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~異世界BETA大戦~ Muv-Luv Alternative Cross Over Aubird Force

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月面ハイヴ攻略戦②

 
前書き
今回もデュミナス軍部隊の活躍です。
はしゃいでいた一件を除いてもベステルは何故かオルキス軍をあまり好きではないようですね。 

 
スクワイエル携行マシンガンであるM-61ホバートの引き金を引く。
ブォ――――ンと震動音のような音がして実体弾がまばゆい光球となって無慈悲に前方をふさぐ要撃級BETAや戦車級BETAを次々と動かない肉塊へと変えていく。
もうどれくらい引き金を引いて、どのくらいの敵を斃したか、ベステルは100から先を数えるのをやめてしまっていた。

だが、当初よりはより楽に敵を斃す事が出来ているのいささか緊張感も解けかかってきていた。
最初のハイヴでは初戦でBETAと対峙するのも初めてであった為、動きが予測できず手こずったが、既に搭載AIにもパターンが蓄積記憶され、警報も早くなったし、中隊のメンバーも経験を積んでAIの警報を待たずに出現予測や出現時の攻撃パターン予測も容易に行う事が出来るようになった反面、割と動きが単純なBETA相手では作業に近い感覚で肉塊の製造に勤しんでいたのだ。

今攻略しているハイヴが異星物のこの星における最後の拠点であり、もうすぐ終わるという思いが油断を生むには十分な理由ではあった。
最下層と思われる層まであと少しというところで、先行していた部隊がだいぶ混乱している様子の通信が次々と入ってきた。
『ディーク伍長!左へ回り込んだぞ!回避しろ!!』『うわ、あ――――!』『コイツいったい何なんだ?!』『ヤザク9、11!サンダー機を早く後送しろ!!』
「何だ?だいぶ混乱してるな。」マーカスが通信とレーダー画面を見て、先行部隊のあまりの混乱ぶりに困惑しながらそう言った。

「1機後送されてきました。道を空けますか中尉殿?」マテウスが2機のシグナスに抱えられるように後送されてくるガングートを確認して、マーカスに意見具申する。
「ああ、そうだな軍曹。中隊各機!聞いてのとおりだ。後送されてくる味方機に道を空けるんだ。」
中隊の面々はマーカスの命令を受けて、後退する3機に進路を空ける。

「君らはヤザク中隊か?」ふいにマーカスは後退する3機に話しかけた。
「はい、そうであります中尉殿!」3機のうちシグナスに搭乗している若い育ちの良さそうな伍長がマーカスの問いかけに答えた。
「先ほどから通信が聞こえていたので気になったのだが、いったいなぜ君らは混乱していたのかな?」マーカスは先行部隊の先ほどの混乱ぶりが気になったので聞いてみた。
こうしている今でも混乱して態勢をうまく立て直せないまま戦闘を継続している模様が通信を通じてわかるくらいだった。
「はい、中尉殿。実は急に今までと違う個体の敵が現れたのです・・・。」
「今までと違う敵?エレミア星系にいた生体レーザーを撃ってくる種類じゃないの?」ベステルが会話に割り込んでくる。
「いいえ、准尉殿!生体レーザーを使う目玉の化け物ではなく、明らかに人型に似た個体でして、飛ぶことはありませんが、腕が剣のような武器になっている上に、とにかく動きが素早いのです。」
良く見ると曳航されているガングートは何か鋭利なものでスラスターを貫かれて飛行不可となってしまったようだった。
今まで見た個体は太古の大型爬虫類(突撃級)や巨大な鋏虫(要撃級)、そして出来損ないの上半身だけ人型にやや近いもの(戦車級)だったが、なぜ急に人型が現れたのか・・・・。
「そうか、ありがとう!気を付けて帰投してくれ!」マーカスが礼を言うと伍長たちは敬礼して後退していった。

「よし、では中隊前進する!先ほど聞いた通り敵の個体は今まで出会った奴よりも進化しているらしい。気を抜かずに行くぞ!」
「「「「イエッサー!!」」」」
マーカス中隊は方円隊形を継続、ところどころ現れるBETAを次々に斃しながら前進する。
「中尉殿、噂の人型はまだ現れませんね?」マテウスが待ちきれないかのように訊ねてくる。
友軍の通信を聞く限り、依然として最深部で戦っている部隊は大混乱している状況のようだった。
「中尉どの、先ほどのガングートはなぜシールドを破られてスラスターを破壊されたのでしょう?」ベステルがふいに先ほどのガングートがやられた状況に疑問をなげかける。
「そういえば、その通りだな。何かシールドを突き抜けるような兵器を出してきたか・・・何にしろ背後を取られないように留意するように!」
「「「「イエッサー」」」」

もう少し進むと、少し遠くに友軍と黒い何かが多数入り乱れて交戦しているのが見えた。
黒い何かは恐らく先ほどの伍長が言っていた“新種”なのだろう。
確かに今までのBETAに比べると格段に素早く、銃の特性を理解しているかのように銃口を向けると素早く回避運動を行う。
むやみやたらな発砲ではIFFやシールドがあるとはいえ、流れ弾による同士討ちの危険もあり(実際に見ていると他部隊ではシールドに阻まれたものの何発かフレンドリファイアが起きていた)、それを避けるためにマーカスはあえて発砲を最低限に抑える事を指示する事にした。

そして「最深部にいる友軍機に告げる!こちらマーカス中隊だ・・・これより戦闘に加わる!」マーカス中隊は乱戦を避けて進行方向左側から突入し、次々とターゲットへと迫っていく。
「こちらヤザクだ!ありがたい!助かる・・・・向こうにいるロズマンやウェーネル中隊も苦戦しているんだ。しかも各隊1個小隊欠けているからな。気をつけてくれ、油断するとやつらシールドをかいぐぐって直接攻撃を当ててきやがる!」ヤザク中隊の隊長がやや疲れた顔で応対する。
そしてマーカス以下12機が戦場へ突っ込むが、最初はスピードの速い敵に翻弄され、他の中隊がどれほど苦労していたのかを思い知る事になった。

弾は中々敵にあたらず、今までの効率と比べると与撃率は10分の1以下であった。
そしてそのうちにとうとう中隊の1機に敵の剣腕が突き刺さらんとする。
だがそれはシールドによって一瞬阻まれたのだが、片腕がシールドの力場に捕まっているところにもう片方の剣腕をぴったりと這わせて緩んだ力場の隙間から剣腕を差し込んできた。
幸いパイロットがすぐに気づいて回避した為、胴体部をかすっただけにとどまったが、回避していなければコクピットをやられていただろう。
「なるほど、ヤザク中尉が言っているのはこれの事か!」マーカス達は敵の巧みな攻撃法を垣間見ることが出来たが、依然として素早いスピードに翻弄されていた。

それからしばらく効率が悪い攻撃を続けていると・・・・「中尉どの!あいつらの反応って単調な気がします!ただひたすらに銃口のぴったり中心を基準に面積の狭い方へ避けてから銃口を向けてきた機の背後や脇へ高速移動して物理攻撃を差し込もうとするだけです!」注意深く敵を観察しながら味方機へ迫る敵に牽制攻撃を行っていたベステルがBETAの動きのパターンに気づく。
マーカスはどう攻略するか慎重に観察し、一瞬考えた・・・・そして対策は決まった。
「よし、中隊各機!バヨネット展開!射撃で牽制しながら物理攻撃で行くぞ!小隊単位で当たれ!」
バヨネットとは、いわゆる銃剣の事でありデユミナス軍のスクワイエルにとってはM-61ホバートの銃身先端部分に付属している物理攻撃装備である。
デュミナス軍スクワイエルのバヨネットは他に比べえるとやや幅広で普段は儀礼程度にしか使わないようなお飾り的な装備であるが、一応スクワイエルのシールドが無い状態であれば、装甲の合金を貫通するくらいの強度や鋭さがある。

2機のシグナスが銃撃で敵を追い立て、もう1機のシグナスが敵新種BETAに肉薄して次々とバヨネットで止めを刺す。
この戦法が有効と見るや、他の部隊機もそれに倣い小隊単位で敵を追い詰め始めた。
そしてマーカス中隊が到着してからおよそ20分くらいで最後のBETAがバヨネットの露と消える。
たったの20分だが、中隊メンバー達は2時間くらい戦っていたくらいの疲労と消耗を感じた・・・。
他に残っていた個体が掃討され、最後に深奥の巣核破壊で戦闘終了がCPより宣言された。

「ふぃー、今回はだいぶ手こずりましたねぇ・・・。」マテウスが困った顔をしてまるで悪夢にうなされた後のように頭を振っている。
「どうやらオルキスの情報部が新種の調査に来るそうだ。」CPと戦闘詳報などのやり取りをしていたマーカスがマテウスに答える。
「まさか、最初の突入時にすれ違った、あの浮かれていた部隊・・・ではないですよね?」
「そんな事はわからんよ?それよりも准尉?貴様は相当にあの部隊が許せなかったみたいだな・・・だがあれは友軍だからな?」少しの嫌悪感が顔に出ていたベステルをマーカスは宥めようとする。
「はい!もちろんわかっています!中尉どの」と言うものの、マーカスはベステルの目が笑っていない事に気づくが、さすがにつっかかって行くような事はしないだろうと思いたかった。
いや、その時は思い込んだ・・・・・。
 
 

 
後書き
またもやBETAの新種が登場してしまいました。
人型なのは何を模倣したのでしょう・・・・・・・?
次回はそのあたりも明かされるのでしょうか・・・。 
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