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ソードアート・オンラインーツインズ・リブートー

作者:相宮心
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SAO:tr5―ジョーカー―

「貴女、ギャルゲー好きで女好きの変態だったのね」
「!?」

 それはあまりにも唐突のことだった。
 第七十四層の迷宮区へと続く森の小路を歩いていた途端に、ドウセツがいきなりぶっこんできたのだ。それもドウセツは「今日は何曜日?」と気軽に訊くかのような感じだった。
 ドウセツは私がギャルゲー好きだっていう事実を知っていること、そして気軽に訊いてきた二重の意味で私はかなり動揺してしまう。
 お、おおおおお落ち着け。変態呼ばわれば全力で否定できるけど、私がギャルゲー好きなのは否定できない事実だ。
 と、とにかく、嘘ついてもいいから否定してないと私のイメージが酷くなってしまう! それだけは避けるべきことだ。

「ナ、ナンノコトデショウカ? ギャルゲ? ギャルノゲームシラナイ?」
「どうやら本当みたいね」
「ソ、ソンナコト、な、ない!」
「どうしてそう言えるの?」
「…………えっと……あのー…………と、とにかくドウセツが言っているのは嘘なの! 私が言っているんだから間違いない!」
「もうちょっと頑張って嘘つきなさいよ……」

 ドウセツは呆れているけど、それもこれもドウセツが気軽にドウセツに知ってほしくない趣味を暴露してきたせいなんだよ! おかげでこっちはめっちゃ心臓バクバク鳴って、動揺しているんだよ! 平然と嘘つけられるわけないじゃない!
動揺し過ぎて疑問に思っていたことを忘れかけていたが、改めて思う。
 ドウセツは何故、私がギャルゲーそのことを知っている!? 出会ってから一言もそんな話題を出した覚えもなければ、自然と口から漏らすこともギャルゲー好きだってことをジェスチャーでアピールなんてしてない……はず!
いったい、いつ、どこで、どうやって知ったのだ!?
 その疑問を訊ねることなく、ドウセツが教えてくれた。

「昨夜アスナから来ていたメールにはそう書かれていたわ」
「…………あぁー……なるほど、なるほど!?」

 納得しかけたけど、それもおかしな話だった。
 それってアスナも私がギャルゲーをやっていることを知っていることになるじゃないか。しかもアスナにそのような話をすることは絶対にないとハッキリ言える。
 そもそもの話、私の趣味を知る人なんて今では兄だけが知って…………。

「……ねぇ、メールの内容にキリトの三文字入っていた?」
「入っていたわ」

 犯人は兄でした。
 ……いや、誰にも言うなとは言っていないけどさ……そういうのって気軽に話すものじゃないじゃん? なんでアスナに教えちゃうのかな、そのせいでドウセツにも知ってしまったじゃないの。
 ……今度会った時はたっぷりと仕返しをしよう。そうだ、アスナに兄の恥ずかしい過去を暴露しちゃおう。別に兄は恥ずかしい話をアスナに話せとは言われていないんだし、そうしよう。

「それで、何で貴女はギャルゲー好きなの? あれは現実逃避する男子がやるものでしょ?」
「そんなことないと思うよ?」

 とりあえずドウセツにバレてしまったので私は正直にギャルゲーの素晴らしさをドウセツに語ることに話にした。
 
「いやぁ……ギャルゲーはいいよ。なんだって可愛い女の子と恋愛できるなんて夢の様なものだと思うんだよね。しかも泣きゲーとかストーリーとかいいと、もうほんと泣けちゃうんだよねーこれがまた。あの子が私のことを好きでいてくれる……それがもうたまらんのですよ! 女の子可愛いは正義! 可愛いは本物だね!」
「気持ち悪い、変態、末期」
「ちょっ、ちょっと! なんなのその三連続罵倒は!?」
「どうでもいいけど、もうちょっと上手く話せないの?」
「どうでもいいけどってなんだよ! 言葉で足りないくらい素晴らしいものなの、ギャルゲーは!」
「ちょっと近づかないでくれる、レズ変態」
「おい、それは待った。ドウセツは誤解している。確かに私は女の子好きだよ、可愛いし良い匂いするし、でもそれって女の特権だと思うんだよね!」
「なるほど、本当は男なのね」
「断言する様な言い方しないで」
「異性一卵双生児って滅多にならないでしょ? なら、貴女が本当は男なら何も違和感ないはずよ」
「その発言が違和感ありまくりなんですが!?」
「上手いこと言っているつもりだろうけど、イマイチだから」
「態度も発言も手厳しいよ!」
「近寄らないで、レズ変態のおっさんに襲われたたまったものじゃないわ」
「何もかも間違っているから!」
 
 私を避けるように、一人で勝手に行ってしまうので私は誤解を解くためにも必死で離れないように後を追いかけていると、ドウセツがいきなり立ち止まった。

「ドウセツ?」

 ドウセツが急に立ち止まった理由は私の索敵スキル、索敵可能範囲のぎりぎりでプレイヤーの反応があったからだ。しかもそこに集中してみるとプレイヤーの存在を示す緑色のカーソルがいくつもあったのを確認できたのだ。
 私は何かあると思って、マップを開く。索敵スキルとの連動によりプレイヤーの数を確認する。その数、十二の緑の光点が浮かび上がっていた。
 ドウセツも確認しているはずだけど、一応聞いてみるか。

「ねぇ、ドウセツも確認できた?」
「貴女よりも早く確認できたわ」

 そこ比較する必要あるのか?

「オレンジじゃないから犯罪者プレイヤーの集団じゃない……なら、この集団の人数と縦二列の並び方と行動はほぼ間違いなく、“あれ”だよね」
「あれって言うけど忘れたの?」
「忘れていないわよ! 私は『軍』じゃないかと思っているの」
「そんなの直接見ないとわからないわよ」
「私だって完全にわかっているつもりで言ってねぇから」

 こんな時でもドウセツは平然としているか、変にマイペースというか……慌てる姿なんて想像しないけどさ。
 こんな時、レベルも名前も表示されていればある程度は推測できるんだけど……まあ、プレイヤーキルと言う殺人を防ぐデフォルト仕様だからしょうがないよね。
 ただ、きっちりした隊形をとるだけでもある程度は推測できる。私が言った、『軍』という存在の可能性が高い。

「念のため確認したいから、隠れてやり過ごさない?」
「そうね……あの茂み中で隠れましょう」
「うん」
「どさくさにまぎれてセクハラしたら追放するわよ」
「しないって」

 マップを消し、ステータスウィンドウの装備フィギュアを操作、深緑色のロングマントと装着して道に外れた緑の茂み陰にうずくまった。
 私の服装では目立ちすぎるから、茂みの色に合わせた深緑色のコートが役に立つ。隠蔽(ハイデイング)ボーナスが高く、隠蔽条件を満たせば、よほど高レベルの索敵スキルで走査しないかぎり発見することは難しい。ただこのマント、耐久力は低いわりに重くて移動しにくいから、普段は着用しないけどね。
 ザッザッと規則正しい足音がかすかに届きはじめ、やがて大きくなる。
 全員が剣士クラス。お揃いの黒鉄色(ガンメタ)の金属鎧に濃縁の戦闘服。全て実用的なデザインだが先に立つ六人の武装は片手剣。後衛六人は巨大な斧槍(ハルバード)。計十二人がヘルメットのバイザーを深く降ろしているためか表情を見ることは出来ない。恐ろしいほどに、そろった動きはシステムが動いているように思わせてしまうような行動。
 彼らは、基部フロアを本拠地とする超巨大ギルド『軍』という存在だ。
 文字から読み取れるイメージ通りなのか、軍は決して一般プレイヤーに対して敵対的な存在ではない。犯罪行為の防止を最も熱心に推進している集団ではあるが、方法が過激でオレンジ色のカーソルのプレイヤーを発見次第問答無用で攻撃し、投降した者を武装解除しては本拠である黒鉄宮(くろてつきゅう)の牢獄エリアに監禁していると言う話。投降せず、離脱にも失敗した者の処遇に対する恐ろしい噂も耳に入っている。あと、常に大人数で行動し狩場を長時間独占してしまうこともあって、一般プレイヤーの間では『軍には極力近づくな』と言う共通認識が生まれていた。
 十二人の重武装戦士の軍は、ガシャガシャっと鎧の触れ合う金属音と重そうなブーツの足音を響かせながら整然と行進し、深い森の木々の中に消えていった。

「……行った?」
「行ったわ」

 マップで軍が索敵範囲外に去ったことを確認し、茂み中なから出る。

「予想通り『軍』だったけど……なんだろうあんまり嬉しくない気がする」

 というのも私からすれば、『軍』が最前線にいることが疑問でしかないからだ。
 元々『軍』は攻略組の一つの組織だったんだけど、二十五層はクォーター・ポイントと呼ばれる強力なフロアボスとの戦いで大半の主力を失い、再起不能に追い込まれて攻略から引くことになった。なのに、今になって最前線に『軍』がいる?
 そんなことを疑問に思っているとドウセツが答えるように話し始めてくれた。

「……アスナの噂は本当らしいね」
「噂?」
「前線に出てこなくなったことが内部で不満が出ているそうで、その不満を解消するためか、少数精鋭部隊を送って、その戦果でクリアの意思を示すって言う方針を決め、その第一陣がそろそろ現れるだろうって話よ」
「プロパガンダ的な感じかな?」
「へーそんな言葉知っていたんだね」
「……バカにしているよね?」
「バカにしていたわ」
「そんなあっさりと断言されても……にしても、いきなり未踏破層(みとうはそう)に来て大丈夫かな?」
「大丈夫なのかはともかく、アスナの噂が本当だとすれば、彼らは必ずボス攻略狙うわ。それに釣り合う実力があるのか、彼らが賢いのかは知らないけどね」

 我々、軍が七十四層のボスを倒したと、大々的に宣伝するのならドウセツが言うことは大いにあり得る。

「だからあの人数か……いや、まさかいきなりボス戦とかないよね?」
「賢いのならしないわ」
「いや、いきなりボスに挑むほど無謀じゃないんだと思うけど……」

 一か八かで挑んでも倒せるようなボスじゃないんだけどなぁ……。
 それ以前に、まだ誰も七十四層のボスを誰も見ていないんだ。誰も攻略の仕方もわかっていないのに、いきなり挑むのは命を捨てる様なものだと思うから……流石にそれも『軍』はわかっている……と思いたい。

「とりあえず、私達は私達で進もうか。もうすでに半日を迎えちゃうしね」
「それもそうね」

 私はマントを外し、マップに気を配りつつ、可能な限りのスピードで進む。草原の向こうにそびえ立つ巨搭、赤褐(せきかつ)色の砂石で組み上げられた円形の構造物。第七十四層の迷宮区の入り口を目指した。



「さっそく、出たわね」

 七十四層の迷宮区の最上部近くでと言う、骸骨の剣士のモンスターと遭遇した。身長ニメートルを超える不気味な青い燐光(りんこう)をまとい、右手に長い直剣、左手に円形の金属盾を装備している。隙が多いが、骸骨のくせに恐ろしいほどの筋力を持っている。

「ということで、さっそく“あれ”をやりましょうか」
「…………マジで本気で冗談なく言っているの?」
「貴女しか出来ないことだからやるに決まっているじゃないの」
「たく……わかりましたよ。でも、やるからにはちゃんとやってよね」
「できるだけちゃんとするわ」
「できるって断言して!」

 ドウセツは私に対してバカバカと連呼するけど、ドウセツの方がよっぽどバカだと思うんだよね……。
 ドウセツは静かだけどやる気満々だし、私がめっちゃ神経使うけど有効な手だと思うのは確かだと思うし、技を磨くということならやって置いて損はないからね。
 どんな気持ちであれドウセツのためにやってやりますか。
 私は薙刀を構え直して、骸骨の剣士『デモニッシュ・サーバント』に向かって、地面を思いっきり蹴り飛ばして接近した。
 異様な雄叫びと共に、右手に持っている剣が青い光を描くように、四連続技『バーチカル・スクエア』が私へと斬りかかった。
『バーチカル・スクエア』は強力な技だけど、技後に大きな隙ができるのは知っている。
 だから、本当の意味での勝負所は四連撃目だ。
 一撃目を避け、ニ撃目も避ける。三撃目もなんとか避けられた。
 そして四撃目のタイミングで私は今以上に集中力を高めて私は剣先に当たるすれすれで低く回避する。
 それと同時に、ドウセツが即刻と私の背後から鋭い蒼色に光る一閃が『デモニッシュ・サーバント』を抉る様に斬りかかった。
 私が上手く回避しなければドウセツの剣閃は私に当たっていただろう、それくらい迷いのないおもいきりのよさ。まあ、私が絶対に回避する前提でやらないと無理な連携だからね。ある意味、信頼してくれるのは嬉しいけど……。

「あっぶなっ!?」

 未だに慣れない背後からの一振りの速さに驚きを隠せないでいた。

「次来るわよ」

 ドウセツの淡々とした報告になんとも言えない気持ちになった。
 ……私が回避上手いことをドウセツが認識してからやり始めたオリジナルの連携技。
 わざと戦闘中にブレイク・ポイントを作り、後衛の仲間と交代して作った隙を仲間に攻撃させる『スイッチ』はというテクニックはSAOで基本戦術となっている。
 基本戦術でありながらも高度な連携が要求されるが『スイッチ』のメリットはモンスターのアルゴリズムを混乱させパターンを覚えさせないこと、どうやらモンスターはこちらの攻撃パターンを切り替えられると対応に時間がかかり倒しやすくなる特徴があるそうだ。また『スイッチ』を行うことが前衛が硬直している間に後衛と交代して守ることができる。『スイッチ』は迅速かつ確実にモンスターを倒せるシンプルな方法故に『スイッチ』さえ覚えおけば、そう簡単に負けはしないだろう。
 で、そんな『スイッチ』からかけ離れた私とドウセツしかできないオリジナル連携技はというと、敵の攻撃を回避しつつ後衛にいる味方の攻撃を回避しながら敵に当てさせるという、我ながら変態技過ぎるテクニックをドウセツと何度も行っているのだ。
 この連携の利点は何よりも『スイッチ』よりも迅速にモンスターを倒せることと、ほとんど時間差のない攻撃を避けられるはずもない確実性も高いことだと私は思っている。今となっては当たり前の様に使う『スイッチ』もおそらくモンスター側は『スイッチ』のパターンも学んでいきいずれかは通用しなくなる可能性が高いが、流石に私とドウセツの変態以外の何者でもないオリジナル連携技を防げるはずないと……思いたいな。
 その反面、デメリットはというと……。

「流石に慣れてきたからもっと速くやるわね」
「こっちの神経的な何かをちょっとは考えて!」 
 
 デメリットは回避する側の私が精神的に疲れやすいことだ。
 だってこの変態技、二人の息を合わせるわけでもなく、ドウセツが私を当てるつもりでためらいもなく攻撃してくるのだ。私はそれを強引に合わせるようになんとか回避しているために、前の敵を避ける前提かつ後ろの方にも避けないといけないから、必然的にいろいろと研ぎ澄ませないと成立できないために負荷がかかって精神的に疲れやすくなってしまっている。
 多分……というか絶対、どこか緊張感抜けた時とか手を抜いた時には終わりだと思っていいだろう。というか、ドウセツがためらいなくやっているからそうさせている気がするけどね。
 愚痴っても仕方ないでモンスターに対して集中力を高めつつ追撃を行った。
 『デモニッシュ・サーバント』は体制を立て直してこちらにV状のように斬りかかる。
 今度は『バーチカル・アーク』か。確実に当ててきたのか、硬直をなるべく短くしようとした判断なのかはわからないけど。
 ぶっちゃけ私とドウセツの変態技はそう簡単に対応できるものじゃないんだよね。
『バーチカル・アーク』は二連撃斬りつける攻撃。二連撃目を回避した同時に、背後から更に加速したドウセツの抜刀は骸骨の胴体を真っ二つにする勢いで斬りつけた。
 骸骨の剣士は一度も盾を構えることもなく、真っ二つに裂かれた胴体を勢い良く地面に崩れ落ちると同時にガラスの破片の様に消滅した。

「ふぅ……」

 モンスターとの一戦を終えて私は一息ついた。
 それはモンスターに苦戦したとかではなく、背後からドウセツが抜刀技をなんとか無事に回避できたことだった。

「……前から思っていたんだけど、よく回避できるわね。貴女もしかして人間じゃないでしょ」
「人間だよ! ……そういうドウセツも微塵もない遠慮のない攻撃ですこと」
「遠慮していたら活かされないじゃない。貴女が回避できると思ってやっているんだから」
「そーですか」

 やっぱり信頼してくれているのは嬉しいんだけど…………なんか腑に落ちない。やっぱりもうちょっとデレて欲しいというか、信頼してくれているのなら微笑みの一つぐらい見せてもいいじゃないか。
 何度思っても言ったとしても、ドウセツのデレが訪れるのはまだ見ぬ先か……。終わり良ければ総て良し。だから別にいいけどね。
 ……私のこういうところが駄目なせいで、ドウセツとの変態連携技をやるのか。

「……前から思っていたんだけどさ。そろそろ名前つけない?」
「名前?」
「だって、あれとか連携技とか変態連携技とか言っていたけどなんか不便な気がするじゃない。今後も何度もやるんだったら名前つけた方が特別感とか私達の切り札感があっていいじゃない」
「……それもそうね」
 
 あら、案外とノリ気なんですね。てっきり否定してくると思っていたから反抗材料としての台詞を取っておいたんだけど、話が早くて助かる。

「なら今日から変態キリカにしましょう」
「却下!」
「どうして?」
「冷静にきょとんとしているけど、それただの私の悪口になっているからね」
「だって貴女が変態連携技と言っているらしいじゃない。一度もそれを聞いていないから貴女の中では定番化しているんでしょ?」

 た、確かに私とドウセツのやるあのテクニックを変態技とか変態連携技とかって何かと変態ってつけているけども。

「私の名前を入れてくれるのはありがたいよ。だってドウセツが私の事を意識しているんだもの」
「いえ、別にそこまでは意識したつもりはないのだけど?」
「その素っ気ない態度……全力で否定さてるよりもきついのですが」
「そんなに不満ならキリカの変態ってつけましょうか?」
「並べ替えただけだし助詞つけただけで結果として変わってないよ! つうか変態ってつける意味はないじゃないの?」
「……特にないわ」
「ないんかい!」

 私はうろ覚えの芸人の様なツッコミを大げさに披露した。
 そしたら冷ややかな目で見られた…………私、泣いていいかな?

「とにかく変態キリカもキリカの変態も却下。もうちょっと切り札的な名前にしようよ。例えばさ、私とドウセツのラブラブアタックとか」
「もうめんどくさいからジョーカーにしましょう」
「無視しないで!」

 きっとドウセツは私とドウセツのラブラブアタックという必殺技名が恥ずかしいからスルーしているに決まっている。
 きっとそうに違いないと……思うもののドウセツの表情を見る限り恥ずかしい感情は一切見られなかった。そしてドウセツは私を話を拾う事はなく話を続けさせた。

「私と貴女にとってあの連携技は切り札として十分な強さを持っているわ。切り札は英語でトランプ。トランプの中でも基本的に一番強いのはジョーカー。だからもうそれでいいよね」
 
 ちゃんと考えているのだったら、私を変態扱いにする流れはなんだったの? そもそも私のことを変態扱いする必要は一切なかったよね?
 確かにあんまり凝った名前をつける必要はないし、私とドウセツの変態技は切り札として相応しいのだろう。何よりもジョーカーという響きは文句なしでかっこいい。
 ジョーカーで問題ない。問題ないんだけどさ……どうしても私は譲れないものがある。

「でもそこは私とドウセツの」
「決定ってことね。それじゃあ先へ進みましょう」
「せめて最後まで話を聞いてからスルーして!」

 先へ進もうとするドウセツは私の方へ振り返って、

「時間の無駄だから」

 軽蔑する様な目線で言った後、私のことなど気にせずに真っ直ぐ歩き始めた。
 …………。
 ど、ドウセツって、時間の事を想ってあんな罵倒する様な事を言ったんだね。や、優しいなー……。

「……ハァ」

 ……気を取り直そう。



 私とドウセツでしかできない変態連携技もとい『ジョーカー』と名付けてから、モンスターとは六回ほど遭遇したものの、ダメージを負うことなくあっさりと切り抜けられた。でもその分、精神的に疲労は『スイッチ』よりも蓄積されたけどね。ドウセツは相変わらず私の事を回避できるのが当たり前だと思って容赦なく強烈な抜刀技を繰り出してくるから主に私が疲れる羽目に合う。
 でも、簡単に倒せることができるのは私が回避できたことではなく、ドウセツが強いというおかげでもある。二つ名である『鬼道雪』とつけられるくらいだけあって、その実力はトッププレイヤーの兄に劣らない実力。何よりもドウセツの武器は抜刀である。まるで音速の様な目で捉えることが不可能な一太刀の剣閃は強烈の一言に尽きるだろう。
 そう思えば私はそんな強さを持っているドウセツと一緒に行動できるのは女神に愛されているかもしれない。いや、それが言い過ぎるか。でもドウセツってめっちゃ美人で可愛いから恵まれているのは間違いないのかもしれないね。
 そんなことを何回も思いながら進んでいくと、徐々にだけどオブジェクトが重くなってきているのを感じ取れた。
 これまでのこと、マップデータの空欄もあとわずか、そして私の直感からして、この先に待っているのは間違いなくフロアボスの扉前だろう。
 そして歩いた先には予想通り、灰青色の巨大な二枚扉が立ち塞がった。この先はほぼ間違いなく七十四層のフロアボスが待ち構えているに違いない。

「や、やっと追いついた」

 扉を見つけた数秒後に後方から兄とアスナが合流してきた。てっきりストロングスのこともあったし、『軍』のこともあったから私達よりも先に行っているかと思っていたら、意外と後方から追いかけてくるのがちょくちょくマップを見る時に確認が取れた。
 さて、と……兄と合流したところでここまでの心境を聞いてみるとしますかね。

「兄、どうだった?」
「何が?」
「何がって……ここまでアスナと一緒にいてどうだったのって聞いているの」

 なにせ、アスナと一日を過ごすだけでも一生分の幸運に恵まれたと言っても過言じゃないからね。男だった絶対にアスナのこと意識するはずだ。何故かデスゲームになってから異性との交流が深くなってきた兄、特にアスナと接している回数でいえばアスナが一番多いはずだ。言葉にしないけど絶対に彼女にしたいなーみたいな感情があるに違いない。

「やっぱソロと違ってパーティ組むといろいろと楽だし安定するな。あと、アスナの細剣を的確にクリティカルヒットするあの技量は流石としか言えない。」

 そういうこと聞いてんじゃねぇよ。
 アスナが凄いのは今に始まったことじゃないんだよ。私が聞きたいのはKO・I・BA・NA、恋バナなんだよ!
 私の必死な想いに気がついたのか、それとも私の顔を見て察したのが兄が明様に嫌な顔をしていた。

「……お前、絶対そういうこと聞いてんじゃないみたいな顔しているな」
「わかっているのなら、聞きたいことを話してみなさいよ」
「嫌だね」
「は?」

 兄は二カッと挑発する様にな意地悪な顔をして拒否した。

「悪いが、キリカが聞きたい話は話すつもりないから諦めることだな」

 そう言って、この話を終わらせる様に兄は目に目の前にある巨大な扉の前へと行ってしまった。

「……ぜってぇ何かあったでしょ」

 誤魔化しているのはわかったし、今日はいつもより機嫌が良いことはわかった。ただ、その内容までは読み取ることは出来なかった。
 ……まあ、変に真面目になって暗くなるよりかは百倍マシだけどさ。私ぐらい正直に言ってもいいんじゃないか。
 なら、しばらく兄はアスナに任せましょう。
 私は正直に恋バナしてくれない兄なんかよりもドウセツと一緒にイチャイチャするもんねーだ。
 そう決めた私は扉を見上げているドウセツの傍に寄った。

「ドーウセツ」
「語尾にハートつける様に呼ばないでくれる? 虫唾が走る」
「鬼!」

 兄もドウセツも、もうちょっと私のこと優しくしてくれてもいいじゃない。

「ねぇ、どうする……? 覗くだけ覗いてみる?」

 そんな中、アスナは目の前の大きな扉を見ながら提案を持ち掛けてくる。強気な台詞とは裏腹に、声色は不安を感じられた。その証拠として無意識なのか、ギュッと兄のコートの袖を掴んでいた。
 ……真面目に考えれば、アスナが不安になるのもわからなくない。この先は間違いなく七十四回目のボスと対面する。七十三回もボスを倒してきたが、容姿とか形状、雰囲気とか迫力は多種多様。慣れるものではないからね。
 それに私もこういうシチュエーションはぶっちゃけ怖い。

「……ボスモンスターはその守護する部屋から絶対に出ない。ドアを開けるだけなら多分……だ、大丈夫……じゃない……かな?」
「……そこは言い切りないと、兄としても男としとてかっこつかないよ今だけハーレム男」
「お前はほんと、一言二言多いな。とにかく一応転移アイテムを用意してくれ」

 だって本当のことじゃないか。
 兄の発言に私はショートパンツのポケットから青いクリスタルを取り出す。とりあえず変にパニックにならなければ何があっても無事に街へ転移することができる。

「開けるわよ」
「ま、待って! まだ心の」
「知らない」

 ドウセツはアスナの静止も聞かずにマイペースに扉に手を当て、押し始める。
 ドウセツのマイペースに私達は戸惑い、そして呆れてしまう。ちょっとこういうのって合図してから始まるもんじゃないですかね!?
 ドウセツが一人で勝手に扉を推し始めると扉は急にバタンと開きった。
 内部は完全な暗闇で私達が立っている回廊を照らす光は届かないらしい。そして一度足を踏み入れた瞬間、その暗闇を具現化したようなボスが現れるのだろう。よくあるボスの演出の一つだ。

「…………ね」

 私が口を開いた瞬間だった。
 二つの蒼い炎が灯り、部屋の中央まで真っ直ぐ灯される。そして最後に大きな火柱が吹き上がり、炎の道が作り終わった。その演出に私と兄、アスナは同時にビクリと体をすくまてせしまった。
 そして火柱の後ろから、見上げるような陰が出現する。全身縄の如く盛り上がった筋骨、体色は青くて、ねじれた太い角、瞳は青白、顔は山羊、数々のRPGでお馴染みの悪魔のような姿を陰から表へと出る。
『The Gleam eyes』
 それがこの層のボスモンスター。名前に定冠詞がつくのはボスの証だ。
 アスナが兄の右腕にしがみついているから、ちょっとからかってやろうとは思ったけど、そんな余裕はこれっぽっちも残されてはいなかった。
 山羊の顔の悪魔は、轟くような雄叫びを上げ、右手に持った巨大な剣をかざす。そして、こっちに向かって、地響きを立てつつ猛烈なスピードで走り寄ってきた。

「うわあああああ!!」
「きゃあああああ!!」
「いやあああああ!!」

 兄、アスナ、そして私は同時に悲鳴を上げ、全力ダッシュでその場から離れた。それはもう疾風のごとくに駆け抜け安全エリアへと逃げて行った。
 ……冷静に考えれば、ボスは部屋から出ないことわかっていたんだけどね。怖い想いしかなかったから逃げることしか考えていなかった。 
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