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夢を見させて

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第一章

                 夢を見させて
 せめてもと、私は願った。
「いい恋愛がしたいわね」
「えっ、何言ってるのよ」
「今この時期にそう言うの?」
 一緒に圖書館で勉強している友人達があんた何言ってるのよという目でその私に言ってきた。言葉もそんな感じだった。
「私達受験生よ」
「もうすぐ入試なのよ」
「しかも国立大学の」
「そんな中で言うの?」
「だからね」
 私達の学校は県内でもトップクラスの進学校だ、だから勉強も忙しい。私にしても連日連夜勉強漬けだ。
「夢よ」
「ああ、夢なのね」
「現実逃避ってやつ?」
「受験三昧じゃなくて」
「恋愛したいっていうのね」
「素敵な人とね」
 私はその夢をさらに話した。
「そうしたいのよ」
「その気持ちはわかるわ」
「そのことはね」
「私達もね」
「今の状況だとね」
 どうしてもとだ、友人達も言ってきた。
「そうも思いたくなるわ」
「勉強勉強でね」
「寝る時間も惜しんでだから」
「国立だから教科も多いしね」
「五教科全部だから」
「文系でも数学とか理科とか」
「何でそっちもなのよ」
 こうした文句も出る、正直私も言いたい。文系を受けるのにどうして理系の教科のテストまであるのかを。
「もう嫌よ」
「私立にしとくべきだったわ」
「毎日睡眠時間四時間」
「眠たいわ」
「かなり疲れてるし」
「合格して終わりたいわね」
「本当にね」
 私は数学の問題を解きつつまた言った。
「それでよ、終わったら」
「大学に合格したら」
「それでっていうのね」
「いい人と出会って」
「そうしてっていうの」
「そう、素敵な恋愛したいわ」
 大学に入ったらとだ、私は友人達に答えた。
「是非ね」
「それは夢ね」
「本当にそうね」
「図書館に塾に家でも夜遅くまで勉強」
「そんな毎日が終わったら」
「もう遊ぶわよ」
「高校時代勉強ばかりだったから」
 進学校ならではだ、塾も厳しい場所だった。
「合格したらね」
「模試の判定にいちいちビクビクするのも終わりで」
「気楽になるわよ」
「そうしたら恋愛でも遊びでもね」
「好きなことしましょう」
「そう、けれど今から思うわ」
 私は心からまた言った。 
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