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漱石より三島由紀夫

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第三章

「私だったらね」
「無理?」
「暴力振るう人は」
「私も」
「私もよ」
 二人共言うのだった。
「ゆきえがそんな人と付き合ったら」
「嫌になるわ」
「だから今の視点で言うとね」
「漱石みたいな人とは付き合わないでね」
 姉としてだ、二人共このことは注意した。
「幾ら漱石みたいな人のいいところを観られても」
「それでもよ」
「現代じゃね」
「暴力の時点で駄目だから」
 それでというのだ。
「付き合ったら私達が許さないから」
「いいわね」
「私も。そうした人は」
 妹もゆきえに言った。
「駄目だと思うわ」
「そう、だからね」
「本気で言うわよ」
「付き合ったら駄目な人はいるから」
「漱石以外にも」
「いいところがあってもそうした人は駄目よ」
「付き合ったら」
 三人でゆきえに言う、もう三人共テレビは観ておらずお菓子もジュースもその飲む手を止めている。
「私達も注意するから」
「いいわね」
「うん、私も好きな人は」 
 ゆきえがここで言ったことはというと。
「自殺しない三島由紀夫だし」
「まあ三島由紀夫ならいいわね」
「人間としてもいい人だったみたいだし」
「暴力も振るわないし健全で」
「紳士だったっていうしね」
 姉達は三島由紀夫のことも知っていた、それで頷けたのだ。
「じゃあね」
「三島由紀夫みたいな人と一緒になりなさい」
「いいわね」
「ええ、そうしたいわ」
 ゆきえは穏やかな笑顔で応えた、そして実際にだった。
 交際相手は精悍で前向きな紳士だった、姉達も妹も彼を紹介されたその時は心からほっとなった。親達と共に。


漱石よりも三島由紀夫   完


                2017・7・29 
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