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過労

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第三章

「ちょっと」
「そうだな、見付からないな」
「けれどよ」 
 妹は怯んだが気を取り直して兄に言った。
「今のお仕事はね」
「続けられないか」
「心はそう思っていてもよ」
 それでもというのだ。
「身体はそうはいかないから」
「疲れが溜まってくるか」
「もうかなり溜まってるわよ」
 今の時点でというのだ。
「それだけ過酷だと」
「それが仕事だって何度言えばわかるんだ」
「お仕事もそれぞれでしょ、お兄ちゃんこのままだと潰れるわよ」
 妹は本気で兄に言った。
「他のお仕事に転職した方がいいわよ」
「そんなことは出来ないってな」
「言うのね」
「ああ、だから今日もな」
「お仕事行くのね」
「そうしてくる」
 こう話してだ、実際にだった。
 彼は職場で必死に働いた、ビール缶やペットボトルが詰められた箱、十キロはあるそれを常に運んで動きレジをやり店内や駐車場の掃除を一日一時間だけの昼食時だけ摂ってだ。夜遅くまで働き書道やフォークリフトの勉強もして。
 店長からは少し動きが悪いと怒られていた、この店長はというと。
 仕事第一でだ、他の店員も少し動きが悪いと怒り社員募集に応じて来ている若い子にいつも言っていた。
「御前位じゃ正社員には中々なれないな」
「えっ、けれど募集には」
「研修期間があるんだ」
 それでというのだ。
「今は様子見だ」
「そんな、じゃあ」
「正社員になりたかったらいい仕事をしろ」
 絶え間なく肉体労働をさせての言葉だ、棚卸の時は朝まで働かせて。
「いいな」
「もっとですか」
「もっと自分で考えてキビキビ動け」
 余計なことは考えるなと言っておいてこうも言うのだった。
「いいな、そんなのじゃ正社員にはなれない」
「そうでえすか」
 その言葉を受けてだ、この若い子は次の日から来なくなり噂ではコンビニに就職して元気にやっていた。翔真は正社員だったが。
 店長は彼にも容赦なく言っていた、それは確かにストレスだったが。
 彼は働き続けた、しかし働けば働く程だ。
 彼はやつれ明らかに健康を害していた、両親も心配していたが。留華は出勤する兄に本気で心配する顔で言った。
「あの、本当にね」
「今の仕事はか」
「辞めた方がいいから」
 言う言葉は変わらなかった。
「お兄ちゃん倒れるわよ」
「そこまでヤワな身体じゃない」
「昨日何時に帰ってきたのよ」
「二時だ」
 真夜中だ、車通勤なのでそれで帰ってきたのだ。
「それがどうした」
「それで今は七時だけれど」
 夕食とシャワーを済ませ三時に寝てだ、六時半に起きてパンを少し食べて今から出勤するのだ。 
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