いわばのぞき穴。
それは様々な世界を覗き込むことができる。


その一つの中をよく見ようとして、手を伸ばして取ろうとするほむら。
そのほむらに、梨花が静かに声をかける。


「いいの?それで」

「え?・・・・」


「あなたがそれを手にして中をのぞき見たのならば、それをあなたは受け入れなければならない」

「受け入れ・・・・?」

「現実になる、ということよ」


それを聞き、ほむらがカケラから手を引く。
もしこのカケラの世界が、最悪の結果であるかもしれないことを考えたからだ。

だが、同時に希望が生まれる。
この中の一つにまどかを救い出せる世界があるのならば、それを現実にできるのだから。


しかし


「お、多い・・・・」


数が多い。
これだけの数のカケラから、その未来を一つ選びださなければならないのだ。

しかもやり直しはきかないらしい。
ほむらの頬を、冷や汗が垂れる。


「そんなの不可能に近いわ。あなたが手助けしてくれるなら・・・・・」

「私がするのは説明、そしてこの空間につれてくるだけ。あとはあなたが紡ぐしかないわ」

「・・・・紡ぐ?」


見つけ出す、ではない。
少女は間違いなく、この行為を「紡ぐ」と言っていた。


「言っておくけど、これらのカケラは「世界その物」ではないわよ?」

「でもさっき・・・・」

「これは世界の断片」


そう言ってピィン、とカケラを、遊ぶように弾く梨花。


「そうね。わかりやすく言うと、このカケラ一つ一つがDVDのチャプターみたいなものだと思えばいいわ」

「・・・・・・・」


「それは様々な出来事。あなたはそれをこの中から選び出して、一つの結晶を作り出さなければならない」

「カケラ・・・紡ぎ・・・・」

「そう。でも一つの出来事に何パターンもあるし、一つ選んだらその欠片は貴方の中で事実となる。同じ出来事の、別のパターンは選べない」


結果、矛盾する欠片もこの空間から消えていく。
厳密には「観測できなくなる」のだが。


「あなたがどのカケラを選ぶのか。それを集めて、どんなカタチを作り出すのか。クスクスクス・・・・楽しみだわ」


「私の説明はここまで」と言わんばかりに、手にしたワイングラスを傾ける。
紫色の液体が喉を通って、飲みこまれていく。


「そんなことをしてどうなるの?」

「言ったでしょう。現実になると」


カケラ紡ぎは誰にでもできることではない。

この空間に入れるのも、ほむらが時間操作魔法を操り、尚且つ様々なループを繰り返したからだ。
そもそも普通ならここには入れない。

また、ここに至るのにも、時間に関わると言うだけでは無理だ。
それを可能にしているのが、梨花と羽入の力。

今現実では、ソファに2人が肩を貸しあって寝ている状態。
そして羽入はそれを安定させ、この空間を維持している。



「もしも――――ここであなたが「ケンカした友達と会う」カケラを見つけて、それを仲直りさせるようにしたのならば、その欠片を現実に持ち込んだ時「仲直りした」結果が現実に現れるわ。最終的に、あなたはその子と仲直りしたことになる」

「それは・・・・過去の改変ということ?」

「いいえ。これは結果の観測、そして反映よ」




要は、結果だけを持ってくるということだ。

長ったらしい戦闘描写や、途中の話をすっ飛ばして「こうなりました」という最終的な結果。
それをこの現在に張りつける。

そうすることで、この現実を改変する力。
それがカケラ紡ぎ。


「でもそのカケラをどのように加工して、どんなふうに組み合わせるかはあなた次第よ」


ブワッ!と、ほむらの周囲にカケラが浮かび上がる。
それの表面は歪んでおり、中の光景まではっきり見えていない。


「最初の一歩くらいは手助けしてあげる。ここにあるのは、あなたが最初に選ぶべきカケラよ」


中身が見えないのは、確定していないから。
どれを選ぶのかは、彼女自身。

そしてそこから見える光景を、どのようにできるのかも、彼女自身だ。


「ここに揃ったのは、どれも両立できないカケラよ。一つ選べば、他は消える。たった一回きりなのだから、良く考えて選ぶといいわ」

「一回・・・・」


この言葉が、これだけ重く圧し掛かる。
何度続くかわからない選択を、正解し続けなければならない。

ほむらは、自らの左腕を見る。
そこには時間の砂が詰まった盾がある。


ひっくり返せば、一か月前に戻ることができる。
それを繰り返して、ほむらは何度も見滝原を経験してきた。


「ここでそれは意味を為さないわよ」

「ッ・・・・・」

しかし、それは頼れない。
ここがあらゆるパラレル(もしも)を覗ける場であるのなら、そこは時間を越えた空間だ。

そんな場所で、時間逆行が出来るとは彼女も考えてはいなかった。


「数多の結果を紡ぎだし、その果てにどのような現実を作り出すのか・・・・・」


ほむらが、恐る恐る手を伸ばす。


「そう。始めなければ始まらない。どんなに後戻りできなくても、いえ・・・できないからこそ、先に進むべきよ」



そして、一つのカケラを掴んだ。



「ま、せいぜいがんばりなさいな」





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『―――そんなことより、今日は転校生を紹介します!!』


ほむらが気づくと、そこは学校の廊下だった。
きょろきょろしていると、だんだん状況を把握する。

これは、自分が転校してきた初日のシーンだ。


『暁美さーん、どうぞー!』


テレビの司会者のようにテンションが高い先生の合図に従い、扉を開いて脚を踏み込むほむら。
そこに広がる光景は、何度も繰り返した内に何度も見てきた光景だ。

変わり映えのない、もはや飽き飽きした景色。




「暁美さんは長く入院生活を送っていたので、皆さんも気を付けてくださいね?」


先生の言葉に、生徒たちが応える。
席はいつも通りの場所。


ほむらは淡々と言われたままに進み、そこに座る。


愛想笑いの一つもなく。
そうして朝のホームルームは流れて行った。



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「つまんない」

「は?」

そのシーンが終わり、また気づくとほむらはさっきの空間に戻ってきていた。

変わっているのは、さっき自分を囲んだカケラが一つしかないこと。
そして、無限に広がっているであろうこの空間に、同じほど無限の欠片が浮かんでいた。


だがその光景に唖然とするよりも早く、梨花の言葉にほむらは呆気にとられた。


「つまらない・・・・?」

「ええ、つまらないわ。あなたは何をしに行ったの?」

「そんなこと言われても困るわ・・・・あの時に出来ることはない」

「本当に?」

「ええ」



そう
あの時にいきなり魔法少女の話しても、彼女はまだ何も知らない時だ。
そんな話を信じてもらえないだろうし、怪しまれては何もかもがうまくいかないだろう。

変に拒絶して印象付けるのもいけない。
まどかという少女は、魔法少女という形に憧れてしまう存在なのだ。


だから、特につかず離れずが――――



「だからつまらないわよって、それ」

「・・・・・・」

言葉が詰まる。
さっきからこの少女は何を言っているのだ。


「失敗は出来ないのよね?」

「そうよ」

「だったら、無難に行くのが当然だと思わないの?」

「あなたは無難な人生を送って満足なの?」


意見の相違。
無難で何が悪い。確実で何が間違いだというのか。

後戻りできないのなら、慎重になるのは当然だろう。
だが、それをこの少女は一蹴する。


「そんな消極的な考えで運命を打ち破れると思っているのなら――――彼の見込み違いね。あなたにこれ以上カケラ紡ぎは無理よ」

「なっ・・・・」

少女がもういらないと言わんばかりにワイングラスを傾ける。
中身がこぼれ、その液体が・・・・あるかもわからない、この空間の底に向かって落ちていく。


「ま、まって!!」

「何よ」


その少女に、ほむらは縋るように叫ぶ。

これが最後のチャンスなのだ。
これ以上繰り返せば、またまどかを魔法少女として強力なものにしてしまう。

それ以外の方法で彼女を救えるのは、もう自分にはこれしかないのだから。



「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


そのほむらを、梨花がつまらないものを見る目で見つめる。
が、数秒してから軽いため息をついた。


「しょうがないわね。もう一度だけチャンスを上げましょう」

「!!」

「だたし、これが最後よ」


梨花のワイングラスに、再び液体が注がれる。
それをクルクルと回し、中をしっかりを混ぜながら、梨花がどこともなく腰掛けるように浮く。


「でも、もし次にあんなことがあれば私はこれを叩き割るわ」

ワイングラスを眺める梨花。
そうなれば、二度とこのグラスに注がれることはない。


「私を退屈させないでね?」


そうしてほむらが振り返り、全体を見渡す。
正面に顔を向け直すと、そこには新たにカケラが浮かび上がっていた。

ほむらを囲むようなカケラの群れ。



目を閉じ、幾つかをかき分けて進み。



そして、次のカケラに手を伸ばす。




------------------------------------------------------------




「話というのはそれだけかしら?」

「・・・・・え?」



目の前には巴マミ。
場所は屋上。

自分の手にはソウルジェムが握られている。



「えっと・・・・」

「あら?どうしたのかしら。まさかここで怖気づく、なんてことはないわよね?」


見ると、マミもその手にソウルジェムを握っている。

しかし、友好的な雰囲気ではない。
そう、自分にはこの場面に見覚えがある。

確か・・・・・・



「・・・今私はキュゥべえのことを話した・・・・そう・・・ですね?」

「?そうよ。なに?今更シラを切る気なのかしら?」


そう言って、マミが踵を返す。
いきなりの展開に頭がついて行かないが、状況は大体把握できた。


自分は、知る限りのキュゥべえの情報をマミに話したのだ。


だがマミにとってキュゥべえは命の恩人で家族だ。
それを、いきなりやってきた見知らぬ年下の転校生に非難され、気を悪くしないわけがない。


今はそう言う場面だ。


(なんて最悪の場面から・・・・・)


思わず唇を噛むほむら。

だが



『次にあんなことがあれば』


「ッ・・・・」


梨花の言葉が頭に再生される。
ならば、私はここでどうすればいいのか。


自分の話を、分かってもらうまで聞いてもらう?
私自身のことを信頼させる?
挑発的な言葉をかけて、兎に角ここに留まらせる?



違う

それは違う気がするのだ。
だってそれは、今までやってうまくいかなかったこと。


下手をすればこれが最後になってしまう。
だったら、恥も外聞も何もない。

私は――――


「まって・・・・待ってくださいッッ!!!」

ガシッッ!!



しがみついた。

去ろうとするマミのその後ろ。
その制服に、縋るようにしがみついた。


急な出来事にマミも驚くが、その先に見た者が彼女の攻撃する気を失せさせる。


さっきまでほむらが立っていた場所に、ソウルジェムが転がっている。
それはさっきまで彼女が持っていたものだ。

ますますわけがわからなくなる。


だが、そんなことよりもほむらの声が脳に残る。
必死な声だからこそ、それはよく澄んで彼女の脳内へと響いていく。


「私のことは信じなくてもいいです・・・でも、だったら私を信じないならその根拠をお願いします!!」

「それは・・・・キュゥべえは私の」

「それはキュゥべえを信じる理由であって、私を疑う理由にはならないはずです!」

「む・・・・」


ややこしいことを言うほむらだが、マミは確かに、と少し納得してしまう。
と、そこでハッとして頭を振る。

そのほむらを引き剥がし、その場を去ろうとする。


「あ」

「もういいわよね。これでこの話は終わりよ」


ギィ、と重い音を立て、屋上の扉が閉じられようとする。
その向こうのマミに向かって、ほむらは最後の言葉を叫んだ。


「なんでも盲目的に信じないでください!!自分に都合のいいことばかりが、現実じゃないんです!!」



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「おかえり」

「あ・・・・」


帰ってきたほむらは、目の前で楽しそうにする梨花を見た。

どうやら彼女を失望させることはしていなかったらしい。
ただ、それがどういうことなのかはわからないが。


「いいわよ。その調子・・・・精一杯足掻くといいわ」

「足掻く・・・・?あなたは、私が足掻くのが楽しいと言うのかしら?」

「クスクスクス・・・・そうね」

「ッ・・・・・」


その言葉に、ほむらは気分を悪くする。
だがこの少女に逆らってもメリットは一切ないのだ。

ほむらは次のカケラを選び出そうとし、空間を浮遊していった。




『あぅ・・・・梨花、大丈夫なのですか?』

「あら羽入。話しかけてきて大丈夫なの?」

『はいです。空間の方は思いのほか安定してますので、ボクの負担も少ないのです』

「そ」

羽入の声が脳内でし、梨花がそれに応えていく。
ほむらは遠くの方に行ってしまっており、声は届いていないようだ。


『あの子は、運命を打ち破ることができるのでしょうか?』

「さあ?私だって、最後には運頼みの所もあったかあら、五分五分ってとこじゃない?」



カケラ紡ぎは、自らに運命を引き寄せる為の行為
カケラ紡ぎは、自らの求める最善の世界を求める行為













ではない


「それがどんなカケラでどんなカタチに出来上がっても、それはどれも美しいモノになるのは決まっているわ」

『ですね』

「問題は、その中で」

『彼女たちが、一体どれだけ諦めず、全力を尽くすか』



それが奇蹟の起こし方。



そうしているうちに、ほむらが次のカケラを選び出す。




これは、満足するための行為ではない。
満足など、この行為の結果についてくる副産物だ。



これは、納得するための行為である。




そして、どこかの翼人も言うように。



その納得―――理解こそ、相手を打ち破る最善の手であるのだ。






to be continued

 
 

 
後書き

最近自分の小説の展開に自信が持てなくなっちゃった武闘鬼人です。

そこまで素っ頓狂な原作無視・・・・してないです・・・・と思いたい・・・・




カケラ紡ぎは「結果」を集め、反映させる物だとしています。


原作「ひぐらしのなく頃に」をやった人なら・・・・・


蒔風
「解」

・・・・・原作の「ひぐらしのなく頃に解」をやった人なら


梨花
「祭囃し編」

・・・・・原作「ひぐらしのなく頃に解~祭囃し編~」をやった人ならわかると思いますが!!!

ショウ
「祭囃し編のカケラ紡ぎ」

お前ら俺いじめて楽しい!?

蒔風
「俺はお前にそっくりそのまま聞きたい」

楽しい!!

蒔風
「じゃあそれもそのまま返すぞ」







・・・・ともかくそう言うことです。

その結果を合わせていくことで、連続した現実を作り出すのがカケラ紡ぎ。


ひぐらしで言うと


「圭一が雛見沢に引っ越してくる」

「引っ越してくる家族に、村の風習を打ち破ってくれると願掛けする」

その二つの結果があれば、それを反映・・・コピペに近い感覚ですかね?すると「圭一は村の風習を吹き飛ばす、運命を打ち破る男」ということになる。


まあ多分もっと複雑なのかもしれませんが、こんな感じで。
あくまでも「結果」の反映なので、そのカケラ内で起きたことすべてが反映されるわけでもありませんね。





さて、始まりましたカケラ紡ぎ。
タイトルもひぐらし寄りに

このまま次回もこんな感じ?



梨花
「今回は説明とお試しね。またつまんないことしたら・・・・・罰ゲームなのです。にぱ~」

ほむら
「次回。カケラ紡ぎ、其の弐」

ではまた次回

 
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