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喜び

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第三章

 天幕の巨大なベッドの上に十人以上の東西の美女が一糸まとわぬ姿で横たわっている、そのベッドの左右にも何十人もの美女達が揃っている。
 その美女達がだ、ウボンの服を周りから脱がしつつ言ってきた。
「さあ、どうぞ抱いて下さい」
「私達を好きなだけ」
「そして跡継ぎをもうけて下さい」
「お子をお好きなだけ」
「信じられない」
 ここでも驚きの顔で言うウボンだった。
「宮殿にご馳走にシャンパンにリンカーンに」
「はい、夜もです」
「思う存分お楽しみ下さい」
「そのうえで私達に産ませて下さい」
「若旦那様の赤ちゃんを」
 美女達は妖艶に微笑む、そしてだった。
 彼は実際に美女達を好きなだけ抱いた、そうして美食と美女と美酒と宮殿での快楽の生活を楽しんだ。
 しかし一ヶ月程してだ、ハーレムで美女達を好きなだけ抱き最高級のシャンパンを飲んでいる時にだ。
 彼は気付いた、その一ヶ月程の間だ。
 喜びを感じていない、楽しんでいる様で実は楽しんでいない。彼が望んでいる筈の暮らしだったが。
 そうした感情は感じていなかった、それでどうしてかと思っているとだ。
 目の前に涅槃の姿勢で横たわっているブッダが表れてだ、彼に微笑んでいる顔で言ってきうた。
「どうだ、今の暮らしは」
「貴方はまさか」
「その問はいいと思うが」 
 ブッダは彼に優しい笑みのまま言ってきた。
「そうではないか」
「そうですね、確かに」
「ではあらためて聞くが」
「はい」
「今の暮らしはどうか」
「俺が望んでいた暮らしです」
 まさにとだ、ウボンはブッダに答えた。
「こうした暮らしが」
「そうだな」
「はい、ですが」
「それでもだな」
「何かです」
 どうにもというのだった。
「喜びとか楽しみは」
「感じないな」
「何故か」
 首を傾げさせながらブッダに答えた。
「そうです」
「そうしたものだ、全てが望み通りになってもだ」
 それでもというのだ。 
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