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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第三の牙

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第六話 バルバトス

 
前書き
暑い、死ぬ。エアコン付けたい。
扇風機の風を浴びながら書いたん。読んでくれると嬉しいん。 

 
 ガンダムフレーム採用型モビルスーツ«ガンダム・バルバトス»
 ガンダムフレームの中でも汎用性と整備性を高めた機体で、他のガンダムフレームに比べれば特質した点は少ない。だが、その汎用性と整備性は他のガンダムフレームより優れており、どんな環境下でも一定の機動力と戦闘力を誇る。
 ガンダムフレームの中で最もスタンダードな機体と言えよう。
 勿論、この汎用性を活かし、攻撃力に高めたチューンも可能だ。その逆、防御力を高めるチューンも可能。
 暁 オーガスはガンダム・バルバトスの特性を理解し、機体を操作していた。
 初めて操縦するのに何処をどうすれば分かる。
 感覚……直感。どちらにせよ、頭で考えるより手が先に動いている。
 オヤっさんの言っていたリンカーなんとかのお陰なんだろうけど凄いな。頭痛も治まってきたし、これなら全力でやれそうだ。
 背中にマウントされている刀を引き抜き、それを構え。
 「よっと、」
 バルバトスは飛翔した。
 そして、刀を下に突き出し────モビルアーマーに突き刺した。
 
 「ねぇ、俺はどうすればいい?」
 
 
 
 
 なんだ?なんだ?なんなんだ?
 一瞬の出来事で、ジキールは混乱していた。
 空からモビルスーツが降ってきて……剣でモビルアーマーを突き刺した?
 本当に、一瞬だった。
 モビルアーマーの標的は人間だ!そう言いかけていた途中で、いきなりあのモビルスーツは現れて……それで。
 「ねぇ、俺はどうすればいいの?」
 また、この声だ。
 さっきも聴こえた。
 この通信の発信源は、いきなり現れたあのモビルスーツからだった。あのモビルスーツの識別信号は────ギャラルホン?
 という事は友軍機なのか?
 だが、あの機体は見たことない。新型のモビルスーツか?
 「ねぇ、聴いてる?」
 「あぁ……その。えっと……」
 「ねぇ、俺はどうすればいい?」
 白色のモビルスーツのパイロットは再度言ってきた。
 どうすればいい?ジキールは更に混乱する。
 一体、この状況はなんだ?どう言葉を返せばいい?そのモビルスーツはなんなんだ?お前は仲間なのか?
 モビルアーマーを攻撃したということは敵とは考えにくい。機体の識別信号もギャラルホルンの物だ。これを偽装するのは不可能に近い。なら、仲間か。そうなのか?友軍なのか?
 「てんめぇッ!俺の手柄を横取りすんじゃねぇ!」
 グランは白いモビルスーツに向かって叫ぶ。
 「は?」
 「コイツは俺の獲物だ!なに、いきなり現れたヤツが美味しい所だけ持ってってんだ!」
 「そんなの知らないよ。隙だらけだったから突き刺した。それだけ、」
 「ふざけんな!テメェ、どこの所属だ!」
 グランも、あのモビルスーツの識別信号に気付いたのだろう。あの見たことないモビルスーツの識別コードはギャラルホルン特有のパターンだ。このタイミングなら増援と考えるべきだが。
 「所属?
 なにそれ?」
 「はぁ?テメェ……ふざけてんのか!?」
 「いや、ふざけてなんかないよ。その所属って……あぁ、そういえばオヤっさんがそんな事、言ってたなぁ。このバルバトスは今はギャラルホルンのモビルスーツだって、」
 バルバ、トス?
 聞いたことがある。
 ツインリアクター搭載型の雛形。四百年前の戦争『厄祭戦』を集結に導いたガンダムフレームの一機にバルバトスという名前のモビルスーツがあった。まさか、目の前の白い機体が、そのガンダムフレームのモビルスーツ ガンダム バルバトスなのか!?
 「バルバトス、だと」
 グランの声は異様に冷たかった。
 「おい、そのモビルスーツはバルバトスで間違いねぇんだな?」
 「そうだけど、」
 「じゃぁ────死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
 グランのグレイズはアックスを振り上げ、バルバトスに振り落とした。
 バルバトスはそれを紙一重で躱し、モビルアーマーに突き刺さった太刀を引き抜いた。
 「いきなり、なに?」
 バルバトスのパイロットの鋭い声。
 ど、どういう事だ?何が、どうなってる?
 状況は更におかしくなった。
 「お前……声からしてガキだな。歳は14、15だろ」
 「そうだけど、それがなに?」
 「お前、その機体から降りろ」
 「は?」
 「俺はテメェに用はねぇ。そのモビルスーツから降りろ。そうすりゃ、見逃してやる」
 グランのグレイズは腰にマウントされている剣を取り出し構えた。右手にアックス、左に剣。グランは完全に、あのバルバトスをヤル気だった。
 「待て、グラン。落ち着け、」
 「落ち着け?落ち着けだと?おいおい、これを落ち着いてられるか?
 はっ。そいつは無理な相談だ。だってよ、目の前に居るんだぜ?俺の親父を殺したモビルスーツがよぉ!!」
 グレイズは加速した。
 左の剣を全面に突き出し突進する。バルバトスはその突進を回避した。そして、グレイズは避けられると見越していたのか、突進を途中で中断し右手のアックスをバルバトスの胴体目掛けて振り落とした。
 だが、バルバトスはそれを難なく回避する。
 グレイズは一定の距離を保ち、左手の剣を振るう。
 「おらッ!避けな!」
 「避けなきゃ当たるだろ」
 バルバトスのパイロットは冷静だった。
 攻撃されているのに反撃する事はなく、攻撃を躱し続けている。その動きはとても繊細だった。
 「ねぇ、さっきアンタが言ってた話なんだけど」
 「アッ!?」
 「アンタの父親って、このモビルスーツに殺されたの?」
 「────!!!!!!!」
 その一言で、グランはキレた。
 元より荒かったグレイズの操作は更に荒くなり、攻撃全てが単調になった。
 「それって、何年前の話?」
 「それを聞いてどうすんだ?アァッ!?」
 「いや、ちょっと気になってさ」
 「テンメェ!!!!!!!」
 怒りに身を任せるグラン。
 それにしても、バルバトスのパイロットはなんであんなにも冷静なのだろう。荒々しいグランとは真逆……いや、そもそもが違う。アイツは普通じゃない。
 よく見ればそうだ。
 普通のパイロットにあんな動きが出来るのか?
 答えは否だ。アレは異常だ。
 突然の出来事の連続でパニックを起こしていたが、少しずつ冷静さを取り戻してきた今なら分かる。
 まるで、生身のような姿勢制御。
 全ての攻撃を余裕を持って躱している。
 「当たれッ!このクソ野郎!」
 「鬱陶しいなぁ。そろそろ諦めなよ」
 「諦めるか!テメェをぶっ壊すまでなァ!」
 「てか、今はこんな事してる場合じゃないでしょ」
 「はッ?仇のテメェをぶっ壊すのが、最優先だオラ!」
 聞く耳持たず、グランは暴れ回る。
 「ねぇ、そこの人。コイツをどうにかしてよ」
 バルバトスのパイロットは溜め息を付きながら言ってきた。
 「今は、あのモビルアーマーをどうにかしないと」
 「どうにかって……アイツはもう────」
 「アイツは、まだ生きてるよ」
 その言葉と同時にモビルアーマーは行動を再開した。
 「ナッ!?」
 「あんなので倒せるんならとっくに終わってるよ」
 「な、なら、なんで、アイツは動きを止めてたんだ?
 さっきの剣で突き刺して……倒せたんたじゃないのか!?」
 「さぁ、なんか背面装甲が脆そうだと思ったから突き刺してみただけだよ。まぁ、思った通り突き刺さったから良かったけど」
 ダメージで一時的に動けなかったって事か?
 「だから、今度はぶっ壊すよ」
 「ぶっ壊すって……どうやって?」
 「えっと。名前、なんだったけ。だ、だ、ダインなんちゃら?だっけ。今、それをオヤっさんが槍にしてるからそれまでは時間を潰せって言ってた」
 「ダインなんちゃら?
 ……もしかして、ダインスレイブの事か?
 アレは使用を禁止された兵器────」
 「んなの、どうでもいいよ。アイツを倒せるならそれでいいじゃん」
 バルバトスは背中にマウントされていた滑空砲を構え、モビルアーマーに標準を合わした。
 「ねぇ、俺はどうすればいい?」
 バルバトスのパイロットは言った。
 アイツが現れてから何度目の言葉だろう。いきなり現れて、俺はどうすればいい?
 そんなの俺に聴くな。なんで、俺に聴くんだよ。
 「んなの、俺が知るかよ!
 お前のやりたいようにすればいいじゃないか!」
 そう言うと。
 バルバトスのパイロットは。
 「分かった」
 そう言って、滑空砲の弾丸は放たれた。 
 ……。
 …………。
 ……。
 へぇー。凄いなぁ。
 初めてモビルスーツに乗った。そして、初めてモビルスーツを操縦するのに俺は普通に、このバルバトスを操縦していた。
 まるで、コイツと一体化したみたいにバルバトスは俺の思い通りに動いてくれる。
 だけど、左脚の操作は少しタイムラグを感じた。
 一瞬、ほんの一瞬、バルバトスの左脚の動作が遅れる。戦場では、その一瞬が命取りになるとよく言われてるけど、そんなの関係ない。遅れると解ってるなら、それより早く動けばいい。それだけだ。
 モビルアーマーの動きを観察し、攻撃を予測する。
 モビルアーマーは巨大な尾を叩き付ける動作を見せた。
 なら、ここは距離を取って回避する。そして滑空砲を構え、モビルアーマーの頭部に狙いを定める。
 そして、俺は何の躊躇もなくトリガーを弾く。
 滑空砲の弾丸は凄まじい速度で放たれ、モビルアーマーの頭部に直撃した。
 だが、ダメージは殆どない。
 バルバトスの慣らしに、色んな部位を攻撃してモビルアーマーの様子を伺ってみたけど反応は薄かった。これじゃあジリ貧だ。いくら攻撃してもダメージが無いなら攻撃する意味がない。
 「コイツ……硬いな、」
 唯一、攻撃して効果があったのはモビルアーマーの背面装甲。あそこは全身の走行の中で一番、装甲の薄い部位だ。あそこを積極的に狙えば倒せるか。
 「バルバトスのパイロット!」
 通信?この声は、あのグレイズの人か。
 「なに?」
 「あのモビルアーマーは人間を狙っている!
 この市街地からもっと離れるんだ!」
 モビルアーマーの最優先攻撃対象は人間ってオヤっさんも言ってたな。でも、それは大丈夫そうだ。
 モビルアーマーの目はコチラを向いている。オヤっさんの言ってた通り、このバルバトスはモビルアーマーの攻撃対象のようだ。
 ガンダムフレームはモビルアーマーに対抗する為に造られた兵器。モビルアーマーをコイツを見て、最優先攻撃対象をバルバトスに移した。これなら俺がやられない限り、ここの住民達に攻撃されることは無いだろう。
 「大丈夫、コイツの狙いは俺だから」
 「どういう意味だ?」
 「説明はしない。面倒だから」
 「おい!なら、責めてここから離れろ!こんな街中で戦闘したら────」
 「駄目だ。ここからは離れられない」
 建物の陰に隠れ、距離を取る。
 「何故だ!」
 「ここはアイツにとって不利な所だからだよ」
 「なんだと?」
 「コイツの巨体じゃ、この街中は自由に動けない。いくらコイツの動きが速かろうと建物に囲まれたここなら小回りのきく、モビルスーツの方が有利だ」
 建物を利用し、小刻みに移動し、バルバトスはモビルアーマーの背面を付く。そして、太刀を構えバルバトスは飛翔した。
 「ここなら、効くだろ」
 バルバトスは太刀をモビルアーマーの背中に突き刺した。
 それは弾かれることなく突き刺さり、モビルアーマーの動きが一瞬だけ鈍くなった。
 「やっぱ、背中が弱点か」
 バルバトスは再び距離を取った。
 ヒットアンドアウェイ。
 一撃離脱。一撃して離れて距離を取る戦法を使えば被害も少なくダメージを与えられる。少しずつ少しずつ、モビルアーマーにダメージを蓄積させ、動きを止めた所を強襲する。
 と、いきたい所だけど。
 「逃げんなッ!」
 さっきから、あのグレイズは俺の邪魔をしてくる。
 「あのさぁ、邪魔しないでくれる?」
 「テメェが、逃げ回るからだろうが!」
 「アンタの目的は、あのモビルアーマーだろ?」
 「今はテメェッだ!」
 なんて無茶苦茶な奴だ。
 なんて自分勝手な奴だ。
 モビルアーマーを倒さなきゃいけないのに、なんでこの人は邪魔をする?
 コイツが、仇とかなんとか言ってたけど関係ない。今はモビルアーマーを倒さなきゃ、その仇すら撃てないんだ。
 「グラン二尉!やめろ!」
 もう片方のグレイズが、俺の邪魔をしてくるグレイズの前に立つ。
 「邪魔だッ!」
 グランという男のグレイズはアックスを振り下ろし貧弱そうなグレイズの右腕を斬り落とした。
 「バルバトスのパイロット!
 コイツは俺が抑える。だから、アイツを!」
 「分かった」
 これで邪魔者は居なくなった。
 じゃあ、やるか。
 滑空砲を構え、モビルアーマーに標準を付ける。残り段数も少ない。確実に狙いを定めて撃つ。
 放たれた弾丸はモビルアーマーの頭部に命中し、モビルアーマーの動きを鈍らせる。やっぱり、どんな生き物でも機械でも頭は弱点なんだ。
 カンッカンッカンッ。
 連続三連射。あと一発。
 最後の弾丸もモビルアーマーの頭部に命中した。
 弾の無くなった銃なんて持ってても意味ない。滑空砲をモビルアーマーに投げ捨てた。
 投げ捨てた滑空砲はモビルアーマーにあっさりと命中し爆散した。
 残された武装は太刀のみ。
 なら、する事は一つだ。
 動きを止めたモビルアーマーの周囲を高速移動し斬撃を叩き込む。
 一箇所に留まらず、一撃すれば移動し攻撃する暇を与えない。
 「もっと、もっと、もっと、速くだ」
 バルバトスはその想いに応えるように速度を上げていく。
 そしていつの間にか、俺はバルバトスを操縦している感覚を喪っていた。
 なんだろう、この感じ。
 さっきまでとは違う感覚だ。
 俺は、モビルスーツに乗っているんだよな?
 なんか違う。これって、なんだ?
 コイツが、俺の思い通りに動く。
 それはさっきからそうだった。でも、これはさっきとは違う。確かに、思い通りにバルバトスは動いている。でも、コイツ────俺の反応速度より速く動いてないか?
 ガンッガンッガンッガンッガンンッガンッ。
 太刀の斬撃はモビルアーマーの装甲にダメージを与えていく。
 そうか。コイツの装甲って、この角度から攻撃すればいいのか。
 なぁんだ。背中と頭が弱点だと思ってた。ちゃんと攻撃すれば関係ないや。
 「────アカツキっ!」
 オヤっさんの声だ。
 一度、モビルアーマーとの距離を置く。
 「ダインスレイブを固め終えた。今からコイツを射出する!無茶はしてねぇだろうな?」
 「大丈夫、無傷だよ。
 あっ。滑空砲だっけ?あれ壊れた」
 「テメェーが無事ならそれでいい。じゃあ、ついでに滑空砲の予備も射出すっから上手く受け止めろよ!」
 「分かった。射出の座標は?」
 「そっからSの6からOの9。
 キャッチ、ミスんなよ」
 オヤっさんが言葉を言い終えると直後、バルバトスが射出された所から二つの物体が打ち出された。
 「アレか、」
 すぐに取りに行きたいけど、モビルアーマーの目はコチラを見ている。迂闊に取りに行けない。
 こういう時に限って、最優先攻撃対象が仇となった。
 「グレイズの人、聴こえる?」
 「なんだ?」
 「今、空に打ち出されたの見た?」
 「あぁ、アレの事か……」
 「テメェ!邪魔すんな!」
 俺の邪魔してきたグレイズのパイロットの声だ。あぁ、そっか。貧弱そうな人が、俺の邪魔をしてくるグレイズの足止めしてくれてたんだっけ。
 「ソイツの足止めはいいから、あの今、パラシュートで浮かんでる二つ武器を俺の所まで持ってきてくれない?」
 「アレをか……。
 分かった。それは俺に任せろ」
 「ありがと。モビルアーマーはコッチに引きおせておくからなるべく早く頼むよ」
 モビルアーマーの囮になるには、ガンダムフレームはうってつけだ。
 近付くだけでヤツの目はバルバトスにしか向いていない。本来の攻撃対象の人間の事なんてコイツに比べれば二の次なんだろう。
 「さて、さっきのをもう一度……」
 と言いたい所だけど、どうやら無理そうだ。
 「もう、使い物にならなくなった」
 太刀はボロボロだった。
 刃の刀身は今にも折れそうで、太刀自体の切れ味もだいぶ落ちている。あと一撃、二撃すれば確実に折れるだろう。
 でも、残った武器はこれだけ。
 使おうにも使ったら折れる。使わなかったら邪魔。なら、使うべきか。
 そう判断し、バルバトスを建物に陰に隠れさせる。
 モビルアーマーはそこに尾を叩き付ける。甘いよ、そこにはもう居ない。
 あの巨体じゃあ、バルバトスの動きには付いてこれない。
 「チマチマやるか、」
 バルバトスは地面に落ちいた手頃な建物の残骸を掴み、それをモビルアーマーに向かって投げ付けた。そして、アイツの後半に移動っと。
 ガンッ。残骸はモビルアーマーの翼に直撃した。
 モビルアーマーは後ろに振り返り、何処から放たれた物かを探す。
 モビルアーマーって、頭悪いな。
 狂気じみた性能の兵器なのに、思考回路は子供並み。こんなんで撹乱されてるんじゃ、俺は一生捕まらないよ。
 すぐさまモビルアーマーの背後に移動し、切れ味を失った太刀を叩き付けた。
 その瞬間。
 「────────────────」
 それは誰の声なのか。とても人間の声とは思えない。
 頭に響き渡る誰かの何かの声。
 「な、んだ、」
 その声は耳を塞いでも聴こえてくる。
 この声、まさか────。
 その一瞬が命取りだった。
 モビルアーマーの尾が、俺に向かって放たれていた。
 避けられない。
 太刀で防ごうとするが、太刀の刃は無くなっていた。さっき叩き付けた拍子に折れたのか。
 防ぎようのない攻撃。
 もしかして、俺……死ぬ?
 
 「────死なすかよ」
 
 モビルアーマーの尾は弾かれた。
 なんだ?何が、起きたんだ?
 「離れてろ、コイツの相手は俺がする」
 それは、バルバトスとよく似たモビルスーツだった。
 白を基調し、二本の剣を携えていた。間違いない、これはガンダムフレームだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 俺が、それを何故、ガンダムフレームと識別出来たのは解らない。
 でも、これだけははっきりと分かる。
 コイツは「敵」だ。
 「無事か?」
 通信。男の声だ。
 「……うん、」
 「なら、離れてろ。ここは俺が引き受ける」
 そのガンダムフレームは両腰にマウントされている剣を引き抜き、モビルアーマーに向かって飛翔した。
 モビルアーマーはそれを迎撃しようと尾を使って多々落とそうとするが。
 「遅せぇよ」
 ガンダムフレームは両手の剣で尾を弾き飛ばした。
 あんな、細い剣で、アイツの尾を弾けるなんて。
 ガンダムフレームは背中のブースターを使用し更に加速する。そして両手の双剣でモビルアーマーの装甲を斬り裂いた。
 傷を付けるだけで精一杯だった、あの装甲をあのモビルスーツはいとも容易く斬り裂いたんだ。
 「アレは……」
 それを見たグレイズのパイロットも困惑している。
 「これは……一体、どうなってるんだ?」
 「さぁ、俺も解んない」
 「アレも、ガンダムフレームなのか?」
 「さぁ、多分そうだと思うけど」
 圧倒的過ぎるだろ。
 そのモビルスーツの動きはバルバトスの比じゃない。動きが素早いとか、建物を利用して撹乱とかじゃないんだ。アイツは、飛んでモビルアーマーと対峙しているんだ。
 「そういや、あの変な人は?」 
 「変な人?」 
 「なんか、バルバトスを仇とかなんと言ってた人」
 「……あ、ぁぁ。アイツのグレイズならビルの残骸に埋もれてたよ。多分、君がビルを盾にしながら動き回ってたから巻き込まれたんじゃないか?」
 「そっか。なら、もう余計な邪魔はないって事だ」
 バルバトスの各部駆動系を確認する。
 ダメージは見当たらない。これなら動ける。
 でも、さっきのあの声はなんだったんだ?
 一瞬だけど、バルバトスの動きが遅くなった。
 俺の反応が遅かったのも有るかも知れないけど避けらない攻撃では無かった。
 「まぁ、いいか」
 考えても分からないから後回しだ。
 「武器、取ってきてくれてありがと。え……っと、名前、なんだっけ?」
 「今更、だね。
 私の名前はジキール・ハイドネス、少尉だ」
 「ジキール……さん、ね。分かった」
 グレイズから武器を受け取り、バルバトスに装備させる。
 滑空砲はすぐに使えるようにしてっと。
 で、この槍が、ダインスレイブか。
 「それが、君の言っていたダインスレイブの……」
 ダインスレイブと呼ばれる兵器に使用される弾丸を複数用意し、それを重ね合わせた即席兵器。なんの装飾のない槍だ。それを見て、一目で槍とは思えない。
 「オヤっさんの話だと、結構凄いらしいね」
 「おうよっ。上手く使いこなせればモビルアーマーなんて目じゃねぇよ」
 オヤっさんからの通信だ。
 「この声は?」
 「ん、アカツキ。誰かと通信中か?」
 「うん。ギャラルホルンのグレイズの……えっと、名前は」
 「ジキール ハイドネス少尉だ」
 「だ、そうだよ」
 「ギャラルホルンのパイロットねぇ。まぁ、今は友好な関係だから問題ねぇけどなぁ……」
 「オヤっさん?」
 「なんでもねぇ。それで、上はどうなってる?」
 どうなってる。その質問は俺がしたいよ。
 「俺も、よく分かんない」
 「は?」
 「いや、いきなり変なのが空から降ってきてさ。今、ソイツがモビルアーマーと戦ってる」
 「……戦ってるったって…………一体、どういう状況だ?」
 「さぁ、だから俺も分からんない」
 「そんな悠長な口調で言われても返しに困んだよ。取り敢えず、ソイツのエイハブウェーブの固有周波数をコッチに送れ、解析する」
 「解った」
 視界の先、モビルアーマーとやり合っているガンダムフレームの固有周波数を数値化し、それをオヤっさんに指示された所に送る。
 「受信した。
 んっと、なになに────?」
 するとオヤっさんは驚きの声を上げた。
 「どうしたの?」
 「コイツァ……嘘だろ」
 オヤっさんの声は震えていた。
 あのモビルスーツ、そんなに凄いのか?
 「アカツキ、今すぐソイツから離れろ」
 とんでもない事を言ってきた。
 「離れろって、モビルアーマーを倒さないと」
 「いいから離れろ。ソイツは危険だ」
 危険。確かに、アイツは危険だ。
 モビルアーマーを単機で相手をしている。それも有利なアドバンテージを使わず、己の技量とモビルスーツの性能でだ。
 モビルアーマーは巨体故、俊敏な動きを苦手とする。
 といっても、あの巨体であれだけの動きをするモビルアーマーは異常だ。だが、それでも小回りではモビルスーツに敵わない。
 そこを付けば、俺一人でも勝てると……思ったけど。それだけじゃ勝てない。
 もっと別の何かが必要だ。
 そして、それをアイツは持っている。
 モビルアーマーを攻撃を全て回避し攻撃するガンダムフレーム。
 そこまでは俺と同じだ。
 だが、決定的に何かが違う。
 機体の性能?
 それもある。
 実力の差?
 それもあるだろう。
 でも、違う。
 なんだ?
 俺とは決定的に違うのに解らない。
 「ぁぁ────なら、」
 バルバトスはガンダムフレームに突っ込んだ。
 「おい!?」
 「ジキールは離れてて、ここは俺が、なんとかするから」
 滑空砲を構えながら更に加速する。
 動きながらだと銃身がズレるな。それを計算しながら照準を合わせないと。
 まずは、一発。
 滑空砲の銃身から弾丸が放たれる。
 だが、それはモビルアーマーの頭部を掠めて飛んでいった。
 モビルアーマーの頭部中央を狙ったつもりだけど結構ズレたな。今度はもっとよく狙おう。
 二射目。それは、モビルアーマーの頭部に命中した。モビルアーマーの動きが鈍る。ガンダムフレームのモビルスーツはその隙を逃さない。両手の双剣でモビルアーマーの尾を斬り裂いた。
 一刀両断とは正にこの事だろう。
 尻尾の先端は綺麗に切れた。 「────────────────」
 またしても、この声。
 バルバトスは動きを止める。
 「バルバトス、動け」
 一瞬だけ動きを止めたバルバトスはすぐに稼働を再開した。
 そうか、やっぱりそうなんだ。
 さっき、動きを止めたのは俺の不調じゃない。
 「原因は……お前か、バルバトス」
 バルバトスは応えない。
 まぁ、当然だ。モビルスーツが喋れる訳ない。
 「バルバトス、お前。
 アイツの声が嫌いなのか?」
 バルバトスは応えない。
 「じゃあ、好きなの?」
 バルバトスは応えない。
 コイツはモビルスーツだ。応えなんて返ってくる訳ない。でも、なんでだろ。
 「バルバトス、」
 バルバトスは応えない。
 
 「いいから、応えろよ」
 
 直後、バルバトスは動きを止めた。
 「なぁ、お前はアイツが嫌いなのか?」
 バルバトスは答えない。
 「応えろよ」
 バルバトスは応えない。
 「バルバトス」
 バルバトスは────────────瞳を真紅に光らせた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 

 
後書き
テンポ早い。もっとゆっくり書きたい。でも、なんかこう書きたかった。 
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