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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第五章 Over World
  あいつは絶対に倒す



見滝原総合病院
その玄関前には、多くの患者たちが避難していた。


揺れる病院からは、禍々しい何かの気配を感じる。


ヴォォン!!

「行くよ!!」

「おう!!」

「えぇ」


その裏口にある、緊急用の車両進入口からトライドベンダーが内部へと突入していった。

すでに魔女結界の範囲は病院の上部をすっぽりと覆い、さらに広がり次第に階下へと迫ってきている。



「下の階にはまだ非難しきれてない人もいるわ」

「そんなの知るかよ!!エージ!突撃だ!!」

「ってわけにもいかないでしょ!!」

「うわ!ちょっと勝手に」


トライドベンダーから飛び降り、メダルを装填し、スキャンする。
装填したのは、緑のメダル。

ガタキリバコンボへとチェンジして、50に上る分身体で救助活動を始めるオーズ。


逃げ遅れた患者や医師たちを抱えあげ、次々に外へと運び出すオーズだが、建物の崩壊も早い。

崩れ落ちてきた瓦礫を吹き飛ばすことは容易だ。
だが、それでさらに崩壊を招いては元も子もない。

と、そこに


「しょうがないわね」

フッ、と、まるで瞬間移動のように消えては現れるほむらによって、潰される寸前の人々を救い出していく。

そうしていくと、次第に人の姿はなくなり、全員の避難を迅速に終了させた。


「これで・・・・」

「とりあえず大丈夫ね」


一段落つき、安堵の声を上げるオーズ

しかし直後

ガゴォッッ!!
バガァッ!!

「「!?」」


頭上から、瓦礫が降ってきた。
そしてそれを受け止める、杏子の鎖の壁。


あれ?と唖然とするオーズだが、振り返ると気まずそうな杏子がいた。



「今回の魔女は冗談抜きでやばいかもしれねーんだ・・・・戦力が減ったら困るからだ!!」

「杏子ちゃん・・・」

「ほら、行くぞ!!」


トライドベンダーは自立制御で、背に乗せた人々を避難させてしまったので今は外だ。
この瓦礫の状況では、呼び戻すことは出来ないだろう。


穴の開いた天井を抜け、上へと登る魔法少女と仮面ライダー。


そして、ついに結界内部へと突入した。



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「ぉリャァ!!」

「なんだこいつら・・・使い魔レベルの強さじゃないぞ!!」

「きゃぁ!?」


すでに結果以内に入った翼刀たちは、早速使い魔の洗礼を受けていた。

まどかは翼刀から手渡されていた小さな鉄片のような刃を握りしめていた。
それが結界を発し、彼女を脅威から守っている。



結界内と現実は別物だ。つまり、突入した瞬間にそこは新たな「一階」になる。
そして、その広さも病院以上の広さだった。


(魔女の位置はもうわかっている。だが――――)


迫りくる使い魔を斬り捨てる翼刀。

そのシルエットは、まるで魔法少女でもあるかのような姿。
二種類いるそれは、一人は槍、一人は弓を持っている。

強いと言っても、それはあくまで使い魔の中で、ということだ。
翼刀にしてみれば、まだ戦える相手。


(だけどこれがいつもの使い魔みたいな数で襲い掛かってきたら・・・・・それにこの結界、階層が深い)


結界内を最初に探った翼刀は、その魔女の位置から階層を大体把握していた。

が、この結界の階層数も五層ある。

通常の魔女結界で、階層数が二から三なので、これはかなり多い。
そこを、ここからさらに潜って行かねばならないのだ。


ゆえに、ここでもたつくことは出来ない。


「さやかちゃん!!先に進もう!!!」

「でもこいつらが・・・・!!」

「ここにいたってジリ貧だ!!大元を絶たないと、余計に被害がひどくなる!!」


叫ぶと、すぐに走り出してしまう翼刀。
その後を追っていくさやかとまどか。

場所がわかっているだけあって、階層へと潜る扉へは一直線だ。


「雷刃!!」

ドッ!!バババババッッ!!!

振るって射出された刃の隙間を電火が走り、それが増幅されて一面を雷で焼く。
そうして露わになった扉を蹴破って、さらに階層を進んでいく。


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「これは・・・・翼刀くんたちはもうここを通過したみたいだね」

「先を越されちまったか」

「急ぎましょう」


一方、その数分後。

オーズ(タトバコンボ)達は、先ほどまで翼刀たちがいた第一階層にいた。

まだバチバチと地面に電気の残りがあり、いかにも翼刀の通った後だとわかる。
そして、そこに再び現れる使い魔たち。


しかし、翼刀の電撃は思いのほか結界そのものに影響を与えたらしい。
地面は焼け爛れ、その回復に時間を要しているようで、使い魔の出現も少ない。


「こいつら、使い魔のわりにはつえーぞ」

「だけど、まだ何とかなるレベルだ。早く先に行こう!!」


使い魔を蹴散らし、先に進むオーズ達。
道しるべは、ズタズタにされた地面である。



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そのころ、翼刀たちは。


「嫌にあっさり着いちまったな・・・・・」

「この先が魔女ですか!?」

「ああ・・・」


すでに、魔女の魔の目の前に到達していた。

使い魔の能力自体は、すでに解っている。
だが、それも並みの使い魔よりも強いだけで、彼らの相手ではない。


多分、普通に到達は出来たのだろう。

しかし、懸念すべき点がある。



ここまで、彼女たちは大きな怪我をしてきていないのだ。
気配からして、襲い掛かろうと思えば、それこそ湯水のように使い魔を溢れ出すことも可能であろうこの魔女は、まるで誘うかのようにしか使い魔を出してこない。


そう、誘うように。
この使い魔たちは、難解なこの迷宮の意味を完全に殺していた。

結界内迷宮を解いていた翼刀にはわかる。

この使い魔たちは、迷い込むような偽の道にギッちりと詰まるように出現し、正解の道にはそれぞれ三体程しかいなかったのだから。

まるでこっちが簡単だよ、こっちの方が易しいよ、とでも言わんばかりに。
ここがまるで魔女の体内であるかのように、この深奥へといざなう形だったのだ。


「じゃあ・・・・・罠ってことですか?」

「わからない・・・でも、そう考えるのが一番だと思う」


開けるぞ、と一言。

翼刀が扉に手を駆ける。
すると、扉はひとりでに開き――――


「きゃぁ!?」

「うわ!?」

「あぅっ!!」


その内側から、使い魔によって引きずり込まれていった。



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そして、オーズ達がいる第三層は



「出たか」

「真打登場ってことだな」

「あれは・・・・・」



目の前に現れた、たった三体の使い魔に行く先を阻まれていた。

その三体が出現した瞬間に、タイミングを合わせるまでも無く三人は立ち止まっていた。
眼の前のそれから発せられるプレッシャーは、それほどの物だった。



現れた三体は


「槍か」

「銃?」

「それに・・・・盾」


槍を持った使い魔に、銃を持った使い魔、そして、左手の甲に小さな円盤状の盾を付けた使い魔だった。
それぞれが赤、黄色、紫の色をしており、立ちはだかるように並び立つ。


「こいつら・・・・あたしたちを真似してんのか?」

「じゃあ・・・あれは杏子ちゃんと、ほむらちゃん・・・」

「そして、巴マミ」


そう、そのシルエットは、彼女たちがそのまま使い魔になったかのようなものだった。

それ自体はいい。
そのことはすでに、第二層でわかっている。

どういうことかわからないが、この魔女は自分たちのことを知っている。


しかし、問題はその濃度だ。


使い魔に込められた力が、今までの物とは明確に違う。


「おい。一つ先に言っとくぞ」

「なに」

「もしヤバくなっても、あたしはあんたらを助けねぇ。多分、そんな余裕も何もない」

「同感ね。私もそう思ってたわ」

「うーん・・・まあそれならそれでいいけど」


杏子の言葉にほむらも賛同し、オーズはとりあえず彼女たちのスタンスはわかった、と返事をする。


各々の武器を取りだし、場に緊張が走る。
そして



ドンッッ!!!




三人と三体が同時に駆け出し、結界の中央で激突した。



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魔女の間へと引きずり込まれた翼刀たちは、その光景にまず困惑していた。


引きずり込んだのは使い魔だ。
それを引き剥がし、剣を構える。

襲い掛かってきたのも、使い魔だ。
やはり強いが、それでも応戦は可能だ。

そう



この空間には、使い魔しかいない。


「魔女はどこだ!?」

「見当たりません!!」


どこにも魔女の姿が見つからないのだ。


中心に据えられたのは丸いテーブル。
それを囲むかのような、四つの椅子。

五つ目の椅子は地面に倒れ、脚を折られて横たわっていた。


襲い掛かってくるのは、今までと同じ赤い使い魔とピンクの使い魔だ。

ピンクの使い魔による矢の掃射を背に、赤い使い魔が槍を構えて突っ込んでくる。


それを斬り捨て、空間内を走り回るさやかと翼刀。
しかしどこをどう探しても、魔女の姿が見当たらない。


「ステルスか・・・それとも部屋の外に出てるのか・・・・」

「魔女ってここから出ないんじゃないですか?」

「だよなぁ、っと!!」


襲い掛かってきた槍を、回転しながら躱し、そのまま振り上げた左足の踵落としで頭部を粉砕する翼刀。



そうして二人が奮闘している円形の部屋を、まどかは上から眺めていた。

この状況を見た翼刀によって、刃を壁に突き刺してできた足場に座り込んでいるのだ。
さすがに飛行能力はないのか、ここまで使い魔がやってくることはない。


「あれ・・・?」


と、まどかの視界の端に何かが映る。
遠くて少し見えにくいが、何か黄色い影が走ったような気がするのだ。

もうそれがどこに行ったのかはわからないが、確かに何かがそこにいた。


「翼刀さん!!」

「なんだ!?」


何か嫌な予感がする。
まどかはそのことを翼刀に伝えようと、声を張り上げる。

矢を放つ使い魔に接近し、剣撃と回し蹴りで吹き飛ばし、不動からの震脚で一帯を吹き飛ばしながら翼刀が聞く。
ちらりとさやかの方を見て、刃を飛ばして援護する翼刀。


まどかは「今何か・・・・」と、今感じたことを伝えようとするが、それよりも早く次の使い魔が翼刀へと襲い掛かっていく。


「チッ!!人が話しているところに・・・・!!」

襲い掛かってきた槍の使い魔の槍を、半身を返しながらスウェーで回避する翼刀。
そのままヴァルクヴェインを振り上げ、胴体を切り上げようとするのだろう。

ザクゥッッ!!


「ッッ!!!」

「翼刀さん!!」

二つの音が重なる。

一つは、翼刀が使い魔を斬り裂いた音。
もう一つは、使い魔の胸元についていた、アクセサリーのようなものから飛び出してきた帯状のモノに肩を斬り裂かれた音だ。



「くっぉ・・・・!!」

ブンッッ!!と、左手に剣を持ちかえ、そのアクセサリーを狙う翼刀。

しかしアクセサリーはキャフフフ!!と笑ってピョン、とそこらじゅうに転がる茶菓子などの陰に隠れて姿をくらましてしまう。


「翼刀さん!!大丈夫ですか!?」

「あぁ・・・まどかちゃん!!」

「なんですか!?」

「このこと?」

「あ・・・はい・・・」

「なるほど・・・・」


肩から腕に血が滴り、ボタボタと地面を染めていく。
かなり深く切られたらしく、右腕は使い物にならない。


それでも翼刀はヴァルクヴェインをさやかのソウルジェムに当て、魔力を使った分の穢れを浄化する。


「翼刀さん!?それよりも自分の腕を・・・・」

「言ったでしょ。これはあくまで剣の力だから、決して得意なわけじゃないって。これだけの傷を治すには、数秒立ち止まらないといけない」

そしてそんな暇はない、と話を終わらせ、さやかをトンっ、と押してその場から離れる。
すると、さっきまで二人がいた場所に使い魔が突進してきて、離れて行った二人を追うようにして黄色い帯が暴れまわった。


翼刀はそれを刃に絡めて引きちぎり、さやかは剣を飛ばして排除する。



「それよりも、この魔女のことだ」


そう
この魔女は幾つかおかしな点がある。


まず、使い魔の姿だ。
あまりにも自分の知っている魔法少女―――杏子に似ている。

恐らく色からして、ピンクの方はまどかなのだろう。
前に魔法少女の想像ノートを見せてもらったが、あの姿に似ている。


二つ目に、あの黄色い帯状のモノだ。
色が黄色ということも相まって、はっきり言ってマミのリボンと酷似しているとしか言いようがない。



それらのことから、翼刀は最悪のビジョンが頭に浮かんでいた。

魔女結界は、マミのいた階をいきなり包んで発生した。
つまり、最初から彼女は結界に取り込まれたことになる。


そして、あのマミに魔女と戦うすべなどあるはずもない。


ならば―――――



「だぁぁ!!」

ドォンッッ!!

さやかの投擲で、使い魔が三体ほど吹き飛ばされる。
しかし、魔女はその隙間を縫って回避した。

が、問題はその先に見えた物だ。



ガラガラとオブジェが崩れ、その先からはもともと病院だったのだろう瓦礫が見えた。

それは壁の崩れた物だったり、グシャグシャにひしゃげた車いすだったり、真っ二つに折れた扉だったり


「巴マミ」と名前が振られた、入院患者用のベッドだったりした。



「あ・・・・・」

「あれは・・・・!!」

「見るな!!」


巴マミ本人の姿はない。

だが、あれが此処に有り、そのベッドがひしゃげているのなら


彼等が導き出した答えは、ただ一つだった。



「こいつッ!!」

「ま、マミさんを・・・食べて・・・・!?」


口を抑え、ガタガタと震え始めるまどか。
顔面がみるみる真っ青に染まって行き、視界がだんだん滲んでくる。



一方さやかは、脳内の何かがキレたような気がした。

剣を握る手から、血が滴る。
ギリギリと言う音が、歯の隙間からしてきた。
胸の奥から吹き出す、彼女のメインカラーとは正反対の感情が、脳内を真っ赤に塗りつぶしていく。


「ああああぁァァァァァああああああああア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッ!!!」

「待てさやかちゃん!!」

「あいつがっ!!マミさんを!!」

「待つんだ!!」

「翼刀さんは何とも思わないんですか!?あいつが、あいつがァッッ!!」

「待てっつってんだろ!!美樹さやかァ!!!」


剣を手に、疾走したさやかの腕をとり止めようとする翼刀。
それを振り切り、さやかは翼刀を越して走り抜ける。

その肩を後ろからつかんで引き寄せ、なおも前に行こうとするさやかを振り向かせてから両肩を掴んで翼刀が怒鳴った。


フーッ、フーッ、と、怒り狂った猫のように息を荒くし、肩で息をするさやか。
目はすでに瞳孔が開いており、とてもまともな状態ではない。



が、それでも翼刀はさやかに向かって、半ば怒鳴るように言い聞かせる。


「いいか!?ここで突っ込んだって仇は取れない!!そのために突っ込んで、よしんば倒してもその時お前が死んでいたら意味がないんだ!!マミちゃんだって、そんな戦い方は望まないはずだ!!違うか!!」

「ぐ・・・でも!!」

「デモもストもねぇ!!・・・これから俺があの魔女を引きずりだす」

「翼刀さんが・・・・だけど!!」

「今とどめを刺せるのはさやかちゃんくらいだ。俺がやってもいいけど、それだと左手だし、どうしても右腕がハンデになる。それが一番確実なんだ」

「そんな・・・・」

「それとも、今さやかちゃんが感じていたのはウソだったのか?マミちゃんの仇、取りたいんだろう!」

ドォンッッッ!!!



話している二人のもとに、槍の使い魔が突っ込んできて地面が爆ぜる。
その勢いはもはや、使い魔が突っ込んできた衝撃で自滅する程のもの。


が、一拍おいてザザッ、と翼刀とさやかが離れて着地したところをみると、回避はうまくいったようだ。



「確実に叩きつぶせるその瞬間を待て!!あいつは・・・・絶対に倒す!!」



刃を一本、さやかへと飛ばし、服に引っ掛けてまどかのもとへと引き下がらせる。

高さ八メートルほどの位置の刃の上に座り込んだまどかの隣に、さやかが座り込んだのを見て翼刀が魔女を睨みつける。



対する魔女は一体。
使い魔は無限大。

魔女の大きさは片手サイズ以下。
相手の戦力は目に映る以上だ。



「上等・・・・!!!」



挑みかかる、挑戦的な苦笑を浮かべ、左手に剣を握って肩に担ぐ翼刀。
トントン、とそのまま肩を叩き、首をかしげて先の魔女を見据えた。



さて、どうやって引きずり出してやろうか・・・・!!!



to be continued

 
 

 
後書き

蒔風
「そうか!!あの魔女はマミさんを・・・・マミさんを※しやがったのかァッッ!!」

ショウ
「そうか。だからそれらしい姿なんだな」

二人
「なるほど~~~・・・・・」

武闘鬼人
「・・・・・そうだね☆」





翼刀
「次回、魔女撃破―――魔女の根源」

ではまた次回
 
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