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師匠に言われても

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第二章

「これだけは」
「そうか、納豆はか」
「子供の頃から」
「そうだな」
「はい、どうしても」
「納豆は身体にいいが」
 大豆だからとだ、師匠は他の門弟達と共に食べているきいに言った。他の門弟達は納豆も食べている。
「しかしか」
「納豆以外は」
「食べられるな」
「枝豆もお豆腐も」
 大豆やそれから作ったものもというのだ。
「食べられます」
「しかしだな」
「納豆だけは」
 本当にどうしてもというのだ。
「無理で」
「わかった、ではな」
「納豆はですか」
「どうしても食べられないならな」
 師匠もきいがそこまでと言うのならだった。
「いい」
「そうですか」
「納豆はわしが食べる」
 師匠は自分から言った。
「そうする」
「すいません」
「いい、しかしどうしても食べられないものがあるな」
 師匠は一本気で素直なきいのその気質から言った。
「誰でも」
「それで私にはですね」
「納豆だな、わしも実はな」
「師匠もですか」
「キムチは駄目だ」
 そうだというのだ。
「誰に言われてもな」
「そうなのですか」
「ならいい、誰も食べられないものはある」
 師匠はまたきいに言った。
「だから御前もだ」
「納豆はですか」
「食べなくていい」
「では」
「他のものを食べて身体を養い味を楽しめ」
「わかりました」
 結局きいはこの時は納豆は食べなかった、そしてそれが変わることはなく。
 そのまま納豆を食べずに過ごした、だがそれで困ることはなかった。納豆が食べられないからといってそれだけでは。


師匠に言われても   完


              2017・7・25 
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