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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第99話:希望を言えばキリが無い

 
前書き
ついに99話。
大台に向けて爆進中。
 

 
(グランバニア城・宰相兼国務大臣用応接室)
ウルフSIDE

う゛~……気持ち悪い。頭も痛い。
完全に二日酔いという症状だ。初めての体験でも判る……
本当に最悪な気分だ。

だが、もっと最悪なのは……俺の記憶の片隅に、リュカさんとティミーさんが登場することだ。昨日のキャバクラで酔い潰れた記憶に……
最悪だ。

何が如何して、あの二人がキャバヘ来たのか知りたくて、一緒に行ってたレクルトを応接室に呼び出した。
すると平然とした表情で、この馬鹿こう言った。
「僕がお願いした」

「え? 馬鹿なの?? お前さんは馬鹿野郎なのかい?」
「馬鹿は君だ。酔い潰れた君を、人目に晒さずに連れ帰る事は僕に不可能だし、置いて帰る事だって出来やしない。置いて帰りたかったけど、置いて帰るわけいかない」

「だ、だからって……ティミーさんまで呼ぶ事はなかっただろ!」
「逆だよ! 僕は殿下しか呼びたくなかったんだ。だって君が落ち込んだ理由は陛下に対する事柄が殆どなんだろ!?」
い、いや……まぁ……そうだが……

「僕もキャバ嬢達も、殿下だけを呼んで君を押し付けたかったんだ。でも事態を把握してる殿下は、ありがたい事に陛下まで連れて来てくれたんだよ……そのお陰で僕達の精神的安定以外は、何ら問題無く終了した」

「お前らの精神的安定なんて知るか!」
「君は本当に酷い奴だな。あれだけの機密事項をベラベラ喋れば、陛下が僕等を脅すって分ってたんだろ!?」
「当然だ。だから店長に、人目に触れない席を用意させたんだから」
「リュリュさんが不機嫌になるのも解る。君はホント最悪だ」

「うるさい……今更気付くな、俺の最悪さなんて」
「いや、もう最悪。想像を絶する最悪っぷり」
こいつ彼女(ピエッサさん)に似てきたぞ。表情を変えずに俺をバッシングする。

「あぁもう……分った分った! 悪かったよ。だが言わせてもらう……お陰でティミーさんに詫びを入れに行かなきゃならん。面倒クサい」
「それは申し訳御座いませんでしたぁ」
くそっ、ムカつく言い方だが、これ以上言っても余計に文句を言われるだけだ。

「そんな事より、戻ったらピピン大臣に伝えて欲しい事がある」
「何……まだ僕の精神的安定を脅かすの?」
根に持ちやがって……

「違う。元々仕事での用件があったから呼び出したんだ」
「へー、本当に仕事?」
かなりのストレスだったのか、疑いの眼差しを緩めない。

「……ホザックに対する軍事警戒を緩める。至急、国境線に配備してある兵力を減少させろ」
「え、良いの!? 大丈夫なの!!? だって新兵器で脅して火縄銃のデータを返却させたからって、あれで全部だとは限らないんだよ! まだ連中は隠してるかもしれないし、それで再開発を進めてるかもしれないじゃないか!」

「だからだ! 俺もリュカさんも、ホザックが火縄銃の情報を全て放棄したとは思ってない。むしろ隠し持って、我が国の新兵器を凌駕させようと画策させていると思ってる」
「じゃ、じゃぁ何で!?」

「我が国の新兵器は、それの情報が無いまま模倣させる事は不可能に近い。連中に出来る事は今ある兵器を発展させる事だけ。つまり連中は我が国に技術力で負けると解っている」
「でも……火縄銃そのものを作り出す事は出来るんじゃないかな?」

「出来るだろう……間違いなく」
「じゃぁ何で!? 我が国に対してじゃなくたって、火縄銃を使用するかもしれないよ? それを放置するつもりなのかい!?」

「放置というか、それを望んでいる。攻め込まれた国には申し訳ないけど、火縄銃を作り出して使用してくれれば、大助かりだと考えている」
「全然解らない。僕は君や陛下と違って凡人だから、全然理解できないよ!」

「現状で我が国はホザックの内政に介入する事は出来ない。当然だが、別の国なんだし互いに介入を許す訳ない。だけど連中が我が国の王のお願い(脅し)を無視して、火縄銃の情報を全て放棄して無い事が分れば、それを理由に軍事行動を起こし、ホザックを制圧する事が出来る。勿論、あの国を手に入れる事が目的じゃ無い……武器の情報奪還と、奴隷制度の廃止を強制する事が目的だ」

「では、兵力を引き上げる意味は?」
「出来る事なら、他の国に迷惑をかけたくない。グランバニアに攻め込んでもらえる方が助かる。だから国境線をガラ空きにするんだ。まぁ国境線と言っても、あの国と地続きで接して無いから、付近の艦隊撤収と、一番近場の基地の兵力引き上げになるけどね」

流石に無表情を維持できず、畏怖の目で俺を見つめるレクルト。
俺としては、もっと穏便に事が運ぶと思ってた……だけど希望通りに行かない事が判り、酒をかっ食らって酔いつぶれてしまったのだ。

「解ったよ……戻ってピピン閣下に伝えとく」
「そうしてくれ。……ああ、そうだ。昨日の事で礼なら不要だよ」
突然の言葉に『はぁ?』と言わんばかりの表情をするレクルト。

「俺がベラベラ機密事項を暴露したから、リュカさんがサビーネの店をおもいっきり脅したろ。これであの貧乳キャバ嬢から、強引に誘われなくなるだろう。彼女が出来て金が必要だろ?」
昨晩の事を思い出し、複雑な表情で俺に視線を送るレクルト。

俺は酔い潰れていたから、リュカさんが如何な脅しをしたか分からない。
だけどリュカさんの脅しだから、多分物凄い脅しだったんだと思われる。
内容は聞かない方が良いだろうと俺は思ってるし、きっと連中も言いたがらないだろう。

俺としては後でサビーネに会って、あの女が如何な顔をするのか楽しみだ。
恐怖の表情を浮かべるのか、嫌悪の表情を向けるのか……
リュリュさんの様に、徹底的に嫌うだけだったら面白みに欠けるなぁ……

あぁそうだ。
後でティミーさんとこへ謝りにいかないとなぁ……
今はまだ仕事中で、執務室にはリュリュさんも居るから行きたくないけど、仕事上がりなら脇目も触れずに愛娘の下へ帰るだろうから、自宅へお邪魔させてもらおう。

アルルは嫌な顔するだろうけど……
そんな事は知らん!

ウルフSIDEEND



(グランバニア城・王太子夫婦宅)
アルルSIDE

昨日サボったツケが回り、今日は残業を余儀なくされたウルフ宰相が、夕食も終わり自宅で娘と戯れていたティミーに会いに来た。
どうやら昨晩の失態を謝りに来た様子だ。

「ホントすいません、ティミーさんにまで迷惑かけて」
まったく迷惑な事だわ。我が家の団欒を邪魔して……
「気にするなよウルフ君。君には何時も助けられてるんだから……」
確かにウルフの能力は凄いが、それとは別の問題だと思う。

「でも、仕事中に来てくれれば良かったのに」
彼が来て私に託したアミーをチラ見し、訪問者に少しばかりのクレームを付ける。
「リュリュさんが居ましたから……」
何だコイツ……リュリュが怖くて、彼女を避けるように変な時間に訪問したのか?

「リュリュが? 彼女の文句が怖くて時間を調整するなんて、随分と君らしくないなぁ」
「怖いというか……あの女、リュカさんを偶像化して見てたでしょ。だからそれが崩れて、(すげ)ーショック受けて、俺に八つ当たりするんですよ」

「なるほど。まぁ僕等は父さんが、やるときは酷い事でもやるって知ってるからねぇ」
確かに知っている。リュカさんは怒りで、カンダタの部下達を惨殺した事がある。
一緒に冒険した事がある者達なら、あの人の無惨さを色んな形で見ているだろう。

「リュリュは一度も一緒に旅した事が無いから、父さんの残酷っぷりを見た事無いんだね」「そのくせ勝手に理想を作り上げ、それを当て嵌めてるから馬鹿な偶像に取り憑かれてる。これを機に変態的なファザコンも解消されると、少しはリュカさんに褒められるんですけどね、俺が」
結局お前かい!

「そうだね。最近はラングストンに手料理を振る舞われてるみたいだし、そろそろ彼とでも良いから男性と付き合えれば助かるよね」
「ティミーさんはラングストンが義理の弟になっても良いんですか?」
確かにあの男はリュカ家向きの性格だが、向いてるからこそ問題も多い。

「正直言うとイヤだねぇ。彼以外の男でも……でももう背に腹は代えられなくない?」
「そうですけど、あの男ほどリュカ家に適した人材も希ですよ」
そうだろうか? コイツは自分の事を過小評価しすぎだ。

「僕から見たら君も十分適してるよ」
「俺はそういう風に仕込まれましたから。殿下の父君と妹君に」
「自分に否は無いと?」
「はい。殿下という反面教師にも助けられましたし」

「そこまで言い切れる君には、生まれ持っての才能があったと思うよ」
「まさか! 小生、生まれ立ては初めて出会った殿下よりもピュアでした」
ピュアと言えばピュアだったかもしれない。憧れてたシスターをリュカさんに寝取られて、いじけるような子供だったし。

だが今では、二人の娘に手を出す男へと成長した。
この男の成長率は計り知れないわ。
……………アミーを近付けてはダメだわ!

私は徐に立ち上がり、アミーをベビーベッドへ連れて行く。
「うぉい! どういう意味だ?」
「解るでしょ。貴方は男として信用できないの」

「解ってたまるか! 俺はリュカさんの弟子だぞ。口説き落とさなきゃ手は出さない。アミーは未だアルルの貧乳に張り付いてる存在だろ。口説けるかい!」
「でも手近にいて、長い時間をかけて口説ける若い女よ。あやしてると嘯いて、ウルフの愛人へと教育されては困るもの」

「ウルフ君……もう(うち)には来ないでくれ。僕の可愛い娘に近寄らせられないよ、君は」
私(正確にはアミー) とウルフの間に立って、姿すら見せようとしないティミー。
どこまで本気かしら?

「こ、このアホ夫婦……」
「アホで結構。娘を魔手から守る為ならね」
どうやら殆ど本気模様。

「気を付けろよ。そうやって親が男を遠ざけてると、将来リュリュさん以上の行かず後家になるからな! リュカさんの良い所は、娘の恋愛に口出さない事なんだ……ちょっと度を超えてる時があるけど」
それはリューナの事だろう。

「良いんだよ。その時はパパが結婚してあげるんだから」
「マジかコイツ!?」
私も同じ気持ちになった。マジか父親!?

(げしっ!)「うおぅ!?」
思わず私はティミーを蹴飛ばし、アミーをつれて子供部屋へ避難する。
「じょ、冗談だよぉアルルぅ~」

「いいや、目がマジだったね。俺なんかよりアミーに近付けちゃダメな男なんじゃねーの?」
「無いわティミー……本当に無いわぁ。(リュリュ)の次は(アミー)? 絶対無いわぁその性癖!」
「だから冗談だってばぁ!」

「アンタの場合、その前科はインパクトが強すぎなんだよ」
「前科なんか無いし。リュリュとは100%何も無いし!」
力説するのが余計に気になる。

「本当か? 性格がリュカさんと正反対だからなぁアンタ。ムキなってるのが余計に疑わしい」
「あの男の性格は目盛りをブッちぎってるんだよ。それと比較したら誰だって正反対に見える!」
言わんとしてる事は解るが、それでも疑惑は拭えない。

「はぁ……短い結婚生活だったな。離婚の原因が自分の娘で、しかも未だ乳飲み子だなんて、グランバニア王家の大スキャンダルだ。現国王の女癖の悪さなんてカッ消えるな(笑)」
王家としてどころか、人間として白い目で見られるわ。

「うるさい、もう帰れ!」
ニヤケ顔のウルフに帰るよう指示するティミー。
ニヤニヤしたままのウルフは、そのままの顔で立ち上がり、そのままの顔で帰ってゆく。

あの性格……先天的なのか後天的なのか理解に苦しむわ。

アルルSIDE END



 
 

 
後書き
次話は遂に100話到達。
ティミーのヤバさを知ってもらいましたが、
今更ながら新キャラを登場させる予定です。

新キャラを登場させるのですが、一つだけ懸念事項がございます。
作者の脳内では早い段階から登場の意思があったんですが、
これまでに何一つ布石を打ってなかった事です。
読者様側から見れば、思いつきで登場したキャラに見えてしまいますね。 
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